アニメの聖地・秋葉原でバーチャルキャラが接客! DNP×ソフマップ「バーチャル接客サービス」レポート

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今年3月、大日本印刷(DNP)はエクシヴィと共同で、バーチャルキャラクターが小売店舗や商業施設などで接客やデモンストレーションを行う「バーチャル接客サービス」のプロトタイプを発表した。(関連記事

本サービスについては、「リテールテックJAPAN2019」のDNPブースで展示も行っていたが、4月21日、東京・秋葉原のソフマップAKIBA②号店 パソコン館にて、実店舗で初めての店頭接客テストを実施した。

 
今回のテストは、ソフマップAKIBA②号店の1F店頭、中央通りに面した場所にディスプレイを設置して、そこに映ったバーチャルキャラクターが商品説明や呼び込み・案内、お客さんとのコミュニケーションを図るというもの。

遠隔地にいる声優さんが、店頭に設置されたカメラで現地の様子を見ながら、バーチャルキャラクターを演じてコミュニケーションするという仕組みになっているとのこと。今回、現地にて本サービスの様子を取材してきたため、その様子をご紹介していきたい。

 

「ファンズちゃん」とソフマップ店頭でおしゃべり

 

▲会場の様子

 
今回の会場は、秋葉原中央通り沿いの、ソフマップAKIBA②号店の店頭。現地の様子は上の写真のような様子で、バーチャル接客の実施中は設置されているディスプレイにバーチャルキャラクターが映し出される。店頭のバーチャルキャラクターは、DNPの展開するクリエイター・コンテンツファン向けサービス「FUN’S PROJECT」のイメージキャラクター、「ファンズちゃん」である。

 

▲バーチャルキャラクター「ファンズちゃん」

 
ファンズちゃんは、同日の12:00から18:00の間に、各40分で6回ディスプレイに登場し、道行く人に向けて声をかけたり、商品の紹介や、希望する人とはおしゃべりしてコミュニケーションを取ったりしていた。

ディスプレイの前においてあるスタンドマイクは、ファンズちゃんにこちらの声を届けるためのもので、これに向かって話しかけることで彼女と話すことができる。

 

▲ファンズちゃんは店頭のディスプレイでお客さんの呼び込みを実施。ディスプレイ上部にWebカメラが付いているので、これで店頭の様子を見ているようだ。

 

▲ディスプレイ前のマイクで、ファンズちゃんとおしゃべりすることができる。

 

▲エクシヴィ社の技術を使っているため、バーチャル空間内のアイテムを手につかんだりすることも可能である。

 
取材を行ったのは、14:00~の2回目のバーチャル接客の時だったのだが、天真爛漫なキャラクターで表情豊かに話すファンズちゃんは、どうやらすでにファンも獲得したらしく、開始後すぐにお話ししに来たり、写真撮影をお願いしていた人も見られた。当日が日曜日の秋葉原ということで人通りが多かったとはいえ、彼女の人を引き付ける魅力は見事なものだった。

 

▲店頭でアンケートに答えると、ファンズちゃんのクリアファイルと、可愛らしいステッカーが貰えた。

 

「“これはいける”と確信している」 DNP・矢野氏、ソフマップ・風間氏インタビュー

実際に「バーチャル接客」の様子を体験した後、今回のサービスを展開している、DNPコンテンツコミュニケーション本部コミュニケーションビジネス開発部部長 矢野孝氏と、ソフマップ執行役員広告宣伝部部長 風間賢児氏より、お話を伺った。

 
──まず、今回の取り組みを行おうと思った理由や経緯などをお聞かせください。

矢野氏 もともと、エクシヴィさんがこの仕組みを使って色々なVTuberさんのライブをやっており、我々も一度、東京タワーで一緒にイベントをやったことがあるんです。その時に「非常にいい仕組みだな」と思い、自分が流通に携わっていた経験が長かったので、これを流通で、店頭で使うのがいいのではないだろうかと考え、エクシヴィさんにお話しを持ちかけたところから始まりました。

こういったサービスに関しては、「本当にキャラクターが話しかけて人が振り向くのか」や、「キャラクターに言われて自分の買いたいものがイメージできるのか・違うものを買いたくなるのか」といった“データ”を欲しがる方が多くいらっしゃいます。そこで私の方で店頭でこういう風に使おうという案をまとめ、風間さんに、ソフマップの店頭で実施してデータを取らさせて頂けないでしょうかとお願いして、今回のような形になりました。

 
──今回の取り組みについては、研究的な側面が強いという感じでしょうか。

矢野氏 私としては、「これはいけるな」ともうすでに確信していて、風間さんもそう思ってくださっています。ただそうはいっても、現場で実際にやってみることで、色々とクリアしないといけない課題も見つかるでしょうから、どちらかといえば今回はそれを見つけに来たというところですね。

