HoloLensの視野角はなぜ狭い? 米MS、アレックス・キップマン氏に聞く「Windows Holographic」(後編)

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前半の記事に続き、米Microsoft Windows and Devices Group Technical Fellowのアレックス・キップマン氏へのインタビューをお届けする。

 
基調講演で発表された内容については、そこに補足を加える形で進めていく。前半の記事と、基調講演に関する速報記事もご覧になった上でお読みいただきたい。

 
 

「一度あたりのピクセル数」で判断

 
──機器によってHolographicの解像度は違うのですね?

 
キップマン はい、大きく違います。ただ、この空間では「解像度」と考えない方がいいです。一般的にいう「解像度」と、3Dスペースでの解像度は大きく違うものです。角度あたりのピクセルで、そうした部分を考えるのが適切です。

 
「1度あたりのピクセル数」という考え方は、人の目の構造から来ています。Hololensは現状、もっとも解像度の高いものです。人の目が見分けられる限界、「1度あたり47ピクセル」です。

 
違うデバイスによって、違う解像度になります。1度あたり10ピクセルのものもあります。違う解像度のパネルを使いつつ、違う方法で、違う視野角で見ているので、違う解像度になるのです。そして、それぞれ違うGPUを使っていますし、それぞれ違うディスプレー解像度で動きます。視野角も違います。

 
ですから、それらをあわせて、自分の正面にどう見えるかを考える必要があります。視野角が広がると解像度が下がり、視野角が狭くなると解像度が上がります。

 
私はHololensを選びましたが、それは、視野にもっとたくさんのピクセルを集めたかったからです。なぜかというと、映像をクリアに見たかったからです。

 
Hololensを使った人は、皆映像が非常に鮮明であることに驚きます。それは「1度あたり47ピクセル」としたからです。同じ解像度のディスプレーを使って視野角120度のデバイスを作れば、ピクセルが見えてしまうことでしょう。それが、今の主要なVRデバイスの作り方です。

 
そのデバイスでゲームをするのであれば、それは良いトレードオフといえるでしょう。しかし、テキストを読んだりする目的には、あっていません。ぜひ、今のVR・HMDでテキストを読んでみてください。きっとできませんよ。8ポイントフォントを読めるのは、Hololensだけです。

 
これはトレードオフです。エコシステムを作り、その中でどういうチョイスをするかは消費者次第です。私は、Hololensを選びます。私のプロダクトですからね。エンタープライズ向けの用途でも、フルスクリーンのテキストを読むにも、Hololensのようなデバイスが適しているでしょう。一方、ゲームをするには、もっと大きい視野角が求められます。ピクセルについてはあまり気にしません。

 
──フォント表示はどうなりますか?

 
キップマン もちろんTrueTypeが使えます。しかし、TrueTypeはモニターでの表示のためにデザインされたものです。3Dでは、頭を動かすと、文字サブピクセルが見えてしまいます。これを解決する方法は今はありません。フォントをレンダリングする新しい技術が必要です。どちらにしろ、美しいフォントを表現するには、「一度あたりのドット数」がカギであることは間違いありません。

 
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デバイスで異なる「視野角」「解像度」

 
この辺については、補足説明をしたい。マイクロソフトは、Windows HolographicおよびHololensで、「PCの一般的な用途を強く意識」している。Hololensは視野角が一般的なVRデバイスに比べ非常に狭い(50度程度しかない、と言われている)が、それは、目に入るピクセルの密度を上げ、文書や3Dモデル閲覧の際の「解像感」を重視しているから、というのはキップマン氏の説明だ。

 
一方、壇上で説明された3GlassesのWindows Holographicデバイスは、シースルーのMRデバイスではなく、VRと同じように、バーチャルワールドにワークスペースを作る。だから、視界全体を覆う、広い視野角(スペック上は110度)とされている。2880×1440ドット・704ppi・120Hzのハイエンドパネルを使い、ある程度の解像感が維持されているとは考えられるが、若干違う感覚のものになるだろう。

 
またキップマン氏は、「UWPアプリケーションではよりGPUの性能を必要とする。より多くのピクセルを、アプリケーション内に詰め込む必要があるからだ」とも話す。すなわちおそらくは、Windows Holographicで間口は相当に広がるものの、「一般的なPC的な仕事をするには、ハイスペックなHMDとパワフルなGPUが望ましい」ということになるのでは……と予想できる。

 

「新しいUI」をこれからつくる

 
──今のOSはすべて2Dのために作られています。いつかWindows Holographicが標準的な作業環境が来るのであれば、UIも変わらなければなりません。なにか標準的な新しいものが必要と思いますが。

