「リア充」が来るほど変わった──gumi国光氏・よむネコ新氏に聞く、VR業界の最新トレンド

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東京ゲームショウ2016(TGS)に合わせて、gumiは15日に「gumi presents TGS After Party 2016」を開催。その場にて、gumi代表取締役社長の国光宏尚氏と、よむネコ代表の新清氏士氏を交えた共同インタビューが行われた。

 
PANORAでは昨年11月にも「このままだとVRは日本が負けて終わる」と国光氏が熱く語ってくれたインタビューを掲載したが、そこから約1年経って、はたしてVR業界は何が変わったのか。ざっくばらんに語っていただいた(以下、敬称略)。

 
 

VRゲームへの投資はまだ少ない

 
──今年のTGSはVR系のタイトルで110も出展していたそうで、かなり増えた印象です。それもインディーや個人開発者ではなく、普通の企業が参入している。日本ではそんな加熱ぶりですが、一方、国光さんが頻繁に視察している海外の状況はいかがでしょうか?

 
国光 ここ最近だと日本も盛り上がっていますが、アメリカの西海岸や中国も熱気がすごい。この3ヵ所がモバイルゲームに続いて、VRの中心地になっていくと思います。そこで日本にチャンスがあると思ったのは、gumiでも海外の投資をやっていて感じるのは、ゲームの人気がないことです。

 
ゲームは当たるときは大きく当たりますが、そうじゃなければゼロになってしまうこともある。今の時点ではとツールやプラットフォームへの投資が断然多くて、ゲームの制作会社はみんなお金を集めるのに苦労しています。そこを打開する方法は2つあって、まず1つは何かを出してヒットさせる。

 
──知名度を上げてから、さらなる資金を調達をするという感じでしょうか?

 
国光 そう。今でも「Rec Room」や「Audioshield」などある程度ヒットを生んでいるメーカーは、それをベースに資金調達がしやすくなっている。

 
もうひとつは、創業者が超有名人。Gear VR向けの釣りゲーム「Bait」をリリースしているResolution Gamesは、「Candy Crush」の開発メンバーが立ち上げた会社ですが、そうなると期待値が上がる。「Call of Duty」を手がけた開発者によるVRゲーム開発企業のReload Studioもそうですよね。

 
今はその2つぐらいで、そこまで幅広くゲームのところにお金が集まってる感じではない。そういう意味では日本の企業もまだキャッチアップしていける余地があると思う。

 
──コンテンツ自体も、まだ目立つものが出てきてないという印象ですか?

 
国光 VRというよりは、立体視や360度見られるというものも多いですよね。家庭用ゲームを持ってきて、立体視や360度で見せているみたいな。本当の意味でのVR体験をつくれている会社はそこまで多くない。

 
──それは国内外を問わず?

 
国光 そう。家庭用の大手がつくっているゲームでも、そういった傾向があります。確かに立体視や360度見られることで「おお」と驚かせるのもアリだけど、それはすぐに飽きられてしまう。だからVRでなければならない体験をつくるところがキモになっていく。

 
 

VRの中でしか表現できないリアルがある

 
──そういう意味では、私も以前体験しましたが、新さんのVR脱出ゲーム「エニグマスフィア〜透明球の謎〜」は、ものをつかんで投げたり、目の前で何かを壊す気持ちよさといった、VRでしか得られない体験を突き詰めた印象です。

 
 ありがとうございます。自画自賛で申し訳ないですが、デモを積み重ねるうちに今の方向性が正しいと確信に近いものを感じます。8月末にナムコさんが運営している渋谷の「なぞともカフェ」で、エニグマスフィアのロケーションテストをやらせてもらいましたが、そのときにアンケートをとってはっきりわかったのは、VRでゲームをやりたい人が大勢いるということです。これは確実にいる。

 
──そうなんですね!

 
 ただ、それを10万円以上のお金を払ってやるかというと、まだだいぶ躊躇してしまう。そこのギャップはすごくあるけど、遊びたいニーズはあります。というのも、VRは1日の体験者数に限りがあるのがわかっていたので、人数を絞るためにほとんどプロモーションしなかったのですが、それにも関わらず2日目は口コミベースで開店前に整理券を取る行列までできたからです。

 
──スゴい。エニグマスフィアは2人での体験で、VRゴーグルが2台あったとしても、1日でさばけるのはせいぜい100人とかですよね。

 
 朝一で行列ができていたのを見て、「これはうちは関係ないだろう」と思っていたら、ほとんどがうちの予約で驚きました。ナムコさんからも、その日の売り上げが上がったと聞いています。やっぱりVRをやりたいというニーズはあるんだけど、それを適切にできる環境がない。

 
──HTC ViveもPlayStation VRも、今では全国の店舗で無料体験できるようになっていますが、みんな接点がなくて知らないのでしょうか?

 
 そうですね。あとはコントロールされて保障されたコンテンツが遊びたい。デモに長時間並んで待っていざ体験となっても、「うーん……」というものもあったりします。あとは今回特徴的だったのが、「リア充」がめちゃくちゃ多かったんですよ。

 
──えっ、それはなぜ!?

