「シンプルな中二」がヒットのコツ 博報堂アイ・スタジオ/HACKistに聞く「INVISIBLE FORCE」秘話【SXSW 2017】

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10〜19日、米国オースティンにて開催されていたクリエイティブコンテンツの祭典「SXSW 2017」。メインとなるオースティンコンベンションセンターでは、多数の日本企業が出展して会場の一角を占めていた。そんな中から、今回は博報堂アイ・スタジオが展開する社内ラボ「HACKist」が手がけた「INVISIBLE FORCE」について取り上げよう。

 
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同社ブースの半分ほどをINVISIBLE FORCEに割り当てるという力の入れようだった。

 

まるでドラゴンボールな体験!

INVISIBLE FORCEは、手で気を溜めて解き放つことで数m先にある物体を吹き飛ばせるという魔法のようなデモになる。

 
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体験者は頭にマイクロソフトのMRゴーグル「HoloLens」、手に筋電センサー付きのアームバンド「MYO」をそれぞれ装着。所定の位置に立つと、数m先の台上にウレタン製ジェンガが置かれている。

 
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そしてHoloLensから見ると、台にはバリアーのようなものが貼られているのがわかる。

 
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体験者は手を握って気を溜めて……。

 
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手を開いて放出!

 
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このバリアーから攻略していく。

 
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数回当てると壊れるので、あとは「本丸」のジェンガに向けて最後の一撃を放つと……。

 
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ズドンと吹っ飛ぶという流れだ。実にシンプルで楽しい。ここまで説明しておいてなんだが、動画で見ていただいた方がわかりやすいので、ぜひ下記動画をチェックしてほしい。

 

 
独自制作した台にHoloLens と連動する爆破機構が仕込まれており、その上にウレタン製ジェンガを組んでおき、手を動かしたタイミングに合わせて吹き飛ばすという仕組みになっている。

 
実際に体験してみると、自分の動きに合わせてジェンガが一気に吹き飛ぶという体験はかなり気持ちのいいものだ。感覚的には、(やったことはないが)スイッチをポチッと押して大爆発を起こすような爽快感に近いものと思われる。手を握って気を溜めている最中の音もピッタリで、自分の手のひらに何かが溜まってきたような感覚をハックされた気分だ。

ラストで大きな音がなるため、会場でも「何?」という感じで多くの観客が集まってきており、スマートフォンを取り出して動画を撮影する人も多かった。

 
 

見た目が面白い+気持ちいい=爆破

 
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そもそもどういった経緯でこのデモは生まれたのだろうか? チームリーダーでクリエイティブテクノロジストの川崎順平氏に聞くと、昨年、SXSWに出展した際、シンプルで「中二」っぽいものが受けるということに気づいたからだという。川崎氏(写真左)、そして部長でクリエイティブディレクターの望月重太朗氏(写真左から3番目)に、コンセプトをデモに落とし込む過程やSXSWの雰囲気についてインタビューした。

 
──INVISIBLE FORCEはどういった経緯で生まれたのでしょか?

 
川崎氏 HACKistとしてSXSWに出展するのは4年目なんです。今回5つのデモがありますが、そのうち3つはビジネスよりなので、INVISIBLE FORCEに関してはもう現地で楽しければいいよねっていう。それで昨年出展したときに、アメリカ人はシンプルで「中二」っぽいもののほうが受けるということに気づいた。

 
──HoloLensを活用するのに至った理由は?

 
川崎氏 制作時の2017年1月にちょうどHoloLensがリリースされて、僕らも触らないと色々なものに応用できないなということで入手して、そこから何をやろうという話になったんです。その際、「シンプルな中2」を推奨したのが望月です。

 
──しかしなぜ爆破に。

 
望月氏 何というか……、爆破って気持ちいいじゃないですか。スイカが割れたり、車がクラッシュしたり、ああいう気持ちいいスカッとしたものを何も考えずにやってみたいと考えたんです。HoloLensを活用しようとなったときに、CGがリアルな物体と連携するものをつくろうという話はあったんです。例えば、カードゲームやボードゲーム、将棋とかも考えたんですけど、結構地味になってしまう。

 
──プレイヤーは面白そうですが、展示会場で通りかかった人にとっては分かりにくいかもしれません。

 
望月氏 それではあまり注目されない。見た目も面白いし、体験者も気持ちいいものは何かなと考えていったら、爆破に行き着いたんです。

 
──爆破!

