「バ美肉」はDTMにおける初音ミク 魔王マグロナちゃんがかわいすぎたVTuberワークショップレポート

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PANORAは19日、東京のデジタルハリウッド大学院にてバーチャルYouTuber(VTuber)志望者に向けたワークショップ「夏休みだよ!! 今日から始めるVTuberワークショップ」を開催した。

基調講演として「魔王マグロナ」ちゃんが登壇したほか、最新VTuberツールの知識を深められるワークショップやデモを行なって、集まった90人近くの参加者の知識欲とやる気を満たしていた。本記事では、スマホゲーム専門にも関わらずマグロナちゃんが好きすぎて熱い記事を投稿してしまった「GameCast」のトシ氏をライターに迎えて、基調講演を中心にレポートしていこう。

 

「バ美肉」とは?

バ美肉」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「バーチャル美少女受肉」の略称で、バーチャルYouTuberとして美少女の体を得て活動することを指す。基調講演に登壇したマグロナちゃんは、その第一人者として注目されるVTuberだ。

 

 

 

 
彼女(?)はYouTubeに投稿した動画で「名前:マグロナ、種族:バーチャル魔王おじさん」と紹介したあとに、「おじさんが自分で絵を書いて自分で動かしたLive2Dの体に受肉して、更に自分でボイスチェンジャーを使って声帯を弄って、自分で声を当てた地獄のようなコンテンツです」と説明している。

Live2Dとは、イラストのパーツを組み合わせて3Dに見えるように動かせるツールのこと。もともとイラストや漫画の作家でネットで配信もやっていたが、今年6月より自分で描いた女の子をLive2D化してFacerigで動かし(セルフ受肉)、ボイスチェンジャーを使って女の子のような声を出すマグロナちゃんとして活動を始めたことで「かわいい」と注目されて、YouTubeでは3万人超のチャンネル登録者を集めている。

 

おじさんの美少女VTuber化はキャラ創作の到達点

 

そんな彼女は、基調講演で教室の中央に置かれた80インチモニターに姿を現し、「人間どもー、余ーだよ、元気しとるかー」といつものように挨拶。「かわいい女の子になりたいと思っている人、いるよな」という衝撃的な発言で話を始めた。

この「かわいい女の子になりたい」という考えは女性化願望とは異なる。そして自分の考えた最高にかわいい女の子キャラを自らプロデューサーとして運営し、自分で演じたいと思っている人間に道を開くのが「バ美肉」だという。

 

印象的だったのが、創作において自分でキャラクターを生み出して自分で演じることは1つの到達点になるという話だ。

例えば、かわいい女の子キャラを生み出す方法にも色々な形があるが、これまで女の子キャラにより存在感を持たせる場合は、実際の女性に声を当ててもらったり、動きを誰かに演じてもらう必要があった。しかし、現在はVTuberツールとボイスチェンジャーの環境が急速に普及して低コストで運用できるようになりつつあり、その状況が変わっている。

VTuberツールとボイスチェンジャーを利用することで、作家が自分の創造したキャラクターに対して、単身で運用までできるようになったのだ。マグロナちゃんは、DTMで「初音ミク」が出たときに、コンポーザーがボーカルを頼むことなくワンストップで作曲から歌の発表までできるようになったことを例に挙げて、現在のVTuberはキャラにとって同じような転換点であると語っていた。

 

特にマグロナちゃんで注目されているのが、ボイスチェンジャーを使った女声だ。

VTuberに限らず、声で活動を志す人間の地声は、ときとして自分自身のイメージに合わずにハードルになってしまうことがある。そこでボイスチェンジャーを使うことで、高い声が悩みの男性が低くダンディな声を獲得したり、男性を演じたい女性が低い男性声を出せたりと、元とは違う理想的な声を提供できるようになる、とマグロナちゃんは指摘していた。この技術発展の先には、インターネット上において声に関する参入障壁が取り払われるかもしれないとも付け加える。

 

 
現在は、キズナアイさんをはじめとしたVTuberがバーチャルな肉体でも活躍できるという道をつくり、ねこますさんなどが「中身がおじさんでもキャラクターがかわいければ何でもいい」という地平を切り開いた「追い風が吹いている」状態だ。そのうえでボイスチェンジャーを使うことで、おじさんがキャラクターを描き、おじさんが声を当てていたとしても、人が視認できるところから(ビジュアル・声)おじさんが消えてしまうので、より受け入れやすくなる。

「バ美肉」は、単純におじさんが美少女化できることだけでなく、男女の性別や年齢に関係なく、バーチャルな世界でまったく異なる存在として生きていける可能性も示している──。マグロナちゃんは、そんな話をしたあとに「追い風が浮いている楽しい分野が開拓されている最中なので、みなさんも学んで」と基調講演を締めくくっていた。

