スマホAR特化のハッカソン「Mercari AR Hacathon #0」 落ちゲーや落書き、ハンリョなどの受賞作をレポート!

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2017年12月17日、六本木ヒルズ森タワーにてメルカリ主催の1Dayハッカソン「Mercari AR Hackathon #0」が開催されたので、そのレポートをお届けする。「ARKit/ARCoreを活用したARコンテンツ」がテーマになっており、スマホAR特化のハッカソンであった。

 

開催概要

イベントの詳細、諸条件については以下のconpassの募集ページを参照のこと。

  
Mercari AR Hackathon #0 – connpass

条件はiOS向けの「ARKit」か、Android向けの「ARCore」のいずれかを使うことで、それさえクリアーしていればHoloLensなどほかのデバイスを使うのは自由だ。最優秀賞に賞金が出るほか、参加費無料で飲食提供がある上に、学生であれば交通費の全額支給がされるなど厚いバックアップのあったハッカソンで、実際の参加者にもかなり遠方から参加された方もいた。募集定員は50名だったが100名以上の申し込みがあって、抽選となっていた。

 

会場の様子

7時30分の開場後、8時から開会・イントロダクションとしてikkou氏が諸注意を説明して、開発スタートとなった。会場は六本木ヒルズ森タワー18Fの非常に眺めのいいところで、この日も快晴で富士山がよく見える中、絶好のハッカソン日和となった。

 

事前にチームを組んでがっつりと事前準備をしていたところもあれば、個人で参加し当日その場で組んだところもあった。チーム分けや滑り出しにとくに戸惑った様子は見られず、すべてのチームが開発時間中、まる1日真剣にもくもくと作業を続けており、開発・ハッカソン慣れした参加者が多いように見えた。

十分なスペックを備えたVR ReadyなPCやARCore対応のGalaxy S8の貸し出しもサポートされた。ただし、ARCoreについてはこの日の直前にARCore Preview 2の発表があり、これが(開催時点ではまだBetaであった)Unity 2017.3.0f2以降を必須としていたため、まずはUnityのアップデートから……というチームもあった。

 

また、ARKitとARCoreについては基本的にはカバーする機能は同等であるが、ARKitはUnityエディタ上からリモートでARKitを動作させたiOSデバイスをデバッグする「UnityARKitRemote」というライブラリがあり(※UnityARKitRemoteの詳細な機能については「iOS 11 & ARKitで始めるARアプリ開発 アップルが考えるいいARアプリとは?」を参照)、アプリをAndroid実機にデプロイしないと動作確認ができないARCore組と比較すると、イテレーションの効率に差が出ていたようにみえた。このあたり、ARCore 1.0の正式リリースに向けて、Daydreamと同様にデバッグが容易になる便利なツールのリリースを期待したい。

 

昼食時には三種類のお弁当を提供。さらにおやつタイムにはドーナツと、至れり尽くせりの状況の中、参加者達はもくもくと開発を進めていった。

 

 
 

チームプレゼン

18時30分に開発終了が宣言がされて、一区切りとなった。その後、各審査員の自己紹介から始まり、全19チームのプレゼンピッチが開催された。単にデモアプリを作り込むにとどまらず、コンセプトやテーマ、アプリケーション・ビジネスの展開まで踏み込んだメリットも含めアピールするチームも多く、本気度がひしひしと伝わってきた。

 

その後は夕食と飲み物が提供され、審査員による審査が並行して実施されながらの体験会の時間となった。

 
 

受賞作品の紹介

21時過ぎに審査員それぞれの個人審査が終了し、全体審査に入ったのち、21時30分過ぎから審査発表、表彰となった。筆者の個人的な感想として、「22時閉会」のスケジュール計画で、実際に最後の集合写真のタイムスタンプが22時8分というのはこの手のハッカソンとしては大変運用がスムーズ行われた印象だ。主催・運営・参加者ほか、協力された各位に賛辞と感謝の意を伝えたい。

それでは、各受賞作品の紹介を行う。最優秀賞のほか、準優秀賞、各審査員賞(5名で5本)の計7タイトルが受賞となった。

 
小笠原さん賞:チーム名「キャットハウス」タイトル「AR通貨取引所」

審査員コメント「お金が見えるのは大事」。

 

仮想通貨がARで所有量・取引量に応じたコインの山として表示されるアプリ。実際にAPIを叩いてその場で本当に売り買いができること、また、コインの表示もさることながら、2DのUI部分とアニメーションまで作り込まれている点にリアリティーの高さを感じられた。