 
川崎氏 それで望月がジェンガが飛んでいるようなコンセプトアートを持ってきたんです。その頃、別件の体験型アトラクションで使うために、オリジナルの空気砲をつくったんです。

10月末に実施した「ミオヤマザキ」というアーティストの「メンヘラバーチャルミュージアム」というイベントにHACKistが協力して、「INTERACTIVEマヂヤミ“浮気がばれた夜に…”」という展示を制作しました。メンヘラ彼女に浮気がバレたという設定で、最後体験台にアゴを置くと空気砲がバーンって放たれて蹴られたように錯覚する。

 
──怖すぎる!

 
川崎氏 その頃も中二感がすごくて、人に叩かれる体験ってあんまりない、でも本当に叩くのはダメだけど空気なら危なくないんじゃないという流れで空気砲を使いました。これをちょっと強化すればジェンガぐらい吹き飛ばせるんじゃないかって。

 
──現地での反応ってどうですか?

 
川崎氏 現地の反応はすごくよくて、すごいときはブースを取り囲まれてみんな撮影してるっていう。見てるのも楽しんでいる人が多くて、向こうで人が何かホイホイやってるのに、最後吹き飛ぶのが面白かったみたいで。最初はジェンガも木製だったんですが、通路に飛び散ると危ないということに気づいてウレタン製のに変えています。

HoloLensについても、知ってるけど意外とやったことがないという人も多いみたいで、今回、3つほどHoloLensを使った展示がありますが全部日本のブースなんですよね。

 
──SXSWなので、来場者が技術が大好きという人だけじゃないという特性があるのかもしれません。

 
川崎氏 そうですね。昨日ぐらいから音楽の人も現地に増えてきて、これぐらいよくわからない体験だとミュージシャンはテンションが上がるみたいです。

 
──中二の精神は結構万国共通。

 
川崎氏 万国共通でしたね。アメリカ人も「ドラゴンボール」が好きらしくて、「かめはめ波」を撃ってみたいという。SXSWではリテラシーの高さに関係なく、ワンアクションで何かが反応があって面白いというのがすごく人気が出る。

 
──4年目で編み出した「勝利の方程式」ですね。

 
川崎氏 ただ、それだけだと直接的なビジネスは生まないんですよね。でも、何か面白いことやってるヤツらだという風に見てはもらえますし、うちみたいに複数の展示がある場合は「客寄せパンダ」みたいになってくれている。人をブースに集めながら、MRによる「新しい広告クリエイション」と、ほかのコンテンツが示す「新しいビジネスクリエイション」の両方の軸を見せることができるので、その流れが作れたのは大きいです。

 

「何の役に?」ではなくストレートに見てくれる

 
──そういえばSXSWは、来場者も日本人が多い印象です。

 
川崎氏 今年の事前登録でわかっているだけでも800人弱といわれてますね。

 
──800人も! 家電見本市の「CES」やゲーム開発者向けの「GDC」と比べても日本語が飛び交ってる場に多く遭遇します。

 
川崎氏 非常に多いらしいです。CESとの大きな違いで言えば、会場を見て確かにそうだなと思ったんですが、フランス勢がCESに比べて極端に少ないんですよね。

 
──確かに!

 
川崎氏 SXSWのようなお祭りには、フランスは振り切れてないのかなという。日本は学生も企業も含めて、さまざまな立場の人が出展してる。

 
──日本の展示会ではこの雰囲気はあまりないですね。

 
川崎氏 出展してたとしても、白い目で見られてしまう。コミケぐらいならいいかもしれないですけど。

 
──あー。それでいうとドワンゴの「ニコニコ超会議」(ニコ超)は近い雰囲気です。

 
川崎氏 ニコ超ならまだ許容されそうですが、日本では構えて素直に楽しんでもらえないところもあるんですよね。アメリカ人はやっぱりストレートに見てくれる。

 
──「それって、何の役に立つんですか?」問題みたいですね。いや、役に立つとかじゃないからって。

 
川崎氏 INVISIBLE FORCEも日本に持ってくと、「何に使うんでしたっけ?」と言われるかもしれませんが、半分はHoloLensを使ったコンテンツの研究開発で、半分は来場者の注目を集めるためですかね。

 
──とはいえ、先ほどのドラゴンボールの話じゃないですが、アニメのキャラなどをからめた展示にすぐ使えそうです。

 
川崎氏 みなさん一回体験していただけると、ほかに展開するときに想像しやすくなりますよね。ただ、今回やってみてイメージ通りにならなかったところもあった。例えば、Unityの画面でつくっていたものがHoloLensに映したときに微妙に噛み合わなかったり、何をやったらよりARっぽくなるのかというのが突き詰められていなかったりとか。来年ももっと面白いコンテンツを持ってきますので、ぜひオースティンの地に体験しに来てください。

 
 
*SXSW 2017まとめページはこちら

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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