Enhance代表 水口氏が語るシナスタジア(共感覚)表現の未来「Rez Infiniteはいかにして生まれたか」講演レポート【Unreal Fest East 2017】

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10月8日、パシフィコ横浜でUnreal Engineの利用法などの講演イベント「Unreal Fest East 2017」が開催された。Unreal Engine開発元のEPIC GAMES JAPANは春に京都で「Unreal Fest West」を、秋にこの横浜で「Unreal Fest East」を、という年2回の開催になっている。

 

Unreal EngineはVRコンテンツに使用されることも多くなり、今年は3か所で行われているセッションのうちいずれか一つがVRに関わるものになっていた。それだけVRの需要が高まっているということだろう。ここではPlayStation VRのロンチタイトルともなった「Rez Infinite」のポストモーテムともなる「Rez Infiniteはいかにして生まれたか – 我々が目指すシナスタジア(共感覚)表現の未来」と題したセッションをレポートする。

 

 

Enhance代表・水口哲也氏。「Rez」以外には「スペースチャンネル5」「セガラリーチャンピオンシップ」「ルミネス」「Child of Eden」などを手掛けている。ゲーム以外にも「元気ロケット」などの音楽ユニットプロデュースも行っている。

水口氏はまず「シナスタジア(共感覚)」という言葉についての説明から行った。これは100年前の芸術家などが使っていた言葉で、感覚が複合的に交差したときに起こる美しさや気持ちよさを体験に変えよう、というところから始まったという。100年前の当時は表現の場がキャンバスしかなかったが、現在ではVRを含めてさまざまな表現方法があり、それを表現するツールもUnreal Engineを含めて増えてきている、と話した。

 

Enhanceの理念として「唯一無二の忘れがたい体験を作る」「VR/AR/MRの未来を信じてコミットする」「未来を見据えたものを現在に持ってくる」、という3つが柱になっている。

 

 

オリジナル版「Rez」は2001年に発売され、いわば「カルト的なタイトル」として人気を博していた。Xbox 360時代には「Rez HD」としてリマスターが行われたが、水口氏にはどうしてもVRでリメイクをしたい、という思いがあった。音楽と映像がシンクロしたゲームの構想を考えてはいたのだが、最終的な出力は4:3(当時)のテレビ画面に出さなければいけないという、当時の技術ではいかんともしがたいジレンマがフラストレーションになっていた。

しかし現在はVRにより、テレビのフレームは撤廃され、ゲームの世界に入り込め、しかも3D映像になるということで、これはシナスタジア体験を表現するには最高のプラットフォームになる、と水口氏は語った。ちなみに、「Rez Infinite」のうち、オリジナルの「Rez」部分はUnreal Engineではなく、「Area X」だけUnreal Engineを使用していることも明かされた。

Rez Infinite: Behind the Scenes
オリジナル「Rez」から「Rez Infinite」の間をつなぐメイキングが流された。

Rez Infinite Launch Trailer
続いてこちらの映像を流しながらゲームの説明を行った。オリジナル「Rez」部分は4K対応(PCは8Kまで)・VR対応リマスター版。「Area X」はパーティクルで構成された世界を漂いながら進んでいく新作ゲームになっており、「次回作に向けたプロローグとして作られた」とのこと。

 

「Rez Infinite」は8月にPC版(Steam/Oculus Store)でも発売され、PCとPS4、主要なハイエンドVRプラットフォームに対応。モバイルVR向けにはDaydream版の開発着手が発表された。

「Rez Infinite」で酔った人を聞いたところ若干名が手を挙げたことに対し、水口氏が謝罪。VRはプレイ時間により酔いやすくなるのではないか、と思っている人が多いと思うが、水口氏は「30分プレイでも気持ちのいい体験が長く続けば問題ない」と語る。ヘッドセットの重さや目の疲れやすさなどマイナスの点をいかにして体験でプラスにするかを考えなければいけない、とも。

そんな中で気持ち悪くなるような個所が発見されたのだが、その理由は「Area Xはパーティクルで物体を構成するため、面があまり発生しない。人間の脳は面を認識した瞬間、それにキャリブレーションを起こしてしまうのではないか」と考えているそうだ。例えば敵キャラの多関節生物などはソリッドに表現されているので、近くに寄るとクラっとなることが多くなるという。ゲームではパーティクルをあまり固めすぎて面のようにならないように調整を行ったという。

 

 

「Rez Infinite」はアメリカのゲームアワード「The Game Awards 2016」で「Best VR Game」を受賞。また、イギリスのゲーム雑誌「EDGE」で2017年度版の「The 100 Greatest Videogame」に18位にランキングされた。