 
──なるほど、「課題を見つける」ための今回のテストであると。

矢野氏 そうですね。通路でこういうことをやることで、どれくらい人がつかまるのかというのは実際にやらなければ分からなかったんですが、やっぱりこういう風に、来た方は大体立ち止まってくれますし、しゃべってみたいっていう方もかなり多いですし……結構いい感じになっていますよね。

通常のイベントとかで、もともと話すのが目的で来ている人はもちろんつかまえやすいんですが、こういった素通りする人をつかまえられるかというのは一つの課題であり、一番難しいことにチャレンジしているという意識はあったのですが、今回はいい結果が出ているように思います。

 

▲ファンズちゃんと直接会話するまではいかなくとも、通りすがりの人が興味を示している様子は多く見受けられた。

 
今回の取り組みの狙いは「人が人を呼ぶ」というのもありまして、会話している内容に周りの人も聞き耳を立てていますから、ソフマップさんがSDカードをお値打ち価格で売っているとか、PCが今お得なものがあるとか、そういう人たちも気づくと思うんです。

なのでそこから得られた情報で「あ、行ってみよう」という人も出てくるんじゃないかと。そこで今回アンケートも取らさせて頂いています。「どういう目的で来たか」とかですね。

 

▲「バーチャル接客」に関するアンケート。

 

▲年齢や性別の他、「バーチャル接客」のようなサービスへの興味の有無や、もともとソフマップに来店する予定があったかなどを問い、サービスの影響をデータ化する内容。

 
あとは“働き方の改革”といった意味もあって、「顔は出したくないけど、商品知識はある」といった方とか、昔デモ販売員をやっていたシニアの方とか、そういった方も、活躍の場がどんどん増えると思います。

風間さんからもお聞きしているのですが、商品の説明ができたり、上手く接客ができるという販売員の方がいま不足しているんです。なので、そういった方たちが自宅からキャラクターを通じて出来るというのはかなり雇用率も高まると思うのでそこも狙っています。

 
──販売員の方の働き方改革ということですと、どちらかというと一般の方向けの側面がありますけども、今後法人向けのサービスとして考えていらっしゃることはありますか?

矢野氏 法人の企業様からよく言われているのは、受付嬢ですとか、PC相談窓口とか、コールセンターとかでの利用についてですね。今コールセンターなどでは、チャットボットを利用してその人が考えていることをある程度絞り込んでからコールをかけるというのは行われている手法なんですが、最初からキャラクターで対話しても良いのではないのかと思います。

あと、クレームも多いと思うんですが、こういうキャラクターで対峙することで、コールセンターの方のストレスもかなり減らせるんじゃないかというのも考えています。

 
──“キャラクターの仮面”というか、そういったものを被ることで、人格の防御ができるというのも重要ですね。

矢野氏 そういったもののニーズが高まっています。また今回のような演者の方がいるタイプの他にも、完全に無人のタイプの需要もあります。つまりユーザーがボタンを押したら「いらっしゃいませ」とか、「日本語」ってボタンを押したら以降は日本語で話しかけるとか、どちらかというと受付に近いかもしれないですけど、そういうのも求められていますね。

 
──例えば、量販店で製品を販売しているメーカーさんとしてのメリットなどはどういったところにあるでしょうか。

矢野氏 メーカーさんとしては、例えばソフマップさんなどの流通を担当する量販店がバーチャルキャラクターを持っていると、商品メーカー側で版権や自社ブランドイメージなどの影響からキャラクターを立てることができなくても、量販店側のキャラクターが販売を促進してくれるという点でやりやすいということがあります。

風間 氏 ほかにも、量販店で各メーカーの販売員さんが、それぞれの制服を着て商品の説明等を行っている光景は皆さんよく目にすると思います。ただ、そうするとお客様の側からしたら「自社製品をオススメするのは当然」というイメージから、商品説明に対して疑心暗鬼になってしまう部分も少なからずあると思います。

それを、こういったバーチャルキャラクターの中立的な立場からお勧めすることで、お客様の側からしてもフィルターが挟まることなく説明を咀嚼できるというのがあります。そこはメーカーさん側にとってもメリットのある点だと思います。

 
──お客さんとしても、メーカーの制服を着ている販売員さんに他のメーカーの製品について聞くのは躊躇しますし、そういった点では中立的な立場のバーチャルキャラクターには聞きやすいかもしれませんね。

風間氏 フラットな感じで、お客様が入りやすく、ハードルを低く設定できるというのと、メーカーさんとタイアップして、売りたい商品のプロモーションが上手にかけられるというのがすごく魅力だなと思います。

