ついにハシラスが法人化! トップ3人に聞く「手品が生んだ20年来の縁」

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ここ2、3年の日本のVR業界において存在感を放ってきたコンテンツのひとつに、乗馬ゲームの「Hashilus」がある。健康器具の「ジョーバ」にまたがってVRゴーグルの「Oculus Rift」をつけると、まるで馬の背に乗ったような乗馬レースを体験できるというアトラクションだ。

 

 
単なるデモに終わらず、ハウステンボスの常設展示やJRAのイベントで採用されたりと着実に活躍の場を広げてきたが、ここにきてそのHashilusチームが昨年12月、「株式会社ハシラス」として法人化したというニュースが飛び込んできた。

 
創業メンバーは、Hashilusのプロデューサーである藤山晃太郎氏、レストラン「Cova」の専務取締役を務める吉岡仁氏、国際案件も手がける弁護士の三好慶氏という3名になる。一体、どんな縁で3人が出会って、どういった経緯で企業するに至ったのか。3人に直接インタビューした。

 
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手妻師としても有名な藤山晃太郎氏。

 
 

17万人が体験した「鳥獣ライド」

——まず、Hashilusを始めとする藤山さんがつくってきたVRアトラクションを教えてもらえませんか。

 
藤山 Hashilusの企画がスタートしたのが2014年の2月ぐらいで、桜花一門さん、長谷川晴久さん、村上修一さんらの協力もあって1ヵ月ぐらいで乗馬マシンができました。それを3月にホリエモンさんのトークイベントで初披露したり、4月のUnityのイベント「Unite 2015 Tokyo」でOculus創業者のパルマーさんに乗ってもらったりして、割と注目を集めました。

 
——そういえばパルマーさんも乗ってましたね。

 

 
藤山 5月にはハウステンボスの社長に体験いただいて、7月5日にオープンした「ゲームミュージアム」にHashilusを8台常設してもらうようになりました。うち4台のコンテンツを、その年の12月に「鳥獣ライド」に切り替えています。

 
——Oculusを常設しているのって秋葉原の「G-Tune:Garage」さんなど、日本にあまりないですよね。

 
藤山 余談ですがこの前、ハウステンボスにメンテナンスにいって鳥獣ライドのプレーログを見たら、年間の体験人数が17万ぐらいでした。1日数百人が乗って、それが365日ですからね。

 
——17万!? 前にVRまつり秋を開催した際、トークセッションで「進撃の巨人」の360度シアター「哮」が10万人と聞いて、「それは日本で最も多くの人が体験したVRコンテンツでは」と私が言ってしまいましたが……。

 
藤山 それは嘘ですね(ニッコリ)。かつHashilusと合わせると20万をゆうに超えます。さらに2014年12月には、秋葉原のベルサールでJRAのイベントに協力し、2015年の2月にぶら下がり健康器を活用したジェットコースター体験の「Urban Coaster Hardmode」を発表して、その年のUniteにも出しました。

 

 
——Urban Coaster Hardmodeのブランコは、最初、空から飛び降りる「スカイバンジー」で使ってましたよね。

 
藤山 そうですね。VRがあまりにも一般になじみがない中、まず「やってみたい」と思わせる導線をつくる試みでした。体験そのものを面白くするのはもちろん、体験したくなるように見せる。これは芸人の感性なんです。

 
——藤山さんの本業は、古典奇術の「手妻」を披露する「手妻師」ですものね。

 
藤山 舞台の上で芸を披露するというのは、その場にいる全員がお客さんになるんです。その辺を歩いてる人も含みますし、列に並んで退屈そうにしてる方もそうで、ここをどうやって楽しませるか。スカイバンジーでも、予想を裏切るように落ち方が違うパターンを2つ用意して、さらにリアクションのいい人がいると周辺の人が注目して笑顔が広がっていく。そういう感性は、芸能の世界でみがいてきたものです。

 
三好 舞台人ならではですね。

 
藤山 その他、日の目を見ないVRアトラクションも結構なペースで開発してきました。一昨年のOculus Game Jam(現VR Game Jam)から車椅子をつかったVRアトラクションもつくり始めましたが、結局、VR酔いの問題を解消できなかったので断念しました。依頼があればもっとよくできると思いますが、趣味活動でやってる以上はモチベーションが続かないと続けられない。

 
——成功だけじゃなくて、紆余曲折があった上での今なんですね。

 
藤山 そうですよ。でもそれを失敗と片付けてしまうのは早計で、確実な遅い歩みではあります。他社がこれから経験するであろう「地雷」を先に踏み抜いて、何がダメかという知見はたくわえてきていますから。

 
 

当方、VRプロデューサー 社長急募

——吉岡さん、三好さんがHashilusを体験したのはいつですか?

