「N高」Gear VR入学式の舞台裏を取材——ネットと東京と沖縄で同じ空間を共有したい

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既報の通りカドカワは6日、バーチャルリアリティー(VR)を活用した通信制高校「N高等学校」の入学式を実施した。沖縄県の伊計島にあるN高本校より、現地の様子を360度カメラで生配信。東京都六本木のライブ施設「ニコファーレ」に集まった入学生がVRゴーグルをかぶることで、現地にいるような感覚で参加できるという内容だ。

 
VRを活用した入学式というと、世界でもおそらく前例がないはず。一体、どんな意図と仕組みで実施されたのか。配信システムを開発したドワンゴのエンジニア、岩城進之介氏の取材を交えてその全貌を明かしていこう。

 
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ニコファーレは、前後左右の4面が360度LEDに覆われている。さらにその会場の入り口にもLEDが用意されており、今回はN高の校門が表示されていた。

 

 
 

VR越しの校長式辞、LED越しの新入生宣誓

 
そもそもの話、N高は「ネットの高校」をうたっている。授業もレポート提出もネット経由で、質問を受け付けるのもメール。登下校も必要ないので、そうして空いた時間を自分のやりたい勉強に好きなだけ費やすというのが理念の学校だ。

 
課外授業を豊富に用意しているのも特徴で、ドワンゴのトップエンジニア、KADOKAWAから作品を出版する小説家やライトノベル作家、バンタンの外食/美容/クリエイティブの講師など、各業界のプロフェッショナルから教えてもらい、自分の可能性を探すことが可能だ。

 
第1期生となる今年度の入学者は、現時点で1482人。そのうち東京の会場に来たのは73人。全体に対してずいぶん少ないかと思いきや、その他の希望者はチャットツール「Slack」で自宅などからネット参加し、そのコメントがニコファーレ会場内の360度ディスプレーに映し出されるという、まさに「ネットの高校」らしい内容だった。

 
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こんな感じでサイドのディスプレーにコメントが浮かんでます。

 
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そんな式中でVRゴーグルは常につけていたわけではなく、校旗掲揚や来賓祝辞の場面で活躍した。100台体制でGalaxy専用のVRゴーグル「Gear VR」を用意。

 
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Oculus RiftはPC、PlayStation VRはPlayStation 4につながなければ動作しない。一方で、Gear VRはケーブルレスで利用できるため、今回のような大規模配信向きだ。

 
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ニコファーレ内にも沖縄本校の360度映像を表示して、VRゴーグルをつけてない人(主にプレス陣)にも現地の様子をわかるようにしていた。

 
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バーチャル空間では、正面にステージや校舎、ポールが映し出され、右手に来賓が並んでいた。校旗掲揚では徐々に上がっていくポールを見上げることに。

 
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来賓の方々も同様。左より、学校法人角川ドワンゴ学園の理事長で、カドカワ代表取締役会長の佐藤辰男氏、理事でスタジオジブリ代表取締役の鈴木敏夫氏、理事でKADOKAWA取締役会長の角川歴彦氏、情報通信技術(IT)政策担当大臣の島尻安伊子氏。

 
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学校長の奥平博一氏のあいさつもバーチャル空間を通じて視聴していた。「この本校がある伊計島は周りが海に囲まれています。昔の人たちは先の見えない海に向かって新しい挑戦をしたはずです。みなさんのまわりにも可能性にあふれた大きな海があります。今日からみなさんの船出です」と奥平校長。

 
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新入生の誓いの言葉もネット越し。こちらはVRゴーグルではなく、代表の塩屋さんがステージに立って、正面のLEDに生中継で映し出された奥平校長に宣誓した。

 
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「ネットで本当に友達ができるのか不安な方もいるかもしれません。しかしそれは、ネットもリアルも同じことです。ネットで知り合った仲間たちとつながりを持ち、リアルで会い、物事を作り上げていく。従来の高校ではできなかったことがN高では体験できるでしょう」と塩屋さん。

 
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式終了後の記念写真の撮影でも、奥平校長はネット越しで撮影されていた。

 
 

カメラは「魔改造THETA」を利用

 
実はドワンゴが360度生中継をするのはこれが初めてではない。小林幸子さんのコンサートをOculus Riftで、ニコニコ超パーティー2015をGear VRで視聴するというソリューションをそれぞれ実現してきた。

