めずらし!! 遊べるHoloLensだ! ナンジャタウンの新機軸「PAC IN TOWN」&「蚊取りパッチン」をレビュー

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ナムコは1月15日より、東京池袋にある屋内型テーマパーク「ナンジャタウン」にて、マイクロソフトの一体型ARゴーグル「HoloLens」(ホロレンズ)を活用したアトラクション「PAC IN TOWN」を運営中だ。さらに2月10日より同じHoloLensを使う「一網打尽!蚊取りパッチン大作戦」もスタートしている。開発はともにバンダイナムコ スタジオだ。1ヵ月半の期間限定という両アトラクションの体験機会を得たのでレビューしていこう。

 
 

HoloLensで異例なアミューズメント施設の導入

HoloLensというと、VR/ARに詳しい人ならビジネス向けのイメージを持っている人も多いだろう。PANORAで報じてきた事例でも、業務効率の改善やトレーニングに使うという話が多く、今回のエンターテインメント活用は異例だ。

 
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http://panora.tokyo/38032/
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HoloLensの何がスゴいかといえば、QRコードなどの物理マーカーを事前に用意せず、特定の場所にいきなりCGを出せるところだ。前面にあるカメラで周囲をスキャンし、空間のマップをリアルタイムでつくって、そのマップに位置や方向を決めてCGを置くという仕組みなのだが、それをケーブルなしの一体型で実現してしまったことに多くの開発者が驚いた。

事前のマーカーの準備も不要で、PCなどを使わずに単体で手軽に運用できるとなると、AR分野での活用が進まないわけがない。そんなわけでHoloLensはまだ製品ではなく、開発者向け版しか用意していないにも関わらず、上で挙げたようなソリューションが続々と登場しているわけだ。ちなみにHoloLensにはWindows 10がインストールされています。

そんな前提を踏まえてのナンジャタウンだが、PAC IN TOWNはおなじみのレトロゲーム「パックマン」を人間サイズで実現していまったアトラクション、蚊取りパッチンはコースターに乗りながら周囲から迫り来る蚊を叩いて撃退するという内容になる。

 

 

 
 

蚊を手で潰す感が気持ちいい!

まず体験したのは、蚊取りパッチンだ。頭にHoloLens、利き腕にセンサー付きのバンド、両手に巨大な手のひらを装着。いったんナンジャタウンの中を歩き回って使い方に慣れたうえでコースターに乗り込み、さまざまな方向から迫って来る蚊の大群を巨大な手のひらで「パチン」と叩き潰して最終的なスコアを競うという流れになる。

 

HoloLensは、VRにおけるアイマスクのようにヘアバンドをかぶった上に装着することになる。

 

HoloLens自体にはオリジナルの耳あてがついており、周囲の音が大きいナンジャタウンでも蚊の音が聞き取りやすいように工夫している。加えて、耳のあたりにあるボタンを誤って押さないようにガードする意味もある。よく考えられている!

 

HoloLensの視界の端には、ボードのような青い枠と点数が現れる。あえて青枠を出しているのは、HoloLensの視野角の感覚がわかっていない初心者が体験した際、蚊が動いて視界の外に出たということが伝わりにくいから。視界の端がわかっていれば、頭を動かして探そうという発想に至りやすい。

 

さらに筋電位センサー「Myo」(マイオ)を利き腕につける。ARスポーツ「HADO」でも使われているデバイスなので、装着したことがある方もいるはず。

 

さらに巨大な手のひらを両手に持つ。Myoだけでも動きは取れるが、大きな手でパチパチ叩くことで大きな音が出て気分がいい。

 

完全装備の図。なかなか目立つ格好だ。

 

壁の「蚊」と書かれたパネルを見ると、そこにCGの蚊が出現。手でパチンとやって撃退しよう。ここはあえてプレイヤーに説明しやすいように、マーカーを使っている模様。

 

その練習の続きとして、ナンジャタウンに繰り出し、壁の看板を見て蚊を発見してつぶす。チュートリアルをしっかりやることで、コースターにいきなり乗って操作に慣れる頃に終わってしまったということを防ぎ、人目につく姿で歩き回ってもらうことでアトラクションも宣伝できる効果があるとのこと。また、見えにくかったり、体調が悪くて継続できないお客さんも体験前に辞めることが可能だ。

 

とここまで準備して、ようやくコースターに乗り込む。ちなみにコースター自体は1996年のオープン当初からある「爆裂!蚊取り大作戦」を活用したものだが、HoloLensのCGが変に浮かないように照明をかなり足しているとのこと。

 

ここにも蚊が出現するマーカーがあって練習可能。

 

あとはひたすら周囲を見回して蚊を発見し、パッチンで撃退していくだけ! 最後に撃墜数によってスコアが現れるのだが、10万点を超えれば高得点だとか。

 
体験してみた感想だが、まず物理的に叩いてパチンと鳴るのが気持ちよかった。VRにも、銃型コントローラーとFPSといったように、プレイヤーのリアルとバーチャルの体勢を合わせることで没入感を高めるテクニックがあるが、蚊取りパッチンでもCGの蚊を手を叩いて潰せるというのがとても自然だった。

加えて、筆者は潰すことに必死で気づかなかったのだが、音響も3Dオーディオになっていて蚊が来る方向からあの不快な音が聞こえるとのこと。難しい操作を覚えることなく、普段の感覚のまま遊べるというのが素晴らしい。