 
藤山 プロトタイプに乗ってもらったので、2014年の3月とか4月とかそのあたりだと思います。

 
三好 吉岡さんの店(Cova)のゲストルームで大騒ぎしたっていう。でも当時は一緒に会社をやろうみたいな感じではなく、「面白いね」ぐらいの話でしたよね。僕らもアッキーさんとそこまでからむ感じではなかったですし。

 
——??? アッキーさん!?

 
藤山 ……すいません、私のあだ名です。

 
——なんと!

 
藤山 3人とも手品つながりで大学時代からの付き合いなんです。もう20年ぐらいになりますか。

 
三好 大学は違うんですけど、みんなで舞台をやろうという集まりがあって。

 
吉岡 6大学のどこにも手品部があるわけですが、上手い子って各大学2,3人ぐらいで、あとは飲みサーみたいな感じになるんです。上手い子は同期でも貴重。

 
三好 だから大学を超えてつながるんです。

 
——やる気のある人々が集まった舞台を、みなさんで定期的に開催していたということですか?

 
藤山 大学のオールスターショーみたいのがあるんです。そこで出会いました。

 
三好 僕はひとつ下ですね。当時、吉岡さんの家に泊まって延々マニアックなことを語り尽くすみたいなこともやったなぁ。

 
吉岡 オタクなビデオを延々見る会とか。

 
三好 コアなことが好きでしたよね。

 
藤山 吉岡さんは学生の当時から手品の仕事を引っ張ってくるのが得意で。

 
吉岡 人が足りないと、よく2人を呼び出していたね。

 
藤山 お互い営業を斡旋し合ったり。

 
三好 営業の話って、うまい人にはいっぱい回ってくるんですよ。そして吉岡さんは一番集めていた。

 
藤山 いやー、同世代ではちょっと常軌を逸してました。

 
吉岡 企業のパーティーとか、結婚式とかいろいろ入ってきてましたね。

 
三好 特に12月は休みがなくなるぐらい回ってました。

 
——すごいご縁ですね。でもそこから実際に起業に動き始めたのは?

 
吉岡 卒業後もちょくちょく会ってましたが、別の共通の友人がきっかけで、去年の秋に会った際、今でもVRアトラクションをブラッシュアップしていると聞いて、Urban Coasterも体験させてもらった。そして、なんやかんやと手品談義をしてるときに、個人事業主でVRアトラクションをやってるのも限界あるでしょっていう話をしてて……。

 
藤山ぶっちゃけ「急募社長なんですけど」って。うちは開発者と手妻師だけで、経営できる人がいなくて。

 
三好 手品もVRも同じ錯覚をうまく使うんです。だから通じるところもあると思って、アッキーさんならすごくプロデューサーに向いてますね。

 
藤山 その共通点は感じるよね。

 
三好 単純に技術的なところだけじゃなくて、魅せる、表現することに磨きをかけてきたことがプラスされてるからこそ、Hashilusができたところがあると思います。

 
 

シェフもエンジニアも同じ職人

——起業にあたって藤山さんからは「お前らじゃなきゃダメなんだ」的なアツいプロポーズがあったとか?

 
藤山 なかったですね。

 
三好 それこそ、お酒でも飲みながら「どうする?」「いいんじゃん」みたいな感じでした。元々、吉岡さんのお店で法務に関わっていたので、経営は彼で、法務は僕という役割分担です。

 
吉岡 まぁ法人を作るかと。社長は彼(藤山さん)でいいけど、まわりをどうしようって。3人ぐらいいればいいだろうから、じゃあうちらでやるかと。飯を食いながら決まった感じです。

 
藤山 僕、ここの傀儡政権ですから。

 
——しかし、起業するにしても、VRアトラクションの何に一番ピンときたのでしょうか?

