「映画ツクール」にパルマー氏も「SUGOI!」と絶賛 XVI・近藤氏&室橋氏が語るVRの未来【Unite】

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5月8、9日に東京国際フォーラムで開催された、Unity開発者向けイベントの「Unite 2017 Tokyo」。9日、エクシヴィの代表取締役社長の近藤義仁氏(@Goroman)と、ビジュアルディレクターの室橋雅人氏(@Muro_CG)が「VR MAGIC! ~キャラクターに命を吹き込んだこの4年間の記録~」というタイトルで登壇して、VR空間においてキャラクターを生きているように見せるテクニックや、室橋氏が製作したVR空間で映画を撮影できる「映画ツクール」について語られた。

すでにスライドが公開されているが、ここではセッションの要点をまとめていこう。

 

 
 

不気味の谷を超えるにはプレゼンスが重要

前半は近藤氏を中心に、VRのキャラクタープレゼンスを高める方法や概念について説明。近藤氏はまず、「不気味の谷」現象を説明していた。

 

不気味の谷とは、ロボット工学の分野で提唱されている経験則である。上の画像のように、人の形をしたものの見た目が人間に近づいて一定以上リアリティーを持つと、不気味さや嫌悪感を感じてしまうというもの。

近藤氏が提唱する解決策は「いきいきさせる」こと。キャラクターの存在感が壊れないように注意しつつ、アイコンタクト、まばたき、空間音響、呼吸による胸の膨らみなどの再現の重要性を説明。Unityを使った技術的な解決方法も書かれているので、詳細はスライドの24〜56ページを参照いただきたい。

ちなみに、呼吸による膨らみは、フルート(@xflutexx)氏が公開しているスクリプトを使ったとのこと。気になる人はチェックしてみよう。

 

 
 

Unityの標準機能でできる演出テクニックの紹介

続いて室橋氏による演出テクニックを説明。Unityユーザーなら一度は経験したことがあると思うが、アセットストアでCGモデルを入手して表示させると、見た目が思った結果が得られないことがある。本講演ではこれをUnityで調整する方法を説明した。まずは使用した教室モデルをUnityにインポートした直後と、室橋氏による調整後の2枚を見てみよう。

 

驚くほどの変化だが、これはUnityの標準機能だけで調整しているとのこと。以下、この結果を得るための手法だ。

 

 
1.まずは最終形のイメージを固めよう

最初にどんな見た目にしたいかを考え、それに似た画像をインターネットで探して自分のイメージを固める。ここの結果が完成度に影響するので、時間をかけて最終形をじっくりイメージしよう。続けて、その目標を実現するために、この場所はこうしたいと具体的に書き出してみる。

 

これで方針が固まるので、ここからはUnityを使って調整していく。

 
2.ライティングにメリハリをつけよう

最初に作ったイメージを意識しながら、ここには光を当てる、ここは影を作る、というメリハリをつけよう。光源を設置したらAmbient Occulusion(周辺光によってできた影をシミュレートする方法)をかけてBakeすると、光と影がわかりやすくなる。

 

Ambient Occulusionをかけて光と影のメリハリをはっきりさせた例の画像を、テラシュールブログから引用させていただいた。

 
3.Post Processing Stackで最終調整をしよう

Post Processing Stackとは、表現の質を向上させる機能で、これを使うことでリアリティの高い世界を作ることができる。設定項目が多数あるが、室橋氏によると、特に注意するのは、Antialiasing、Bloom、Color Gradingの3つとのこと。

これらで微調整をしつつ、最後は、光源の位置や光の当たり方でおかしくないかを確認する。ここでも、最初に集めた資料を見ながらイメージに合わせたライティングを行う。

 

完成版はこのようになる。

 
 
4.未来のVRの活用は、もっとたくさんの人が使えるようにすること

次に紹介したのは、室橋氏が個人的に開発した「映画ツクール」だ。これはVRゴーグルをつけることで、VRの世界でカメラ撮影が行えるというもの(過去のインタビュー記事)。

 

現実世界からVR世界を見ている人は、VRゴーグルを装着した人の一人称視点(画像左)、または全体俯瞰する三人称視点を見ることができる(画像右)。

 

三人称視点では、VRゴーグルをつけている人を実写CGモデルで表示している。このモデルは、VRゴーグルをつけている人のHMD、およびコントローラの動きの変化を元にして腰、腕、足の動きを推測するというInverse Kinematics(IK)によって調整して動かしている。

 

 
当日の講演では、映画ツクールのデモも実演。来日中のOculus VR共同創業者のPalmer Luckey氏が壇上で体験するというサプライズもあった。

 
今回のデモでは、撮影者がVRゴーグルをつけることでカメラマンになる例だが、別の演者がVR世界の中のキャラクターになれば、演者の動きをそのままキャラクタモーションにして、その場で収録ができるわけだ。

CG映像を作る場合、キャラクターのモーションとカメラワークを二次元のモニターの中で調整する必要があり、慣れた人でなければ難しいというのが現状だ。今回紹介した動画ツクールを利用すれば、CGの知識がない人でもCG映画を作ることができるし、演者にもなれるので、CG映画作成の敷居を下げることができるだろう。カメラワークの教育など、他の用途へ使える可能性がある。

最後に、室橋氏は、2020年頃になれば、VRの中で撮影から編集まで手がけたり、演者は大阪、カメラは東京、ディレクターは徳島、のように、物理的な空間の制約を超えたクリエイター活動ができる可能性を示唆した。

ちなみに、映画ツクールは今の所公開予定が立っていないそうだ。しかし、室橋氏からは、なるべく公開してみなさんのフィードバックがほしいというコメントがあったので、今後を楽しみに待ちたいところだ。

 
*Unite 2017 Tokyoまとめページはこちら。

(TEXT by Riftup)

 
 
●関連リンク
講演スライド:【Unite 2017 Tokyo】VR MAGIC! ~キャラクターに命を吹き込んだこの4年間の記録~
MEBIUSTOSのブログ:スクリプトで呼吸させる – 第2回 | Unity3D
テラシュールブログ:【Unity】Ambient Occlusionを設定
Unity Asset Store:Japanese Classroom Set

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