ねこあつめVRは猫版サマーレッスン!? SIE・吉田氏に聞く、注目すべきPlayStation VRコンテンツ

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ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、PlayStation Camera (PS Camera)同梱版の新価格設定新作コンテンツなど、東京ゲームショウに先駆けてPlayStation VR(PS VR)の新要素を明らかにした。「コンピューター、ソフトがなければただの箱」という言葉もあるように、いちVRファンとしては、今後出てくるコンテンツはどこが見所で、自分は何を体験すべきかというのが気になるところ。

というわけで、SIEワールドワイドスタジオのプレジデントである吉田修平(@yosp)氏にインタビューして、気になるVRコンテンツを教えてもらいました!

 
 

VRで触って持てるシューティングコントローラーが楽しい!

 
──今年の2017 PlayStation Press Conference in Japanではかなり多くのPS VRタイトルが発表されました。以前のインタビューで「コンテンツの年」という話が出ていましたが、有言実行でやってきたという印象です。

 
吉田氏 今年の春くらいから台数を少しずつ増やしてきていたのですが、10月中旬以降にはとてもいい形で供給できる準備が整ってきたので、日本も含めて全世界的に再導入していきます。品薄の状態が続いていたので今までは控えていたのですが、ここはもう1回新しく、去年の発売の際と同じような気持ちで展開していこうと考えています。

 
──PS Camera同梱版の新価格を設定して、価格的にも力が入ってきたという。

 
吉田氏 普及台数が増えれば増えるほど、コスト面での効率も上がっていくので、できるだけお買い求めいただきやすい形で提供したいと思っています。

 
──ただ今の注目は、ハードではなくコンテンツですよね。

 
吉田氏 今年は「Farpoint」とPS VRシューティングコントローラーの評判がよかったので、われわれも嬉しかったです。年内には「Bravo Team」を発売する予定ですし、来年以降にリリースするPS VRシューティングコントローラーを使ったタイトルも仕込んでいて、サードパーティーさんもいくつかのタイトルを対応していただいています。ハンドルコントローラーもそうですけど、やはりVRは触感がビジュアルに反映されるとすごく効果が高いですよね。

 

 

 
──E3でBravo Teamを体験して思ったのですが、ガンシューティングの体験自体はもちろん、誰かと会話しながら一つの目標達成を目指すというコミュニケーション部分も楽しいんですよね。

 
吉田氏 それもVRならではですよね。「ToyBox」(Oculus VRがかつて出していたTouch用デモ)の衝撃というか。普及台数が増えれば増えるほど、協力プレイのコンテンツもつくりやすくなると思います。

「RIGS Machine Combat League」のときもそうでしたが、やりたいことに対して環境がなかなか整わないという感じで、ちょっと早かったのかもしれませんが、今回、「RIGS」はたくさんの人に気軽に遊んでもらえるように、PlayStation Plusのフリープレイで提供しています(*編集註:11月7日までのフリープレイ)。VRのよさはいろいろな側面があるので、体験してもらうということを、継続的にやっていかなければいけないと感じています。

 
──今回発表したタイトルで言えば「ARK Park」も4人協力プレーを用意していますよね。それは意図して協力モードを増やしている?

 
吉田氏 それはやはり「VRはやってみたら本当に面白いよね」というのをいかに届けるかだと思います。アーケードでも「VR ZONE」やテレ朝夏祭りの「アバル:ダイナソー」など、複数人でVRゴーグルを装着して同じ空間に入って、一緒に行動するようなコンテンツは、ロケーションベース(アミューズメントやネットカフェなど出先での体験)だとやりやすいですよね。新しい体験や技術を試すことができるという点で、日本はいい環境になってきてると思います。

 

 
──そのロケーションでみんなで遊ぶというのも、PS VRなどを使ってご家庭でできる時代がもう来ているという。

 
吉田氏 そうですね。将来はVRで友達と会う、そういった世界に近づいていくのではないかと思っています。

 
──過去の有名タイトルのVR版というのも目立ちました。

 
吉田氏 例えば「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS : M∀RS」は、私も注目しています。去年の「Rez Infinite」もそうですけど、VR向きのものをPS VRで出していただくのはとても良い流れだと思います。それこそ、かぶった瞬間にコックピットにいるというのは、もう外を見ると空だったりして、その瞬間から燃えますよね。

 

 
──確かに! VRは自分が妄想していたシチュエーションになりきれるのが本当にいいですよね。

 
吉田氏 なりきりですね。だからクリエイターもいろいろなVRコンテンツを体験しながら、「これアリだな」というものを次の作品に繋げているという感じなんです。

例えば「サマーレッスン」では、キャラクターの存在感や自分を意識してくれるということがスゴいという衝撃があって、それがいろいろな人に影響を与えたわけです。それがこの前、無料配信した「傷物語」でも生きていて、2Dのアニメ素材をそのまま生かしながら、自分の横にはキャラクターがいて話しかけられるシチュエーションが生まれています。クリエイター同士が刺激しあって、さらに印象的な表現が出てきているんです。

