PS VR「サマーレッスン:アリソン・スノウ」 ― 彼女の「心」は映像以上にVRしていた【だいぶVR #04】

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PANORAをご覧の皆さま、こんにちは。本サイトでお手伝いをしていますフリーのゲームライター、自称「ゲームソムリエ」の津久井箇人です。不定期連載VRコンテンツレポート企画「だいぶVR」第4回をお届けします。

 

今回は、いよいよ発売を迎えたバンダイナムコエンターテインメントのPlayStation VR用ソフト「サマーレッスン:アリソン・スノウ」をピックアップ。「宮本ひかりとどう違うの?どっちが買いなの?」などなど、突っ込んだ内容にも怒られない程度に踏み込んでいきますよー!

 
尚、毎度恐縮ですが、この「だいぶVR」の目的は「体験」しなければなかなか伝わらないVRの魅力を、できる限り文章でお伝えすることです。レポート記事を読んで少しでも「気になる!」と思っていただければ幸い。逆に「そんなの知ってるよ!」という基本的な部分にも触れていくと思うので、そういうところはジャンジャン読み飛ばしちゃってください。ヨロシクお願いします。

 
それでは、レッッッツ……だぁーいぶ!!(←相変わらず定着しないキメ台詞)

 
 

まずはPS VRと「サマーレッスン」の基本をおさらい


さまざまなVRデバイスが凌ぎ合う群雄割拠の時代。実はいま日本国内のVR市場を牽引しているPS VRだったりします(IDC調べ)。そのスタートダッシュに大きく貢献したのは、開発デモとして制作され、のちに製品として発売された「サマーレッスン」だと言っても過言ではないでしょう。仮想現実の世界で、女子高生と自然なコミュニケーションが取れるという“絵面”は発表当時かなりのインパクトで、「VR」のビッグウェーブが迫りつつあることをおよそ3年ほど前から感じさせてくれました。

 
そんな「サマーレッスン」の歴史については、PANORAに玉置絢プロデューサー/ディレクターのロングインタビューが掲載されているので、興味がある人はそちらをぜひご覧あれ(前編/中編/後編)。なにげにむっちゃ濃ゆい内容なのでオススメ。

 
ついでに、ワタクシの「サマーレッスン:宮本ひかり」のプレイレポートもあわせてオススメ(宣伝)。

 

●そもそも「サマーレッスン」ってどんなゲームなの?
プレイヤーは、「先生」と呼ばれる立場にある「家庭教師」。第1作「サマーレッスン:宮本ひかり」では、成績がピンチ気味な女子高生「宮本ひかり」にさまざまな方法で勉強を教え、コミュニケーションを取りながら、最終的にはテストで良い成績を残させる、という内容でした。

 
いかに上手く「勉強を教えるか」「コミュニケーションするか」その内容・結果いかんで、彼女のパラメータとエンディングが決まる……と、ゲーム的に言うとこんな感じで非常にシンプルなのですが、そこに「VRの空間で」というエッセンスが加わることで、今までのゲームでは絶対に味わえなかった「空気感」のようなものが楽しめるようになっています。目の前に“いる”彼女に、ちょっと本気でドキドキしてしまうほど。「これがVRか!」と、シンプルなゲーム性とともに、“最もシンプルなVRの醍醐味”が凝縮されているタイトルです。

 

●座ってのんびり落ち着いて
最近注目を集めているVRゲームは、椅子と連動して激しく動いたりモーションコントローラーを振り回したりと、アトラクション的なイメージがちょっと強め。そんな中で「サマーレッスン」は、座ってのんびり落ち着いてプレイできることも長所と言えると思います。ゲームをプレイする部屋が狭い!という人でも、普通にプレイできるのでご安心を。

 
コミュニケーションパートの操作は、選択肢に視点を合わせて決定したり、首を縦横に振ってYES/NOの返事をしたりとコントローラー要らず。準備パートとなる喫茶店では最低限のコントローラー操作がありますが、特にゲームの流れとして違和感はありません。ゆっくりじっくり自分のペースで、普段の生活とはちょっと違う世界を楽しめます。

 
 

