China Joy 2017レポート! 珍しい中国VR機器から、遊園地のようなVRライドまで
上海で行われるゲームショウ「China Joy 2017」。時代の流れに沿い、同イベントでもVRの出展が増えており、ホールひとつが丸々VRコーナーになっているなど賑わいを見せていた。そんなChina Joy 2017のVRに関連した出展をレポートしていく。
ホール一つがまるまるVR!
全部で17個のホールがある上海新国際博覧中心だが、そのうち1つがまるまるVRに関わる出展。このホールだけでも、体感としては東京ビッグサイトの東1~3ホールをつなげたくらいありそうなくらい広い。また、となりのホールはまるまるインテルのゲーミングPCブースで、そこにもVRは多く展示されていた。
展示の多くはHTC VIVEとOculus Riftを利用したもの。しかし中には日本では見かけないHMDもあった。
シングルプレイからソリューションに
Chaina Joyと併催のVRを集めたeSmartのホールで目立つのが、体感筐体を組み合わせたもの。ゲームというよりはアトラクションに近く、かつて東京ディズニーランドにあった「スター・ツアーズ」が大好きだった身としては、ワクワクする展示がたくさん。「VR主題公園(VRテーマパーク)」とあるので、出展側も大型ショッピングモールや遊園地への展開を探っていると思われる。
子供向けVR筐体に3カ所ほどのブースで遭遇。話を聞いてみると、ショッピングモールなどへの設置を想定してるとのこと。ポジショントラッキングはなし。筆者が体験したデモは前後左右から襲ってくるモンスターを、視線を合わせて魔法を撃ち、撃退するというもの。
2眼なので日本では子供にプレーさせるのは議論があるかもしれない。ただ、ゲームだけでなく、博物館などでも利用できそうなソリューションだ。
inside-outポジショントラッキング+床マーカーで大空間対応のANTVR 2S
ANTVR 2Sはinside-out型で、外部センサーなしでポジショントラッキングを実現するタイプのHMD。PlayStation Moveに似た、光るボールがついたハンドコントローラーもあった。HMDは軽量で装着感は良好。
China Joy 2017の会場では、床にマーカーを等間隔で置くことで、「大空間多人数交互VR解決提案」、つまり複数人が広い同一空間で一緒に遊ぶソリューションを提案していた。
肝心のトラッキングはHMDもハンドコントローラーもまだまだ調整中だが、ANTVRはスマホを差し込む簡易VRHMDの頃からずっとVRに取り組んでいる企業なので、今後の発展に期待したい。
Oculus Riftそっくり! 「HYPEREAL」
HYPEREALは、外見も仕組みもOculus Rift CV1によく似たハイエンドVRHMD。Oculus touchのようなハンドコントローラーも。
解像感は良好だが、HMDの両目のレンズ部分の品質がイマイチなのか、ちょっとでもHMDの装着位置がズレると視界がボヤけてしまう。ただ、この辺りは顔の大きさや目の状態など個人差が大きく、あくまでも筆者の印象である。
HYPEREALの特色は、月額固定料金でコンテンツが遊び放題になるプラン。
HYPEREALをショッピングモールのゲームコーナーにありそうな筐体に組み込んだソリューションも展示していた。海の中で、目線を合わせてビームを撃ってサメやウツボを倒すゲームだ。
軽くて未来っぽいデザインの「DPVR E3」
複数のブースで利用されていたのは大朋という企業のDPVR E3。HMD部分が300gを切る軽さ。
別売りのPolarisという、羊羹のような形をしたベースステーションを使えばポジショントラッキングにも対応するもの。なによりも、SF映画に出てきそうなデザインがかっこいい。独自プラットフォームの他、Steam VRにも対応。
AMDのブースで試してみたが、トラッキングなどはHTC VIVEを使っている感覚と遜色がない完成度。コントローラーもそっくり。軽くて解像度も高いので「これ欲しいな…」と思ってしまったほど。
Picoや3glassesも出展
北京のベンチャー企業であるPicoはTracking Kitを展示。PC接続のVR機器Pico neoでポジショントラッキングが可能になるデモをしていた。また新機種Pico goblinの展示も。PC接続型から一体型まで、幅広いラインナップをアピールしていた。
ウェアラブルデバイスやVR/AR関連の開発を行っているVR Technology HoldingsのVRHMD「3glasses」は、別企業のデモでひっそりと展示。
HTC VIVEにはマスコットが!
