「このままだとVRは日本が負けて終わる」 gumi國光氏が語るTokyo VR Startupsが目指す未来

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コロプラやグリーなど、スマートフォンアプリ系企業の参入が相次ぐ日本のVR業界。16日には、gumiが突然、VR系のスタートアップを支援する100%子会社「Tokyo VR Startups 株式会社」(以下、Tokyo VR Startups)を立ち上げると発表した(ニュース記事)。

 
今回、「gumiの自社開発ではなく、なぜベンチャーへの資金提供なのか」、「VR開発者はどんな支援を受けられるのか」について、Tokyo VR Startupsの代表取締役に就任予定のgumi社長である國光宏尚氏と、同取締役に就任予定のVRジャーナリスト、新清士氏のお二人に話を聞いた(以下、敬称略)。

 
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左から國光宏尚氏、新清士氏

 
 

1ヵ月ほどで立ち上げた会社

 
——何がきっかけでTokyo VR Startupsを立ち上げることになったんでしょうか?

 
 國光さんが10月13日の「Oculus Connect 2報告会」(レポート記事)に来てくれて、話したことがきっかけです。日本のVR業界には、コミュニティーや情報交換する場もある。だけど今一番足りてないのはインディーやスタートアップでVRコンテンツをつくりたいと考えている人たちに対するインキュベーションへの支援だよねと。そんな話を國光さんに相談したら、じゃあ一緒に検討してみようという流れになりました。

 
——10月に始めてひと月ぐらい。すごいスピード感ですね。

 
 いろいろな方々にご協力いただいて、ポンポンと話が進んでいった感じです。仕組みを先に説明すると、gumiさんの子会社となるTokyo VR Startupsという企業を立ち上げます。そして、VRのプロダクトを開発している企業を公募し、選ばれた3~5社に対し各々500万円を支援金として出資いたします。Tokyo VR Startupsは株式の5%程度を取得させていただく予定です。これはアメリカの標準的な方式を参考にしました。

 
その選ばれた企業に、シードプログラミングとしてまず1〜6月の半年でプロトタイプを開発してもらいます。そして3月と6月にデモデイを設けて、他の投資家にも見てもらい、次のステージに行けるかどうかを判断します。次の投資家が見つかるなど、うまくいくと判断された場合、さらに資金を調達し事業を進めてもらうという流れです。この出資は今回の公募で終わるのではなく、うまくいくようなら他の企業にも出資先を広げていく予定です。

 
 

ノウハウを交換できる「トキワ荘」のような場

 
——これは資金面だけの支援になるんですか?

 
 会社のオフィスとして箱崎インキュベーションセンターのオフィスが無料で使用できます。

 
國光 VR開発者にいろいろ会って気づいたのは、今は3パターンのVR開発しかいないんです。1つ目は、グリーさんやコロプラさんなど自社で開発をやっているところ。2つ目は、本業を別に持ちながら、空いてる時間に開発している方。3つ目は、勇気を出して会社を辞め、本業として開発を始めたけど、なんとなく受託の仕事を始めて、そっちが忙しくなって自分のプロジェクトを進められなくなった方。

 
——わかります。

 
國光 今は趣味の延長のようなレベルでも、みんなに驚いてもらえるけど、一人でやっていくのには限界があって、今後、製品として売っていくためにはチームが必要になる。でも資金がなかったらチームを動かせないので、プロダクトのベースがしっかりつくれるようになるまで資金を提供します。

 
さらに、みんな別々のオフィスでやっているより、いろいろなチームが集まって「ここどうやってるの」と情報交換できる場を提供していきたい。

 
——マンガの「トキワ荘」みたいな感じですね。

 
國光 そうそう。そんな雰囲気ができてきたらいい。ハードメーカーとも交渉して機材一式も用意する予定ですし、クリエイターや経営者の方々に声をかけてメンターになってもらうようなサポートも考えています。

 
とはいえプロダクトがないと何も始まらないので、最初の3ヵ月、6ヵ月のところで「こういうVRプロダクトがつくれます」というベースの実力がつくまではTokyo VR Startupsが支援して、次はさらに支援者を募って、より大きく成長させていきたいと考えています。

 
——なぜgumi自身がVR開発者を抱えて、事業展開しなかったんでしょうか?

 
國光 前提の話として、おそらく普通にやるとVRは日本が負けて終わる戦いだと思うんです。

 
——なんと!

