「ワシが育てた」の喜びを伝えたい 制作陣が語る異色アニメ「魔法少女?なりあ☆がーるず」の魅力

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7月6日より、リアルタイムアニメーション作成システム「KiLA」(キラ、関連記事)を採用するテレビアニメ「魔法少女?なりあ☆がーるず」が放送開始となる。第1回の放送は7月1日に収録したニコニコ生放送をベースに編集し、さらにTOKYO MXやサンテレビで7月6日より放送するという、毎回「二段構え」で番組を楽しめるのが新しい。

 
監督の石ダテコー太郎氏(写真左)は、「直球表題ロボットアニメ」や「てさぐれ!部活もの」、「みならいディーバ(※生アニメ)」など、フリーの3DCG作成ツール「MikuMikuDance」を活用したユニークなアニメ作品のプロデュースで知られる鬼才だ。そして、KiLAのディレクターであるcort氏(写真右)は、直球表題やディーバではアニメーション監督、てさぐれではスーパーバイザーとして石ダテ監督とタッグを組んだCGクリエイターになる。

 
興味深いのは、2人とももともとアニメ畑の出身ではないということだ。石ダテ監督はお笑い芸人から放送作家を、cortさんは建築業界の職人を経て、テレビアニメの制作に携わるようになった。

 
最新の挑戦となる「なりあがーるず」は、2人にとってどんな思いを込めた作品なのだろうか。そして世界でもなかなか類を見ない、CGキャラクターの声も動きも声優に演技してもらうという作品はどんな可能性を秘めているのだろうか。リハーサルで忙しい中、時間を割いていただきインタビューを試みた。

 
 

よく動く深川芹亜さんは「KiLA映え」する

 
──まずは番組の制作が明らかになった際にキャストが決まってませんでしたが、間に合ってよかったです……。

 
石ダテ そうですね。5月末にテープで、6月頭にスタジオでオーディションをさせていただきまして、6月5日くらいに決まったのかな? その4、5日後にレコーディングでした。

 
──電撃スケジュールですね。

 
石ダテ スタジオオーディションあった日に、合格者の各事務所に合否とともに音源をお送りして、「今週中にレコーディングさせてください!! そうじゃないとOP/EDの曲が間に合わないんです!!」って。

 
──スゴい。そのスピード感は、やはりアニメ自体はKiLAでリアルタイムに収録できるからという背景からでしょうか。

 
石ダテ いや、そうでもないんです。確かにアニメとしてみると作画にそこまで時間はかからないし、生放送さえできればと考えると映像側のあせりは普通のアニメよりはないと思います。かといって、歌は別スケジュールですから。ギリギリでした。

 
──確かに。cortさんはそこまで何を準備していましたか?

 
cort キャタクターデザインが上がったのが5月2日で、6月14日に声優さんを入れてリハーサルをするというスケジュールでしたので、約1月半くらいで4キャラ分のCGモデルを手配してました。モデラーの方には大変なご迷惑をおかけして、「頼む」って泣きつきましたね。

 
石ダテ ありがたいです。

 
cort なんとか間に合わせましたが、リハーサルのときは衣装までは追い込めずにスポーツウェアみたいになってました。

 

ゲネプロ風景として公開されていた動画では、確かに簡易な服装だった。

 
──リハといえば、キャストの3人の女の子たちはKiLAのモーションキャプチャーに使う「Perception Neuron」(パーセプションニューロン)の存在すら知らなかったのでは?

 
石ダテ そうでしょうね。だいぶ珍しい仕事なんじゃないですか。最初、すごくテンションが高かったよね。Neuronつけた格好がサイバーニンジャみたいでかっこいいって。

 
cort 「うごくー」「なにこれカッコいい」って感じでしたね。

 
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noitomのPerception Neuron。国内ではアユートより20万9800円で購入できる。従来数百万、数千万していたモーションキャプチャー機器の価格を一気に引き下げた製品だ。

 

KiLAの紹介ムービー。

 
──わりとみんなテンション高めでそのまま収録に入ったみたいな。

 
石ダテ そうですね。みんなそういうお年頃なのかテンション高いです。実は僕、初めてスタジオオーディションをやったのですが、セリフを読むのではなく、「うらら」「はなび」「いなほ」を想定した3人にエチュード(アドリブ芝居)に挑戦してもらったんです。全員の組み合わせで。多分、そんなオーディションもなかなかないでしょうし、その組み合わせのイキイキ、のびのび具合を見て役にはまりそうなところで選ばせていただきました。

 
──KiLAだと、声だけでなく体での演技も必要なわけじゃないですか。

 
石ダテ そうですね。台本を読んだ後に、そのままエチュードをするっていう。うらら役の深川芹亜さんは、とにかく動きも激しいし、キャラクターも独特。だからまずこの子だわって決めています。よく動くから「KiLA映え」するでしょ。

 
cort はい。でもNeuronのバッテリーを2回落とされれましたね(笑)

 
石ダテ 3回じゃなかった? ゲネプロ(公開リハーサル)中に動きすぎて3回落として、そのままキャラクターが固まるっていう。

 
cort その後、対策は打ってます。

 
──KiLAの収録体制にもっていくためにどういう準備をしたんですか?