 
吉岡 われわれもいろいろビジネスをやってると、面白いなっていうのが感で分かるんですね。

 
三好 僕も弁護士として、生まれたり、なくなってきた企業をいろいろ見てきた感覚からすると、「手に職」というか技術がある企業はやっぱり強いですね。VRでいいもの、圧倒的に技術力を持っている。だから開発のところは夢を追っていただいて、われわれ2人は脇を固めていく体制でいこうと思います。

 
吉岡 彼(三好さん)は、放っておくと法務周りと権利がらみをガリガリ勝手にやっててくれるんです。じゃあ金回りのところは私がみるよって。

 
藤山 それ一番助かる。

 
三好 アッキーさんが悩むとクリエイティブが生まれない。彼が面倒なところはこっちに預けてもらって、クリエイティブに専念してもらうのが一番。

 
——素晴らしい。

 
三好 感情的なところでいうと、3人で一緒に夢を追ってきた仲間でビジネスできるっていうのは、「ムネアツ」な展開ですよね。

 
吉岡 みんな本業があるので、そこも安心かな。

 
藤山 ハコスコの藤井先生もよくおっしゃっていますが、自分の主たる活動とか根幹っていうのがある状態だと冒険できるようになるんですよね。「VR王に俺はなる!」みたいな。そしてフリーランスの僕の立場なら、軽いフットワークでいろいろな人にHMDをかぶせにいける。

 
三好 アッキーさんは適役ですよね。営業担当兼社長みたいな。

 
藤山そうそう。実際の社長は違ったりするんですけどね。黒幕が後ろにいてくれる。

 
吉岡 夢を語る人じゃないと「洗脳」できないからね。

 
藤山 ただ、決して技術者をないがしろにしてるわけではないというのはきちんと言っておきたいです。そこは失礼のないように、今までハシラスという企画を開発してきたエンジニアのみなさんに経営、取締役を希望されますかとおうかがいして、もしやるのでしたら経営に専念してくださいと。でも経営はプロに任せる選択肢もありますけどどうでしょうと相談したら、みなさん株主ではありますが取締役ではない、開発者としての立場を選ばれました。やっぱりみんなつくる仕事が楽しいわけであって。

 
——すごくわかります。

 
藤山 それに技術者だけが集まって起業するのは、ちょっと危険かなと。少なくとも自分自身が危うい、無理って思ってしまって、経営の適性があるとは思えなかった。やっぱり演出をしたい、企画をしたい、営業をしたい方が強いんですね。そんな人が船の舵を取ったら大変なところに行っちゃいますよ。

 
今いるメインの開発者たちは創業メンバーとして非常に重要な、誰一人かけてはいけない大事な仲間です。ですが、会社の取締役としてやっていくのは、経営が分かる人にやってほしい。

 
——それはOculus VRの創業者であるパルマーと、CEOのブレンダンの関係に似ていますね。

 
吉岡 レストラン業界でも、メディアに出てるシェフは、それ以外にお金を稼ぐ人がたいてい別にいたりします。彼らも職人さんなので、つくりたいものがつくれれば幸せという人も多い。それはエンジニアも同じですよね。

 
 

移動式の遊園地を実現したい

——そんな「アッキーさん」に最後、夢を語っていただいてもいいですか?

 
藤山 僕、今「超人スポーツ」にも深く関わっていたりするんです。没入型のHMDは、実はVRの表現方法のごく限られたひとつであって、そうじゃないものもいっぱいあるんですよ。例えば、DCEXPOとかに参加して、エンターテイメント的な要素と先端の技術に触れるとすごくワクワクする。知能が刺激されるところにすごく可能性を感じています。そうした体験を提供できる場を、首都圏だけでなく、いろいろな場所で展開していきたい。

 
——具体的に言うと?

藤山 移動式の遊園地、つまり「VRキャラバン」です。元々のキャラバンの成り立ちは、商人たちの集いなんですよ。一人だけでは、治安や気候が変わったり、砂漠などの難所越えに当たったりすると、倒れてしまうことも多い。でもそうした比較的力の弱い個人でも、リーダーの元に数をなして進めば困難を乗り越えて大きな商売ができると。それって今のVR業界で求められている活動じゃないかと思っていて。

 
三好 Hashilusがリーダー役。

 
吉岡 オーガナイザーだよね。コンテンツ自体はうちで作るものがあってもいいけど、外注しちゃってもいい。

藤山 そうそう。外注もそうだし、今あるシステムのコンテンツを入れ替える横展開もできると思う。

 
——うーん、こういう才能が集まってくるから、やっぱりVR業界は面白い!

 
藤山 そうですね。でもまだまだですよ。これから別業界の第一線で活躍してる一流の人が入れば入るほど、ますます盛り上がっていくと思います。ぜひこれからも期待してください。

 
 
(聞き手/Minoru Hirota

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