「ZenFone AR」試作機レビュー(前編) 部屋を丸ごとスキャンなどTangoを生かす高性能を実感

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先日速報をお届けした、Tango・DayDream両対応のASUS製スマホ「ZenFone AR」。ASUSよりエンジニアサンプルをお借りできたので、スマートフォンやVRに詳しいエンジニアのようてん氏(@youten_redo)にお願いして、PANORA読者の関心が高いであろうTango機能を中心にレビューしていただいた。

なお、この前編は一般ユーザーが対象で、後編ではTangoのUnity向けSDKを動作させた開発者向けの情報をお届けする。そして今回のサンプルは、実際に日本で発売する製品と仕様が異なる可能性があることに留意してほしい。

 
 

Tango・Daydream両対応にも関わらずコンパクト

最初に総括を挙げておこう。ZenFone ARは、Tango・Daydreamという、Androidとしての特別な機能を2つともコンパクトなボディーに詰め込んだフラッグシップ機だ。エンジニアリングサンプルの現時点でも各機能は問題なく動作し、AR・VR両方に興味のあるユーザー、特にそれらの機能を用いたアプリ・サービスを提供したい開発者にとっては、コストパフォーマンスに優れた良機であると言える。

 

パッケージは3段の多層構造になっており、一番上の段にはプラスチック製のカバーが格納されている。二段目にあたるフタは、組み立てるとCardboardゴーグルになり、導電シートによるタッチにも対応。三段目に上から本体、マニュアルとSIMピン、イヤホン・充電器といった付属品が格納されている。

本機はデュアルSIMに対応しており、SIMトレイはnanoSIMが2枚とmicroSDが格納できる構造だ。SIMトレイが長く、付属のSIMピンも差し込む部分が少し長めになっているため、他機種のSIMピンは流用できない可能性があることに注意だ。

 

サイズ比較用に左から、「Nexus 5X」、「Nexus 6P」、「Pixel XL」、そして「ZenFone AR」を並べてみた。ディスプレーは5.7インチの有機EL(Super AMOLED)、解像度は2560×1440。おおむねNexus 6PやPixel XLと同等の大きさで、公称170gの重量も特に重いといったことはない。特別なカメラの搭載が必要なTango・Daydream両対応というフラッグシップな機能を、コンパクトな本体でまとめあげた印象だ。

 

フレームは落ち着いた黒系の金属、背面は手触りの良い黒のレザーでASUSとTangoのロゴが刻印されている。

 

セットアップ後すぐにTangoデモを体験

それでは電源を入れてセットアップへ。現時点でも、セットアップメニューはきちんと日本語に対応。「ATOK for ASUS」がプリインストールされており、文字入力の標準状態では、候補が花びらのように開く「フラワータッチ」になっている。さらにAndroid標準のセットアップウィザードを進めていくと、最後にTangoデモに案内される。

 

「開始」ボタンを押してデモを起動すると、赤外線ToFセンサーによる部屋の認識が始まり、黒い背景に認識した空間座標が白い点で表示される。端末を部屋の様々な方向に向けて部屋の地面や壁をひととおり認識させると、画面が一転してファンタジー世界に変わり、ZenFone ARという窓を通じて草原の中で動物たちが駆け回るのを眺められる。

最後にRGBカメラの映像から現実世界への扉が開かれて、カメラからの映像に地面から植物が合成されて生えて、ガラス状の半透明なシルエット表現となった動物たちが登場してエンドとなる。

なお、このデモはTangoアプリの最下段にある「Tangoをお試しください」からいつでも起動できる。Tangoの機能をさりげなく使った短い時間で終わるデモのため、ひとまず起動してどこがすごいのかよく分からなかった際にも、また後で動作させてみることをオススメする。

 

エンジニアリングサンプル機のため各数値は参考値だが、「AnTuTu Benchmark v6.2.7」でスコアは約16万。お借りできたのはRAM 6GB/ストレージ64GB機であることが読み取れる。

CPUの「Snapdragon 821」は最大クロック2.35GHz。Daydream対応機として同Snapdragon 821(最大クロック2.15GHz)を搭載したPixel XLより一回り高いスコアが出ており、最新のSnapdragon 835ではないものの、同Snapdragon 821搭載でベースとなったと思われるZenFone 3 Deluxeの5.7インチモデルから順当に伸びを感じられ、Tango・Daydream対応というASUSの攻めの厚さが感じられる。

 

エンタメや実用など増えてきているTangoアプリ

 

Tangoはセットアップからすぐにデモを楽しめるように、特別な準備は必要としない。ホーム画面にプリインストールされているTangoアイコンを押して起動すると、これがランチャーアプリになっていた。このランチャーでオススメアプリを10個程度紹介しているほか、一番下までスクロールしていくと「Tangoをおためしください」ボタンから前述のデモアプリを起動したり、「他のアプリを見る」ボタンからGoogle Play経由でTango対応アプリを検索できる。