 
國光 日本は明らかに不利ですよね。例えば、Oculus Riftで遊ぶためにはハイエンドPCが必要なのに、そもそも日本にハイエンドPCを持っている人口が少ないし、PS4も日本よりも海外で売れている。普通に考えるとOculus Riftは、欧米のハイエンドなハードを持っている層が、ついでに3万円や5万円払って遊ぶものだと思います。

 
欧米以外で可能性があるとしたら中国。昔は家庭でハイエンドPCが買えなかったし、ブロードバンドもなかったので、みんなネットカフェに集まっていたのですが、今はお金ができて家でハイエンドPCで遊ぶようになってきたので、VRを使った新しいビジネスモデルが出てくると思います。

 
日本では、そもそも遊べる環境を持っているユーザーが少ないという絶望的な状況から戦いを始めなければならない。そこで日本のVR開発者がすべきことは、まず欧米か中国で売れるものをつくるという選択肢しかないということです。

 
——厳しい見方ですね。

 
國光 儲かると思うから人が集まるし、伸びると思うから投資もされる。それで産業的に成長するという流れがあるけど、今、投資家と話をしていても結局、「日本はVRこないよね……」「そうですよね……」「じゃあまだお金は出せないよね」って感じになってしまう。

 
このまま行ったときの日本のVRの未来予想図は、遊べる環境を持っているお客さんがいない、だからお金も集まらない、チームも集まらない、という感じで相当遅れると思うんです。そうこうしている間に3~5年経ってしまって、海外でヒットしたコンテンツを持ってきたパブリッシャーが勝つことになる。でも、そんな屈辱的な未来を受け入れられるわけがないじゃないですか。

 
——そんな未来はクリエイターにとってつまらない。

 
國光 そうまったく面白くない。日本には「攻殻機動隊」や「ソードアート・オンライン」など、VRに親和性の高いコンテンツがすごく多い。向こうのリア充でVRをやってるヤツらと違って、俺らは何年間バーチャルで過ごしてきたと思ってるんだと。

 
——確かに!

 
國光 小さな頃からアニメやゲームで育ってきた俺らが、リアルをエンジョイしているあいつらに負けてどうするんだ。明らかに不利な状況のなかでそこを打破しようとすると、単体の企業でやっても意味がないかなと。だから、ひとつの場所に数社が集まって、うまくいったことや苦労したことなどの情報をどんどん共有していく場にしていきたい。

 
 

モバイルは競争が激しかったから日本は生き残れた

 
 キーワードはオープンであることなんです。どうやったらオープンなイノベーションセンターが構築できるか。箱崎インキュベーションセンターに入った企業だけでなく、ほかの企業のVR開発者が遊びに来ていただいても構わない。VR系のセミナーも継続してやって、日本全体の開発速度を引き上げるのが目的です。

 
國光 今回のプログラムで、1、2社が次のステージに進めて、製品として世の中に出せていけるようになると、企業内でVRをやりたいけどできないと思っていた人たちが独立するという選択肢も考えられるようになる。

 
振り返ってみると、モバイルゲームで日本がそれなりのポジションを取れたのは、競争が激しかったことが理由なんです。モバゲーさん、グリーさんのようなプラットフォーマーはもちろん、僕らみたいなベンチャー企業、ドリコムさん、KLabさんといった公式サイト、家庭用のゲーム企業、Zyngaさんみたいな海外企業など、いろいろなプレーヤーが集まって切磋琢磨したから、競争力がついたし、日本のモバイルゲーム産業が発展した。

 
——今はVR業界は、初期なこともあってあまり競争がないですね。

 
國光 ただ思うのは、VRは100%くる未来なんです。シンプルな話で、いつの時代もエンタテインメントは五感を刺激するものだったじゃないですか。紙で文字だったのが、ラジオで音に進化して、テレビでは音に映像がついて、それがカラーや3Dになって、さらにIMAXや4DXなど体感型の映画館も出てきてる。そんな今までなかった体験を与えてくれて、五感をより刺激するコンテンツが生き残ってきたという意味では、VRは100%きます。

 
矛盾するようですが、そういう未来の前で、ハイエンドPCが必要だとか、ケーブルが邪魔だとかはいずれ解決する些細な話ですよね。だからこの辺で、日本のVR業界が巻き返さないとまずい

 
——審査基準はどういう感じですか?

 
 ひとつは海外に打って出られるタイトルということです。当然ソリューションでも構わないですが、海外で売れるものじゃないとダメ。という意味では、エンタテインメント関連が選ばれる可能性が高いでしょうね。われわれもTokyo VR Startupsにどれくらい反響があるか読めないところがありますが、VR開発者には出資を期待している人がいるのもわかってる。個別の案件については相談して決めていくので、みなさんぜひ応募してみてください。

 
(聞き手/広田稔
 
 
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