 
キップマン まったくその通りです。完全に新しいUIが必要になります。今のHololensは一部が2Dであり、まったく新しくはなっていませんから「差し戻し」が必要です。

 
カギになるのは、「使える環境の広さ」だと思います。私は「ルームスケール」が好きじゃありません。ルームスケールには「壁」があります。セットアップも必要です。すぐに「ワールドスケール」になるでしょう。Hololensにはセットアップもなく、壁の制限もありません。どこにでも歩いていけます。それこそが未来ですよ。誰もがそうした技術を組み込めるようになります。すでにHololensは出荷されていますし、この技術はエコシステムに対して公開されます。

 
Hololensは世界ではじめて、実際の世界に「ピン止め」できるUIを実装しました。壁にブラウザを置いたりできます。そこに置いておけば、ずっとそこにあります。次にその時にここにくれば、またそこにあります。

 
私のベッドルームには、OneDriveに保存した写真がたくさん飾られています。もちろん、私のベッドルームの「ホログラム空間」に、ですが。写真をスマートフォンで撮影すれば、自動的に壁に貼られます。すでにベッドルームにあるんです。これはもうできていることえす。

 
差し戻す必要があるのは、これをいかに「3Dにするか」ということです。ただ3Dになっても、そう使いやすいわけではありません。ディスプレーのキューブが目の前にあることになります。キューブの後ろを見るには、歩いて後ろに回る必要があります。単にクリックするだけの方がずっと簡単なはずです。

 
しかし、これは世界ではじめてのコンセプトです。今日、3Glassesの機器でデモしたのは、リアルワールドを模したものですが、あれは「バーチャルワールド」の中に構築されています。デモの中で女性が空間の中にいて、さらに犬もいましたが、あの犬はペットアプリケーションなんですよ。

 
これはOSであり、あれが新しい時代のデスクトップかつシェルなんです。そして、その変化はまだ始まったところです。本当に今日お伝えしたものからは、さらに無限のイノベーションが必要ではあります。しかし、こうしたシーンはすでに始まったんです。

 
 

リアルとバーチャルの入り交じる「MR空間」

 
WinHEC Shenzhen基調講演では、実際に3Glassesの機器を使ったデモが行われた。機器が「VR用HMD」に近いものなので、映像は基本的にバーチャルワールドのものだ。ただし講演では、利用者が見てる映像に対し、利用者を後ろから撮影した映像を、サードパーソン視点のゲームよろしく、合成する形で行われた。

 
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基調講演でのデモ。使っているのは3Glassesの「S1」。利用者の映像は合成によるもの

 
部屋の中でウェブブラウザーであるEgdeを使ってストリーミングビデオを見たり、360度映像を見たりと、現在のPCであたりまえに行っていることを「仮想に組み立てた部屋の中」で行うような形になっている。

 
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3GlassesのS1によるWindows Holographicデモ。VR空間で各種アプリを使ったり、360度ビデオを視聴したりと、様々なことができることをアピール

 
また、リアルタイムデモ後には、キップマン氏が「バーチャルとリアルの間」を示すような指摘を行っている。実際の空間にWindows Holographicのウインドウを浮かべれば、それは「リアルに少しのバーチャル」。さらに、ペットアプリの犬を配置したり、机の上にオブジェクトを置いたりすると、どんどん「VR度」は高まる。さらには、「自分」を実際の映像から「3Dのアバター」に置き換え、さらに、部屋の風景・壁を映像に置き換えてしまう。こうなると、映像的にはバーチャルなものだ。しかし、人や部屋はあくまで「リアルを元に置き換えた」に過ぎない。

 
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空間の中に、ウインドウや犬(ペットアプリ)などの「バーチャル」なものを配置。Hololens的なMRだ。

 
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自分をアバターに、背景や机もバーチャルな存在に置き換え。だがこれも、元は「現実」にあるもの。それを3Dで置き換えている。

 
マイクロソフトはWindows HolographicとHololensを、あくまで「Mixed Reality」と呼んでいるが、それは、映像を実景に重ねることだけを指しているのではなく、外界をキャプチャしてバーチャルなものに置き換え、「バーチャルとリアルが混ざる」ことも指しているのだ。

 
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リアルでもバーチャルでもない、その両方が混ざり合う。

 
こうしたものは、これからCreators Updateが公開されると、マシンパフォーマンスが純分な機器から順に使えるようになっていくと思われる。テクノロジー的に準備された要素で、どういったことをするのか。マイクロソフト自身も初期段階だと認めている。だからこそ、公開された環境でアプリケーションを作り、可能性を試すことはビジネスにつながる……ということなのである。

 
 
(TEXT by Munechika Nishida

 
 
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