「VRならでは」の体験で世界を目指せ! gumi國光氏が語る、Tokyo VR Startups第2期への期待

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VR専門のインキュベーションプログラム「Tokyo VR Startups」(TVS)では、7月29日まで第2期の応募者を募集中だ(関連記事)。1社あたり500〜1000万円を出資し、9月〜翌年2月の6ヵ月でVRプロダクトのプロトタイプを開発する。

 
このままだとVRは日本が負けて終わる──。TVSの社長である國光宏尚氏は、以前のインタビューでアツく語っていたが、第1期を終えて日本のVRを取り巻く環境ははたして変化したのだろうか? TVSの取締役、かつ第1期プログラムによむネコ代表として参加した新 清士氏も交えてインタビューした。

 
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第1期では、数ある応募の中から、IcARus、桜花一門、InstaVR(旧CANDLIFY VR Technologies)、ハシラス、よむネコという5社が選出されて、写真の6月29日に最終成果を発表するデモデイを終えた。

 
 

趣味のVRを仕事で専念するためのTVS

 
——TVSの1期を振り返ってみて、率直にどんな感想でしょうか。

 
國光 おおむね大成功だったと思います。

 
——6月29日にベルサール秋葉原で実施したデモデイにあれだけの来場者があつまったというのは、周囲の期待の高さが表れていた証拠かもしれません。

 
國光 海外から来てくれた人もいました。そもそもTVSを始めた大きなキッカケは、北米のVR業界では開発者が独立してお金を集め、法人化してチームでつくっているのに、日本は趣味の延長でつくっているのが目立つ状況をどうにかしたかったからです。仕事として集中的にやるのと、空いた時間の趣味では、半年や1年経ったときに絶望的な差についてしまう。だから日本でもVRを仕事にできる仕組みが必要だった。

 
チームを強化して魅力的なプロトタイプを制作して、さらに新しい資金を調達して次のステージに羽ばたいていくという土壌をつくる。そこから世界に通用するスタートアップが生まれてくるわけです。だから今の1期メンバーの目標は、各社しっかりとした資金援助を受けて、次のステージに向かう土台を作ることです。

 
——その目標は達成できていますか?

 
國光 そうですね。5社の多くで次の投資が決まっています。

 
——新さんも「よむネコ」で1期メンバーとして参加したわけですが、趣味を本業にしてみてどうでしたか?

 
 やはり趣味でやっている人と、専業でやっている人との差を非常に感じました。よく覚えているのは、最初に開発した脱出ゲームを3月の中間発表で國光さんからボロカスに言われたことですね(笑)。専業だから言い訳できないとはいえ、あれは辛かった!

 
——容赦ないですね!

 
 ただ、その指摘で問題点が浮き彫りになったことも確かです。実は6月にデモデイがあるのに、5月の時点でまだ方針が決まっていなかった。3〜5月はかなり混乱して、相当追い詰められいた。片っ端から書籍を調べ回ったり、自分がデジタルハリウッド大学大学院で教えている生徒を呼んで体験させたり、会場でゲームをプレイしている様子を後ろから見ていて、ようやく分かったんです。このゲームはクソゲーだなって。

 
——(笑)。でも、作り直すといっても時間がないですよね。

 
 ええ。でも「あと3ヵ月しかない、やばい!」とか言いながらつくり直しました。リサーチして分かったのは、3D酔いしてしまう人が多かったり、移動操作が難しいと感じている人が多かったということです。特に移動操作は普段ゲームに慣れている人達ですら迷っていたので、徒歩からワープ方式に切り替えました。

 
そうしたら根本的な問題が起こったんです。以前の脱出ゲームでは、炎の演出や一本橋を歩くというシーンを用意してましたが、それは徒歩だと成り立つもので、ワープだと全然怖くなくなってしまう。結局、それらのギミックはあきらめて、現在の物を投げる楽しさを追求する方向性に落ち着きました。

 
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よむネコがデモデイに展示したのは「エニグマスフィア~透明球の謎」。HTC ViveとOculus Riftの両方に対応し、2人で協力プレーする。

 
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HTC ViveのコントローラーやOculus Touchを使って操作。鉄球を拾ってガラス玉に投げつけて割ったり、レバーを握ってドアを動かしたりして、閉鎖空間から抜け出すパズルアクションゲームだ。

 
——私もデモデイで「エニグマスフィア」を体験しましたが、物を拾って、投げて、壊すというのがとても気持よく感じました。グラフィックなどはまだ突き詰める必要があるかなと思いましたが、コアの体験はお世辞抜きにやみつきになる。

 
 そうなんですよ。ゲーム好きとそうでないユーザーをリサーチしてみて、共通してたのが「もっと壊せる物ないの?」という意見で、そこから発想を得ています。

 
國光 VRならではの体験は、世界的にもまだ模索中なんです。欧米はつくり込まれた3Dアセット(資産)を使っている分リッチに見えますが、「VRならではの体験」という意味では、まだ全然キャッチアップできる。

 
そこに大きなチャンスがあって、実はPlayStation VRのゲームでもまだ突き詰められておらず、VRでつくる意味がないゲームも本当に多い。単に360度で見られるだけになったり、立体視できたり、普通のコンソールのゲーム体験を一部分リッチにしただけでは意味がない。

 
 そうですね。

 
國光 3DテレビとVRの違いってよく聞かれるじゃないですか。3Dは目の前の映像が立体に見えるのに対して、VRはその中に入るんです。僕は将来、HTC Viveの「ルームスケール」のように空間を歩けるVRのみが残って、それ以外は全部消えると確信しています。今、HTC ViveはPCとケーブルでつながっていますが、それが無線になったときに一気に市場が跳ねるでしょう。

 
 

デザイナーや経営者、学術系も引き込みたい

 
——逆にここは1期の反省点というところはありますか?