 
橋本さん賞:チーム名「Okamoto’s」タイトル「mARry Christmas tree」

審査員コメント「(ARとして現実を拡張して)デジタルで閉じるのが多い中、再度リアルにまでもっていったところがよかった」

 

現実のクリスマスツリーに位置合わせをした後、クリスマスツリーのまわりをサンタが飛びまわる。サンタをタップするとサンタはプレゼントに逃げこむが、逃げ込んだ先のプレゼントが現実のツリーに仕掛けられたボックスに対応しており、プレゼント(アメ)が射出されるというのが一連の流れになっている。審査員コメントにあるように、現実を拡張してデジタルでのコンテンツに展開したあと、再度リアルにインタラクションする点が大変面白かった。

 
せきぐちさん賞:チーム名「不労取得」タイトル「5000超円稼ぐ!」

審査員コメント「先進的なXR分野で、苦労に対して報われないケースが多い中、なるべく手をかけずに報われることは大事」

 

Googleの「Vision API」を用いて、スマホのカメラで認識したオブジェクトに関連性の高い動画広告を流すAR広告システムのデモアプリ。PCを認識して、パソコンの広告動画が流れるデモとなっていた。広告としての効果の高さに影響する、認識精度とオブジェクトとの関連性の高さを外部に依存することで、Vision API等の精度の上昇に伴い、とくに苦労することなく広告収入も上がっていくことを期待しているとのこと。

 
川田さん賞:チーム名「SY」タイトル「ShareAR」

審査員コメント「リアル座標の共有・同期はARにとって大事な要素」

 

QRコードを相対的なアンカーとして利用し、サーバー経由で共有することで、現実世界の特定の絶対座標にマーカーを配置できるシステムのデモアプリ。無数のユーザーが各々のキーワードを入力し登録した上で、特定のキーワードでフィルターしたマーカーがAR空間上に表示される。データレイヤーとしては共有される中、ターゲットのキーワードで絞り込めるところまで実装できていることをアピールポイントとしていた。

 
田面木さん賞:チーム名「現逃旅団」タイトル「ARハンリョ」

審査員コメント「プロダクトとしての完成度が高かった。ARを使ったアプリケーションの市場、未来が感じられた」

 

理想のハンリョをARで召喚し、GPSを用いて現実の座標に待ち合わせた上で、ARハンリョが見たい映画や行きたいレストランなどを提案するアプリ。ハンリョであるキャラクターの髪色やボイス選択の作り込みもさることながら、待ち合わせの場所に「近くまできた遠い状況から」インタラクションが始まり、歩いて近くにしたがって会話が進む点のリアリティが高く、きっちり作り込んであるのを感じた。

 
準優秀賞:チーム名「上京戦隊シャレトンシャー」タイトル「はちゃめちゃAR!らくがきらんど」

審査員コメント「子供向けなのがよかった」「ストアでいますぐ300円で売ってほしい」「操作系含めたUIも作り込まれており、プロダクトとしての完成度も高かった」「「(ARなので)いくらちらかしてもいい、怒られない」という自由にしてよいというコンセプトがよかった」

 

まず、3D空間にドラッグで輪郭を引くことにより、自由な3Dオブジェクトを造形する。次にスプレーで好きな色を選び、塗っていくという2工程に別れたARによる3Dお絵かきアプリ。VRでもARでも空間にお絵かきをするアプリは多数あるが、3Dオブジェクトの造形と、それに好きな色を塗っていくという工程が別れているのが面白かった。体験させていただいた際にもコメントしたが、下手な絵を書くとうまい絵に自動的に変換されるお絵かきのように、適当な3Dオブジェクトを認識してきちんとした動物の3Dオブジェクトに変換されたりすると、ぬり絵のような楽しさがあるのでは、と感じた。

 
最優秀賞:チーム名「iida-hayato」タイトル「AR一列ならべて消すパズル」

審査員コメント「身体性を引き出すというコンセプト通り、動き回る必要があるのがよかった」「ARや3Dコンテンツへの挑戦は初めてとのことで、自分のスキルを広げるハッカソンの良さを体現している」「古い(枯れた)モチーフを使いながら、ここから引き算のできないゲームとしての完成度が感じられる新しさ」

 

「一列並べると消える有名なパズルゲーム」をベースに、ARKitを用いて奥行きのある2列のフィールドに対して回転やドラッグで移動させて積んでいくゲーム。ある一方から見ていると裏面の状況がわからないため、ぐるぐると動き回って表面と裏面を確認しながらプレイする必要があるほか、BLE経由でステージ・操作データが共有され、2台で協力プレイ(または妨害プレイ)ができるようになっていた。二人で表と裏の状況を実況しあうというコミュニケーションまでデザインされている。