「Rez Infinite」の実開発は、水口氏のスタジオであるレゾネアとセガ時代から一緒に開発を共にしてきたエンジニアが在籍するモンスターズで共同開発し、Enhanceがパブリッシャーとなる。「Area X」のプリプロダクションは水口氏を含む3人で18か月を費やした。なお、「Rez Infinite」の立ち上げでは借金をして開発したことを明かしている。ゲームのデジタルパブリッシングが進むことで、自分の好きなゲームの企画を大手ゲームメーカーに通さずゲームが開発できる、ということで今が一番充実している、とも。

水口氏は開発エンジンの重要さについても触れている。従来は、大手のメーカー各社が独自のゲームエンジンを組んでゲームを作るのが当たり前だったが、今はUnreal Engineをはじめとした各種ゲームエンジンがいろいろな機種のタイトルを開発できるようになり、かつ、それをカスタマイズして自分のしたい表現にあったエンジンに改良できるのも利点とも語った。

 

オリハルコンテクノロジーによる4Kのパノラマドームスクリーンシステムを使ったデモ。7月に日本未来科学館で「ドーム実験:Rez Infinite」を開催したが、近々バージョンアップした体験会が予定されているそうだ。

 

改めて「シナスタジア」の定義を説明する水口氏。「色彩を聞く」「音を見る」といった感覚が交差する現象を指す。

 

「Rez」以降はそういう体験をベースにした作品を主に作り出した水口氏。こちらはオリジナル「Rez」のロンチイベント。当時のゲームコンソールにはヘッドホン端子がなく、
テレビのイヤホン端子につながないといけない、というところがもどかしかった、という話も。

 

「ルミネス」はPSP(PlayStation Portable)向けに最初に発売。「21世紀のウォークマン」と銘打たれたこともあり、それに呼応するような音と映像がリンクするタイプの落ちものパズルゲームになった。

 

 

「Child of Eden」はKinectやPlayStation Moveといった新しい操作方法を採用した「Rez」の後継タイトルとも呼ばれたシューティングゲーム。ジャンルも「シナスタジアシューター」だった。

 

 

 

「Child of Eden」では自作の「シナスタジアエンジン」を作ろうということで、エンジンを形作るさまざまな映像表現が模索された。写真はそのメイキングの一部で、作ったものの実ゲームへの採用には至らなかったものもある。

 

Xbox 360・Kinect版では操作は体の動きをカメラで取り込んで行うため、振動のフィードバックがなかった。そのため、ワイヤレスコントローラを使って振動機能を実現するオプションを設定した。これは「Rez Infinite」でも「Trance Vibrator」オプションで実現している。

 

振動子の進歩により開発された「シナスタジアスーツ」(2.0)。ライゾマティクス社と慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科との共同開発で、26か所に仕込まれた振動子がそれぞれ異なった振動を伝える。なお、ライト部分はどこが振動しているのかわからないため、振動した場所などを色と光で表現している。現在は「Area X」にも対応。

 

プレイヤーがシナスタジアスーツで振動を体験するだけでなく、椅子にも振動子を搭載し観客もプレイを見ながら振動を体験できる、といったアート作品寄りのイベントも行われた。

 

水口氏が初代シナスタジアスーツを着て登場した「PlayStation Experience 2015」の模様。

 

水口氏は現在の「シナスタジアエンジン」について説明。共感覚を体感できるシステムをUnreal Engine上で構築するというもので、色、変形、テクスチャ、リッチなパーティクルなどのビジュアルエフェクトを音楽のビートとシンクロさせて動かす、というものだ。「Rez」「ルミネス」「Child of Eden」で培ったコンセプトが「Rez Infinite」で昇華された形で表現されたが、このエンジンはその延長となる。会場では実際のデモが行われたが、これは残念ながら撮影禁止。

 

 

今後のEnhanceの方向性として、ゲームだけではなくいろいろなプロジェクトを進めていくことと、他社とアライアンスを組んで「シナスタジアラボ」を開設し、表現の研究を行うことも考えているとのこと。最後に一緒にその未来体験を作っていくエンジニア、アーティストの募集を行って本セッションは終了した。気になる人はEnhanceのホームページを参照してほしい。

「おしっこをちびってしまいそうな強烈な体験をVR/AR/MRで作っていきたい」とxRの未来に大きな期待を持った水口氏。今後登場する新たな「シナスタジア体験」の衝撃に期待したい。

 
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