今回のテーマは癒し!! 玉置Pが語る「サマーレッスン:アリソン・スノウ」への道(中編)

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前編に引き続き、サマーレッスンのプロデューサーであるバンダイナムコエンターテインメント CS事業部 玉置絢氏のインタビューをお届けする。

 
 

「Excuse me」と言いながらE3で体験案内していた

 
──第二弾の展開として来たアリソンちゃんは、みんな待っていたことだと思います。

 
玉置 もちろん以前から着手していたのですが、公にできない間も色々な方から「アリソンはまだか」というお声をいただいていました。ひかりちゃんのDLCを出すときにも「アリソンは?」「金髪の子は?」という投稿を見かけました。

 
──気持ちはわかります(笑)

 
玉置 情報解禁の1週間ぐらい前にも原田さん(「鉄拳」シリーズのプロデューサーである原田勝弘氏)のTwitterに「アリソンはいつ出るのだ」という言及が飛んで来たりして、「もう少し待ってくれれば……」と言えないのが心苦しかったです。

私たちとしても当然、アリソンというキャラクターにも愛着があるし、ひかりちゃんと同様の誕生ドラマがE3からもあったので、出さないという選択肢はあまり考えていなかったんです。しかし、ひかりちゃんの反省を活かすのをきちんとやるべきところもあったので、ちょっと時間をもらいつつ、ようやく発表できたという流れです。

 
──ひかりちゃんの基本パックやDLCと出して学んだことを取り入れるために時間が必要だったんですね。

 
玉置 そうですね。ひかりちゃんに対して注入した愛着やこだわりと同じだけ、アリソンちゃんにも愛やアイデアが必要だというのは当然のことで、きちんと喜んでもらえるような体験を十分用意する必要があるということで時間をいただきました。

 

「サマーレッスン:宮本ひかり」のDLCとしては、「セカンドフィール(追加体験パック)」、「エクストラシーン 喫茶店編(衣装&シチュエーション)」、「デイアウト(追加体験パック)」、「エクストラシーン 花火大会編(衣装&シチュエーション)」の4本が用意された。

 
──アリソンちゃんは初出が2015年のE3なので、ちょうど2年前になりますね。

 
玉置 そうですね。2年ぴったりぐらいで、懐かしいですね……。2年前のE3は色々なことがありました。やっぱり色々なキャラクターをVRに出して試してみたいし、チャンスをもらったということでE3に出展したんです。そこでわかったのは、キャラクターとのコミュニケーションというジャンルは国に関係なく十分にいけるんだなということでした。

 
──世界でも評価されたという。

 
玉置 そうですね。ありがたいことです。当時、日本でもキャラクターやシチュエーションも含めてアリソンちゃんのPVが話題になって、niconicoのマイリストランキングで上位に来ていたというのを記憶しています。日本ではまだ誰も肝心のVRで体験していないというのに、そのキャラ性だけで評価していただいたわけですよね。それはすごく嬉しかったですし、しかも実際の「サマーレッスン」というソフトでは、その子がとVRで本当に出会えるわけですから、これは多くの人に愛してもらえるキャラクターになるなという手応えを感じました。

 

 
──よかったです!

 
玉置 でも、当時のE3は色々大変だったんですよ! そもそもE3に行っていたというのはあまり公にしていなくて、ディレクターとプロデューサーも、兼ねたうえで、当時はプランナーがほとんどいなかったので技術面にも大きく首を突っ込んでいたから、何かしら技術的なトラブルが起こったときに対処できるだろうということでお前もちょっと付いてこいと。それで原田さんたちに随伴して行くことになったんです。それでも最初は「トラブルがあったら呼ぶから、基本的には会場見ていていいよ」という話だったので、比較的気楽に構えていました

そうしたら、現地の説明員の方々から「お前が一番詳しいなら、お前がアテンドした方がいいに決まってるじゃん」「やってもらっていい?」と。私もアメリカの現地のゲームショ-事情や、試遊ブースの作法が分からないので、「確かにそうだな」っちゃって。英語もたどたどしいのに急遽、案内まで引き受けることになったんです。

それだけ聞くと酷い無茶振りを受けただけの人なんですが、一応、こちらなりの魂胆もありました。というのもサマーレッスンがきちんと製品化までたどり着けたひとつの要因に、われわれ開発スタッフが直接お客さんや社内の色々な人に体験してもらえてそのフィードバックを得られたということを、当時から今に至るまで強く意識していたんです。2014年12月にひかりちゃんの体験イベントを行ったときも、人手が足らなかったのでリードスタッフも含めて開発陣が数多く手伝って、お客さんの着脱も担当していました。

そうしたほうがユーザーがどう感じるかという感覚が養われるということもあって、わりとスタッフが開発フロアから出ていって、手伝おうという気風なんですね。なので、E3版のアリソンちゃんが出たタイミングでも、「アメリカではどんな反応をもらえるんだろう」と考えたんです。英語がたどたどしすぎて、本当に「Excuse me」ばっかり言ってましたね。

 

