GOROman氏が語る「VRは生牡蠣とカレー」 角川アスキー総研「VR/ARビジネスと開発技法の最前線 2017」レポート

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15日、角川アスキー総合研究所主催の集中講義「VR/ARビジネスと開発技法の最前線2017 〜米国・韓国・深センのVR/AR事情からOculus Rift・HoloLens 開発技法まで 〜」が開催された(ニュース記事)。

 

開場に先立ち挨拶をする角川アスキー総合研究所の遠藤諭氏。

 
講師は、エクシヴィ代表取締役社長の近藤 “GOROman” 義仁(こんどうよしひと、ごろまん)氏。対象は、VRを活用もしくは活用したいと考えている経営者や部門責任者、エンジニアの方々である。1998年からゲームプログラマとして働き、2012年にOculusのクラウドファウンディングに出資。2014年から16年にかけてOculus VR(Facebook Japan)勤務。その後退社し、2010年から別途立ち上げていたエクシヴィにてVR関連事業を推進する。

 

自己紹介では、近藤氏がVRを意識するきっかけとなった、任天堂の「ファミリーコンピュータ スリーディーシステム」も披露。テレビ画面から画像が飛び出してくる感覚がよかったのだとか。

 
講義内容はOculus VR社に在籍し、数々のVRコンテンツや事業に関わってきた近藤氏ならではの経験に基づき、VR/ARの基礎知識から、世界のAR/VRビジネス最前線、コンテンツ開発、さらにはVR/ARの未来まで多岐にわたった。下記のアジェンダが、5時間(!)という長丁場に渡って展開された。

 
●講義内容
・世界のVR/ARビジネス最前線
・VR/AR基礎知識
・実践VR/ARコンテンツ開発
・開発の落とし穴
・VR/ARの未来

 
近藤氏はまず、世界のVR/ARビジネス最前線についてレポート。今年3月から4月にかけて、米国、韓国、中国へと計3カ国において4つのイベントに参加したという。

 

3月から4月にかけて、近藤氏はVR関連イベントや企業訪問を行った。

 
ここでは、それぞれのイベントレポートをはじめ、各国におけるVR事情についても興味深いトピックが語られた。簡単に言えば、米国ではゲーム・ツール・ハードウェアの開発が、中国はハードウェアやプラットホーム開発、韓国は中国アーケード狙いのコンテンツ開発が目立ったという。

 
韓国の、中国アーケード狙いのコンテンツ開発というのは、VR EXPOにて、大型筐体でのデモンストレーションが多数展示されていたことを受けての見解。現在中国に3000〜5000存在するといわれるアーケードは、現在来場者が一巡。これはコンテンツの質が低いことに大きな原因がある。そこで韓国企業は高品質なコンテンツで、この市場に参入しようとしている……という話である。

 
そのほか、本サイトでもお伝えしたGDCにおけるMicrosoftのMR戦略や、GoogleのDayDreamなど、主要各社の最新トピックも語られた。

 

製品関連の話題として、深センのInsta360社をはじめとした企業訪問の話は印象的。写真は同社が開発中の360度カメラ「Insta 360 Pro」。CES2017にて発表された8K動画を撮影可能なもので、リアルタイムステッチングも4Kまで可能。「映像はすごくキレイでした」(近藤氏)。

 
続いて話はVR/ARの基礎知識について。VRについてほぼ何も知らないという方も参加していたこともあり、VRの歴史から現在の普及状況や、Oculus Rift、HTC VIVEをはじめとしたVRシステムの仕組みなどが、新製品のVive Trackerなども交えて紹介された。Microsoft HoloLensのデモンストレーションも行なわれ、混乱しやすいMRとARの違いなどが明確に語られたのは、初心者にとっては大きな収穫だったはずだ。

 

Microsoft HoloLensのデモ。センサーで周囲の空間を把握している様子。これをもとに、壁面にウインドウを貼り付けたり、机を認識してその上にオブジェクトを置けるようになる。ここが、外観にデジタルコンテンツをオーバーレイするARとの明確な相違点だ。

 
講義も中盤を過ぎ、いよいよコンテンツ開発の話。ここでは、実写コンテンツ製作のキモから、Unityを例に取り、ダウンロード/インストールからオブジェクトの作成までを、近藤氏自らが実演。いかに簡単に製作を始められるかが語られた。