 
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そんなライブ配信やGear VRの「niconicoVR」アプリを手がけてきたのが、ドワンゴの岩城氏になる。

 
360度カメラは、リコーが技術協力した「全天球カメラ実験機」を使用。見た目はTHETA Sに似ているが、中身のハードとソフトは大幅に改造したまったくの別モノで、横2K/縦1Kほど、30fpsという正距円筒図法の360度映像をライブ配信できる。

 

 
岩城氏によれば、今回の生配信では複数の表示モードを用意して状況に応じて切り替えていたとのこと。例えば、校旗掲揚のシーンでは、上がっていく旗を見せるために360度映像のみ、学校長や来賓の挨拶では特に正面が重要になるため、事前に撮影した360度写真+正面のズーム映像という構成だった。

 
ズーム映像を併用する理由は、現状の360度生配信では精細さが感じられにくいという背景がある。360度カメラで撮影された横2K/縦1Kの映像は、Gear VRで見る場合に球状に展開される。ちょうど地球儀の中心に頭があって、内側から眺めているようなイメージだ。つまり元ソースが横2Kであっても、頭の全周で横2Kとなるため、実際に見ている部分の解像度はかなり落ちてしまう。

 
単純に360度カメラだけで高画素化しようとすると、カメラ運用やネットワーク帯域不足などの問題が起こるため、現状では360度映像に普通のズーム映像を重ねるほうが最適解だ。

 


 
そうした仕組みで岩城氏が目指したのが「ネットと東京と沖縄で同じ空間を共有する」というコンセプトで、そのために100台ほどのGear VRで映像をピタッと合わせることにこだわった。

 
「例えば、映像のタイミングがずれて旗を見上げるタイミングがバラけてしまうと、同じ空間を共有している感じが薄れてしまう」と岩城氏。視覚はVRゴーグルの沖縄だが、音声は会場のスピーカーから流して沖縄とニコファーレの音声が混ざっている状態にした。

 
その理由について岩城氏は、「『ネット+沖縄+ニコファーレ』で一体となった入学式を考えたときに、視覚は360度LEDよりVRゴーグルのほうが情報量が多いのですが、音はスピーカーの音+ニコファーレの環境音を聞くほうがよりリッチになる。完全に別空間にダイブするのなら個々でVRゴーグル+ヘッドホンで没入すればいいんですが、今回はすべての空間を混ぜたかったわけなのでヘッドホンで隔絶しないほうがいいんです」と解説する。

 
もう少し詳しい話だと、100台のGear VRを相手にした場合、1台1台の端末に向けてデータを流す「ユニキャスト」方式では、同じ内容のパケットが台数分必要になるので、ネットワークのどこかで帯域不足となって遅延が起こりやすい。そこで端末のグループに向けて同じパケットを送れる「マルチキャスト」を活用した。

 
ただ、理想と現実はやや違って、今回は沖縄本校の回線状況があまりよくなかった。さらに岩城氏によれば、無線LANを介したマルチキャスト配信で思ったほどのパフォーマンスが出せず、一部でうまく映像が配信されなかったGear VRもあったようだ。

 
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位置トラッキングのないGear VRのせいか、鈴木理事は挨拶の際、「今、VRって目にかけたじゃないですか。みなさん大丈夫ですか? というのも僕は皆さん気持ち悪くなっちゃったんです」と本音をポロリ。ニコニコ生放送では「いっちゃった」とコメントで突っ込まれていた。

 
とはいえ、ネット越しに同じ空気感を共有できるのはかなり斬新だ。平面のテレビなどで見る生中継が「あちら側」で起こっていることを遠くから眺めているのに対して、360度映像は自分が「あちら側」に入って好きな方向を見られるのが大きな違いになる。

 
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しかも、今回の360度映像はコメント付き。筆者もリアルタイムで360度写真+正面のズーム映像を視聴したが、コメントがポップアップで表示されることで、空間を超えてみんなで見ている感覚をおぼえた。

 
同じ空間を共有したいというニーズは、入学式や結婚式などの記念式典でかなり高いはず。国内でもejeやカディンチェ、ダックリングズなど、360度ライブ配信を手がける企業も増えてきた。「ネットに生まれ、ネットでつながる」の理念を掲げてきたドワンゴが、どう360度映像配信を進化させていくのか。今後も要チェックだ!

 
 
●関連リンク
N高等学校 ネット入学式
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