触れるプロジェクションマッピングやサッカーVRなど、ソニー「WOW Studio」全展示レポ【SXSW 2018】
3月9〜19日に米国オースティンにて開催した音楽と映像とインタラクティブメディアの祭典「SXSW 2018」。多くの企業がさまざまな展示を行う中、ソニーは昨年に続き2度目となる「WOW Studio」(ワオスタジオ)を出展した。本記事では多くの来場者を迎えたWOW Studioの全コンテンツを紹介する。
エントランスを抜けると会場は左右に分かれていた。全10種類のうち4種類は今回が初出展とのことだ。
1.AI×ロボティクス
入場してすぐのところにXperia Touchが設置されていて、思い思いのメッセージやイラストを描けた。
向かって右手にはコミュニケーションロボット「Xperia Hello!(エクスペリア ハロー)が12台設置されていた。エクスペリア ハローは内蔵されたカメラで目の前にいる人を認識し、歌とダンスで出迎えてくれた。
向かって左手には複数の新型aiboがいて、特に小さなお子さんや女性の人気を集めていた。
2.Interactive Tabletop Projector
Interactive Tabletop Projector(インタラクティブテーブルトッププロジェクター)は複数人で体験できるインタラクティブなAR空間を作り出す技術だ。テーブルに触れた指や空中にかざした指を認識し、インタラクティブなユーザー体験を作り出している。
いわゆるプロジェクションマッピングなのだが、前後左右の4方向から投影しており立体的に見える。天井に設置された4台のプロジェクターで投影とセンシングを行う仕組みだ。今回は4台だが、より多くのプロジェクターを使用することで広範囲に投影することも可能とのこと。
3.Ghostly Whisper
Ghostly Whisper(ゴーストリーウィスパー)は、ユニバーサル・クリエイティブとのコラボレーションによる体感型のホラーコンテンツだ。独自の音響技術「Sonic Surf VR」と触覚提示技術を組み合わせてホラーコンテンツに仕立てたもので、目に見えないものが「たしかにそこにいる」感覚と、テーブルの上に置いている両手と座っている椅子に「ゾクッとする」感覚を与えている。
4.Superception
Superception(スーパーセプション)は昨年に続く人間の知覚や認知を拡張、変容させる研究の取り組みだ。今年は人間ではない生き物の知覚世界をパーソナルプロジェクションマッピングによって体験できるシステム「Head Light」が展示されていた。
仕組みとしては、独自のヘルメット前面に搭載したプロジェクターから映像を投影している。自分が見ている方向に拡張された映像が投影されることで、実際に自分の目でその映像を見ているように錯覚するコンテンツだ。
5.Hero Generator
Hero Generator(ヒーロージェネレーター)は複数台のカメラを設置した空間で、ソニー独自の自由視点映像技術を体験できるコンテンツだ。
体験者は特別なセンサーを装着することもなく、スペース内で動き回った自身の3Dモデルを作り出し、ショートムービーにしたものを持ち帰れた。このHero Generatorを含むいくつかのコンテンツは整理券制だったため、時間の都合で体験できなかった方も多いように感じた。
6.音響回廊「Odyssey」
音響回廊「Odyssey」(オデッセイ)は計576個ものスピーカーが作り出すトンネル状のコンテンツだ。ソニー独自の空間音響技術と音楽を掛け合わせることで、これまでにない没入感を提供している。本展示は技術×音楽を生かして音楽ファンに新しい体験を届けるイベント「Lost in Music」(ロスト・イン・ミュージック)のエントランスでも使用しており、来場者を特別な空間に引き込む役割も果たしていた。
7.Interactive CUBE
Interactive CUBE(インタラクティブキューブ)は映像、音、光そして触覚提示技術を用いた体験型エンターテインメントステージだ。前面に見えている透明なスクリーンを含む2枚のスクリーンを立方体に組み込み、プロジェクターから映像を投影することで、体験者は空間に映像が浮遊している感覚を体験できた。このコンテンツはWOW Studioの会期中にコンテンツが切り替わっていたので、行くたびに新しい驚きと体験を得られた。
また12日夜にはエンハンス代表の水口哲也さんも登壇した実験的三者対談「trialog Vol.0@SXSW」のステージとしても活用。前面の透明なスクリーンを生かした魅せ方が特徴的だった。
なお、このtrialogのAfter Review Partyが、3月23日19時よりEDGEof Shibuya 2Fで開催されるとのこと。こちらにも水口さんが登壇されるようなので、気になる方は公式ツイッター(@trialog_project)をチェックしておくと良いだろう。
8.3Dクリエイター
3Dクリエイターはその名の通り「Xperia XZ1」シリーズの目玉機能のひとつである「3D Creator」を体験できるコンテンツだ。ブースの中ではXperia XZ1を使って頭部が3Dスキャンされ、データとして持ち帰ることができた。また、スキャンされた3Dデータが複数同時に投影され、ボールをぶつけて遊ぶコンテンツとなっていた。
9.A(i)R Hockey
今回展示されていたコンテンツの中でもっともエキサイティングな体験を得られたのが3人同時に体験できるA(i)R Hockey(エーアール エアーホッケー)だ。通常のエアーホッケーから始まり、次にバーチャルなパックが出現、そして大きさの異なるパックの出現し、触覚提示技術の活用によりバーチャルなパックにも実際にパックを打っている感覚が返ってくることから、現実とバーチャルの境目を感じなくさせるコンテンツとなっていた。
A(i)R Hockeyでは、IMX382と呼ばれるソニーが開発した毎秒1000フレームで対象物の検出と追跡を実現する高速ビジョンセンサーを使用している。これにより、高速で移動するパックとマレットをトラッキングし、独自の予測アルゴリズムによって得られた結果から、それぞれの動きを予測してプロジェクションすることで、実際には存在しないものを本当に打ち返しているように感じさせていた。
10.サッカー VR
サッカーVRはソニー・ミュージックコミュニケーションズと、体験型VRコンテンツのプロデュースで有名なハシラスが共同で開発している体験型サッカーVRアトラクションでだ。世界的に有名な「キャプテン翼」とコラボし、VR空間内でゴールキーパー「若林源三」と1対1のPK勝負を行うもので、実際にボールを蹴ることでリアルとバーチャルがシンクロした超体験を得ることができた。
冒頭で紹介したXperia Touchは会場内に複数設置されていて、ここで描いたものは出口の大型スクリーンに投影される仕組みになっていた。Xperia Touchは出口にも設置されていて、多くの人が自分が描いたものが投影されるところを楽しそうに見ていたのが印象的だった。Xperia Touchの特長を生かしたシンプルながらワクワクするコンテンツと言えよう。
2017年に続き2年連続でSXSWに出展したソニーだが、今年もWOW Studioの名に相応しい「ワオ」という驚きと感動を与えてくれた。同時開催していたLost in Musicとtrialogでも来場者をわくわくさせる取り組みを行っていた。来年以降の出展も目が離せないものになるだろう。
(TEXT by 諸星一行 a.k.a. ikkou)
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