オススメアプリの中には、先行Tango機であるLenovo製「PHAB2 Pro」ユーザーからの評価が高い「WOORLD」(無料)や「Domino World」(320円)も含まれている。ただし、中には残念ながら日本向けに対応しておらずGoogle Playに遷移後に「このアイテムはお住まいの国で利用いただけません」と表示されてしまったり、何度か試してもローディング画面から進まかったり、家具配置エミュレーションアプリとして起動はしたものの、英語のUIで外国製の家電しかリストに存在せず、日本のユーザーが使うにはあまり嬉しくないアプリも含まれていた。このあたりは発売に向けて改善されることが望ましい。

 

以上の4アプリは左上から右に向かって順番に、「HOLO (beta)」「WOORLD」「Dinosaurs Among Us」「Tango Matrix Scanner」である。

また、ZenFone AR自体のレビューではなくTangoアプリの紹介で盛り上がってしまって恐縮だが、筆者がオススメのアプリをさらに2つ紹介しておこう。

1つはTangoランチャーアプリのオススメにも含まれる「Hot Wheels Track Builder Tango」(無料、アプリ内課金あり)だ。

こちらはバーチャル空間上のテーブル上にレールと車が用意され、正しいレールのパーツを配置し、コースを組み立てることで直進しかできない車をゴールまで到達させるパズルゲームである。

テーブルの回りを自由に移動できるある程度広い空間が必要になるが、正確に位置がトラッキングされており、ZenFone ARを覗き窓としてテーブルの向こう側に回ってレールを配置し、離れてコース全景を確認したり、近づいて迫力ある車の動きを追うことができた。物理演算と「近づく」という距離をトリガーにしたUIの作りこみは丁寧で、どちらかと言えばキャラのかわいさやグラフィックをアピールするARアプリが多い中、ARというよりむしろVRアプリとしてTangoを十分に活かしきった良アプリであると感じた。

パズルゲームとしてトライ&エラーを繰り返すことになるであろう後半までは試せていないが、ぜひTango機ユーザーはチュートリアルまで試していただきたい。チュートリアルを人に体験させるために毎回リセットすることになってしまうかもしれないが、悪しからず。

 

もう1つは「Matterport Scenes」(無料)だ。建物全体を3DスキャンするPRO向け機材と、クラウドサービスを運用しているMatterportのTango向けアプリだが、狭い範囲や部屋1つまるごとではなく、複数の部屋を歩き回って3Dモデル化してしまえる。低解像度とは言え少々お見苦しい自宅丸晒しになってしまっているが、非常に出来がよく驚いたのでスキャン成果をここにお出しするのをご容赦いただきたい。

 

起動すると各操作についてチュートリアルが表示される。実際に自宅をスキャンしてみた。あまり早く動かすとスキャンが停止してしまうため、ほどほどにゆっくりめに動かすのが良い。また、赤外線ToFとRGBカメラを組み合わせて特徴点を抽出している仕組みのため、鏡や窓などの光モノ、一色でまったいらなテーブルやディスプレーなどは苦手な模様だ。

ひとまず一部屋分スキャンが終わった状態が3枚目の画像の通りとなる。「Done」を選択するとスキャンを終了し、モデルの最適化処理を行う。高度な処理を行っていると思われるため、長い時間のウェイトを覚悟したが自宅全体3部屋をスキャンした後でも20秒程度で処理完了となった。十分に早いと感じる。

 

この画像は1、2枚目が1部屋だけスキャンした結果で、3枚目のみ自宅全体を歩き回ってスキャンした結果の見下ろし表示となる。画面下部にアイコンが3つ並んでいるが、それぞれ3Dモード・人視点モード・真上から見下ろしモードが切り替わり、それぞれドラッグで自由に角度を変更したり、ピンチイン・ピンチアウトで拡大/縮小が可能だ。

なお、最後の3部屋をスキャンした際には、特に部屋を巡る順番や一筆書きになるように……といった配慮は一切せずにぐるぐると3部屋を回っており、この手のスキャンソフトウェアにありがちな部屋と部屋がくっついてしまったり、大きく角度がずれてしまうようなことはなく、TangoのArea Learningを用いて高度に情報を合成していると思われる。

自宅をスキャンした結果が何かに使えるわけではないと思うが、不動産・飲食店など将来の応用を期待しつつ、スマホ1つであっさりと複数の部屋が正しく3Dスキャンできるという体験は非常に楽しいため、こちらもぜひ一度試してみることをオススメする。なお、ToFセンサで距離を測れる範囲はさほど広くないため、屋外はもちろんスキャン困難であり、大きな施設は必死に歩き回る必要があるかもしれない。広めのオフィスなどで数分歩き回るようなスキャンでも問題なく処理できるのかは試してみたいと感じた。

 

 
 
*後編にはこちら

 
 
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