「ええじゃないか」の地が生む共感のエンタメ マチ★アソビ・徳島VR映像祭の仕掛け人に聞く

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5〜7日、徳島県徳島市にて開催されるポップカルチャーイベント「マチ★アソビ vol.18」にて、VRコンテンツをテーマにした「徳島VR映像祭」が開催される。

ニュース記事でも触れたように、講演と体験会をいくつか用意。講演では「GOROman」こと近藤義仁氏や「桜花一門」こと高橋建滋氏といった日本のVR業界を初期から牽引して来たメンバーによるティーチイン、さらにアニメ監督の水島精二氏を交えたトークセッションといった盛りだくさんな内容だ。

主催であるMyDearestは、バーチャル空間で書籍を体験できる「FullDive Novel」(フルダイブノベル)を開発するスタートアップだ。一体、どんな背景があってこのイベントは開催に至ったのか。代表である岸上健人氏をインタビューし、彼の人となりも含めて話を聞いた。

 

マチ★アソビはアニメ版のSXSW

──まず徳島VR映像祭の企画が始まった経緯を教えてください。

 
岸上 僕はもともと徳島出身なのですが、たまたま同郷の人に「VRの有名人を集めて、著名な作品を体験できるイベントをやりたい」と相談したところ、事業プランコンテストの「徳島創生アワード2016」への応募を勧められたのです。

実際に申し込んだところ昨年11月に準グランプリを取ってしまって、「じゃあ開催したらいいのでは?」「やります」という流れで実現しました。そこから国内外の企業や出演者に声をかけさせていただいて、今秋の本開催に向けたプレイベントとして、スモールスタートで実施します。

 
──例えば展示ではどこが見所になりますか?

 
岸上 マチ★アソビ自体は徳島駅周辺でやっていますが、VR映像祭はまず駅前の商店街の一角を3日間貸し切って、いろいろなVRコンテンツを体験できるようにします。例えば、集英社さんが「ジャンプミュージアム」、講談社さんが「Hop Step Sing!」を展示するという組み合わせが珍しいかもしれません。

さらに5日は、アニメ制作会社のユーフォーテーブルさんがやっている「ufotable CINEMA」という映画館にも出張します。弊社が開発している「FullDive Novel」もここでデモを初めて公に出します。

 
──FullDive Novelとはどういったものですか?

 
岸上 簡単にいうとライトノベルがコンセプトで、バーチャル空間で文字で物語を読んだ上で、イラスト部分をVRアニメにして世界観ごと体験できるというものです。

今のVRコンテンツって、まるでジェットコースターのように一度に大量の情報を与えていますが、それだとユーザーが疲れて短時間しか体験できない。あえて文字にして情報を絞ることで、長時間VRゴーグルを装着していても疲れないし、VR酔いしにくい。

 
──VR空間で文字というと、結構読みにくそうな気もしますが……。

 
岸上 今はGear VRで体験してもらってますが、モバイルVRって文字が潰れがちなんです。その見せ方を試行錯誤して、かなり綺麗に表示できるようになりました。だからVR映像祭でも、ぜひ体験していただきたいです。

 
──なるほど。しかし、そもそもマチ★アソビとはどういったイベントなのでしょうか?

 
岸上 毎年ゴールデンウィークと10月の年2回やってるイベントで、参加者は10万人ほどです。

 
──10万人!

 
岸上 今ではさまざまなところで開催されるようになった、地方アニメイベントのパイオニアで、アニメ関係者の同窓会みたいな豪華な雰囲気なんです。田舎のイベントなこともあって距離感が近く、それこそ「君の名は。」の新海誠監督がそのへんを歩いていたり、有名なアニメ関係者と飲み屋で会ったりしたり。

 
──それってクリエイティブの祭典の「サウス・バイ・サウスウェスト」(SXSW)みたいですね。

 
岸上 SXSWのアニメ版という感じはあって、出演者とユーザーとの距離がとにかく近い。マチ★アソビを企画制作するufotableの近藤社長が言っていたのですが、ブームにせずに、お客さんと出展者という感覚をとにかくなくしたいと。近藤さんの友達を呼んだ感じにしたいとのことです。

弊社の顧問をやっていただいている三木一馬さん(「とある魔術の禁書目録」や「ソードアート・オンライン」を手がけるライトノベル編集者)も徳島出身で、マチ★アソビで知り合って、「弟子入りさせてください!」と無理やり申し込んだことがきっかけです。

 
──しかし話を聞いていると、アニメやラノベなどでは、徳島出身の方が多い印象です。

 
岸上 テクノロジーやエンタメの人が多い土地柄なんです。ジャストシステムも徳島ですし、不思議とオタクの多い土地でもあります。

 
──それは風土的な背景がなにかあるという?

