一体型VRは毎日かぶれる「薄味」が重要 桜花一門・高橋氏に聞くModernArcheryVR開発秘話

LINEで送る
Pocket

桜花一門は4日、VRアーチェリーゲーム「ModernArcheryVR」を発売した。価格は200円。対応プラットフォームはGear VROculus GoDayDreamなど。

桜花一門の高橋建滋氏といえば、2013年からVRコミュニティー「JapanVR Fest.」(旧Ocufes)を立ち上げたり、叶姉妹をはじめとするタレントにVRを体験させまくったりと、昨今のVRムーブメントを押し上げてきた人物だ。桜花一門は2016年に起業し、2017年冬にPlayStation VR(PS VR)向けに発売したステルスホラー「CHAINMAN」に次ぐ2作目が今回のModernArcheryVRとなる。

開発コード名として「桜花一門のやべーやつ」と名付けられたこのアプリは、何がヤバいのか。高橋氏にインタビューしてみた。

 

高橋氏。

 

頭と手の動きの同時制御が「やべー」楽しい

──2013年のゴールデンウィークあたりにOculus RiftのDK1(初代開発キット)が日本に届き始め、昨今のVRムーブメントが日本で立ち上がってから早5年です。

高橋氏 そうですね。2016年の「VR元年」と1981年のマイコンブームの立ち上がりが同じスタートラインだとすると、順当な普及具合だと思っています。1981年は、マイコンでいうとPC-6001、家庭用だとカセットビジョンのあたりで、PS VRの国内販売台数が20万台と言われていて、PC-6001が15万台なのでかなり近い普及率でしょう。

 
──ファミコンの発売が1983年なので、その次にくる感じでしょうか?

高橋氏 そうですね。パソコンだとPC-8801Mrk2SRあたりで、「Oculus Go」や「Mirage Solo」といったこの春から発売された一体型VRゴーグルがそうなる可能性があると考えています。それを見込んで、弊社でも昨年からロケーションVRと、一体型をターゲットとしたストア販売の二軸でVRに取り組んでいます。

 
──ロケーションVRではどんなことをやっていますか??

高橋氏 先日のジャンプVRの記事で紹介された「ジャマイカ人と競争」のようなタイトルです。一体型の起用で機材費を、運用方法で人件費をともに抑えて、気軽に導入できるように「ジャストサイズのロケーションVR」と呼んでいます。ロケーションVR向けにつくったものをストアでも公開することで、さらに知見を蓄えて次のロケーションVRをつくる。このサイクルを回せないかと考えています。

 
──それが今回のModernArcheryVR?

高橋氏 はい。もともとアーチェリーを題材にしたイベント用のVRを作ろうと、社内で一人ゲームジャムをやっていたんですよ。そこですげー画期的な方法論を発見し、思わずツイッターで叫んだのが「#桜花一門やべー奴」でした。なにせ勢いあまってTシャツまでつくってしまいました。

 

勢いが余った。

 
──ちょ(笑)

高橋氏 それ以来、VR開発でコロンブスの卵的な発見をしたときに「#桜花一門やべー奴」のハッシュタグをつけて叫ぶことにしています。

 

毎日使いたくなるVRを目指して

──ところでModernArcheryVRでは、何が「やべーやつ」なのでしょうか?

高橋氏 弓を打つ姿勢です。ゲームとしては競技アーチェリーを再現していて、的に対して弓を放つという単純なものですが、実際にアーチェリーと同じポーズを取るとより当たりやすくなるように設計しているんです。

ソフトの仕組み的には、頭と手の微妙な動きの制御が重要になってきます。そこが一番の肝で、任天堂の宮本茂さんが言うことには「簡単なことを2つ同時にさせることで難しくなる。すると人は悔しがってのめり込む」って話があるんですよ。

頭だけで狙いをつけるのは簡単。手で狙いをつけるのも簡単。そこで今回のゲームでは、両方使わせて難易度を上げることで、できないことに悔しくなってのめりこんでもらうという仕掛けです。ルールも的を当てるだけと超簡単でわかりやすいですしね。

 

うまく狙って……。

 

