VRはハードからコンテンツの時代へ──SIE WWS吉田氏に聞くPlayStation VRの今(前編)

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E3の会場において、VR業界で非常に大きな存在感を示していたのがソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「PlayStation VR」(PS VR)だった。同製品は国内でも人気が高くて在庫が追いつかず、ほしくても買えない状況が続いていたが、最近では国内での販売店が232店舗から394店舗に拡大というニュースも流れて、今後の流通体制も整ってきていきそうだ(関連記事)。

 
そんな今のタイミングをSIEはどう見ているのか。同社のワールドワイドスタジオ プレジデントである吉田修平氏にインタビューした。

 
 

シューティングコントローラーは争奪戦に!?

 
──まず一番お聞きしたいのが国内の販売店が大幅に増えた背景です。

 
吉田 やはり供給量が増やせることがわかったからですね。

 
──おっ! では、本格普及に向けて舵を切ったという?

 
吉田 そうですね。需給はずっと追いかけていましたが、製造数も増やすことができて、いよいよ日本にたくさん提供できるようになったということです。これまで大変お待たせしました。

 
──半年以上かけて日本でも供給体制を整えてきて、ようやく実現できたという。今まで1ヵ月に1回ぐらいの販売でしたが、それも増やしていけますか?

 
吉田 そうですね。製造は継続的にやっているので、それは店舗との話し合いになると思います。6月の後半にひとつ大きな山を迎えて、それに合わせて「Farpoint」などの新作を投入していきます。今心配しているのは、PS VRは潤沢に供給できるようになるのですが、Farpointなどに使う「PlayStation VR シューティングコントローラー」がすぐになくなりそうで……。

 

PS VR シューティングコントローラー。価格は6458円(税込)で、6月22日発売。

 
──それは争奪戦になりそうですね!

 
吉田 新しい製品なのでなかなか需要が読みにくいということがありますが、大変好評いただいているので、それは喜んでいますし、ほかのデベロッパーさんのシューティングもPS VRシューティングコントローラーに対応するタイトルが増えています。

 
──今回の記者発表会である「PlayStation E3 Media Showcase」のデモ会場でも、「ROM: Extraction」などのコントローラー対応ゲームがありました(関連記事)。

 
吉田 ええ、やはり楽しいですよね。新しく発表した「Bravo Team」もそうですし、継続的にタイトルを出していこうと思っています。

 

 
Bravo Team。

 
──販売店の拡大にともなって、体験会を増やしていくというのもすごくいい施策だと感じました。

 
吉田 日本におけるVRの認知度は、VR ZONEなどでVRの取り組みをしていただいている企業が多いこともあって、かなり高いレベルで進んだなと思っていますが、体験はされていない方はまだまだ多いんです。なのでPS VRの発売前にもやっていた、「体験していただかないとわからない」というところに立ち返るということだと思います。

 
──Media Showcaseでデモの半数ほどがVRだったということも、SIEのVRへの力の入れようが伝わってきました。

 
吉田 やっぱり新しいメディアなので、長い目で見てずっとやっていくことだと。去年は「VR元年」と言っていましたが、初代のプレイステーションを世に出した感覚でいますので、ずっと継続的にやっていくしかないと思っています。世間的には我々の想像をはるかに超えるペースで物事が進んでいますし、やはり楽しいですよね。

 

デモ会場では、左と右の壁ぞいと中央にそれぞれ試遊ブースを展開していた。この写真でいう右壁のすべてがPS VR対応タイトルだったのが驚きだ。

 
──Media Showcaseのプレゼンは、スライドやスピーチではなくデモをずっと見せるというのが斬新でした。新ハードが出なかったということもありますが、そのぶんコンテンツに対してアピールに力を入れている時期なのかなと。

 
吉田 今年はプレスカンファレンスではなく、Media Showcaseという呼び方を使っているんです。何かを発表するというよりは、とにかくコンテンツをお見せすると、そのショーとしての演出に力を入れて、きていただいた方に楽しんでいただけるようにしました。

 
──それは本当に楽しかったです。今はネットで生中継してしまうので情報だけならすぐに伝わってしまいますが、天井までスクリーンとして使ってプロジェクターで投影したり、舞台で爆竹を鳴らしたりと、すごくゲームの世界が伝わってきました。

 
吉田 あれは日本ではやりづらいかもしれませんね(笑)。でも映像とリンクして、ゾンビが降りてきて動き始めたり、ああいうのはリハーサルまで知らなくて楽しめました。

 

 
E3 2017 PlayStation Media Showcase(日本語通訳付き)。

 
──そうしたコンテンツに力をいれていた状況はVRも同じで、いよいよハードからコンテンツの時代に入ったというのはSIEとしてもそうですか?