2014年12月のサマーレッスン体験イベントは、まだPS VRが開発コード名の「Project Morpheus」だった時代。サマーレッスンのあまりの前評判に東京ゲームショウ2014でのデモ展示が中止となった後の実施だった。

 
──おおお……。そんな状態でよくぞ。

 
玉置 「Excuse me」と言いながらかぶせて、「Excuse me」と言いながら外す。あと唯一ゲームが好きな方だったら誰でも知ってる、よくスタッフロール画面とかに出てくる英語の「Thank you for Playing」だけ言って体験してもらってました(笑)

 
──(笑)

 
玉置 同じアメリカの方でも、ミリタリー映画に出てくるスキンヘッドの指揮官みたいな雰囲気のマッチョな風貌で超大手企業のオジサマから、背負っているバックパックからノートPCを取り出してハッキングを仕掛けそうな……ってそれも映画に毒された偏見ですが、なんだかそういういかにもスタートアップを立ち上げそうなギーク大学生なお兄さんまで、本当に色々な方に体験していただけました。そうした方々が体験後に一様に喜んで、「すごいものを見た」という感じで握手を求められたり、喜んで話しかけてくれたんです。

それにいろいろな方にかぶせている途中で、キャラクターが近づいてくるときの反応が日本と違うなということに気づきました。

 
──といいますと?

 
玉置 日本の人は無言で見入っている人が多いのですが、海外の方だと「Oh!」と大きなリアクションをしてくれます。そんな反応を間近で見て、アリソン版のデモをつくって素直によかったなと実感しました。同時に日本では、PVを披露した段階でシチュエーションやキャラクター、井上拓さん(*編註:バンダイナムコスタジオ所属のサウンドデザイナー、「サマーレッスン」シリーズのサウンドディレクター)がつくった音楽の評判もとてもよくて、手応えを感じていました。

 
 

家庭用だから悩んだゲームとVRのバランス

 
──このE3 2015のあとに「東京ゲームショウ 2015」にもアリソン版をプレイアブル出展しましたが、反応はいかがでしたか?

 
玉置 ようやくPVで話題になった製品の中身が見られると期待していただいたようで、整理券はすぐに配布終了してしまいました。当日はブースの周りに立ち見の人だかりができたほどです。ただ、それでも最初の製品としてリリースするなら、ひかりちゃんでという考えがありました。

 
──それはなぜでしょうか?

 
玉置 VRのスゴさやその全容を体験するのであれば、ひかりちゃんの方が向いていると思ったからです。ひかりちゃんは、VRっていう言葉がトレンドですらない時期、ましてや「VRでキャラクター」なんて誰にもピンときていない時期にやってきたキャラなので、ニュートラルにクセなくVRのすごさを説明できるキャラクター、万人に対するプレゼン能力に長けた人なんです。

一方でアリソンちゃんは、記号性がより偏って強くて、つまるところ作品性が高い。それはサマーレッスンというタイトルにおいて、VRというもの自体を説明し終わったあとの、モチーフやテーマ、わびさびの度合いも込みで世間に広めていく過程で生まれてきた作品だからです。なので、製品化という仕切り直しでより多くの人にアプローチするフェーズに入ったら、また先にひかりちゃんが登場しないと、プレイヤーの理解を置いてきぼりにしてしまう。

 
──同じ「キャラを間近にできる」体験に見えても、微妙に違うんですね。

 
玉置 もちろん、製品版の「ひかり」編はE3デモより後なので、時系列的には製品版の「ひかり」は最新の状態にあります。操作面でも、首を振ってYES/NOのリアクションをするのはひかりちゃん、目で注目してメニューなどを選択するのはアリソンちゃんで実装したという経緯の総括として、両方の内容を統合して初めて製品化したのが「サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム」なんです。「サマーレッスン:アリソン・スノウ 七日間の庭」は、そのセブンデイズルームのシステムを継承しつつ、「癒やし」をテーマにしました。ただ、ゲームの型といいますか、枠組み自体は同じにしています。

 
──それはなぜですか?

 
玉置 あまりにもフリースタイルにつくってしまうと、ユーザーが理解できずに「VRとは」からユーザーに教えなければいけなくなる。だから「サマーレッスンはこういうゲームですよ」という枠組みやフォーマット、価値の置き方は大切に受け継いでいます。

そしてVRの体験とゲーム性のバランスは、とても繊細な問題です。アリソンちゃんのほうがひかりちゃんよりゲームよりだったらVRにする意味がなくなってしまうし、逆にゲーム性を希薄にすればVRで遊べる得体の知れない何かという認識をプレイヤーに持たれる危険がある。サマーレッスンではひかりちゃんのときから、このバランスに気を付けてつくってきました。

 
──ゲーム性ではなく、外で遊べるVRアトラクションのように体験自体の驚きや面白さを追求する方向もあったと思います。

 
玉置 VRアトラクションの場合は、遊園地などと同じで特別な場所で遊ぶということに面白さがあるので、体験自体に全荷重をかけるような極端なつくり方が通用するんです。でも家でゲームをするとなると、同じやり方は通用しません。