また、ライドアトラクションのAR演出にも大きな可能性も感じた。ジェットコースターでのVR活用は、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンや山梨の富士急ハイランドなどで事例があるが、VRなので視界全体が別世界になっていた。それが今回のような動きがゆっくりなコースターなら、作り込まれた背景美術を見せつつ、キャラや効果をCGで空間に出すというARの手法も選べるわけだ。

もともとの「爆裂!蚊取り大作戦」は、銃型コントローラーを撃って、コースターの左右に現れる物理的な蚊のオブジェに当てていくというものだったが、それが20年以上の時を経てビジュアルも操作も刷新できたことになる。このVR/ARと最適なデバイスを選んでアトラクションの体験を変えていけるのは、アミューズメント業界にとってかなり大きな要素だろう。

1点、背景となる物理的なオブジェとCGのゲーム進行が微妙に異なって戸惑うシーンもあったものの、それ以上に「もっといいスコアを出したい!」と再チャレンジしたい気持ちになった。

 
 

動き回れるからレバーより直感的!?

もうひとつのPAC IN TOWNも体験した。こちらはあのパックマンでおなじみの迷路が8×8mの空間に出現し、その中をプレイヤー自身が動き回って落ちているクッキーを集めるというものになる。途中にいるモンスターに当たるとミスとなり、サイズの大きいパワークッキーを拾えば一定時間、色の変わったモンスターに体当たりして撃退できる。なお、迷路にある壁は、視界の関係もあって、今回は当たり判定なしで突き抜けられる仕様になっている。

とてもシンプルなルールだが、実際に体を動かして遊べるのがとにかく楽しい。ゲームのパックマンは移動速度は基本的に変わらないが、リアルなら早歩きでクッキーを集めることも可能だ。突然現れたモンスターにも止まってすぐに対応できるし、レバーで操作するよりも直感的だと感じた。HoloLensの視野角の制限であまり広い範囲は見えないものの、実際はそこまで不便には感じずに、2人プレーで5ステージすべてをクリアーできた。

何よりスタッフの方の実況付きでなのが盛り上がるし、第三者目線でプレイヤーが合成されたゲーム画面が巨大スクリーンに映し出されるので、周囲からも何をやっているのかがわかりやすい。周囲のお店で餃子などのフードを買って近くに座って食べれることもあって、グループで行ってみんなで楽しむのにぴったりといえる。

なお、蚊取りパッチン、PAC IN TOWNともに対象年齢は7歳以上となっている。アトラクション遊び放題のパスポートチケットで体験できるので、ファミリーで訪れてクリアーできるまで何度もトライするのもアリだろう。

 
 

等身大パックマンの世界を動き回れ!

最後に企画を担当したナムコの森嶋伸幸氏、制作をディレクションしたバンダイナムコ スタジオの本山博文氏を中心に開発チームにインタビューした。

本山氏によれば、バンダイナムコ スタジオではMicrosoftが初めて発表した2015年1月からHoloLensに注目してきたとのこと。また森嶋氏によれば、その可能性を感じたメンバーが何かをつくろうと2016年に「MRプロジェクト」を立ち上げて、2017年1月に日本で発売される前から両社でワークショップを実施してずっと研究してきたという。

蚊取りパッチンは昨年5月から、PAC IN TWONは昨年夏頃から開発を始めて、PAC IN TWONは9月にオーストリアにて開かれたメディアアートの祭典「Ars Electronica」(アルス・エレクトロニカ)に出展して、6日間で300人が体験したという。そうした積み重ねがあった上で、2018年にナンジャタウンでお披露目になった。

HoloLensの導入に関して、森島氏は「蚊取り大作戦は、ナンジャタウンのオープン時からあるアトラクション。大幅リニューアルは難しかったのでマイナーチェンジしてきたものの、基本的な仕組みは同じなので遊び方を変えたい思いは前からあった。これまで物理的に設置していた蚊を、せっかくなので目の前に来られるようにした。そんな考えでプロジェクトが始まった」とコメント。

「なぜVRではなくAR?」という質問については、「VR的なライドにしてしまうと、せっかく作り込んだ内装が見えなくなってしまう。ナンジャタウンはそこの作り込みはきっちりやっていいるので、今までの延長上に見えるようにしたかった」と答えてくれた。

ナムコやバンダイナムコ スタジオでは、お客さんにどうやって新しい体験を提供できるか、それに最適なテクノロジーは何かということを念頭において新しい遊びを提案しているとのこと。バンダイナムコグループで見ても、昨今のVRムーブメントの初期から「サマーレッスン」や「VR ZONE」を生み出す挑戦をしてきた。

 
 
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インタビューでは、「サンシャイン60全体を使った『ドルアーガの塔』も面白いかもしれませんね。何かの近くにいくと精霊の声が聞こえるとか、最上階まで行ってアイテムが足りないから戻されるとか(笑)。小さい頃に夢見ていたことが、今の技術だと割とできるんです」という興味深いアイデアも出ていた。

ナムコとバンダイナムコ スタジオの力とAR/VRが合わさってエンターテインメントがどう変わっていくのか。引き続き注目して行きたい。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
一網打尽!蚊取りパッチン!大作戦
PAC IN TOWN
ナンジャタウン

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