 

VRの潜在能力が感じられる「JAPAN Studio VR音楽祭」

 
──キャラと一緒に何かを見るという文脈でいくと、今年5月に開催した「GAME SYMPHONY JAPAN 23rd CONCERT 〜PlayStationを彩るJAPAN Studio音楽祭2017〜」の360度映像をPS VRで楽しめる「JAPAN Studio VR音楽祭」はその発展系ですよね。

 

 
吉田 そうですね。指揮者や観客視点の360度動画だけでなく、正面に大きなスクリーンが現れて「どこでもいっしょ」のトロとクロが隣で一緒にコンサートを見てくれるモードもあるんです。周囲にゲームの世界観に応じた環境や映像もでてきます。

 
──積極的に自分が遊ぶゲームだけでなく、鑑賞がメインだけどVRならではの楽しさがあるコンテンツを、SIE自体が続々と投入してきているというのが興味深いです。

 
吉田氏 われわれは、例えば映画をVR向けに配信するような企業ではないのですが、新しいVRというメディアを使えば映像もこんなきれいにとか、こんな新しい演出ができますよという研究開発をずっとやっていて、さまざまな場所にVRカメラを持ち込んで撮影しています。

「JAPAN Studio音楽祭」のときも同様です。210度のカメラを持ち込んで撮った映像は、それはそれで臨場感があってその場にいる感覚が楽しいのですが、VRならではの演出が入れられない。なので、210度映像も20分のコンテンツとして用意しつつ、もう1つリラックスして、ズームを使って演奏者を見られたりと、従来の映像演出も使えるモードも入れました。発想は「傷物語VR」と同じですが、これもVRにあった使い方なので、自分たちで試してみて、他の方々に提案しています。

そういった意味だと、今年の2月にリリースした「Joshua Bell VR Experience」というバイオリニストの演奏会コンテンツも、普通の360度映像に見えますが、実は近づいたり、動けるというコンテンツの提案です。

 

 
──あれは衝撃でした。普通の360度映像は、カメラの位置から頭を動かせずに周囲を見渡すだけなのですが、例えば演奏者に頭を寄せると本当に近づけるという。

 
吉田氏 衝撃ですよね。色々な技術の賞を頂いたりしましたが、あのコンテンツも最初は普通にステレオの360度映像として出そうという話でした。しかし、ステレオは難しいところもあって、「これはダメだよ」と言っていたら、解決策として持ってきたのが360度映像にしないという手段だったのです。

具体的には、収録スタジオをモデリングして、ビデオから取ったテクスチャーを貼っています。ビデオのうち、演奏者の部分を1枚1枚削って切り抜いて、それを所定の位置に置くことで、近づいたり離れたりできることを実現したそうです。

 
──あの手法はVR開発者や360度カメラマンなど、特にクリエイター側に大きな驚きを与えました。

 
吉田氏 最初からグリーンバックのスクリーンを使えば、もっと簡単にできるはずです。今後も、普通の映像プロダクションがあまり苦労せずに同様のものをつくれるようにSIEで研究を続けていきたいです。

 
──そうした流れのひとつが「VR音楽祭」なんですね。

 
吉田氏 いろいろ試して、ワンオフで提案的に出してみるという感じです。それが実際に映像でビジネスをされてる会社さんのヒントになればいいなと考えています。

 
──「創作の連鎖」じゃないですが、SIEさんもほかから大きな刺激を受けて作品を生み出し、さらに「傷物語」や「VR音楽祭」などを見た人がさらに影響を受けてよりいいVRコンテンツを生み出すみたいな。

 
吉田氏 そうですね。そういった相乗効果がずっと進んでいくことを期待しています。

 
──そのコンテンツ自体が連鎖的に発展している観点でいうと、2017年は本当に「コンテンツの年」になっていますね。

 
吉田氏 そうですね。ゲーム業界だけじゃなくて映像や、エンタテインメント業界でもものすごく関心が高いです。例えば映画だと大きなプロモーション費用を確保していて、新作を知ってもらうためにVRを使いたいからと、ゲームデベロッパーにコンテンツ制作を発注する流れも出てきています。

 
──新しい流れですね、それは。

 
吉田氏 そうですね。同じソニーグループでも、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントやソニー・ミュージックエンタテインメントと、一緒に仕事する機会はあまり多くはないのですが、「一緒にやりますか?」であったり、「もっと話を聞きたい」といった問い合わせが来るようになっています。「The London Heist」をつくったロンドンスタジオには、色々な映像クリエイターが訪れて、ドラマ「ブレイキング・バッド」のVRコンテンツをつくりましょうという動きも出てきています。