 
國光 VRの開発に興味があって始めたいけど、チームがなかなかつくれないという話をよく聞きました。チーム編成はとても重要で、エンジニアだけのチームは、企画やデザイン、営業、プレゼンなどが弱くなってしまう。逆に、デザイナーや企画の人間しかいないと、開発できないですよね。ひとつのチームにエンジニア、デザイナー、あとは残りを全部やる起業家の3人が最低でも必要だと思います。

 
——VR業界はエンジニアは多いですが、デザイナーと起業家をどうつなげるかですね。

 
國光 それぞれの分野の人が聞きたくなる、訪れたくなるようなイベントや場所があればいいと思うんですけどね。単に、お互いの接点がないだけな気がするんです。多分、デザイナーの仲間はデザイナーが多くて、それはエンジニアも起業家も同じ。その閉じられたつながりの中で、じゃあエンジニアの人がFacebookのザッカーバーグみたいに起業したり、起業家精神が生まれるかというと、それはないだろうなと。

 
 お互いの接点が少ないという意味では、TVSの取り組み始めたときに、私は著名人も含めてウェブ系起業家をまったく知らなかったんです。どちらかといえばコンシューマーゲーム開発者系のコミュニティーに属しているので、まるでレイヤーが違うんだなと勉強になりました。

 
國光 1期は正直なところみんながんばったし、成果も出したと思っている。反省と言うよりは改善したい部分なのですが、もっとコミュニティーを盛り上げる、ミートアップ的な取り組みを増やしていきたいですね。

 
 この半年で状況は大きく変わりました。Tokyo VR Startupsを立ち上げるときは「本当にやるの?」と周りはクエスチョンマークだらけだった。

 
——VR業界自体も、ここ半年でテレビ局や大企業の参入が相次いでいますね。

 
國光 僕も各テレビ局や大手広告代理店の社員に向けて、いかに今やらないといけないのかという講演を続けています。大企業も新しい流れに乗らなければと考え始めています。

 
 TVSの半年の活動内容からしても、少ない人数ながらも多くの時間を割いて成果も出せましたし、やりきった感はあります。ただ、終点はここじゃない。日本のVR業界がちゃんと成長するところまでもっていかなければ。

 
2期に参加するメンバーは、1期と顔ぶれが変わってくると思います。参加層の幅をもっと広げるにはどうすればいいのか、どう火を足していくか考えなければいけないですね。「6ヵ月頑張ったね」「あぁよかったね」では、本当に終わっちゃいますから。

 
——課題はたくさんあると。

 
國光 2期の課題についてはもうひとつあります。ミートアップの一環でもあるのですが、学術系の人間を引き込むことです。欧米では大学で研究していた人たちが、その分野で起業するのはよくある話です。何年も研究してきたから、知識や経験も豊富ですし自信もある。どうしてもいちから始めるとなると、できることの限界はありますから。日本の学術的なVRは進んでいるので、しっかり引き込みたいなと。

 
——確かに。学術系の方々にも、ぜひ応募してきてほしいですね。

 
國光 ビジネスを大きくスケールさせるには、いいプロダクトをつくるのは当然ですが、資金調達やメディアとの関係、採用人事や組織作り含めて重要になってきます。そこで一度起業して成功した起業家も巻き込んでいきたい。起業って2回目3回目は意外と楽なので、彼らを巻き込めば、VR業界はさらに加速していく。

 
——それは面白そうですね!

 
國光 僕はIT業界のいいところだと思っているのは、海外のイベントに日本ブース作ったり、みんなで見学に行って刺激を受けて、それで起業した人が結構多い話です。ただ、そうは言っても、海外のVRイベントに一人で行くのは不安じゃないですか。みんなで行って、ブース出展や展示ができるツアーのようなものがあればいいですよね。それで刺激を受けて、自分も鼓舞されるでしょうし、そういう取り組みもやっていきたい。

 
——募集要項はどういう感じでしょう?

 
 2期の募集枠も5社です。ただ、予算は増えて500〜1000万円。事前に予算を提案していただく形になります。

 
國光 会社のステージによってそれぞれの状況もあると思います。いちから始めるような会社が集まればいけど、全部が全部そういうわけにはいかないでしょうから、そこは柔軟に対応したいです。開発期間は9月〜翌年2月の6ヵ月間で、2月末にデモデイを設けます。みなさんぜひ応募して、一緒にVR業界の未来をつくっていきましょう。

 
Tokyo VR Startups

 
 
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