 
岸上 徳島で有名な「阿波踊り」って、ノリでいうとリオのカーニバルに近いものがあって、徳島はその4日間のために向けて1年が動いている節があります。この阿波踊りって本当にエンターテインメントで、「楽しければいいじゃん」という感じはありますね。逆に感性が繊細な、文豪的な人はあまりいない印象です。

 
──楽しさの共感というのは、エンタメの世界ですごく重要なところですね。まさに「ええじゃないか」という。

 
岸上 そうですね。それが徳島の民族性で、マチ★アソビも「踊る阿呆に、見る阿呆。同じ阿呆なら踊らにゃ損々」という。実はマチ★アソビは僕が高3のときにスタートして、最初から行っている世代なんです。それが25歳になってようやく出展側に回れたので、オタク冥利につきるという。

 
 

心に影響を与える少女漫画が好き

 
──そもそも岸上さんのオタク遍歴というか属性は何でしょうか?

 
岸上 僕が一番変わっていると思うのは、人生で自分以上に少女漫画を読んでいる人に会ったことがないんです。

 
──ライトノベルかと思いきや、まさかの(笑)。しかし、なぜ少女漫画なんですか?

 
岸上 姉の影響で、小学生の頃の「カードキャプターさくら」あたりが最初になります。そこからオタクワールドをいろいろ巡って、ゲームもラノベも楽しみました。中学時代は「ヒカルの碁」にハマったせいで、囲碁部に入ったり。

 
──小中学校ではありそうですよね。「スラムダンク」に影響されてバスケ部に入るとか。

 
岸上 野球、囲碁部、そしてオタクでした。

 
──VRを知ったのは?

 
岸上 ソードアート・オンラインきっかけでOculus Riftが出たのを知って、DK2(第2世代の開発キット)を体験してみてこれはスゴいと。そのあと2015年にVR展示イベントの「OcuFes」に行って、女の子に歯磨きをしてあげられるコンテンツなどを体験して「これはヤバい」と直感したのが、VR業界に飛び込んだきっかけです。

 
──それまではUnityやUnreal Engineなどの制作ツールは使っていた感じですか?

 
岸上 いや、そこからUnityの勉強を少しずつ始めて、開発者を仲間として集めたりしました。

 
──なぜその「ヤバい」から「自分もつくろう!」に変わったのでしょうか? 過去に少女漫画をハマっていたときは、描こうというのに至らなかったのに。

 
岸上 なぜですかね……。僕の会社って、エンタメやゲーム、小説を通してすべての人を主人公にするというのがミッションなんです。昔から自分がその世界に入りたいという欲求が強かった。それは漫画だとかなえられなかったけど、VRなら自分が主人公になれるじゃんと。

話は違うかもしれませんが、僕小学校時代に少女漫画とともにハマったのがギャグ漫画の「ボボボーボ・ボーボボ」だったんです。そのわけわからなさみたいなのが好きで、VRもそのわからなさにハマった。

少年漫画って物理を描くのですが、少女漫画は心を描くんです。心をとにかくど直球に、繊細に描きまくっているところに惹かれているのですが、VRも心理的な影響が強いところが気になります。

 
──人の心に作用しやすい。

 
岸上 そうなんです。だからFullDive Novelというのは、VRでも今はインタラクティブ性ではなく、心に影響を与えることを重視してます。フィジカルよりは、エモーショナルにダイブする。自分がとにかく主人公と意識できる装置として活用したい。

 
──ライトノベルでありがちなハーレム状態とかは、VRで主人公と感じられるからこそ、普通に本を読むより恩恵を受けられそうですね。

 
岸上 そうですね。そういうことをやっていきたい。

 
──なるほど、ハーレムがつくりたいと。

 
岸上 いや、決してそういうわけでは……。まぁそう書いてもいいですが(笑)。実際、現実で恋愛をしていないので、本で消化している部分はあるかもしれません。また、男はいろいろな女性と付き合えると嬉しいという願望が目立ちますが、少女漫画に親しんでいるとたった一人の「運命の人」を探す思考になってしまっている自分がいます。どちらにせよ、僕が現実の恋愛からは遠ざかっているのですが(笑)。

 
──でも何かを愛する気持ちは、今後リアルでもバーチャルでも、どっちでもよくなっていくかもしれませんね。

 
岸上 まぁそんな僕の恋愛はともかく、マチ★アソビと徳島VR映像祭は、非常に面白い試みになると自負しています。ぜひVRに興味のある方は徳島にお集まりいただいて、「ええじゃないか」の楽しさをご体験くださいね。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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