ゲームのVRらしさとは何か──コロプラがOculusゲームの開発で得た知見(前編)

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昨今のVRムーブメントの中心地といえば、Oculus VRやValveが居を構える米国になる。最近では、カリフォルニア州サンマテオに本社を移したソニー・インタラクティブエンターテインメント(SIE)もここに加わり、ハードウェアやコンテンツ、人材、投資など、日本とは桁違いにリソースが集まっている状況だ。

 
そんな米国が本場のVR市場に、日本から参入するメーカーがあった。コロプラだ。「白猫プロジェクト」や「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」などで知られる同社は、2014年という早い段階からVRゲームを実験的にリリースし、Oculus Riftのローンチタイトル30本のうち、「Fly to KUMA」と「VR Tennis Online」という2本を日本企業で唯一提供した。

 
さらに米子会社のCOLOPL NIが「colopl Cyberpong VR(以下、Cyberpong VR)」をHTC Vive向けに提供。100%子会社の360Channnelでは、360度動画のテレビ局を目指してOculus RiftやGear VR、PC、スマートフォンで独自の360度動画コンテンツを見られるプラットフォームを展開し始めた。

 
そもそも、コロプラがVRゲーム専門に数十名規模の開発体制を持っているというのも、国内企業ではかなりの力の入れようだ。同社が約2年間磨いてきて、世界にぶつけた成果でどんな知見を手に入れたのか。コロプラでVRゲーム開発チームを率いる小林傑氏に語っていただいた。

 
 

VR酔いとの兼ね合いで三人称視点に

 
──先日の「Japan VR Summit」(JVRS)にて、馬場社長が登壇されていました。そこで衝撃的だったのが、VR Tennis Onlineを例に「ゲームとしては非常に面白いけれど、これは2Dディスプレーでよくないか?」と、自社タイトルについてVRでやる必然性を出すのが難しかったという話をしていたことです(関連記事)。やっぱり難しいのでしょうか?

 
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VR Tennis Online

 
VR感を出すのはなかなか難しいです。正直なところ、VR Tennis Onlineも2D画面でまったくできないということではない。

 
──馬場社長は、ダブルスで対戦しているときに、味方のほうに振り返ってどう球を打つのを見るところでVR感が出たと言ってました。

 
確かにそこはVRでやる利点ですね。ですが、そもそもOculus Riftのローンチタイトルの中にも「2Dの画面でもいいんじゃない?」というものも多いですし、「VRじゃないと遊べない」まで行かなくても「VRならでは」っていうコンテンツさえも、世の中的にはまだあまりないと感じています。

 
JVRSでも、馬場が「将来、時間が経てばVR空間の中で2Dのゲームを遊ぶのでもいい」という話をしています。それは言う通りだと思います。ただ、今のタイミングでは「VRじゃなきゃできない」とか「ユーザーが求めているVR」をわれわれが発案して、実際のコンテンツに落とし込んでいくことが最優先であると考えていて、チーム内でも常に議論しています。

 
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代表取締役社長の馬場功淳氏。

 
──その議論は非常に興味深いです。現時点での「これがゲームのVRだ!」みたいな結論はありますか?

 
「360度見渡せる」という点はもちろんそうなのですが、位置トラッキングができて、自分の視点が奥行き方向に動かせるということも非常に大きい。自分がそこにいる感覚を味わえる演出であったり、ゲーム性であったり、そういうところは重要なのかなと思っています。

 
細かい部分でいえば、Fly to KUMAで「クマを見たらこっちを見てくれる」といったことや、JVRSで原田さん(PlayStation VRの「サマーレッスン」などを手がけた、バンダイナムコエンターテインメントのプロデューサー・原田勝弘氏)も仰っていましたが、女の子と「自分がそこにいる感じ」をどうやったら表現できるのだろうということですね。

 
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Fly to KUMA

 
細かい話ですが、VR Tennis Onlineでいえば、自分とキャラクターの首の動きが実は連動しているんです。自分が左を向くと、三人称視点(キャラを俯瞰する視点)で見ている自キャラも自然と左を向いていたりします。正直なところ、一人称視点(キャラと同じ目線)でやりたかったのですが、三人称でもそこは入れてみようかと。

 
──一人称視点にしなかった理由は、VR酔いの問題でしょうか?

 
それが一番の理由ですね。打つ瞬間も体が動いて、目線が揺れてしまうので、どうしても一人称視点だと酔ってしまう。テニスのラケットを振るだけで、キャラクターはまったく首を動かさないというモーションもありだったのですが、敵のプレイヤーで同じモーションを使うと、オンライン対戦などのときに不自然に見えてしまう。

 
──プレイヤー側の視点だけをVR酔いが起きないように固定する風にはできなかったのでしょうか?