 
 なぞともカフェが、もともとリア充がくる場所なんです。

 
──(笑)。でもお台場のVR ZONEでも、20代が来場者の中心でカップルもいるという話もありましたしね。

 
国光 女の子がVRを遊んでいる姿はかわいいからね。ぜひホラーを体験しているところを見たい。

 
──わかります(笑)

 
 ともあれ、カップルのコミュニケーションのひとつとしてVRを体験すると、彼氏は偉そうにできる。逆に女性がリーダーシップをとってるカップルもいたりして、すごく勉強になりました。

 
──面白い! エニグマスフィアは2人でできるという点は大きいですよね。

 
 それは大きいと思います。そうしたコミュニケーションの要素は今後も気にしてつくっていかなきゃいけないなと。VRのゲームに関してはだんだんわかってきて、VRの中でしか表現できないリアルがあるんです。それを研究してわかっている人がつくっているのかどうかが、遊んでみると露骨にわかるようになってきた。

 
国光 その話は米国とちょっと事情が違っていて、あちらではリアルをバーチャルに持ち込もうとしているんですよね。でもやればやるほどわかるんですが、バーチャル空間でのリアルは、リアル空間でのリアルと違う。

 
 そう、違う。

 
国光 だからバーチャルの中でのリアルをつくるのがひとつ鍵になるのかなと思います。

 
 

今は一段目のロケットを打ち上げている最中

 
──そういえば、国光さんが最近体験されて、これが「VRならではだ!」みたいなコンテンツってありましたか?

 
国光 Rec roomやAudioshield、あとは出資先だからあれだけど「Job Simulator」ですね。

 
──ちょ、利害関係者(笑)

 
国光 今まではグーグルのお絵かきツール「Tilt Brush」を出しておけという感じだったのが、この3つはかなりいい線をいってます。あとはやってないけど「RockBand VR」もスゴくいいと聞きました。

 
繰り返しになりますが、家庭用からきているゲームの中にも、VRじゃなくてもできるものも目立ったりします。先ほど挙げたタイトルは「ゲームなの?」という部分もあるけど、「これはVRじゃないといけない」という要素は持っている。

 
翻って考えてみると、モバイルのときも同じように家庭用ゲームのそのまま移植があって、「Infinity Blade」のようなタッチパネルを生かした体験が出てきて、「Paper Toss」や「Temple Run」、「Touch the Numbers」、なめこ(おさわり探偵 なめこ栽培キット)とかが出てきて市場を牽引していった。

 
同じような形で、VRも最初は家庭用体験の移植から来て、知名度があるからみんなとりあず試してみるけど「?」となってしまう。その後、2回目、3回目となったときに、インディーがつくったような、グラフィックはそこまでじゃないけどVRの体験としてつくりこまれているものが出てきて、「うわっ、すごい」というインパクトを与えるのだと思う。最終的にはVRならではの体験をおさえつつ、グラフィックなども作り込まれたものに昇華されていく流れになる。

 
 今は新しい体験の一段目のロケットを打ち上げている最中、という感じがしますね。

 
──確かに、先ほど言われていた「VRならではの体験」も、ようやく一部の方々がつかみ始めてきたという印象です。

 
 でも一般の人々はそこまで行ってないですから、まずPlayStation VRが売れて、VRがしっかり認知されるのが重要だと思います。

 
国光 あとはゲームセンター。昨日、TGSに合わせて開かれた中国のゲーム関係者が集まるイベントで登壇したんですが、一緒に話した方によれば中国市場ではもうネットカフェでは1000店舗規模で出まくっているとか(関連記事)。

 
しかもマンションの1室で個人でやってるケースもあるそうで、日本のVR ZONEほどつくりこまれていなくても、ネットカフェやカラオケボックス、ショッピングモールなどで展開していく余地はあると思う。1回目は誰しも興味を持つと思うし、そこで関心がつかめたら一気に口コミで広まっていって、次はVRならではのコンテンツも体験してもらって……という。

 
──なるほど。最後に2016年は「VR元年」と呼ばれていますが、元年感は出ていますか? 去年は「このままだとVRは日本が負けて終わる」みたいな話をされていたじゃないですか。

 
国光 Oculus Connect 2の報告会から1年間経って、まさか新さんがパルマーにVRの本を渡すことになるとは。

 
 (笑)

 


*編集註:新氏はTGSにエニグマスフィアを出展し、その場にOculus VRの共同創業者であるパルマー・ラッキー氏が訪れて、新書の「VRビジネスの衝撃」を手渡したとのこと。

 
国光 それでも現実的には変わってきていますよね。GDCも、CEDECも、東京ゲームショウも明らかにVRが来てるのを感じます。

 
──Tokyo VR Startupsを始め、様々なところでがんばってよかったなと感じますか?

 
国光 そうですね。

 
 でも、もっとアクセルを踏まないと。

 
国光 引き続きさらに盛り上げていければと思います。TVSについても今週、第2期で選考した5社を発表します。絶対びっくりする人たちが絡んでいるので、ぜひ注目していてください。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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