VIVE Proの購入方法は? バーチャルYouTuberって知ってる? HTCのレイモンド・パオ氏に聞くVRの今

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VR業界において、今年のCESにおけるビックニュースといえば、HTCがVIVEの上位版にあたる「VIVE Pro」を発表したことだろう(ニュース記事レポート記事)。出荷時期や価格は未定と、まだまだ謎の多いこの製品。CESにて、HTCでVRと新技術のVPを務めるレイモンド・パオ氏にインタビューする機会を得たので、根掘り葉掘り聞いてきた(以下、敬称略)。

 

VIVE Pro。

 
 

最初は既存ユーザーにHMDとリンクボックスを提供

──VIVE Proという名前の理由は?

 
レイモンド VIVEをリリースした後に、エンタープライズ、ビジネスユーザー、プロシューマーのユーザーと話していてわかったのは、みなさんより高いクオリティーを求めているということでした。だから一般市場にはVIVEを売りつつ、別セグメントを用意することにしました。それがVIVE Proという名前の由来です。

 
──プロシューマーというのは、VIVEをつくったときに想定していなかった新しい市場が生まれたからつくったのでしょうか?

 
レイモンド われわれはマーケットはピラミッド状態になっていると認知していて、プロシューマーと一般層はニーズが違います。一般層は、面白そうな体験と価格で購入を決めますが、プロシューマーは品質重視で価格はそこまで敏感ではない。それは例えばカメラ市場も同じことで、コンパクトカメラの一般層とは別に、レンズを交換できるプロシューマー向けの製品セグメントもあります。それとは別に、より高品質なディスプレーやオーディオ、使い勝手のよさを求めるエンタープライズのニーズもある。そうした背景があって、われわれは再度、新しい製品コンセプトを打ち出したのです。

 
──VIVE Proをつくる上で一番大変だったことは?

 
レイモンド VIVEをリリースした後に、ディスプレイ、オーディオ、ケーブル、ヘッドストラップなどさまざまな課題が見つかりました。その解決方法のひとつとして「VIVE デラックスオーディオストラップ」をリリースしたわけですが、アップグレードした人もいれば、そうでなかった人もいた。そこからいい体験をしてもらうためには、全体のバランスが重要なのではと気づいたわけです。

新しいデザインではそのバランス、特にメガネをつけたままでの体験に気を使っています。VIVEではメガネの種類によっては装着が難しいですが、VIVE Proではその辺が変わっています。このエルゴノミクスデザインを実現するために、多くの時間をかけてテストを繰り返し、多くの人が簡単かつ快適に装着できる状態にしました。

 

VIVE デラックスオーディオストラップ。

 
──今回、解像度がポイントだと思いますが、4Kではなく3Kにした理由は?

 
レイモンド それは技術的な制限です。ひとつはディスプレーの入手しやすさについて、もうひとつはPCの処理性能が挙げられて、そのバランスを考えなければいけない。ディスプレーを高解像度にすればするほど、PCの処理性能も必要になっていくわけです。そうした複数の要因で、今回は3Kでのローンチとなりました。

 
──VIVE Proの最低動作スペックはどうなるのでしょうか?

 
レイモンド 今のところVIVEと同じで、内部的にもGeForce GTX 970や1060で多くのコンテンツをテストしています。というのも、今まで開発者に対してGeForce GTX 970や1060でチェックするように指示していたのに、Proのために新しいPCを買わなければならないとなると混乱を招いてしまう。根本的には動作スペックを上げていくでしょうが、今は考えていません。

 
──VIVE Proのベースステーションは、SteamVR 1.0と2.0の両対応ということでしたが、標準で付属するベースステーションはどちらになりますか?

 
レイモンド VIVE Proは当初、HMDのみでの提供で、その後パッケージとして発売予定です。

 
──ということはベースステーションなどは別に買わなければいけない?

 
レイモンド まずは既存のVIVEユーザーに対して、HMDとリンクボックスのセットを送る手段を用意します。既存のVIVEとリンクボックスをPCから抜いて差し替えれば使えるというのが最初の提供形態です。その後、既存のモーションコントローラーやベースステーションを同梱したパッケージも発売します。

 
──その同梱されるベースステーションは1.0と2.0のどちらになりますか?

 
レイモンド おそらく2.0だと思いますが、後日の発表とさせてください。

 
──そのアップグレードキットは全世界対象でしょうか?

 
レイモンド はい。ワールドワイドで展開します。

 
──Valveが開発中のモーションコントローラー「Knuckles」についてはどうでしょうか?

 
レイモンド Knucklesについては、まだ技術ステージと見ていて、発売する予定はありません。

 
──KnucklesをVIVEに対応させる予定は?

 
レイモンド まだそれを判断するには早い段階で、価格や対応コンテンツなどさまざまな要素が明らかになってからですね。

 

Knuckles。

 
──しかしVIVE Pro、とてもよさそうなので早く欲しいのですが、いつ頃発売できそうでしょうか?

