いいVRゲームは脳をだましている──コロプラに聞く、VR対戦ゲーム「Dig 4 Destruction」開発秘話

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現段階において、VRコンテンツづくりはなかなか難しい。例えばVR酔いの問題で、従来のゲームのようにダイナミックに視界を動かしてしまうと、気持ち悪くなってゲームどころではなくなってしまう人もいる。

 
その酔いを気にしてつくった先に立ちはだかるのが、「VRならではの面白さ」という壁だ。かつて3Dテレビが大体的に売り出された際には、無理やり飛び出すような演出を入れた映像作品も散見され、スマートフォン黎明期にはタッチできることを強調したコンテンツも目立っていたように、残念ながらコンテンツを360度見られるようにしただけでは、VRならではの面白さや便利さは生まれない。

 
「これってVRでつくる必要があるの?」

 
今のVR業界には、そんなユーザーからの問いに、「これがVRの面白さだ!!!」と明快に答えられるキラー体験が求められている。

 
そんな折、コロプラが8月15日にリリースしたHTC Vive向けのシューティングバトルゲーム「Dig 4 Destruction」(D4D)を体験してみたが、これがかなり「VRならでは」の強いタイトルだと実感した(ニュース記事)。

 

 
D4Dは最大4人のネットワーク対戦に対応している。プレイヤーはボクセル(立方体)が積み重ねられたフィールドを掘り進み、埋まった武器を探して他の3人を倒すのが目的だ。通常のビューでは、地面に埋まった武器や相手はボクセルに隠れて見えないが、ソナーモードに切り替えることで、それぞれが浮かび上がってくる。周囲に注意を払いながら素早く武器を拾って相手を撃破しまくり、最終的に5分間で倒した数が一番多いプレイヤーが勝利という条件だ。

 
概要だけ聞くと普通のFPSにも思えるが、まず、VRゴーグルで進みたい方向を見て、手で掻いてガンガン掘って行けるのが気持ちいい。童心に戻って公園の砂場で無心にスコップを穴を掘っていくように、視覚と音、モーションコントローラーの振動が合わさって生まれる体験が非常に心地いいのだ。

 
VRコンテンツの移動は酔いを防ぐためにワープ方式が多いが、D4Dでは掘った分だけ少しずつ進んでいく方式だ。周囲をボクセルに囲まれることもあって、これが意外と酔いにくい。筆者もかなりVR酔いしやすい体質だが、体験自体に熱中したこともあってまったく気持ち悪くならなかった。

 
そこに銃がぶっ放し放題という気持ちよさも加わってくる。武器をつかんで、相手に向けて連射して当てる。現実世界ではそんな暴挙はできないが、ここは「ほぼ現実」なバーチャル世界だ。しかも、FPSゲームのようにマウスさばきとキーボードショートカットを極めるようなトレーニングなしに、手を伸ばして目の前に落ちてる銃を拾いトリガーを引くだけでOKというわかりやすさもうれしい。

 
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さらに人間相手の対戦だからこそ生まれる楽しさもある。上のムービーでも出てくる対戦前の待機部屋では、Oculus Touchのコンテンツである「ToyBox」さながら、物をつかんで投げたり、花火を出し合ったり、マスクを変えたりとコミュニケーションが可能だ。ボイスチャットにも対応しているので、それこそ友達の家に集まって遊ぶように、わいわい会話しながら楽しめる。

 
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前置きが長くなってしまったが、コロプラの開発チームといえば、以前にもインタビューしたように「VRならでは」の体験に非常にこだわってきた企業だ。一体、どんな経緯でこのゲームに行き着き、何を念頭に開発を進めたのか。D4D開発チームに知見をシェアしていただいた。

 
ゲームのVRらしさとは何か──コロプラがOculusゲームの開発で得た知見(前編)
世界でウケるVRゲームをつくるには?──コロプラがOculusゲームの開発で得た知見(後編)

 
 

 

「掘って、敵を見つけて、5分間でたくさん倒す」

 
D4Dの開発チームは、Oculus Riftのローンチタイトルである「Fly to KUMA」と「VR Tennis Online」を担当していたとのこと。その制作が終わった後に、明確なコンセプトをつけて短期間で1本のタイトルを生み出す目的のチームとして再スタートを切っている。

 
まず最初にキーとなったのは、バーチャル空間での移動だった。

 
「Fly to KUMAやVR Tennis Onlineはゲームとして面白いものをつくろうというコンセプトを打ち出していたけど、今回はバーチャル空間での『体験』を重視しました。そこでひとつのテーマとして出ていたのが『移動』です」(開発チーム、以下同)