日本のVR施設でも確固たる地位を築いているHTC VIVEももちろん出展。VicとVickyという名前の可愛いマスコットキャラもいた。
中国のVRブームは去っていた!?
昨年もChina Joyに参加したという人と話する機会があったが、「昨年はBtoCエリアの3分の1くらいはVR関連だったが、今回は実質ホール1つだけなので、明らかにブームが去っている」と言っていたのが印象的だ。
同時に、こんなに大きなホールがまるごと1つVRなのに、昨年はさらにVRだらけだったと聞いて中国の規模感にめまいもおぼえた。
たしかに、街へ出てみると、ショッピングモールの中にVR体験区と題した一角があるのですがガラガラ。上海っ子たちがVRにあまり興味を示していないのは事実なのかもしれない。下の写真は南京東路駅直結のショッピングビルと、世博源という大きなショッピングモールで見かけたVRコーナー。
だからこそ、今年のChina Joyの会場では、単にVRで遊べますというところから、大型筐体や、ソリューションの提案という一歩踏み込んだ展示が目立っていたのかもしれない。
次の中国VRエンターテインメントを予想してみる
VRを離れてChina Joyを見てみると、とにかく対戦型コンテンツが目立つ。巨大なブースは巨大なステージを備え、そこでは大規模なチームが組まれ、PCゲームやスマホゲームでライブ対戦を繰り広げている。
ステージ上のプレイヤーたちを熱く見守るたくさんの観客。そこは紛れもなく、トッププレイヤーたちが主役になっている空間だ。ゲームが上手ということはカッコイイのである。そして、チームで難局を乗り越えることにドラマがある。
日本でゲームの記事を読んでいるとついつい、クリエイターやキャラクターなどがゲームを語る主軸かのように思えてしまう。しかし、ゲームがeSportsと呼ばれるものに進化した今、主役はプレイヤーなのだろう。
とすれば、今のVRゲームに足りないものも見えてくる。eSportsのように1フレーム(1/60秒)の間隙をついて技を叩き込む緊張感や、チーム間対戦の中に現れるドラマよりもドラマチックな展開などは、今のVRゲームにはまだほとんど存在していないような気がする。
「魅せる駆け引き」が映える最近のゲーム業界。中国ではそんな潮流に適合したVRコンテンツが少ないので、退潮と感じられるのかもしれない。
eSportsとは別のベクトルもありえるだろう。イベント来場者と話してみると、日本のRPGのようにキャラクターやドラマを楽しむ作品もかなり支持している。一見ゲームはやらなそうな雰囲気の女性から「ペルソナ5」の奥村春ちゃんへの愛をとうとうと語られたりもして、日本のゲームも愛されていると思えた。
日本ではVRならではの演出でキャラクターやドラマを楽しめるコンテンツが登場してきており、海外展開も始まっている。中国でもそうしたコンテンツが増えていけば、ゲームのように支持されそうだ。
昨年、VRのカンファレンスでは「Gap of Disappointment(失望のギャップ)」が繰り返し語られた。社会からの期待に対して技術が今のところは釣り合わず、多くのユーザーは失望を感じるだろうというものだ。中国だけでなく世界的にもいまは、そのギャップの中にいるのかもしれない。
技術とはもちろんPCやVRHMDの性能、VRに合わせた演出、VR酔いを解決する手法など、さまざまな要素が含まれる。一時的な「失望」にめげず、技術を積み上げて、ユーザーの期待を達成できるようになったとき、きっと人類の生活は変わっているはずである。
おまけ
入り口は中国向け決済サービスAlipayを使うと紙チケットは不要で、スマホのQRコードで入れた。
(TEXT by 松VR)
●関連リンク
・China Joy 2017