VRの音作りや心音製作の秘話公開! 「サマーレッスン」のサウンドはこうして作られた【CEDEC 2017】

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8月30日から9月1日まで、パシフィコ横浜で開催されたコンピュータエンタテインメントの開発者会議「CEDEC 2017」。ここでは8月31日に開催された「VRサウンドデザイン夏期講習(サマーレッスン):パーソナルスペースの内側で」のレポートをお届けしたい。

このセッションの講師はバンダイナムコスタジオ(BNSI・バンダイナムコエンターテインメントの開発部門が分社して設立された会社)の中西哲一氏。そう、弊誌における「サマーレッスン」シリーズの玉置絢プロデューサーのインタビューでも少し触れた、「キャラクターごとに声優さんの心音を入れよう」と発案したサウンドデザイナーだ。ここでは音に絡む「サマーレッスン」のノウハウを余すところなく放出してくれた。ここではその一部をお届けしたい。

 

 

 

中西氏(右)はBNSIのサウンド部部長/ヘッドサウンドデザイナー。「リッジレーサー」シリーズや「エースコンバット」シリーズを中心に活躍。近年のタイトルは「スター・ウォーズ バトルポッド」「リアルドライブ」そして「エースコンバット7 アンノウンスカイズ」。なお、当日はBNSIでサウンドライブラリやR&Dを手掛ける田中佳吾氏(左)も壇上にあがり、技術面からの解説をした。

 

 

 

 

 

VRでのサウンドデザインは決める事柄が多い。1cmまで迫る距離感、立体音響の活用とその使い分け、客観と主観の使い分け方などなど。ここではBGMやUI効果音をどう鳴らすのか、そしてフォーリーは位置が近いと部位ごとに音を鳴らさないとおかしくなるなど製作時にいろいろやらなければならないことがいっぱいあるという事を明かした。

 

 

「サマーレッスン」ではリアル追及でなく、感覚的な音の誇張表現でパーソナルスペース内の存在感や超接近の距離感を感じさせるものに。

 

中西氏が提出した企画書が「バーチャルファンタジーサラウンド」。
 

「HRTF(頭部伝達関数)」は立体音響の方式。その距離変化には工夫が必要とされる。

 

 

 

 

HRTFのカスタマイズはこんな感じ。収録距離からさらに接近した音を表現するにあたり、距離が近くなれば近くなるほど頭部遮蔽の影響で反対側の耳の音が小さくなったり、高周波が削られたりするので、そのあたりを再現するようになっている。

 

 

 

HRTFに向いた音は様々な周波数帯域を持った、映像対象にあった質感の音。「ポーン」などのシステムSEにはあまり向かない。サマーレッスンでは空間に浮かぶUIオブジェクトの選択時や一部の環境音に使われている。また、電話のシーンでは外音の遮蔽なども行っている。

 

みんな大好き「片耳イヤフォン」のシーンでも片耳の遮蔽距離が行われた。

 

 

 

遮蔽処理は距離が遠いときは両耳均等に聞こえるが、近接距離での遮蔽は左右異なり処理が必要。これを行うことで物体の気配を強く感じることとなる。なお、LPFは低域周波数を通すローパスフィルタの略。

 

 

 

ボイスレコーディングには会社にあるありったけのマイクを集めて収録が行われた。

 

結果として超接近感はどのマイクを使っても無理、ということで、後処理で行うことに。採用したマイクはNEUMANN TLM103 D。ちなみに20万円くらいする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VRでの音作りの難しいところは接近時の音。音量を上げるだけでは超接近を感じないということで、映像から受ける圧迫感や心理的な緊張感、違和感などを考えた結果、超接近時はHPFをかけて低音をブーストすることに。

 

 

 

BGMは没入を阻害するために、音源があるとき(スピーカーやラジカセ)、あるいはUIが出ている客観的なシーンに限定。

 

 

 

喫茶店のシーンではスピーカーからHRTFを鳴らすということをしている、というのも、日ごとに座る席を変えても大丈夫なように音を立体的に作っているのだそうだ。なお、カリキュラムを選択するシーンではBGMは通常の2chとなっている。

 

 

 

フォーリーサウンド(足音・衣擦れなど)は部位ごとに設定されているため、それを個別にデータ化するのは作業工程がかなり多くなる。さらに、着せ替えデータもあるということでまともに手付けで作ったら工数がえらいことに……という問題が発生。

 

 

 

 

 

 

 

 

そういうことで、アニメーションデータからプロシージャルでデータ生成をすることに。出来たデータはサンプラー用のMIDIデータとして出力。

 

 

リップシンクとは音と唇の同期。これが合わないと気になって没入感が阻害されてしまうとはいえ、モーションキャプチャと音声の同時収録は音が綺麗に録れないのでダメ。

 

 

最初はモーションアクターと声優さんが別だったため、声優さんの演技のしにくさにもつながり、結果として修正が多かった。そこで製品版ではモーションアクターさんはアドバイザーとして参加。声優さんがモーションを取ってからアフレコすることになったという。

 

極めつけはこちら。接近しすぎたときの状態を音でフィードバック! 会場ではここでひかりちゃんの心音が流されたのですが……。

 

これを録った秘密兵器がこの「聴診器マイク」

 
「サマーレッスン」は「サマーレッスン:新城ちさと 七曜のエチュード」の発売が発表され、まだまだシリーズは続いていく模様。ひかりちゃんやアリソンちゃん、そしてちさとさんのカテキョを務める際は音にも耳を傾けていただきたい。

 

ちなみに、一部のイベントではマイクの音声を拾って声をかけてくれることもあるらしいですよ。

 
*CEDEC 2017記事まとめはこちら

 
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