 
また、デモンストレーションではVRイラスト作成ツール「Tilt Brush」やVRにおけるモデリングツールも披露。UnityやUnreal Engine 4といったゲームエンジンも、開発者自らがVR空間でオブジェクトの配置可能な機能が発表されている。こうしたデモや機能紹介により、VRはゲームを「楽しむ」だけではなく、その製作現場を筆頭に、「作る」ツールとしての存在意義が高められている現状も伝えられた。

 

ゲストとして登壇したHTC NIPPONのディレクター 西川美優氏は、HTC VIVE Trackerを紹介。これまで、コントローラーを脚にくくりつけて利用している人もいたというが、Trackerの登場によってその必要は無くなった。今後は、HTC VIVEによる本格的なモーションキャプチャも可能になるかもしれない。

 

Tilt Brushをデモする西川氏。VRには当初懐疑的だったという西川氏だが、このTilt Brushを見て「これは来る」と思ったとのこと。

 
そして講義も佳境。VR/ARコンテンツ開発の落とし穴とその対策について。近藤氏が力を込めて言うのは「生牡蠣とカレー」の話。かいつまんで言えば、VRは生牡蠣と似ており、最初に腐った生牡蠣を食べてヒドい体験をすると「もうアレはいい」となって、その後一生食べたくなくなる。つまりは、未経験者に対し、いかに質のよいコンテンツを最初に提供するかで、その後のVRへの態度が変わってくるという例え話だ。決裁権者が「悪い生牡蠣」に当たってしまった場合、その企業はまずVR事業で遅れをとるだろう。

 
カレーは、VR酔いに対するレーティングの話で、甘口・中辛・辛口(快適度の順に)のうち、甘口から提供すべきであるというもの。辛さについては、実際の辛さもVRの酔いやすさも個人差がある点は同じで、注意が必要。製作者側が酔いに慣れてしまうと判断基準が曖昧になるため、第三者のテスターの必要性も説いた。

 

カレーの話。Oculusのコンテンツには、快適度のレーティングが付けられているという。こうしたレーティングが広まってほしいと近藤氏は話す。

 
ともあれ、未経験者に対しては、最初はTilt Brushなど、味もよくて甘口=品質がよく酔いにくいコンテンツを勧めるのが得策だと、近藤氏は言う。

 
さらに、VRコンテンツについて、酔いのメカニズムの解説やその回避方法、コンテンツのプレゼンを行うためのノウハウなど、近藤氏の経験に裏打ちされた実践的な内容が熱く語られ、最後の質疑応答コーナーへと講義は移る。

 
終盤コーナーは、当初角川アスキー総合研究所の遠藤氏、HTCの西川美優氏が加わり座談会形式になると思われたが、会場の疑問点をすくい上げるべくQ&Aコーナーとなり、熱心な質問が飛んだ。また、登壇者の3人が持論を展開し、質問を呼び水に今後のVR技術の展望について内容豊かに語られたことは、この講座の、まさにクライマックスと呼べるものとなっていた。

 

質疑応答のために登壇する三氏。

 
UI設計に関する話題では、バーチャルキーボードに代わる入力として、ボイスコマンドに寄っていくのではないか? という意見が飛び出す。Microsoft HoloLensの音声アシスト機能「Cortana」(コルタナ)を例に出し、データベースがラーニングされれば……ニューラルが入った瞬間に精度が上がるという可能性もあり、今後の展開が変わってくるのでは? といった予想もなされた。「最近の技術がいろいろリンクしている」とは、近藤氏の弁である。

 
 
VR体験の楽しさやビジネス的な広がりはもちろんのこと、こうした、技術的な面白みもまた、VR/ARそしてMRに、多くの人々が引きつけられる要因となっている――。今回の講座は、基礎知識や最新技術情報の獲得だけでなく、今後のVR技術の展開が、ますます楽しみになる内容だったといえるだろう。

 

机上に並べられた、近藤氏所蔵の各種VRデバイス。休憩時間には、受講者が写真を撮りに入れ替わり立ち替わり現れた。

 
 
(TEXT by Dairo Yoshikawa)

 
 
●関連リンク
GOROman氏(Twitter)
VR/ARビジネスと開発技法の最前線2017 〜米国・韓国・深センのVR/AR事情からOculus Rift・HoloLens 開発技法まで 〜
角川アスキー総合研究所

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