 
 

他チーム作品のピックアップ

惜しくも入賞には至らなかったが、他チームの作品も一部ピックアップして紹介する。

 
チーム名「motucari」タイトル「さいくつの森」

エレコムのヴルームSDK対応モーションコントローラーを用いて、AR空間上に散らばった鉱脈を探して掘るゲーム。コントローラの操作感と効果音のマッチングが気持ちよく、XRとモーションセンサー内蔵コントローラの相性の良さを感じた。

 
チーム名「チームF」タイトル「コメツケAR」

メルカリの商品に、ARでコメントがつけられるアプリ。AR上で商品の特定の箇所に線を引っ張ってコメントすることができ、車などや家のように大きいアイテムに対してAR空間上で視点を変更の上コメントが扱えるようになると便利になるのでは、といった想定する展開もアピールしていた。

参加チームの中では唯一のWebAR製で、対応ブラウザー(Chromiumの拡張クローンがOSSとして公開されている)を用意すればワンソースでARKit, ARCore, Tangoに対応したコンテンツとなる。

 
チーム名「まじぽん」タイトル「colosseo」

「戦うのも観るのもすべてがARのe-Sports」というコンセプトで、3DAR空間上でビームを打ち合う対戦型シューティングゲームを、さらにもう一台のデバイスでARで見下ろし型で観戦できるというアプリ。

デモは3台を使って行われ、キャラクター同士がビームを打ち合う様子が観戦用デバイスからは俯瞰でわかりやすく観ることができた。キャラクターのまわりに浮いてる青い玉は残ライフを表現しており、「空中でビームを打ち合うとお互いに全然当たらないということはないのか?」という質問については、「現実装ではキャラ同士が近すぎたせいか、逆に当たりやすすぎて打ちまくった方が勝ってしまう状態になっているが、チューニング可能な範囲の認識である。」という回答をいただいた。

ARシューティングの類は索敵がとても大変だったり、全然当たらない/全然避けられないということになりがちだが、ARKit世代の追従性があれば、そのまま快適な操作性に繋がるパフォーマンスがありそうだという可能性を感じられた。

 
チーム名「現実拡張(しなさい)」タイトル「コエカタマリAR」

音声認識結果をARで空中に配置できるアプリ。英語/日本語の言語切り替えのほか、フォントの変更などに対応していた。空中に配置された文字列をドラッグして回転・移動することができるのが面白かった。3次元マウスとして入力に使う方式は応用範囲が広いと思われる。

 
チーム名「imaginaryShort」タイトル「AudAR(オーダー)」

AR空間上に3D音声に対応したオブジェクトを配置していき、その中を歩き回ることで特別な音響空間を再現できるアプリ。プレゼンでは現在観光地になっている史跡などで、実際にその建物で行事が行われていた昔の状況を音源で再現することができる事例が紹介されていた。

イヤホンを装着し、スマートフォンを保持した状態で歩き回ると、適切に3D音声に対応した複数の音源オブジェクトが空間を演出する動作をしていた。音源オブジェクトの配置後は(ARKitが動作するカメラさえ外に出ていれば)手にもって画面を見ている必要がなく、応用ケースの多そうに見える機能だと感じた。群像劇の時間的な再現や、そもそも単純に音源と音位を扱った芸術作品向けにも使えると思われる。

 

最後に

トラブルらしいトラブルも発生せず、ほとんどの時間をもくもくと大人しく開発されている方が多く、地味な結果に終始するかとも思ったが、「すでに事前にコンセプトの検証やイテレーションをそれなりにまわしている」準備万端のチームが多かった模様。プレゼンピッチからバリエーションの豊富なアプリ・デモシステム紹介とあわせて十分に現実味のあるビジネス展開をアピールするチームも多く、非常に有意義で濃い内容のハッカソンであった。

ARは最近になって新しく生まれた概念ではなく、目の前の限定的な現実世界を手に持ったデバイスで拡張するスタンドアローンでローカルのシステムではどうしても目新しさにとぼしい。

すでにインターネットと連携したサービスをARでさらに広げたり、そもそもARならではの世界をクラウドを利用して共有し、仮想的な情報レイヤーを新規に定義するものや、あるいはデジタル・ファブリケーションのようにMaker・IoTの流れでより手軽になったハードウェア・アナログ世界と連携するような、「2017年以降だからこそのAR」が今後広がっていくのを楽しみにしている。

 
 
(TEXT by ようてん

 
 
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