約70台のHoloLensが揃ったN高等学校「MR入学式」 ここが「すごーい!」5つの理由を整理した

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学校法人角川ドワンゴ学園は5日、通信制高校の「N高等学校」において「平成29年度 ネット入学式」を実施した。事前の発表通り、全校生徒の中から約60人が東京・六本木にあるドワンゴのイベント施設「ニコファーレ」に集まって、マイクロソフトのMRゴーグル「HoloLens」を装着。沖縄・伊計島にある本校からリアルタイム中継して、奥平校長や来賓をCGで出現させて話を聞くという前代未聞の式辞を執り行った。

 

 
そもそも、ニコファーレ自体が360度LEDに囲まれた特殊な場所で、そこにドローンや360度カメラを駆使した映像を流したり、チャットツール「Slack」で入学式に参加している新入生のコメントを重ねたり、会場の様子をニコニコ生放送で中継したり……と異例な要素が多い式なのだが、今年の目玉であるHoloLens活用はなにが「すごーい!」のか。

 
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新入生はもちろん……。

 
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壇上の理事までHoloLens装着。

 
ともすれば、全員がゴーグルをかぶっている見た目の違和感だけで「なんか変なことやってるなー」とセンセーショナルに受け取られがちだが、ここはVR専門メディアであるPANORAとして注目ポイントを5つにまとめてみた。なお、HoloLensに関わる過去記事も参考にして欲しい。

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1.75台で集まったことがすごーい!

一番わかりやすいのが台数で、HoloLensには貸出機がないためわざわざ75台購入したとのこと。HoloLensは1台あたり税込で33万3800円なので、単純計算して2503万5000円(!!!!!)。さらに聞けば、大口購入でもマイクロソフトストアを使う必要があったそうで、まず法人クレジットカードの限度額を3000万(!?)まで引き上げて、5台ずつカートに追加して買っていった苦労もあったそうだ。

 
HoloLens自体はまだ製品ではなく、開発者向けの「Development Edition」、それも第1世代となっている。日本での発売が始まったのは今年1月で、これからようやく開発者が増えて行くという段階だ。IT系企業でも触ったことがない人が多い中、いきなり75台の導入を決めるというのは、ここにかけるパワーしか感じられない。

 
N12
5台までしか選べないんですね……。

 
N18
1企業でここまでHoloLensを大量導入したのは初めてかと。

 
N19
高校生で最先端に触れられるというのが羨ましい!

 
 

2.複数人で同じ体験を共有できるのがすごーい!

このHoloLens自体がそもそもスゴい製品だ。かぶると半透明のバイザー部分にCGが重ねて表示されて、体験者が回り込むと見える角度も変わる……というと、「それってスマホのARアプリと同じじゃん」と思われがちだが、

・PCなどにつながずに単体で動作する
・QRコードなどのマーカーの準備不要
・外部センサーの用意なしで内蔵センサーで周囲をスキャン
・環境マップをリアルタイムで構築してCGの位置を固定してくれる

という芸当をさらっとやっている。CGの位置が決まっているので、離れれば小さく見えるし、近づけば細部の観察が可能だ。周囲を少し歩き回って環境をきちんと把握させれば、目の前にあるリアルのもので背景のCGが隠れる(オクルージョン)表現も実現できる。VR機器に比べてまだ視野角が狭いので、近づきすぎると全体が見えなくなる欠点があるものの、現時点で一連の表示をこれ1台でやってのけているのが驚きでしかない。

さらにネットワーク経由で同期すれば、同じCGを複数人で別々の角度から見られる。N高の入学式でもニコファーレの中空に分子構造や地球、心臓、グラフといったCGを出現させ、70台強のHoloLensで同時に別々の角度から見るというデモを実施していた。HoloLensがまだ高価ということもあって、これは世界でも類を見ない大規模の体験共有になる。

 
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リアル世界の壇上にはなにもないが、HoloLensの中継である右のモニターを見ると、分子構造が空中に出現していることがわかる。

 
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さらに心臓も。

 
 

3.遠隔地の人物再現がすごーい!

このHoloLensのスゴさに、ドワンゴのMRシステム「DAHLES」が重なる。沖縄での式辞をCGで再現する際、普通にカメラで撮影した人物を切り抜いてバイザー内に表示しただけでは、回り込んで見たときに例えば側面や背面が表示されなくなってしまう。これではせっかく別々の角度から同じものを見られるHoloLensの魅力が半減だ。

 
というわけで今回は主にモーションコントローラーの「Kinect」を利用し、対象の映像だけでなく深度までリアルタイムでスキャンして立体として再現した。

 
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360度カメラで撮影した沖縄本校の様子を、ニコファーレの360度スクリーンに投影。これが背景となる。

 
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リアルの壇上には誰もいないが、右のモニターを見ると人物が重なって表示されているのがわかる。

 
筆者も体験してみたが、動きのデータを既存の3Dアバターに割り当てるのではなく、スキャン映像からリアルタイムでCGまで生成しているのが興味深かった。ドットの粒は粗いものの、それが逆にSF映画で別の星と通信している人が目の前に現れているようで、非常に不思議な感覚だった。

 
 

4.授業に活用しようという構想がすごーい!

そして、このHoloLensを入学式でのデモで終わらせずに、授業で活用しようという構想がスゴい。入学式では、生徒がHoloLensを装着し、遠隔地にいる先生から指導を受ける様子をPVで紹介していた。

 
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HoloLensをかぶって学習している生徒たち。

 
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前述したように分子構造などをさまざまな角度から眺められるのはもちろん……。

 
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例えば、沖縄に先生が、東京に生徒がいても指導が可能だ。

 
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これは録画された先生の授業を単に見るのではなく、リアルタイムで先生側からのフィードバックも受けられる。

 
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生徒側からは、先ほど触れたようにドット粒の先生が教室を歩き回っているのが見えている。

 
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ノートの上にはカメラがあって……。

 
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先生側には生徒の数だけタブレットが置かれており、リアルタイムで書いている様子が確認可能だ。

 
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なので間違っているところがあれば、生徒に話しかけて指導できるというわけだ。

 
N高等学校では、東京の代々木と大阪の心斎橋にそれぞれキャンパスを持っており、HoloLensはここに置かれて遠隔指導を受けられるようだ。しかも、Kickstarterのビデオでありがちな「これからこんなものをつくりたいです」という意思表明ではなく、実際にプロダクトとして落とし込んでいるところがスゴい。

 
 

5.ウルグアイ大統領のバーチャル祝辞がすごーい!

第40代ウルグアイ前大統領で、「世界で最も貧しい大統領」という異名を持つホセ・ムヒカ氏が祝辞を述べていたことにも驚いた。そもそもホセ氏にどうやってコンタクトを取ったのか。わざわざ地球の裏側に行って映像を撮ってきて、バーチャル来賓として出演させるというスタッフの気合いも脱帽だ。祝辞自体も非常に心に響く内容だったので、別記事としてまとめた

 
N20
「この世はビジネスや経済ばかりではありません。愛情を育むためのゆとりを持つべきです」といった、社会人が聞いても具合に心に響く内容だった。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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