いまとなっては聞きにくい「VRって何?」 基礎編
VRとは、バーチャルリアリティ(Virtual Reality)の略語。日本語では「仮想現実」とも訳される。わかりやすくいうと、映像の中に自分が入ったかのような体験を実現する技術の総称だ。
最近の主流は、ヘッドマウントディスプレー(HMD)を装着するタイプ。ヘッド=頭、マウント=載せる、ディスプレー=表示装置という言葉の通り、頭に装着するゴーグルのような形をしたディスプレーだ。VRゴーグルともいうが、ディスプレーを標準で備えている製品をHMD、後述するスマホなどをディスプレーとして用いる装着具をVRゴーグルとする場合もある。
視界すべてを映像で覆い、装着した人の頭の向きに合わせて視界(映像)も変わるという仕組みになっている。このほかに室内の壁や床にプロジェクターで映像を映し出す手法もある。要するに360°映し出される映像を、自分中心に見渡して、あたかもその場所に居るような感覚を味わえるようにするのがVRというワケ。
そういう意味ではプラネタリウムもVRに近い。実際、プラネタリウムでVR向けの映像作品を上映するといった試みも出てきている。
VRHMDは没入感がスゴイ!
それはさておき、VRHMDに注目が集まっているのは、一般家庭での導入のしやすさもあるが、やはり映像の中に入っていると感じる没入感の高さだ。VRHMDの仕組みは前述の通り、眼前のディスプレーに自分が見ている方向の映像を映し出すというもの。後ろを向けば後ろの映像が映し出されるのだが、画面内のキャラクターを動かしているのではなく、自分の体を動かしているので、本人の感覚としては「後ろを見た」という表現が近くなる。
▲これがVRHMD。
また頭の向きだけでなく、一部のVRゴーグルには装着者の位置を検知して、仮想世界に反映する仕組みもある。室内にVRHMDの位置を検知するためのセンサーを設置し、そのセンサーの範囲内を歩き回れば、仮想世界を自分の足で歩き回っている感覚が味わえるというものだ。
▲これがVRHMDの位置を検知するためのセンサー。形状は製品によって異なる。
それだけではない。仮想世界内にある物を拾ったり操作したり、キャラクターに近づいたりという動作も可能。テレビゲームでも、物体やキャラクターに近づけば当然大きく表示されるが、VRHMDはまさに目の前に居る・あるという距離感を実感できる。
この距離感を実現するために、VRHMDは左右の目に向けて、微妙に異なる映像を映し出している。なぜなら人間は、左右の目に映る映像の違いから距離感や立体感を感じているためで、それを映像で再現しているというワケだ。
▲VRHMDの内側。左右の目に向けて専用のディスプレーを用意していることがわかる。
音も重要な要素。機種によってはヘッドフォンと一体になっているが、外部ヘッドフォンを接続可能。もちろん頭の向きに合わせて音の聞こえる方向も変わるため、人間の五感のうち、視覚と聴覚の情報をそっくり仮想現実に置き換えてしまう。
このようにキャラクターや映像内のカメラ位置を「操作」するのではなく、自分の体を「動作」させることで反応が得られるため、よりリアルな体験を追求できるのがVRゴーグルの魅力だ。
有名なVRHMDはこの3機種!
VRHMDで特に有名なのが、Oculus Rift、HTC VIVE、そしてPlayStation VRの3機種だ。VR向けHMDのなかではハイエンドに位置する製品だが、映像の滑らかさ、センサーの感度、そしてコンテンツが多いため人気を集めていて、俗に「御三家」と呼ばれていたりする。
Oculus Rift
Oculus社が開発・販売しているVRHMD。2016年末には、HMD装着者が部屋のどの位置にいるかを検出する「ルームトラッキング」を可能にする追加センサーも発売。本体は公式サイトから、コンテンツは同製品向けのホームアプリ「Oculus Home」内、もしくはゲームなどのダウンロード販売サービス「Steam」から購入できる。
VIVE(HTC VIVE)
スマホや携帯端末機器で有名なHTC社と、ゲームなどのダウンロード販売サイトSteamを手がけるValve社が共同開発したVRHMD。特徴的なのは、ルームトラッキング用のセンサーを2基、コントローラーも2基付属している点。本体は日本公式サイト、コンテンツはSteamから購入できる。
PlayStation VR(PS VR)
PlayStation 4用のVRHMD。略称はPSVR。使用するにはPS4に加え、別途PlayStation Cameraが必要だが、PSVRとの同梱版もある。
3D映像や大画面HMDとは別物
ここでちょっと、誤解しやすいポイントを整理しておきたい。というのも、目の前に存在するかのような映像、そしてゴーグル型の装置というと、3D映像や大画面が見られるHMDと間違えやすいからだ。
まず3D映像については3Dテレビが代表的だが、これはテレビから物体や人物が「飛び出している」ように見せるもの。要するに飛び出す絵本の映像版であり、実際に映像の中に入り込んだ感覚を追求するVRとは異なる。
もうひとつ誤解しがちなのは、大画面が見られるHMD。形がVRHMDとソックリだが、こちらはHMDを装着することで500インチや600インチといった映画館のスクリーンのような大画面を擬似的に再現するという製品である。
VR元年となった2016年
Oculus Rift、HTC VIVE、PSVRと、没入感を高めるテクノロジーと豊富なコンテンツを備えつつ、ある程度購入しやすい製品が出そろった2016年はVR元年といわれている。
ただ、何もいきなりVRHMDが開発されたり、VRに注目が集まったわけではない。これまでVR装置や環境は企業や研究機関が数百万、数千万円を投じて導入する代物だった。しかし、スマートフォンの小型高精細なディスプレーパネルや、加速度センサーといった技術の蓄積・流用による低価格化が進んだこと。
そして、Oculusを20億ドルで買収したFacebookのほか、ソニーやGoogleなど大企業の参入により、開発競争も始まっている。つまりVR普及の土壌が整い、今までにないほど盛り上がりを見せたのが2016年なのだ。
このあたりの歴史は別の記事で詳しく振り返るとして、いくら低価格化が進んだからといって5万円〜10万円の御三家製品が必須かというとそうでもない。確かに没入感の高さは御三家がトップクラスだが、段ボールでゴーグルのような箱を作り、そこにスマホを装着するといった製品もある。価格はおよそ1000円ちょっと。
仕組み自体はOculusなどと似ていて、スマホのディスプレーの左右に、両目用の映像を別々に映し出し、頭の傾きなどはスマホ内のセンサーを使う仕組みになっている。
こうしたスマホを使うタイプのVRゴーグルは、導入コストを押さえられることから、不動産物件の下見に使われていたり、ユーザー自身のスマホを使ってもらうことを前提にVR映像作品の販売サービスも既に存在していたりする。
VR自体はすでにゲームだけでなく、医療や教育、旅行といった用途に活用が広がっていて、すでにビジネス利用まで始まっているのだ。
一緒に盛り上がって、一緒に体験しよう!
技術、価格、開発競争の激化と、VRが一般にも浸透する状況と環境が整った。もちろんこれからも新しい技術や機械はどんどん開発され、コンテンツも生み出されていくだろう。
これは1980年以降繰り広げられた「ゲーム機戦争」とちょっと似ているかもしれない。当時、どんな製品が登場するのか、どんな体験ができるのか、きっとみんなわくわくしていたハズ。たしかに新しいハードや技術の登場、また導入方法で迷うことがあるかもしれない。その点は本サイトがしっかり取り上げていくので、この盛り上がりとVR体験を一緒に楽しもう!
*【2017年版】「VRって何?」がスッキリ分かる解説まとめはこちら
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