俺たちのVRはまだこれからだ! Oculusチーフサイエンティストが語るVRの課題と人間の未来

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OculusのチーフサイエンティストのMichael Abrash氏は7月18日~20日にワシントンDCで開催されたGlobal Grand Challenges SummitのVirtual Realiry and Artigical Intelligenceワークショップに登壇。

Virtual Reality: After Half a Century, it’s Finally Here – But This is Only the Beginning(バーチャルリアリティ:ついに到来した半世紀経過後の現状-ただし、それは始まりに過ぎない)」という講演を行った。

同社はその内容をフルバージョンでブログに掲載している。かなり長い文章のため抜粋となるが、説明していきたい。

 

VRの起源となるのは1968年の「イワン・サザーランド氏のダモクレスの剣」までさかのぼる。その後約半世紀が過ぎ、現在の形のVRシステムまで到達した。VRの基礎は人間の自然な体験から生まれ、それは現象を人間の持つ感覚器官を通じ、遺伝子に刻まれた人間が生まれながらに持つ“仮定”と生きているうちの経験から導き出すものだ。

 
 

すべての現実は仮想!? 認識が困難な場合にどう対処するか

そうした遺伝子と経験から導かれる仮定はとても強い影響があり、私たちが経験している現実は、実は非常に不完全なデータに基づいて自身の中に構築されている。つまり、自分たちが経験している現実世界というのは、文字通り現実をそのままに反映したものではない。として、誤認識の例を紹介している。

 

たとえば、机の下にあって影が落ちている白い床、その両サイドには光に照らされている黒い床がある。もし、その床だけを切り取って、影や光などの情報をすべてカットしたらどうなるのか。

 

こちらが白と黒の床以外の情報をカットした画像。実は床の色は白でも黒でもなくグレーである。影の中にあるグレーは白であり、ひかりの中にあるグレーは黒であるというのは、周囲の状況から推測した結果である。

 

三次元の物を二次元で認識する場合、どちらが大きいかを判別することができるか(シェパードのテーブル)。実際は同じ大きさだが異なって見える。

 

本来は通り抜けられない格子の枠を通り抜けてしまう棒(Ames Window)。

 

 

 

 
聴覚についても、口の動かし方を変えるだけで同じ音なのに別の音に聞こえてしまうこともある(マガーク効果).

現実というものは過去に経験した知覚から構築されるもので、VRが正しい知覚を与えることができればVRの利用者はリアルに感じるーそれは正しい経験を得ることができる、ということになる。そしてVRの世界では世界を自由に行き来ができ(それも瞬時に)、世界の中のを自由に扱え、世界のどこでも誰とでもインタラクションが可能なことがVRのポテンシャルとなっている。

例として、いろいろな方とバーチャル空間で会話をしたり、あらゆる場所で仕事ができればいいと思うことがある。それをかなえてくれる最初の大きなステップがPCであり、VRは第2の大きなステップと考えられる。フラットスクリーンの先のデジタルな空間に我々は住むことができるようになるからだ、と語る。

 
 

VRは世界を変えるが、それには機能が足りない

Arbush氏は、VRが世界を変えるには課題とする技術面がまだあると考えている。視覚、聴覚、触覚は既に実現しており可能性ががる。ただ、嗅覚、味覚、平衡感覚の3つはまだ完全ではない(筆者注:嗅覚については研究は続けられているが即時に望みのものが出せるわけではない、という意味だろう)。

 

前者3つはすでに研究が続けられている。

 

他にもやるべきことはこのようにまだまだある。

視覚に関しては解像度はもちろん、焦点深度(被写体深度)の再現も必要となる。聴覚は音源の指向性・合成など。そして触覚については現在様々な研究が進められている。

 

視覚に関しては現在のVRで使われている画像は単焦点のもの(筆者注:これは20年前の3Dゲームに酷似している。なお、被写体深度がゲームに本格的に取り入れられたのは約10年前)。

 

 

人間の目は見る場所に応じて焦点距離を変えることができるため、それを実現する必要がある。

 

「見る場所に応じて焦点距離を変える」機能を持たせる場合、次に必要となるのがアイトラッキング。現在は瞳孔と角膜の検出がメインとなっているが、将来的には網膜を使った検出が必要と考えられている。

 

次にアバターではなく、バーチャルな人間をVR内に出現させるための手順。まずは手の表現だが、人間の指は25度ほどの自由度があり、現時点ではグローブをはめて検出することが最善の手段となっている。

 

 

フェイストラッキング、ボディトラッキングを経て現実の人間をVRの世界に送り込むにはコンピューターの演算能力の強化も必要だ。

 

カーネギーメロン大学では多数のセンサーやカメラを使ってバーチャルヒューマンのデモ画像を作成したが、1秒のデータを作るためには2時間の演算が必要となる

 
 

VRは新たなフロンティア

これらが現在VRに与えられている課題である、とOculusはとらえている。これを解決するにはさらに数年の時間が必要とされるものも多い。また、全身対応の触覚技術などまだ着手できていないものもある。

VRは純粋な知覚の中の巨大な挑戦であり、数十のテクノロジーの研究・開発によってより発展するものである。重ねてこれは70年にわたるコンピュータのテクノロジーと数世紀に及ぶ情報テクノロジーの集大成も合わさっている。これら入力装置などの技術を組み合わせて、かなりの割合でデジタル世界に干渉できるようになったとき、生物学的なプロセスを得られて、VR世界に適合した(進化した)人類になれるのではないか、と語っている。

VRは人間の経験を大きく変えるポテンシャルがあり、それが実現されれば人類の歴史の中で最も重要なテクノロジーの一つになるだろう、と締めている。

 
 
●関連リンク
Oculus VR
VR’s Grand Challenge: Michael Abrash on the Future of Human Interaction(英語)
Global Grand Challenges Summit(英語)
Panopticon at Carnegie Mellon(英語)

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