現実と非現実の狭間へ……


さて、今作「サマーレッスン:アリソン・スノウ」の教え子は、アメリカからホームステイでやってきているアリソンちゃん。プレイヤーは、日本の文化などを教える家庭教師となるワケですが、基本的な流れは前作「サマーレッスン:宮本ひかり」を踏襲しています。事前の準備パートでレッスンの予定を組み、レッスン当日に彼女の勉強をいかに成功させ、いかに楽しいコミュニケーションができるか、というシンプルで直感的なゲーム性が中心。むしろ、このシンプルさこそ「サマーレッスン」シリーズなんだと思います。

 

●映画やドラマの中に入った感覚
前作「宮本ひかり」では、女子高生の部屋に招かれるという、おっさんにはなかなか味わえないシチュエーションが展開されたのですが、かなりギリギリで“現実感”があったわけです。ちょっと頭の悪い(←語弊がある)日本人の女子高生と、よくある現代的な日本の家の一室で粛々とコミュニケーションを取るワケですから。シチュエーションはともかく、風景や登場人物像は、そこまで現実離れしていませんでした。

 
しかししかし「アリソン・スノウ」。アメリカ人の、しかもシンガーソングライターの女の子と、海の見える場所にある、古い日本家屋の縁側で、まったりとコミュニケーションするという状況。正直、おっさんじゃなくても普通味わえないシチュエーションなワケですよ。ギリギリ、現実にあり得るかどうかという設定で、その一線を越えたらきっと「ファンタジーもの」になってしまうのだろうな、と。

 
つまり「宮本ひかり」が現実的な非現実を楽しむゲーム性だとしたら、「アリソン・スノウ」は現実っぽいけどかなり非現実的な非現実を楽しむゲーム性なんです。と、書いておいてナンですが、めちゃくちゃわかりにくいっスね(汗)。ザックリ例えるなら、映画やドラマの世界に入り込んでしまったようなフィクション性が強い世界観なのです。そこが、前作とは異なるゲームの大きな魅力になっていると感じました。

 

●アリソンちゃんの魅力
いま思うと、前作の宮本ひかりちゃんには、開幕からすげぇ硬そうで適当な椅子に座らされたり、唐突にスマホの写真を見せて来たりと、こう何かとプレイヤーが乱雑に扱われ、先生を敬う気持ちが足りなかったのですよ!(それが彼女らしさですが!笑)それに比べて、アリソンちゃんは、しっかりと礼儀をわきまえているし、素直でめちゃくちゃ良い子。カタコトの日本語も一生懸命で、気持ちが伝わって来る感じがします。こんな孫が欲しい。

 
それに応えたいという気持ちが、自分自身に自然に生まれてきてしまうのがVRの不思議なところ。それは「ゲームを攻略したい」という気持ちなのか、「彼女の頑張りを応援したい」という気持ちなのか、もはや自分でもわからず(笑)。

 
 

ゲームの根幹もしっかり強化


前作からキャラとシチュエーションを変えただけと思っているそこのあなた!そしてわたし!!甘かったです。ちゃんと、細かな点がパワーアップしていて、より世界観に浸りやすく、女の子に思い入れを持ちやすくなる新要素が増えていました。

 

●スマホでトーク
本作のスマホは、ただの目標(条件を満たすとご褒美アイテムがもらえる)の確認ツールにあらず。新たに「トーク」機能が追加されました。喫茶店の場面で、レッスンとは関係なく、アリソンちゃんとショートメッセージのやりとりが楽しめるようになりました。その内容は、日常のできごとを中心にさまざま。アリソンちゃんがどんな女の子なのか、より深堀りできます。

 
プレイヤーのリアクションや質問も選択肢形式で選べます。それによってアリソンちゃんの返答も変化するので、いろいろなパターンを試してみたいところ。いや、どの選択肢を選んでも、結論は「アリソンちゃんは良い子」なんですがネ!(笑)気になるのは、プレイヤーのリアクションがアリソンちゃんの成績に影響するかどうか。今回のプレイでは残念ながら確認できませんでした。申し訳ない!!

 
そして、ついに東京本社の「鵜飼さん」の姿も明らかに!アイコンでちっちゃく、後ろ姿だけですが!(笑)「トーク」の相手には「東京本社(=鵜飼さん)」も登録されていて、レッスンについてのアドバイスなんかを教えてくれます。すげぇ一方的に送りつけてきて、こっちがリアクションできずに終わるので、なんかちょっと不服です(笑)。

 

●東京本社からの連絡に隠し要素?
えーと、コレたぶんここに書いちゃいけないヤツだと思うので詳しく書くのは控えます。発生条件はわからないのですが、東京本社から電話がかかってきまして。普通「サマーレッスン」で東京本社からの連絡と言ったら、非常に業務的というか、説明的というか、そういうことばかりだったのですが、ちょっとそこからハズれた内容をこちらに連絡してくる場面に遭遇しました。それがどんな内容か、いつ連絡が来るかはプレイしてからのお楽しみということで!

