外国人採用で覚えておきたい3要素とは?──元DeNA海外担当・ミール氏に聞く「ここが変だよ日本企業」(後編)

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前編に引き続き、海外人材を採用するときのポイントを、Psychic VR Lab(サイキックVRラボ)のCAO(Chief Alliance Officer)・Mir Nausharwan(ミール・ノシェルワン)氏に聞いた。

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仕事内容・役職・年収が大切

──海外の人材を雇うときに重要なのは何でしょうか?

 
ミール氏 仕事内容、役職、年収の3つが一致していることが非常に大事です。そもそも海外企業では、まず「ジョブディスクリプション」(職務記述書)をきちんと決めて募集しますし、採用される側もないと入らない。やるべきことや責任、権限などが明確に定義されているんです。

でも日本の場合は、ジョブディスクリプションがとても曖昧です。「モバイルエンジニア」って言ってもどのプログラミング言語を使うのか書いてなかったり、仕事内容は「市場分析」って言ってたのにマーケティングや企業戦略、海外の窓口もやらされたりする。これって全部別の専門分野ですよ。

 
──それは具体的じゃないですね。

 
ミール氏 日本では、入社してからその人のスキルを数ヵ月見て、どういう部署が合うか探しましょうということがあります。でも海外ではそもそも中学の専攻が高校につながって、さらに高校が大学と社会人、就職にまで関係してきます。中学生から社会人まで同じ分野を勉強してきているんです。そんな専門家が雇われて「じゃあ様子見ながら仕事を決めましょう」って言われたらものすごい不安ですよね。「何? 私のキャリアで遊んでるの?」って。

 
──そもそも採用しないでほしいって話ですよね。

 
ミール氏 そうそう。そんな中途半端な状態で採用しないでほしい。私の友達にも日本語が話せる外国人も多くて、興味を持って日本に来るんですが、80〜90%は1、2年間働いて米国・ヨーロッパ、インドで働くため移動しちゃいます。その原因は採用時と仕事内容が違うから。何でもできるからって、何でも頼んじゃう。

 
──日本人でありがちですね。

 
ミール氏 労働時間や休暇についてもそうです。例えば年俸制の場合、17時以降にお金が出ないなら、外国人から見れば残業する意味がわからない。この前も海外で働いていた日本人と、日本企業は海外の人材をきちんと管理できていないという話をしていました。それは日本の文化に入れてしまうから。

 
──といわれると?

 
ミール氏 私はお盆休みはいらないけど、クリスマスには長い休みがほしい。でも日本は年末に休みがあるから「そこは頑張らないと」って話になってしまう。

 
──うーん、確かに海外の人にとってお盆休みは意味がわかないですね。

 
ミール氏 意味がわかないでしょ? インドでも、イスラム教はイスラム教、ヒンドゥー教はヒンドゥー教といった感じでそれぞれのサイクルで休みを取っています。キリスト教もユダヤ教も別。インドネシアでも同じです。

 
──日本は全員一緒みたいな文化で進んできたから、確かにそういう感覚がわからなそうです。

 
ミール氏 日本の会社はもちろん世界で有名な企業もあるし、ゲームやアニメ、ロボットとかで知ってみんな興味があって来るんですけど、やっぱり日本では働きたくないという結論になってしまう。日本の文化を押し付けてはダメです。私は17時以降に飲みにいくより、家に帰って自分の家族と一緒に過ごしたい。でも飲み会に参加しないと評価が低くなっちゃう。飲み会と仕事って何が関係ありますか?

 

海外展開についてはCEOも口を出せない

 
──2番目の役職とはどういうことでしょうか?

 
ミール氏 権限についてです。今、私が務めているPsychic VR Labでも海外展開については一手に任せてもらっていて、CEOの山口さんをはじめ、役員の方は口を出さない。

 
──ちゃんと権限が渡されていて、自分の意思で色々決められるという?

 
ミール氏 そうですね。私は8月1日入社なんですが、日本企業ならそんな人が、海外イベントに出張して登壇したり、スペイン語を勉強するための経費をいきなり使うのは、ちょっと遠慮してしまいますよね。

 
──確かに。

 
ミール氏 今までUnite AustinOculus Connect 4SVVRKelidscopeなどの海外イベントで登壇してきて、12月はVRXやUploadVRのイベントにも出演します。ほかにも弊社のSTYLYを使ってもらうために、韓国、日本、インド、パキスタン、アメリカの大学とも交渉したりと、この2〜3ヵ月に1人だけで全部やってきました。これが「誰かの承認が必要で……」となると、ここまでのスピードでは展開できない。

 

 
──日本の会社だとありがちですね。まず上長に話を持って行って、課長、部長、必要なら社長にまで話がいってハンコを押してもらったりとか。

 
ミール氏 12月のVRXではブースも出すのですが、CEOの山口さんは来たらダメということも言ってます。

 
──えー!

 
ミール氏 前にも言ったように、展示会のブースには若い人のほうが向いてますから。

 
──確かに。日本人のおじさんよりも効果的に人を集められるという。

 
ミール氏 そこでビジネスを決めるわけではなく、単にデモをして、向こうが興味あったら名刺交換してあとで交渉に入りますよね。その責任者は私で、私の考えでは若い人を起用したいから、「来ないで」って。

 
──すごく権限が与えられてますね。それをよしとする社風というのは、外国人にとっては働きやすそうです。

 
ミール氏 でもそうやって自由にやらせてくれるおかげで、入社前にVRゴーグルを被ったことすらなかった私が、Oculus Connect 4に登壇しても詳しい人と同じレベルで話せるぐらいに成長できた。

 
──そこは一生懸命勉強した?