 
吉田 そうですね。初年度はハードの導入の年で、2年目以降はコンテンツと考えていましたが、その通りになってきていると思います。私としてもゲームデベロッパーがいろいろなVRのゲームを見て学んできているのは感じますし、ゲームデベロッパーの力を使ったエンターテインメントソフトが増えているんですよね。

うちでいえばソニー・ピクチャーズとかソニーミュージックのアーティストたちが、コンテンツを作り始めています。すでに日本でも無料配布している「ザ・チェインスモーカーズ」のVR PVも素晴らしい出来です(関連記事)。360度撮影はアーティストがカメラの周囲を囲んで撮影……というところからスタートしたのが、リアルタイム性を活かしたインタラクティブミュージック的なコンテンツになっていて、これはもうVRでしかありえない体験だと思います。

日本でもイベントで展示された「傷物語」も素晴らしいです(レポート記事)。2Dのコンテンツをそのまま活かしながらVR体験を作っているというのが新しいです。クリエイティブな方が、ゲーム以外のアプローチでVRという新しいメディアを使っていただいているというのがすごく楽しいですね。

 
──映画の「バイオハザード:ヴェンデッタ」のVR版である「BIOHAZARD VENDETTA : Z Infected Experience」もすごくいい体験だなと思いました(レポート記事)。映画のVR体験というとイベントなどで体験することもおおいですが、それを自宅でできちゃうという流れがすごい。

 
吉田 あれも移動をゆっくりにして気持ちよく体験できるように工夫しています。プロモーション費用でVR体験をつくることで、うちのソニー・ピクチャーズとかもそうだと思いますが、新しい表現をしたいクリエイターが監督とかのニーズを満たしつつ、コンテンツそのもののプロモーションにもつなげるという、ひとつのいいサイクルになっているのかなと思います。

 

 
BIOHAZARD VENDETTA : Z Infected Experienceの発表会レポート。

 
 

「鉄拳」のようにロケーションから家庭用への流れも?

 
──日本のPS VRにとっては、先ほどもでてきた6月22日の「Farpoint」と「サマーレッスン:アリソン・スノウ」が山になっていると思うのですが、それぞれの見どころを教えていただけないでしょうか。

 
吉田 本当にいいタイミングでアリソンちゃんを出していただいて、日本のPS VRはサマーレッスンと共に歩いているなというのをしみじみと感じつつ、われわれも新しい体験を提供できるので、6月は本当に買いたい人がほぼ買えたみたいなところに近づければいいなと思っています。

今買われる方も最初のタイトルは素晴らしいものがあるので、ラインナップを見ていただいて「Rez Infinite」や「Thumper」など評判のいいタイトルを手にしてほしいなと思います。まだ全然古くないです。

 

 
Farpoint。

 

 
サマーレッスン:アリソン・スノウ。

 

 
Rez Infinite。

 

 
Thumper。

 
──家庭用VRの波でいうと、今年の秋には「グランツーリスモSPORT」(GT SPORT、E3レポート記事)があります。

 
吉田 GT SPORTも非常に良い感じで、今クローズドベータを実施しており、ユーザーの意見をいただきながら磨き上げているところなので、非常に良いものができると思います。PS VRの対応も日に日にコンテンツが増えていると聞いていますし、出たときにはPS VRユーザーにも注目してほしいです。

 
──家庭用に並んで、アミューズメント施設や店舗で遊べる「ロケーションベースドVR」にも進出してます。最近だとコニカミノルタさんの「VirtuaLink」にPS VRが使われてました(関連記事)。

 
吉田 コニカミノルタさんから発表された「VirtuaLink」は、我々のシステムの提供ということで、PS VRとPS4 Proに加えて、それを複数同時に操作できるシステムを開発して導入しています。一人のオペレーターで何十台を同時にサポートできるようなニーズがありますので、その準備をやってきたわけです。

 
──家庭用だけじゃなく、ロケーションもPS VRで推していくという。

 
吉田 そうですね。個人的にはロケーションはPS VRじゃなきゃいけないとは思ってなくて、VR ZONEでHTC VIVEとかを体験された方が、「今の最新のはこういうのなんだ」と面白さに気づいてPS VRを買われることも多いので、その循環はすごくいいなと思っています。

システム運営の側からしてみると、PS VRとPS4なら運用コストがかなり下げられますよね。場合によってはPCより扱いやすいというのがあって、あとはPS VRの前面が光っているというのがいいという方もいらっしゃるみたいです。

 
──あー、なるほど!

 
吉田 コンテンツによってはロケーションで展開されたものが、ちょっと形を変えてコンシューマー向けに出されるということも考えられます。昔、「鉄拳」とかプレイステーション互換の基板でアーケードで出ていて、家庭用に導入されるということもありましたし、できる可能性はあるなと思っています。

 
──同じロケーションでは、コーエーテクモさんの「VR SENSE」もあります(レポート記事)。

 
吉田 それもあります。われわれもハードを提供させていただいていて、どんなものが出てくるのか楽しみです。日本はコンテンツもそうですし、アーケードの文化も含めて良い感じに盛り上がりがあって、定着していくのかなと感じています。

 
──あとはコミュニケーション系のアプリもきになるところです。以前のGDCでは「Social Demo」を展示していましたが……。

 
吉田 あれはR&D(研究開発)的な他のデベロッパーさん向けへの提案で、私も好きなので、いいものができたらベータ版としてリリースしてもいいんじゃないかと思っています。また機会があったら展示できたらいいですね。

 

 
 
*後編はこちら

 
(TEXT by Minoru Hirota

 
*E3 2017のレポート記事まとめはこちら

 
 
●関連リンク
PlayStation VR
E3 2017

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