AIの機械学習を手助けするのは……えっ、VR!?──スタートアップ・DVERSEが語るSYMMETRYの進化

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DVERSE(ディヴァース)は5日、「SYMMETRY LIVE – A.I. and xR in SYMMETRY –」と題したトークイベントを開催した。VRとAIをテーマにして、アバッタ、日本HP、ゼンハイザージャパン、HTC NIPPONといった企業からトップランナーを招いて2時間にわたって未来を語るという非常に濃厚な内容だった。先に簡単に触れたVIVE Focusに加えて、主催であるDVERSEの発表を掘り下げていこう。

 

「AIとVRの融合は近未来社会の縮図」

最初に登壇したのは、CEOの沼倉正吾氏。DVERSEが手がける「SYMMETRY」は、建築物のデータ(3D CAD)をバーチャル空間に出現させ、建物の外観や家具などのレイアウトを直感的に把握できるというアプリだ。操作も3D CADを読み込ませるだけと簡単で、チームやクライアントと一緒に視聴しながら打ち合わせができるのが特徴になる。

 

沼倉氏によれば、99ヵ国6000以上の企業や団体に使われており、リピート率は81.4%、平均利用時間は4時間44分とのこと。沼倉氏は「エンタメを含めたVRコンテンツの平均時間が2時間10〜30分ほどなので、それを大きく超えた利用時間」と、「使うとハマる」ことを強調していた。

 

なぜユーザーに受け入れられているのかといえば、SYMMETRYが「感覚の違い」を吸収してくれるからだ。例えば、家や店舗を建てるときに、顧客と建築家/デザイナーの感覚が異なるため、想像していたものと完成品が違ったというトラブルが考えられるが、言葉では「雰囲気が悪い」とか情緒的なものはなかなか伝えにくい。そこでVRを使えば、大きいものは大きく、高いものは高く、広いものは広いように見せられて、感覚的に伝えられるというわけだ。

 

そのDVERSEでは、3D CADをAIの教師データとして使うなど、AIとVRを組み合わせた新しいソリューションを構築している最中だという。

 

詳細は同社R&D部門のフェロー・瀬古保次氏が解説した。

 

研究の目的は、VRとAIが融合した先進技術の提供。「VRは現実世界のコピー空間がつくれて、その中で人とオブジェクトを相互作用できることが特徴だと捉えている。これとAIは親和性が高い」と瀬古氏。

 

報道でも周知のように、AIは特定条件においてすでに人間を凌ぐ能力を発揮している。例えば、顔や指紋、テロ犯を識別するなどの「画像認識」、注文を認識して商品を提供する「音声認識」、ウェブサイトの訪問客の質問にチャットで答える「自然言語処理」、囲碁・将棋などのゲームといった分野だ。

 

AIのVR応用では、例えばバーチャル空間にあるオブジェクトをAIで認識。ソファーなら大きさを認識して同じサイズのソファーを交換したり、シャンデリアなら照明が点いたり、障子ならスライドできる機能をつけたりといった自動化が可能になる。気に入ったら、ここから発注課金できるシステムも構築可能。

 

AIはVR空間の自動生成にも使える。現状、現実空間を取り込む際には、レーザースキャナーで対象物までの距離を測って三次元化する点群データを使う。この点群データをAIで画像認識・形状認識することで、CADデータを自動でつくる狙いだ。

 

一方でVRをAIで活用することも可能だ。AIに機械学習させるためにはビッグデータに加えて、さらに「これが正しい」「これは正しくない」と判別させる教師データが必要になる。現状、教師データは手作業でつくっていて、これに膨大な手間がかかってしまう。例えば、写真から鹿を判別する際、通常は何万枚、何十万というビックデータが必要で、認識してほしい鹿周囲や鹿自体を指定しなければならない。この教師データは1枚だけでもつくるのに手間がかかってしまう。

 

この課題を解決するためにVRで空間に鹿や木のオブジェクトを配置し、方向や背景を変えたパターンを大量生成して、その画像から教師データを作ろうという構想だ。

 

テーブルや椅子、ドアなど10種類の家具についてCADデータをバーチャル空間に置き、さまざまな角度から撮影して教師データに使うという実験を実施。1000ほどの画像を集めて十数枚の教師データを元に機械学習させたところ……。

 

学習した画像は98%、学習してない画像も93%の認識率という良好な結果が得られた。後者のうち、間違えた7%も人間が見ても間違えそうな難しい形状のものだったという。また、飛行機のCADモデルを使った形状認識の実験では、学習した画像で89%、学習していないもので77%という認識率だった。

 

さらにAIには強化学習という分野もある。これは教師データを使うのではなく、環境を用意してルールを決めればAIが勝手に学習していってくれるもの。Googleの「AlphaGo」も碁盤という環境とルールを提供して、機会同士で学習させていったら強くなった。この強化学習にもVRが使える。

 

例えば街の空間をつくって自動運転の車を走らせて、どういうところで事故が起こるのかを学習させる。VRなら、人間がAIと一緒になって運転することも可能。想像だけではなく、実際に体験できるというのが大きい。ほかにも介護ロボットで人を落とさないように運ぶための訓練をVRの中で行うという使い方も考えられる。

 

DVERSEにおける今後5年間のロードマップ。瀬古氏は「AIとVRの融合は近未来社会の縮図」とまとめていた。

 

VRでネット経由でバーチャルショップにログインして、柄などを変えながら家具を選ぶ──。ECにVRが活用される未来もそう遠くないのかもしれない。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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