家庭用ゲーム機で楽しむコンテンツは、ざっとゲーム、ノンゲーム、映像という3つの区切りになります。この現状でゲーム性をなくしてVR体験を流すだけとか、ただVR空間に居続けるだけとかの、「ゲーム」とは自信をもって言い切れないレベルまで体験に寄ったソフトにしてしまうと、体験した人には映像コンテンツだと思われてしまうんです。「サマーレッスンは、360度動画みたいに見てるだけみたいだよ」という誤解が広まったとしても、それを否定するのが難しくなってしまう。

だからゲームのつくり方になぞらえて、ゲームだと理解をしていただける商品構成で、それをゲームが得意な企業がつくっているんですよというスタンスは貫きました。ゲームだけどVR体験ができるという部分は非常に重要なんです。

 

同じバンダイナムコエンターテインメントでは、かつてお台場のダイバーシティにあって今夏に新宿歌舞伎町にオープンする「VR ZONE」も手がけている(関連記事

 
──しかし、そのさじ加減はとても難しそうですね。

 
玉置 はい。その結果、VRに詳しい人からは「ゲーム要素はいらなかった」という声が、ゲーマーからは「ゲーム要素が足りない」という評価がもちろんでてきました。ただ一方で、「ゲームだからこそ安心して買えた」、「ゲームだと思って入手したらVR体験としてスゴかった」という反応はそれを上回る強さで生じています。われわれとしては後者が想定していた声で、そういうつくり方をしてきたわけです。

なので、この構造をアリソンちゃんでもいじってはいません。もちろん、シチュエーションやステージ、キャラは新しく作っているので、ひかりちゃんをプレー済みの方でも初心に戻った感動や新鮮さを味わえると思います。さらにVRはどんなものかはひかりちゃんでお伝えできたので、アリソンちゃんでは「癒やし」をテーマに据えて、疲れたときに起動したくなる要素を増やしています。

 
──おお、それは期待が膨らみます!

 
玉置 作品をニュートラルの状態から動かしていけるようになった今の状況は、まさにVRがコンテンツ化してきた証拠だと思います。

映画で例えるなら、汽車がこちらに向かってくる映像を見たお客さんが驚いて逃げ出すというような時代が終わって、ここからどうするのというところですよね。このあと映画の歴史でいうと、「水をかけられた散水夫」というコメディ映画が出てきて、お笑いという要素を見つけました。そうした風に新しいフォーマットの娯楽というのは、最初はニュートラルにすごさを伝えるものから始まりつつ、やがてベクトルが傾いていって、それによって作品性が生まれます。VRはそういう時代に入った。

同時に、どういった企業やチームがVRコンテンツを手がけると、どのような方向性が得意なのかがわかるようになってくる時期でもあります。アリソンちゃんでもその一端を垣間見ることができるようになっています。

 
──先ほどの「癒やし」が気になりますが、ここにこだわった、見て欲しいというポイントはありますか?

 
玉置 2つあって、まずは背景です。ちょっと話がさかのぼりますが、弊社は毎年米国で開かれるアニメとマンガの祭典「Anime Expo」の2014年に、「ソードアート・オンライン」のOculus Rift DK2のデモを展示しました。74層のボスモンスターとの戦闘シーンをVR化したのが近藤さん(編注:GOROmanの名で知られる近藤義仁氏)の会社であるXVIさんで、弊社はのどかな昼下がりの野原で風景を眺めながら、ヒロインであるアスナのお昼寝姿をVRで眺められるというコンテンツを手掛けています(筆者が週アスPLUSに寄稿したレポート記事)。

このデモを試遊することになった弊社の大下(編注:バンダイナムコエンターテインメント社長の大下聡氏)が、「忙しくて旅行に行けないときに、こんなノンビリした自然の景色を眺めながらゆっくりするのもいいよな」と言っていて「そうか!」と。

それに背景はキャラと違って、作り方のノウハウが自社内で確立しているので、比較的低リスクで商品価値を高められるという理由もありました。

この話とは別に、制作チーム内で「本物の金髪はVR内でどう見せればいいのか」も検証していたりと、そういったいくつかの話やチームの動きをまとめていったときに、海が見える古い日本家屋に金髪の少女がホームステイに来ているというシチュエーションは異国情緒や非日常感があって、つまりバカンス感を味わえるのではという結論になりました。

 
──ふむふむ。

 
玉置 ふたつめは、その世界の案内人であるアリソンちゃんの性格です。アリソンちゃんはおとなしめで優しく、ちょっとウィスパーボイスなんです。本作にはそんな彼女と日常の何気ないエピソードを主体としたイベントが詰まっているので、先ほどの背景と併せてとても癒やされると思います。

 
──E3デモで人気だったシーンは入っていますか?

 
玉置 人気だったシーンは抜粋し、レッスンやイベントなど様々な形式に分散してきちんと入っていますし、そこからヒントを得た要素も入れ込みましたのでぜひ遊んで確認してください。

 
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 
*後編はこちら

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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