 
──本当にゲームに限らないですね。

 
吉田氏 3Dでリアルタイムのコンテンツをつくれるのはゲームデベロッパーだけだから、ゲームに限らない色々な業界からの制作オファーが入ってきているようです。インディとしてVRゲームを出すことによって、「こういうVRコンテンツをつくってくれないか」と仕事が入るようになったという好循環の話も聞きます。そうしたビジネスの話がないと先に進んでいきませんので、それは嬉しいですね。

 
 

ドラゴンの飛ぶ姿を見上げられるSkyrim VR

 
──今後リリースされるタイトルで、吉田さん的に「これイチオシ!」というのは、どれになりますか? まったくの個人的な話で大丈夫です。

 
吉田氏 やっぱり一番気になってるのは「Skyrim」ですね。その話をする前に、「バイオハザード7」がいい意味でショックだったということをお伝えしたいです。実はカプコンさんから「全編をVRに対応したい」と言われたときは、期待半分、心配半分だったんです。

 
──かなり手間がかかりそうですよね。

 
吉田氏 そう。テレビ向けと、VR向けにつくるのは、やらなければいけないことがかなり違うので、それは両方をちゃんとできるのか、しかも「バイオ」のようなビックタイトルで。カプコンさんの開発チームとうちの技術チームで色々な話し合いをしながら、最終的にどちらでも楽しい、どちらかというとVRで遊んだほうがより怖いという、非常にいい形で全編を遊べるものをつくっていただけました。

私は自社のチームにおいては、基本的にVRコンテンツは最初からVR向けに企画・デザインをしようと話してきました。しかし、『バイオ7』を見て「こういうやり方もあるんだ」と気付かされた。きちんとVR向けに調整をすれば、普通のテレビ向けタイトルでもジャンルによっては十分に遊べて、むしろVRの方が楽しいということもできる。

 
──おお!

 
吉田氏 なので、ベセスダさんもSkyrimで同じ感じで取り組まれてるのかなと気になっているところです。ただ、前に体験したときは、あの世界観の中に自分がいて、ドラゴンが頭上に飛んで行くのを見て「お〜!」みたいな感動がありました。やはりあの頭上を大きなものが飛んで行く感覚は、テレビでは再現できないですよね。

もちろん4Kの精細さやグラフィックスのきれいさなどのビジュアル面でのクオリティとしてはテレビで遊ぶよさもありますが、ゲームの世界にいる感覚はVRでないと得られない。そのよさは「Skyrim」に期待できそうなので、そういう意味で、私の一番の注目作品です。

今回の「2017 PlayStation Press Conference in Japan」でも色々なタイトルが出てきましたよね。「ねこあつめVR」とか……。

 
──ねこあつめ!

 
吉田氏 これは別の意味で気になりますね。

 
──というかスライド1枚だけで内容がミステリアス過ぎて何も語れない(笑)

 
吉田氏 どんなものになるか私もわからないですけど、いい形でリリースできれば、いわば「猫のサマーレッスン」ですよね。猫好きの人っているじゃないですか。

 
──いや、いるどころかめちゃくちゃ多いですよ!

 
吉田氏 猫カフェとかもあるぐらいなので、「猫に会いに行こう」ってPS VRをかぶってもらうと、猫がいて、自分を認識してくれて、何か交流してまったりできるとなると、これは1つのキラータイトルになるポテンシャルはあるなと思います。最終的に、どんな体験になるかはわかりませんが。

 
──あれがすごかったのは、今までVRに関心がなさそうな層が多く食いついてたところですよね。

 
吉田氏 猫だけでなく、昨年のTGSでもありましたイケメンと会える女性向けのコンテンツなど、幅広い層に向けてVRのポテンシャルは非常に高いです。PS VRを遊ぶためにはまずPlayStation 4を持っていることが前提になりますので、最初はゲーム好きから手に取っていただいている状況がありますが、今後はより多くの人に広まっていくと思います。

ポテンシャルという意味では、朝日新聞さんの「NewsVR」も前からすごく期待しています。PANORAさんでも360度映像を撮っていて、昔にインタビュー風景をVRで見せてもらったときに、自分のすぐそばでインタビューが繰り広げられている体験は、本当に報道に向いているなと直感しました。

日々報道される様々なニュースの取材現場が、360度で体験できるコンテンツとしてどんどん増えていき、それがほぼリアルタイムで家庭でも楽しめるようになると、VRのユーザーはものすごい数になっていると思います。今はその野望に少しずつ近づいているのがうれしいですね。

 
──最後にPS VRファンの方々に向けて、一言いただければと思います。

 
吉田氏 以前よりPS VRの生産体制を整えてきましたが、ようやく10月以降はいい形で供給できるようになりましたので、新作の紹介も含めてもう一度しっかりと展開していきます。

 
──お店に行って、例えば「今話題になってる『ねこあつめVR』がスゴくほしい!」って思ったときに、すぐPS VRも買えるようになりますかね?

 
吉田氏 いつでも買える環境に近づけると思いますので、そこはぜひ期待していただきたいです。新しいタイトルも、どれも力が入っていますので、機会があればぜひ試してください。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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