 
 

総評

VRの世界を作るのはキレイな映像や音声だけじゃない!
そこに「心」があるかどうかがとても大事なんだ!!(熱弁)

 
シンプルかつ繰り返しプレイしたくなるゲーム性は折り紙付き。シチュエーションは、前作よりもフィクション的になりつつも、ファンタジーではないギリギリの現実感によって「VRじゃなきゃ味わえない経験」が際立っています。目の前に広がる広大な海、イイ感じに古い日本家屋の縁側、アリソンちゃんの言葉や仕草などなど、そこにあるすべての要素から優しい癒やしが感じられました。

 
そして、前作「宮本ひかり」以上に強く伝わってきたのが、キャラクターの「心情」です。日本が大好きなアリソンちゃんは、テストが上手くいかなかったらアメリカに帰らなくてはならないそうで。大好きな日本にいたいという強い気持ちは、カタコトの日本語、仕草、表情などなど、一挙一動から伝わってきて、そこにアリソンちゃんが“いる”という説得力をさらに増していると感じました。リアルな「心情」の描写は、映像のリアルさやデバイスの描画能力、音声のリアルさなどに匹敵するほど「VR(仮想現実)」にとって重要な要素なのではないかと、アリソンちゃんを通じて、改めて感じた次第です。

 

VRコンテンツにおいて、キャラクターの存在に現実感を持たせる要素は、本当にさまざまあると思います。その中で「心」が本当に存在するように感じさせることは、現実世界のプレイヤーの「心」をより突き動かし、バーチャル世界へと溶けこませてしまうきっかけになるのではないかと。もちろん、リアリティを求めた作品内容ほど、そういった方向性は重要になってくると思います。しかし「キャラクターの実在感を強める」という意味では、ファンタジーな作品にも今後求められるの要素なのかもしれません。

 
そういった意味で、「サマーレッスン」シリーズは確実に「VRにおけるキャラクターの実在感」を強める実験を、一歩一歩前進させていると感じました。今後も追加コンテンツの配信が控えていますが、個人的には、まだまだシリーズを続けてほしいなと思っています。さらなる新作、期待しています!

 
 
●サマーレッスン:アリソン・スノウ 七日間の庭(基本ゲームパック)
・販売方法:PlayStation Store ダウンロード購入
・プラットフォーム:PlayStation VR(要PlayStation 4)
・価格:2980円(税込)
・公式サイト:http://summer-lesson.bn-ent.net/allison/

 
【コンテンツ内に実在した印象的なもの】
・「アリソン・スノウ」の心情
・夏の海と空をバックに咲くたくさんのひまわり
・もう滅多に見ないガチガチ強弱を切り替える扇風機

 

▲祖父母の家とかにありがちなこの感じ扇風機

 
 
のんびり不定期連載「だいぶVR」第4回、いかがでしたでしょうか?「ブレイクタイムデスネー」からの「ンー?」は正直何度見てもかわいいです。こんな孫が欲しい(2回目)。次回もどうぞお楽しみに!!

 

▲何度でも聞きたい「ンー?」

 
 
(C) BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 
 
●だいぶVR 過去記事
Nintedo Switch ― 「HD振動」がどの程度のもんなのか体感してみた!【だいぶVR #03】
PS VR「サマーレッスン」 ― 俺はゲームしたいのか、宮本ひかりに会いたいのか【だいぶVR #02】
HTC Vive「The Lab」― 圧倒的完成度なのに無料でイイんすか?【だいぶVR #01】

 
●筆者プロフィール
津久井箇人 a.k.a. そそそ
作・編曲家・ライター。自称「ゲームソムリエ」。新旧・ジャンル・ハード問わずゲーム好き。音楽制作活動と並行して、2011年にゲームニュース原稿執筆・ライター活動を開始。2016年4月からPANORAでの活動を開始。
・Twitter:@sososo291
・ブログ:sososo activity

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