 
単純に移動の問題もありました。テニスでは横だけでなく、うしろに移動することも多いんです。実際のテニスなら、うしろを向いて走っていくことが自然なのですが、ゲームパッドで後退するときにはプレイヤーがうしろを向くということはほぼない。横もうしろもプレイヤーが前を見たままカメラが移動するので、それがVR酔いを引き起こしてしまう。そこまで移動しないスポーツだったら一人称視点でもよかったのかもしれません。

 
──HTC Viveにある「SelfieTennis」のように、ゲームパッドではなく、体を動かしてプレーできればVR酔いもしづらいと思います。HTC ViveやOculus Touch向けにVR Tennis Onlineを出す可能性はないのでしょうか?

 
「Touchに対応しないのか」という話は、3月のGDCでローンチタイトルを展示したときに多くの方に言われました。ただ、Touchで試してみたときに、みんなすごい勢いでTouchを振るんですよ。それを見て、危険だなと(笑)。

 
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Oculus Touch

 
──Wiiリモコンが飛んで壁に突き刺さった話と同じですね(笑)。

 
「Touchでやってみたい」「だけど危ないかもしれない」という議論は常にしています。

 
──難しいですね。

 
一人の開発者としてもチャレンジしたいですし、ゲームプレイヤーとしてもやってみたい気持ちはあるのですが……。「エンターテインメント」と「危険」は相反する部分もあって、なかなか難しいですよね。

 
 

立ちミーティングスペースで議論を重ねる毎日

 
──そういえば、VR Tennis Onlineはパルマー・ラッキー氏(Oculus VRの共同設立者)が結構プレーしていたという話を聞きました。

 
うれしいですよね。開発中のソフトをOculusさんに提供する機会があったのですが、パルマーさんと思われる方が遊んでいました(笑)。Oculusさんの社内でもダブルスが流行っているという話を聞いていたので、開発メンバー全員、非常に喜んでいます。ただ、実際に稼働しているのはシングルが多いですが。

 
──なんと! まぁOculus Rift自体の出荷が遅れているというのもありますし、ユーザー自体が増えていないのかも……!? オンライン対戦を最初からゲームの要素の主軸に入れたことには、何か理由があったのでしょうか?

 
先行研究の意味合いが強いですね。オンライン対戦は海外で流行るものということは認識していて、その中で、こういったアクションゲームは全世界においてどのぐらいの遅延が発生して、どれぐらい通信対戦にニーズがあって、どれぐらいプレイされるのだろう・・・ということを研究したいと思いました。

 
開発当初からチャレンジする項目にオンライン対戦が挙がっていて、タイトルのひとつにはオンライン対戦を入れようという話で進んでいました。テニスゲームを開発するにあたって、オンライン対戦できないとかあり得ないよねという話になり、VR Tennis Onlineを作ることになりました。

 
──Fly to KumaとVR Tennis Onlineの売上や(毎日の)稼働率は、どちらが高いのでしょうか?

 
詳しい数字は言えませんが、Oculus Storeのトップでフィーチャーしていただいたこともあるためか、VR Tennis Onlineの方が稼働率は高めです。

 
──VR感の話に戻りますが、考え方やノウハウは定期的に議論していたりするのでしょうか?

 
メンバーは社内にある立ちミーティングスペースでしょっちゅう議論しています。そこに馬場がふらっと来て議論に参加し、「俺はこう思う」「僕らはこう思います」といったやりとりをすることもあります。

 
──コロプラさんのVRゲーム開発チームは数十名体制で、いろいろな経歴を抱えている方々がいらっしゃると思います。やっぱりVR感に関しては結構違うものなのでしょうか?

 
まず、「VR感」という言葉に関して議論することが多いです。「VR感ってなんなんだ?」という。「上を見られたらVR感があるということなのか?」とか「そこにいると感じたらVR感を得たということなのか?」とか。メンバーそれぞれに別々の感覚があります。

 
「VR感をもっと出そうよ」という言葉は結構出てくるので、「じゃあそのVR感って何?」という話もよくします。前後トラッキングできたらいいのか、バーチャル空間を歩けたらいいのか、音が左右から聞こえたらいいのか。そんな議論を日々していますが、未だに答えは見つかっていません。

 
──それはどの会社も見つかってないかもしれません(笑)

 
そうですね(笑)。「VR感」という言葉が嫌だという者もいて、「VRらしさ」と言っていたりして。そのあたりの考え方や感覚は難しいなと思います。

 
──そういった思想を中心に、日々積み重ねてきた開発経験やフィードバックなどをうまく組み合わせて、コンテンツを進化させている段階なのでしょうか?

 
今はKPI的な数字も揃ってきているので、それらを参考にしながら開発を進めています。Oculusのローチタイトルは長い期間開発してきて、その間ずっとチーム全体で「VRとは何か?」を考えてきました。それはすごく貴重な経験でしたが、未だに答えが出せていない。答えを出すには相当の時間がかかると思っているので、日々の積み重ねは大事ですね。

 
VRに関するコンテンツづくりのノウハウも徐々に溜まっているので、何かしらの答えが出そうな雰囲気はあります。その結果を反映したコンテンツを世の中に出すタイミングも、そう遠くはないはずです。

 
*後編はこちら。く

 
© 2016 Valve Corporation.All rights reserved.
© 2016 COLOPL, Inc.

 
(Reported by Minoru Hirota

 
 
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