放つだけ。

 
──一方で演出面ではかなりシンプルです。

高橋氏 色々な人からも言われましたが、自分はこれくらいの薄味がいいと、今思っているんですよ。テレビやPCディスプレー向けのゲームは、ディスプレーの実在間のなさから味付けを濃くしないと商品として成立しないと思うのですが、VRはVRというだけで実在感がはんぱなく、味が濃くなってしまうと感じています。だから薄味にしないとすぐ疲れてしまう。

直近の「VR元年」から2年が経ちますが、「毎日VRやっています」とか「徹夜でVRやった」って人はあまり増えていない。自分でもSteamでVRゲームを作って販売したり、フレンドユーザーが遊んでいるVRゲームの時間とか観察してますが、だいたい30分くらいでみんな止めちゃっているです。

 
──VRChatのように毎日数時間ログインしているタイトルもあります。

高橋氏 VRChatもかなり薄味ですよね。目的も敵も死亡も失敗もなく、緩い空間でただ好きなことをしているだけ。普通のゲームに慣れていると、ゲームはすごく派手なものにしなければという意識が働くんですけど、実際にそんな派手なものが楽しければ、どこかの皇帝や大富豪が現実でやっているはずなんですよ。

VRが発展するためには、VRを毎日被るようにならないといけない。そう思っていたところに、偶然このゲームが生まれて、自分でもほぼ毎日被って数回プレーするようになっています。

 
──毎日!

高橋氏 最初は面白いから毎日被っているんだと思っていたんですが、最近ちょっと違うんじゃないかって思っていました。もちろんゲームの面白さもあるんですが、自分はリラックスのために被っていると気が付いたんです。

 
──というと?

高橋氏 考えすぎて寝れない人の対処方法で、心の中で大きな声を出し続けるっていうのがあるらしいんですよ。人間は二つ以上のことを同時に考えられないので、心の中で大きな声を出し続けることに集中すると他の悩みに考えいかなくなるそうなんです。

実はこのソフトにも同じ効果があって、被ると外界から遮断されます。そこにあるのは弓と的だけ。的を狙うことに精神を集中させることで他の悩みを忘れられます。そして終わったあとには、集中から解放されてリラックスになるんです。自分はこれを「茶の湯」と同じ精神修練の作用があると感じています。

 
──なるほど。PCやスマホだと別の何かと並行しての「ながら見」プレーも多いですが、VRは単独で体験するしかないですからね。

高橋氏 そこが「#桜花一門やべー奴」なんです。だからこそ薄味にしなければいけなかったし、プレイ時間も1分くらいで終わるようにした。長時間拘束するのは忙しい人には無理だし、疲れるしで毎日遊ぶのには適さないんです。

そして一体型VRゴーグルとの相性もとてもいい。今、自分の手元にはいくつか一体型VR機がありますが、どれもすごく楽です。スマホをはめ込む必要も、PCとつなげるケーブルもない。ただかぶるだけでスリープ状態が解除されて、昨日の続きが遊べる。これは本当に手軽で、毎日VRを遊ぶハードルを一気に下げてくれます。

 
──先の例にも出した「ファミコン」がきた感じですね。今後、桜花一門でもそうした一体型VRに向けてソフトを出していくのでしょうか?

高橋氏 はい。次はModernArcheryVRをXiaomiが中国で販売している一体型VR「Mi VR Standalone」に移植します。先日、北京のコンテンツ担当者の所に乗り込んで、このソフトを見せて「Give me MiVR」って言ってきました。

 
──そのまま(笑)

高橋氏 英語が不慣れなもので、物言いが全部ストレートになるんですが、結果そっちの方がストレートに物事が進みます(笑)。「#桜花一門やべー奴」シリーズでも、2号が夏のイベントに向けてお目見えする予定です。

技術的にはVRMへの対応はやりたいですね。毎日遊ぶVRを自分の好きな姿で、同じく自分の好きな姿をした友人とネットワーク越しに遊ぶ。そうすることで毎日遊ぶVRにまた一歩近づくと思うんです。他にもスポーツ系を中心に制作予定で、リアルに回転するハンマー投げはいつか作りたいと思ってます。ぜひModernArcheryVRを体験していただき、毎日遊ぶ一体型VRのよさを実感してくださいね。

 

 
 
●関連リンク
ModernArcheryVR(Gear VR)
ModernArcheryVR(Oculus Go)
ModernArcheryVR(DayDream)
桜花一門

バーチャルクリエイター応援キャンペーン
         
バーチャルYouTuber   のじゃロリスタンプ