「Fragments」が見せる、これからのARゲームの姿【ティーポットの独り言】

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hololens

 
こんにちは、あるしおうねです。

 
先日、話題になりつつもプレイしてなかったHoloLensのゲーム「Fragments」をようやくプレイしてみました。プレイヤーは探偵となって、発生中の事件を自分のいる部屋で追体験しながら手掛かりを探し、解決に導くゲームになっています。以前、講演でお話ししたAR(本連載ではMRと同じ意味で扱います)アプリケーション開発の難しさの、大部分を解決したゲームデザインになっており大きな衝撃を受けました。

 
今回は、簡単にFragmentsにおけるそれぞれの要素を紹介していきたいと思います。

 
 

部屋の計測とプレイの可否判定

 
本ゲームでは、最初にプレイする部屋の計測を行います。HoloLensは元々、「Spacial Mapping」という全自動の実環境計測機能をシステム的に持っているのですが、ユーザーが事前にプレイエリアをくまなく計測している保証はないため、改めて計測を行わせているものと思われます。改めて計測するのは面倒かと思いきや、計測エリアが徐々に広がっていく視覚エフェクトと効果音が気持ちよく、気になりませんでした。こういった細かな工夫も体験に大きく影響することが実感できます。

 
20170219_011409_HoloLens
計測時のエフェクト。青グリッドは計測した部分、赤グリッドはプレイエリア境界を示しています。

 
なお、計測中に、「壁領域」「床領域」「天井」「高さのある面(椅子やテーブルなど)」の各要素を自動判別して、ゲームプレイに十分な空間あるかどうか5段階評価で表示してくれます。意外に広い空間が必要なので、六畳一間のマンションなどでは少し厳しいかもしれません。

 
20170219_011449_HoloLens
各項目の表示写真。今回使用している部屋は天井(Ceiling)が高くてあまり計測できず、スコアが低くなっています。

 
 

コンテンツ再生の位置設定

 
本ゲームは、ARで事件を追体験するパートがひとつのキーになっており、事件を再生するためにひらけた床面が必要になります。計測された部屋の中で、最も広い床面を抽出し、その端近くで事件が再生されるよう各種CGオブジェクトの位置が自動設定されるようです。部屋の中の障害物と干渉して矛盾を感じない様に配慮されています。ただ、まだ完全とは行かないようで、ガラス戸などの先に物体がめり込んで表示されることもあります。

 
20170219_011837_HoloLens
事件の追体験中。子供が誘拐されて大変なことに!

 
 

各種物体・形状認識

また、探偵としてのプレイヤーは、事件が起きている部屋の中で手がかりを探すことになるのですが、手がかりの配置も、各部屋の形に応じて動的に決定されています。これらは、先述の自動判別した各要素に基づいて行われています。

 
壁の認識
いくつかの手がかり(もしくは単なる装飾品の絵など)は実物と同じ位置にある壁に配置されています。当然のことながら、各壁面を正しく認識していなければこのような配置は行えません
 

 
20170219_012148_HoloLens
壁に張られたポスターと汚れた換気口。

 
 
部屋の隅の認識
開けた場所でなく、部屋の隅やちょっと入り組んだ床面に落ちている手がかりも存在します。事件を追体験する大きな床面領域だけでなく、こういった角や狭い部分の領域も検出した上で配置しているものと思われます。

 
20170219_012119_HoloLens
部屋の隅にひっそり置かれたゴミ箱。いかにも怪しい。

 
 
椅子の認識
びっくりされた方もいると思いますが、時々、電話相手の上司や人型AIが自分の部屋の椅子に座っているのを見ることができます。もちろん、これは椅子(のようなもの)を認識した上で行われています。

 
20170219_010822_HoloLens
座って話す上司キャラ。

 
 

まとめ

まさに自分の部屋で事件が起きている!(設定的には遠隔地の追体験だそうですが)というゲームは、それが虚構だと分かっていても、当事者的に身に迫ってくる点で、今までになく心動かされるものがあります。現状のHoloLensは、視覚的には没入感が十分とは言えませんが、体験的な没入感が素晴らしく、まさにゲームデザインの勝利と呼べるかもしれません。このような「実環境に応じたコンテンツの再生」は、これからのARゲームやアプリケーションの新たな標準になっていくものと思われます。

 
部屋の広さやおおまかな物体・形状認識は、床面、平面検出とその方向、領域面積を計算すればある程度求める事が可能で、精度はともかくそれぞれ単体の技術としては難しい物ではありません。しかし、検出した結果に対して違和感が出ないように動的にコンテンツを生成、配置するのは、開発、デバッグ、テストの労力的に大変なものだと思います。本ゲームではHoloLensにおける本格的なARゲームのお手本として、作り込みで解決されていると思われますが、一方で、このような動的なコンテンツ生成を行う技術の研究も行われています。

 

MIT Media Labの動的コンテンツ生成システム「Oasys

 
 
今後は、このように動的コンテンツ生成も自動化して、UnityやUnreal EngineなどのゲームエンジンのAR向け機能として取り込まれていくのではないか、と予想します。また、識別できる物体の種類や精度が向上した、高度な物体・形状認識も導入されていくと思います。開発者にとっては、似たようなゲームやアプリケーションの少ない今、頑張って自前でこのような動的コンテンツ生成を実現させるのか、自動化技術がゲームエンジンに降りてくるのを待つのか、悩ましい選択かもしれません。今後の技術動向に要注目です。

 
 
●著者紹介
あるしおうね 大学院にて、VRを専門とする研究室に所属。卒業後、国内電子機器メーカーで約9年間、Augmented Realityおよび画像処理の研究開発に従事。2015年11月に外資系電子機器メーカーに転職し、2016年6月より渡米。

 
 
●関連リンク
Fragments
Oasys
HoloLens

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