 
レイモンド それはまたタイミングを改めて発表します。詳しい時期は言えませんが、もちろん2018年内には提供しますよ。

 
──VIVE ProはmacOS対応になりますか?

 
レイモンド VIVEもVIVE Proも新しいmacOSとiMac Proでサポートしています。

 
 

VRと周辺技術はアニメ制作を加速する

──続けてマーケティングの話を聞きたいのですが、VIVEではコンシューマー向けとビジネス向けのどちらが成長しているのでしょうか。

 
レイモンド 2016年にスタートした時点ではゲーミングがVIVEの中心でしたが、2017年の特に後半は医療や教育、ショーイベントなどエンタープライズの成長が著しかったです。われわれも今年は多くのリソースをエンタープライズに注ぎ込もうと考えています。そういったこともあって、このタイミングでVIVE Proを発表しました。

 
──場所で見ると、VIVEが多く使われているのはどの国や地域ですか?

 
レイモンド 一番はアメリカで、高性能なPCの所有率が高かったり、家が広いので最大で対角5mのルームスケールを実現しやすかったりという理由が挙げられると思います。文化的な側面もあって、親がクリスマスにXboxやPS4をプレゼントするように、ゲームが家庭に溶け込んでいて普通の娯楽なんです。一方で台湾や中国、日本などのアジア圏では、高校にもなるとゲームが制限されて勉強しなさいという風になる。

また特に西海岸には技術のエンスージアスト(熱狂的な支持者)も多く、新製品が出ると試している。オンラインコミュニティーも盛んで、人々が投稿しあって何かを買うときにも積極的に助け合っている。そうしたさまざまな理由があって、世界の中でアメリカが一番大きなマーケットになっていると推測しています。

 
──そうしたアメリカなどと比べると、日本市場はどういった特徴がありますか?

 
レイモンド 日本も重要なマーケットと認識していて、アジアの中でもトップ2に入ります。部屋のサイズの制限もありますが、お金も持っていて、ゲームを遊ぶ習慣もある。大学や企業の研究所で昔からVRやARの関連の研究が続けられていて、新しいコンテンツも多く日本から生まれているので、HTCでも2015年から日本でデモをしていたりします。

 
──日本のコンテンツというと、HTCはスタートアップ向けのアクセラレータープログラム「VIVE X」に「hololive」のカバーを採択していました。この理由は?

 
レイモンド それは当然コンセプトがよかったから。バーチャルシンガーを知ってますか?

 
──初音ミクですかね?

 
レイモンド はい。ここ数年で新しい楽しさやコンセプトを生み出してきています。われわれもVIVEとVRがあって、中国ではライブストリーミングがとても一般的で、多くの配信者がお金を生み出しています。hololiveはその両方を足した「バーチャル配信者」というコンセプトで、アニメーションでライブストリーミングができる。

バーチャルシンガーがバーチャルアクターへと変われるのは、個人的にはとてもいいアイデアと思っていて、多くのマンガのIPがVRに持ち込まれることで業界に非常にいい影響がでてくるでしょう。

 

Hololive。

 
──レイモンドさんは、日本ではここ1ヵ月ほどで「バーチャルYouTuber」が流行しているのはご存知でしょうか?

 
レイモンド いや、知らなかったです。ただ、将来的にはそういったものがもっと手軽に一般的になっていくでしょう。私がバーチャルYouTuberになろうと思ったときに、VIVEやVIVEトラッカーを入手すれば、たとえ自分の見た目があまりよくなくてもアニメーションとしてYouTubeに投稿できる。

 
──レイモンドさんもそうした流行を予見していたとか?

 
レイモンド いや、ただ非常に可能性があるジャンルで、カバーと話をしたときにもそう感じました。ライブ配信も今後、PCとウェブカメラを用意するのではなく、スマートフォンからもっと手軽に配信できるようになるでしょう。そして現状、アニメーションもつくるのに手間とお金がかかりますが、将来的にはトラッカーやモーションキャプチャー機器を入手して非常に手軽につくれる。アニメはテレビの話だけでなく、VRとも相性がいい。それが可能性があるといった理由です。

将来的には、人々はフラットスクリーンを見るだけでは満足できずに、ある環境の中でアングルを自由に変えて見たり、VRの中でパフォーマーを目の前にしてイベントを体験できるほうを選んでいくと思います。

個人的な話でいうと、私がマンガを毎週読んでいたように、アニメーションも量産されて子供達が毎週見られるようになっていくでしょう。そうしたらマンガを読まなくなるかもしれませんね(笑)

 
──ちなみにレイモンドさんは日本のマンガが好きだったりしますか?

 
レイモンド はい。「スラムダンク」が大好きで毎週読んでました。そんな風に子供達がアニメーションを見るようになっていくと思います。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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