西田宗千佳氏レポート 現地取材で伝わってきた、ARにかけるアップルの本気度【動画あり】

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筆者は現在、新iPhoneの発表会を取材するために、米カリフォルニア州・サンノゼにいる。9月20日にリリースされるiOS 11には「ARKit」が入り、アップル的にも「今秋はAR」という流れになっている。そこで、現地でのハンズオンでの情報を中心に、AR関連の話を手短にまとめてみたい。

 

アップルは新機種を「AR」で売りたい

きっとディスプレイや顔認識の話ばかりが注目されていると思うが、新iPhoneである「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」「iPhone X」は、どれも「ARに向けたインテグレーションをした」とアップルは説明している。カメラやモーションセンサーを含め、過去のiPhoneよりもARを指向した開発がなされているからだ。

 

フィル・シラー上級副社長は、新機種が「ARに向けたインテグレーションをした」とコメント

 
ただ残念ながら、それがハンズオンなどでわかったかというと……わからない。あまりに短い時間であること、旧デバイスで比較対象となるデモを見ることなどができていないのがその理由だ。

 
しかし少なくとも、最適化をアップルが口にし、デモとしてARタイトルを推している以上、彼らが「ここからのスマホの差別化点」としてARに相当の期待を抱いているのは間違いない。

 
また、ハンズオン会場でiPhone X向けのARデモを見たが、OLEDの素性の良さか、非常に画質がよかった。特に視野角が気にならないため、ディスプレイをどこからのぞいても妙な色変化がないところが好感触だった。この要素はおそらく、他のOLED搭載ハイエンドスマホ(例えばGalaxy S8)などでも、同じように有利な点になりそうだ。

 

発表会で公開されたデモ。MLBでの観戦アプリや、「星座」をARで空に表示するアプリが公開されている。

 

 
iPhone XでのARゲームデモ。OLEDの視野角の良さ、画質の良さがAR効果的であることを改めて感じさせた。

 
 

深度センサーは「iPhone X」のフロントに、PrimeSence買収の成果か?

新機種が「AR向けのインテグレーションをされた機種だ」といっても、バックカメラにTango対応端末のように奥行きが取れる深度センサーが搭載されたわけではない。カメラ周りはあくまで、これまで同様「画像センサー」だ。

 
ただしカメラをAR向けにキャリブレートし、暗いシーンや60fps時の動作を改善することで、全体としてのAR精度を高めたのだと、筆者は理解している。この方向性は、iPhone 8シリーズでもXでも同じだ。

 

iPhone 8でのカメラのAR最適化。深度センサーは搭載されなかった。

 
他方、顔認証機能「FaceID」のために強化されたiPhone Xのフロントカメラは、距離センサーやドットプロジェクターなどを備え、まるで「超小型Kinect」の趣である。ここにはおそらく、2013年にアップルが買収したPrimeSence社の技術が使われているのではないだろうか。PrimeSenceは初代Kinectのセンサーを作った会社であり、非常に技術に類似性がある。

 

iPhone Xのフロントカメラ部。顔認識のためにセンサー類が大量に追加された。まるでKinectのようだ。

 
iPhone Xのフロントカメラ部はサードパーティに解放され、顔認識を使ったアプリの開発が可能になる。すでにSnapchatやSnowでは「顔を盛る」AR的な使い方が広まっているが、その質・精度を高めるのは最初の使い方になるだろう。また、PCでは「FaceRig」で実現されている「なりきり実況」的なことも可能になるだろう

 

アップルがデモした、Snapchatでの顔認識利用例。この手のアプリは非常に元気なので、すぐに活用例が増えるはずだ。

 
 

Apple Parkには「秘密のARアプリ」がある!?

新製品は直接関係ないが、もうひとつ現地からとっておきのニュースを。

 
アップルは今回、新キャンパスである「Apple Park」を初公開し、その中の「Steve Jobs Theater」で発表会を行った。シアターのすぐ近くには、今後アップルのカンパニーストアと同じ扱いになる「Visitor Center」という施設ができる。一般公開は年末だが、今回、プレス向けに特別公開された。
 
 
このVisitor Centerには、Apple Park全体を縮小した模型があり、これが「AR」対応しているのだ。真っ白い模型の上でiPadをかざすと、その場の風景が、道路を走る車まで再現され、「電力の発電状況」や「風・熱が社内を循環する様」までARで見られるようになっている。まずは動画をご覧いただきたい。

 
もしApple Parkの近くに来ることがあれば、ぜひ一度体験してみてもらいたいアプリだ。こうした部分からも、アップルが「ARを重視している」姿勢が見えてくる。

 

 
Apple Parkを上空から見た姿を体験できるARアプリ。かなり大規模で、よくできたもの。細かいところまでしっかり作られている。

 
 
(TEXT by Munechika Nishida

 
 
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