 
移動については、コロプラも試行錯誤してきた過去がある。例えば、2015年初頭にリリースしたOculus Rift向けの「白猫VRプロジェクト」では一人称に近くて酔ってしまう人もいたため、次いでリリースしたGear VR版では三人称視点に変わっている。Fly to KUMAやVR Tennis Onlineも、視線を引いた三人称だ。

 
「VRのゲームをいろいろ体験しましたが、自分自身が動くものはそんなに多くなかった。以前は酔わないようにかなり安全策を取っていたが、ここで攻めてみようという話になって、ワイヤーを使うなどのコンセプトをつくってみたところ、プレイヤーが起こしたアクションをきっかけに動くと、あまり酔わないということがわかった」

 
一方で単に移動するだけのコンテンツはゲーム性が低く、突き詰めても面白くならないというジレンマもあったので、別の側面も探っている。

 
「以前の2本を開発した際はゲームコントローラーだけでしたが、その後、開発用のモーションコントローラーが来たので、いろいろなものに触れたり、壊したりという要素も入れたいねと。そこでバーチャル空間でものを組み立てる創作系のアプリもつくってみましたが、既存の作品と似たような内容になってしまった。短期間の開発で、これ以上の面白さがつくれるのかという葛藤が出てきてしまった」

 
そこで注目したのが、ゲームタイトルにも含まれている「破壊」だ。

 
「単純に破壊にフォーカスしたときに、一番直感的で気持ちよかったんです。自分が行動したことに対するリアクションが大きければ大きいほど気持ちいい。先のワイヤーを使ったコンセプトで、デカいモンスターに向かって行って倒すというシチュエーションにおいて、モンスターに張り付いた際、自分の手で掘って壊してみたら以外と気持ちいいという話が出てきた。じゃあ掘るということをメインに組み立てたらどうか」

 
ルールもデスマッチにしたら簡単で分かりやすいし、コンパクトにできる。こうしてD4Dのプロジェクトが走り始めた。

 
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360度意識してこそ楽しめるのがVRならでは

 
しかし、本当に大変だったのはコンセプトが決まったあとだった。

 
「『掘ることをメインにマルチ対戦にしたら面白い』というのがわかってから、みんなが『あれがやりたい』『これを入れたい』と妄想が広がりすぎたのが大変でした。3月下旬あたりは本当に大変で、一生決まらないのではと思っていた」

 
ただ、チーム全員で面白い体験だという直感はあった。そこで必要なもの以外は排除して、シンプルにする方針をとった。

 
「今の状態でもアイデアを10分の1ぐらいに減らしています。『協力プレーもほしいよね』とか、枝葉は無限につくれる。でも目的を『掘って、敵を見つけて、5分間でたくさん倒す』というシンプルなところに落ち着けました。」

 
あとはプレイヤーがかぶれるマスクが増えたり、バトルポイントをためて自分のランキングを上げたりと、繰り返し遊べるような要素を突き詰めていったという。

 
「普通のFPSと違って上や下にも進めますし、360度意識してこそ楽しめる内容なので、『VRならでは』の遊びができたと思います」

 
ちなみにチームの方々に「この瞬間が楽しかった」というシチュエーションを聞いてみたところ、

 
・フライパンで相手の弾を打ち返す
・接近戦で相手の武器を奪って奪われを繰り返してさらにパンチでやりあう
・ロケットランチャーを遠目から撃って当てる

 
という意見が挙がっていた。

 
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今後はモーションコントローラーのフィードバックにこだわってアップデートしていきたいとのこと。

 
「現状でもモーションコントローラーにバイブレーターのフィードバックが入っていますが、それを突き詰めていきたい。VRゲームをつくっていると、『脳を誤魔化せればいいんだな』ということを感じます。いいVRゲームは、風船を掴んだ感覚などをバイブレーターでうまく再現している。大きく掘ったら大きめの振動、小さく掘ったら小さめの振動といったように、視覚と聴覚と触覚で脳をごまかせれば、本当にその場にいるような雰囲気がつくりだせる」

 
D4Dが、どのように進化していくのか。何はともあれHTC Viveユーザーならぜひともゲットしてぜひ対戦を楽しんでみよう。ちなみにSteamの解説によれば、10~12時、18〜20時が比較的マッチングしやすい時間帯だという。

 
©2016 Valve Corporation.All rights reserved.
©2016 COLOPL,Inc.

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
Dig 4 Destruction(Steam)
コロプラ

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