 

基調講演後の質問タイムでは、マグロナちゃんの口からボイスチェンジャーに関するノウハウも伝授された。

彼女は「自然な普通の男性が出した声を自然な女性の声にしてくれるボイスチェンジャーは、多分この世界にはないんですよね」と前置きし、現在は「のどぼとけを高い位置に持っていってしゃべる」、「口の中を巻き舌にして機械的なノイズを低減する」など、通常のボイストレーニングのメニューにはないボイスチェンジャー向けの発声方法が必要になっていると解説。また、単純にピッチを上げると「いかにも機械で変更しました」という声になるため、人間が声を機械に寄せていく必要があるという。

具体的に男性が理想の女性ボイスを獲得する方法としては、目指したいキャラや声優の声にピッチ変換をかけて「オカマ声になってしまった」というぐらい低くし、その声をまねることが鉄板の練習方法になると紹介していた。この練習した声をボイスチェンジャーにかけてピッチを上げれば、理想の声になって復元されるわけだ。

ボイスチェンジャーのソフトとしては、面倒な配線がなくクオリティの高い声が出せるとフリーソフト「恋声」をオススメしていた。機材を買うなら、この恋声で十分に試して「いける」と思ってから手を出したほうがいいとのこと。

最初に試すのは、マイクとオーディオインターフェース。マイクの入力を受けるオーディオインターフェースが貧弱だとどうしてもノイズが乗ってしまうため、そのあたりは「歌ってみた」系のwikiを調べて予算に見合うハードウェアや機材を選ぼうとアドバイスしていた。

 

達人や開発元がテクニックを伝授! 最新ツールも体感!

基調講演後は、全員がPANORA広田によるVTuber技術の超基礎講座を受講し、さらに目的に合わせて各ワークショップに分かれていった。以下は、講義のタイトルと講師となる。

●教室1
・VTbuerで始めるゲーム実況配信の基礎 / しゃけくま氏
・バーチャルキャストとVRMで広がるVTuberの世界 / 助田徹臣氏(バーチャルキャスト)

●教室2
・始めよう! VRoid Studio / のりお氏、しげぽん氏(ともにピクシブ)
・VRoid Studioステップアップのコツ / のりお氏、しげぽん氏(ともにピクシブ)

●教室3
・仕組みを学ぼう! はじめてのLive2D / 神吉李花氏
・素材を使って学ぶLive2Dの基礎 / 神吉李花氏

会場にはVTuberを始めたい学生、新しい知識を学びに来たイラストレーターや業界人まで幅広い参加者が集まっており、初心者向けの内容からPCを利用しての実践授業まで幅広いニーズを満たしていた。

3時間に渡るワークショップの終了後には交流会を行い、最新のVTuber関連サービスを会場で体験できた。

 
●Vカツ(IVR)

パーツを選び、調整して誰でも簡単にVTuberを製作できるソフトウェア。簡単操作でクオリティが高いキャラクターが作成できるだけでなく、1キャラ5000円でエクスポートして自由に使用できる(関連記事)。

 
●つんつんVR

「VRキャラクターに触れられる」を体験できるソフトウェア。好きなキャラクターに腕や体を触られたり、頭を撫でられたりという体験ができる。Vカツのアバターだけでなく、さまざまなアバターと連携できるという(関連記事)。

 
●バーチャルキャスト

複数のアバターが同時に存在し、空間内の様々な物体に干渉したり、コメントが3Dで流れてくるVRライブ・コミュニケーションサービス。最大10か所のモーショントラッキングに対応しており、格闘ゲームのような動きも可能(関連記事)。

 
●Mirrativ「エモモ」機能

スマホ1台でVTuberとして配信できる「エモモ」の体験も実施。簡単な設定だけで「クラッシュロワイヤル」などをVTuberとして配信できるデモは印象的だった(関連記事)。

 
●YODAYO!(魔王マグロナちゃん)

マグロナちゃんがディスプレーに姿を現して、今年の夏コミ(C94)向けに制作した自身がテーマの同人誌「YODAYO! 創刊号」を販売。購入すると1対1で30秒喋れる特典が付いてきたが、マグロナちゃんと長話しすぎてスタッフに引きはがされるファンも……。

 
 
イベント後はそれぞれに目的が一致した仲間と一緒に食事に行く様子が見られたのが印象的だった。VTuberという言葉は広まったが、VTuberを志す人間は少なく、悩みを共有できる仲間を見つけることは難しい。そういった問題解決の場としても、本イベントは機能していた。次回の第3回は9月末に開催予定とのことで、ぜひVTuberに興味のあるかたは参加してみてはいかがだろう。

 
 
(TEXT by ゲームキャスト・トシ

 
 
●関連リンク
イベント募集ページ

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