矢野氏 今日は、バーチャルキャラのプロモーション内容について「SDカード」「PC」「eスポーツ」と時間を分けてそれぞれ異なるテーマにフォーカスする形でやっていますけど、例えば汎用的にやりつつ、時間帯によってメーカーさんの時間を作るということも可能ですよね。その時はキャラの制服とかにメーカーさんの名前を表示して、「この時間はこのメーカーの宣伝をしますよ」という形にするとかもできる。

そういう風にメーカー側のメリットを出しつつも、お客さんが何を求めているかというのを、中立的な立場のバーチャルキャラクターを通して見つけてあげるということもできると思います。

 
あとはキャラなので、結構チャレンジングな宣伝もできますよね。普通「買って買って!」なんて言わないじゃないですか(笑)。でも言われても不快に思わないですよね。宣伝しつつ、終始笑って会話を終えられているので。

それが分かっただけでも今回大きかったと思います。とはいえこれには接客する人のテクニックも必要なので、そういう人を育てていかなければいけないですね。ただ、こういった取り組みをする際に、「顔は出したくない、でも接客やお話には自身がある人」というのは相当いると思います。

 

▲取材中も商品のSDカードをガンガンお勧めしてくるファンズちゃん。しかし全く嫌味がないので、それ自体が楽しいおしゃべりのネタになっているのが凄い。ちなみに本SDカードはソフマップの激安お得商品。

 

▲「買って買って~!」というおねだりにも全然いやな感じがしない。やはり可愛いは正義。お客さんに訴求したい商品や内容をストレートに伝えられるのが強み。

 
──演者さんの技術ももちろんですが、キャラクター性も結構重要になってきそうですね。

矢野氏 なので今ファンズちゃんの相棒の、猫の「ジェクトくん」というキャラクターがいるのですが、男性の声優さんを決めて制作しています。後は汎用の、コンシェルジュ的なイケメンの男性キャラと、汎用の女性キャラも用意しています。

男性のキャラを用意するのは、男性店員さん向けに、男性がしゃべってもおかしくないキャラというのを用意しなければいけないというのが理由ですね。

 
──若い声優さんの下積みの場などにもなってくるかもしれませんね。声優として技術を磨きながら、働いてお金を稼げるという。

矢野氏 我々はクリエイターを育成する講座を持っていて声優講座もやっているのですが、声優の卵の人たちも、アニメに声を当てるだけじゃなくて、こういったところで活躍する場もあるというのを見せつつ、そういう体験の場を作っていきたいとも考えています。

 
──ゆくゆくはカリスマ店員さんのような人気者も登場するかもしれないですね。では、ソフマップさんとして、今回の取り組みについて実施を決めたきっかけはありますでしょうか。

風間氏 ソフマップが秋葉原メインで、客層がバーチャルやキャラクター等に親和性が高く、弊社店舗にいらっしゃるお客様に受け入れられやすいのではないかというのと、「ソフマップの店員はすごく詳しい」というイメージがあって、逆に初歩的な質問がし辛いような印象を持たれているのではないかというのがありまして。お店に入るハードルを下げるという面で、こういったキャラクターとのコミュニケーションから入っていただいた方が、店員には聞きづらいことも聞きやすいのではないかというのがありました。

 
また、商品のスペックやデータだけ見るのであれば、ネットで調べる方が楽で速いですから、お店に来る意味合いというのは「体験」をしてもらうというところが一番大きくあります。

ネットで商品を探す場合、“目的買い”なので、もともとその商品を知っている人しかたどり着かないんですよね。お店のメリットというのは、その他にも色々な面白いものがある、色々なお得なものがあると発見できることだと思っています。

お客様が時間や交通費といった、コストを払ってお店に来る理由付けというのが欲しいなと考える中で、「バーチャルの店員が接客をしてくれる、双方向でコミュニケーションが取れる」という新しい体験ができて、さらにソフマップにどんな商品が置いているのかということを知ってもらうことができるサービスということで、うちにマッチングしているなと思ったので、“二つ返事”で実施しましたね。

 
──確かに。例えば高級ブランドの商品を、ネットではなく実際のお店で買いたいといった思いも、その「体験」を重視する心理などがありますよね。

 
風間氏 はい。値段の面でも品ぞろえでもネットの方が利便性はいいので、お店の価値というのは、「体験価値」であるということをもっと高めていかないとならない。ネットの場合は商品にたどり着くのは目的を決めた検索の結果というのが多いので、今まで気づかなかったものに気づいてもらえるという点では、出し方によってはお店の方がアドバンテージがあると思いますね。このサービスを使ったら、そのアドバンテージを出せるかなと。

つまり、「お店の楽しさ」というのをもっと体験してもらいたいなという思いが一番です。

 
──分かりました。本日はどうもありがとうございました!

 
(文 高橋佑司/編集 花茂未来

 
●関連リンク
FUN’S PROJECT
大日本印刷(DNP)
ソフマップ

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