 
ミール氏 もちろん。あとは変な承認とか、プレッシャーがなくて自由感があったから。人ってやる気が一番大事ですよ。

 
──おっしゃる通りだと思います。

 
ミール氏 海外事業を展開するために私を採用したんですよね? だから手を出さないでって。もしアシスタントとして採用したなら、社長が全部戦略・戦術をつくって実行して、私はアシスタントだけ。はっきりしてます。

 
 

銀行口座にいくら振り込んだかが大切

──3番目の年収については、どういった話でしょうか?

 
ミール氏 単純に海外企業って年収が高いんです。日本は年齢などで他の人と調整しますが、それはやっぱり無理。GoogleのCEO、サンダー・ピチャイ氏は、2016年に主にストックオプションで2億ドル(約220億)の収入を得ています。

 
──日本だと、社長がそもそもあんまりもらってなかったりもしますよね。

 
ミール氏 だから周囲ももらっていなくて出せないって話になる。でも海外企業なら年収が3000万円なのに、なぜ1000万円の日本企業に来るの? 基本的に日本は海外のIT大手より年収が2分の1〜3分の1になります。

 
──確かに。よっぽど日本好きとか、日本に住みたいとかじゃないとメリットがないですね。

 
ミール氏 能力が高い人は、お金も大好きです。だから年収も上げないとダメ。海外の文化は、年収をあげてから結果を期待します。また、結果が出たときはさらにBonus Compensation(ボーナス報酬)を追加します。

一方で、結果が出ないときはリーダーを首にします。でも、日本の場合はプロダクトが失敗するとリーダーを首にするより開発チームのせいにします。リーダーがつくった戦略なのに、開発チームのせいになるのはおかしいです。体が脳の指示通りに動いていてダメだったら、体より脳を変える必要がありますよね。

 
──日本では法律もあって、中々解雇しにくいという状況もあります。

 
ミール氏 それなら契約社員として採用すればいいのでは?

 
──確かにそれで年収が多ければ、別に問題ないですよね。

 
ミール氏 問題ないでしょ。私なら契約社員で年収が倍の方がもっと嬉しいです。日本では福利厚生など優しい面もいっぱいありますが、外国人から見ると自分の銀行にいくら振り込んだかが大事なんです。

 
──身もふたもないですが、その通りですね(笑)

 
ミール 会社の冷蔵庫にビールがあって飲み放題とか、そういうのはあればいいけど、いらないんです。社員にお金を渡さないで、外注しちゃうのももったいないと思います。日本企業で、この人の月収が100万円で、お金を払えば倍のパフォーマンスが出せる才能を持っているから200万円にしようという話があると、必ずダメと言われます。役員がダメとか、周りがダメとか、年収がズレるとかね。そしてその100万円を外の人に払っちゃう。

 
──社内にノウハウを持った人がいるほうが、やりとりの面でも何かと便利ですよね。

 
ミール ノウハウも社外にいっちゃうし、コンテンツも権利も社外に出てしまう。なにより、その社員のモチベーションにならない。スタートアップでいうと、ストックオプションや副業もモチベーションに関係してきます。

 
──というと?

 
ミール氏 リスクを承知で前の会社を辞めてきているのに、スタートアップでお金がないから年収も低い、副業ダメで100%ここにコミットしろ、ストックオプションも渡せないだったら、じゃあなんで来る必要があるの?

 
──恋人や親友の会社だったら手伝うかもしれませんが……。

 
ミール氏 それでも友達は友達、お金はお金です。Psychic VR Labでは副業OKをもらっていて、来年、外国人の人材紹介会社などを立ち上げる予定です。海外で副業OKというのは、その人が副業で売り上げをつくれるぐらいの能力を持っているなら、本業でもお金を稼ぐ仕組みをつくれますよね。やることが曖昧で、残業も多くて、権限もなくて、年収も低ければ、優秀な人材が働く必要ってありますか?

 
──条件については非常によくわかりました。最後に海外の人材を探したいスタートアップは、どういう風に探せばいいのでしょうか?

 
ミール氏 私ならLinkedInでいいプロフィールを持ってる方を探してオファーを出してます。

 
──いきなりメッセージなんですね。

 
ミール氏 大丈夫かな、相手に迷惑かなってのは気にしないで行動するのが重要です。別に結婚のためにプロポーズするわけじゃないですよね。
 
──仕事ですからね。

 
ミール氏 「できる」って言ってたらできるし、「できない」ならできない。簡単な話で、はい終わり。この人ができなかったら他に頼めばいい。

日本人は、申し訳ないとか、恥ずかしいとか、この人に断られたのは自分が足りないからとか考えちゃいますが、タイミングとか、相性とかもあります。ほかにも外国人の友達を頼ったり、海外のイベント行って「こういう人探してます」って言うと簡単に見つかります。自分からも色々と紹介できますし、来年は人材紹介会社を設立する予定です。

私自身、個人として海外展開やアライアンス、講演会の手伝いをしていますので、相談があれば直接連絡していただいて構いません。もちろん、SNSで(笑)。本当に軽い提案でも、何かしらお役に立てると思います。そういったところから、日本がモノづくりをするだけに止まらず、世界を舞台に活躍できる国になっていってほしいです。

 
 
(Reported by Minoru Hirota

 
 
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