 
cort 一番は先ほども言ったモデリングで、あとはオペレーティングスタッフの集中教育ですね。演者に合わせて、顔の表情やカメラワークを操作する役割です。

 
──表情は手動なんですね!何人ぐらいが関わってますか?

 
cort KiLAスタッフ自体は3人体制なのですが、人手が足りないので……。

 
石ダテ ウチの作家陣がそれぞれ担当しています。

 
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表情や手の操作にはXboxコントローラーを利用。各キャラクターごと合計4台を利用する。

 
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シーンに合わせて8種類の表情を指示できる。

 
──Neuronも周囲の無線LAN環境で動作の精度が大きく変わってきますし、KiLAといえばサーバーにつなぐためのインターネット回線が必要ですが、その辺の準備はいかがでしたでしょうか?

 
cort まぁ、そうですねー。今回、この地下のスタジオを使うという話になったときに、Neuron本体を持ってきて自分で装着して2時間ぐらいうろちょろして「ここなら大丈夫だ」と確認しました。あとは、KiLAが帯域をつかうから、ネット回線を引いてくださいって。

 
石ダテ ネット環境がないと使えないというのは初めてでしたよね。しかも無線LANルーターをコントロールルーム側においていたんだけど、二重扉によってたまに電波が途切れる不具合が出たので、ドアの端からケーブルを通してブース側におくようにしたりね。

 
──ある程度準備していたけど、現地でどんどんアップデートしていったという。

 
石ダテ そうですね。やっぱり場所によってぜんぜん違う。

 
cort レイアウトも前回のゲネプロと今回でまた変わってますからね。

 
石ダテ モニター位置ひとつとっても「そこにあると役者の顔が見えねぇから表情つけらんねぇよ!」とかね。

 
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ブース内に引き込まれた無線LANルーター。

 
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ブース側から見たモニター。

 
 

チャレンジだらけの新作

 
──2回目のリハーサルとなる本日の収録はどんな雰囲気でした?

 
石ダテ 前回ほどバタバタしなかったね。前回のゲネで発覚した多くの問題点を、各セクションで改善すべくもう1回リハをやらせてもらったのが今日なんです。自分なりに、前回もらった宿題を解決する策を持ってきて挑んでいるので、バタバタせずにだいぶ改善できました。

 
──今までいくつかのアニメを手掛けてきて、今回の挑戦は何になりますか?

 
石ダテ 今回のチャレンジは、まぁいろいろありますね。例えば、バウンスィという会社を興して一発目のアニメということ。制作委員会にも自社で参加していますし。もちろんKiLAで初めてアニメをつくるというのも、いままでからんだことがないキャストを使うのも、大きなチャレンジです。

 
──リアルタイムでキャラを動かすという点では、ディーバも同じでしたよね?

 
石ダテ ディーバは生放送で見せたら面白かったと思うんですが、残念ながらリアルタイムで見られる人が限られていた。あと、生放送をそのままパッケージに落としてしまうと、リアルタイムほどの面白さが出なかったんです。そこが反省点として自分の中にあった。あとはパッケージとして手元においておきたくなる魅力が持たせられないと、生放送アニメのマネタイズが難しい。そこが一番のチャレンジで、だから今回は生放送は収録現場として設けて、そこででき上がったものを編集して地上波に流すという二段構えにしました。

 
──2回見ることによって別々な面白さが出てくる。

 
石ダテ そうなんです。収録現場は、つまりロケ現場ですよね。で、そこで収録したものを編集して、足りないところを足して、アニメだと言い張って地上波に流すと。

 
──裏側をこっそり見られるみたいなのはいいですね。

 
石ダテ 裏側を楽しんだのちに追い込んだ作品も楽しめるので、よりみなさんとの距離が近くなると思います。

 
──cortさんの挑戦はありますか?

 
cort 全部チャレンジなのかも。

 
石ダテ KiLAとしても、初採用のアニメだしね。

 
──そもそもNeuronはモーションキャプチャーのために使われる裏方で、ここまで表に出てくるソリューションも世界でもかなり珍しそうですが。

 
cort ありとあらゆることがチャレンジです。ここに来るまでにも、Neuronの不具合が起こる条件や原因をずっと調べてましたし。

 
──スゴいな。現場には何台Neuronがあるんですか?

 
cort 現場に持ってきたのは3台です。で、オンエアのときに予備でもう1台。

 
──どんだけ持っているんだ(笑)

 
cort 6台持ってます。バックアップがなくて手が打てませんというのが一番格好悪いと思うので、お金を出してそれができるなら買うべきだという心構えです。

 
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スタジオにあったキャスト用のNeuron。

 
──素晴らしい。しかし、収録と生の2回分があるというのは大変ですよね。

 
cort そうなんですけど、生の場所でできたものを収録した作品だって言い張るバカバカしさも面白いですよね。

 
石ダテ 地上波だけ見た人は「なんだこのアニメ」ってなると思うんですよ。「よくこんなアニメ流したなぁ!」と。言ってみれば、ちょっと前に放送された「ニンジャスレイヤー」を初めて見たときと同じ感覚とだと。

 
──あー! 1話の「なんだこれ!?」感はスゴかったですね。

 
石ダテ そうそう、あの感覚。地上波で初めてみた人が一番びっくりすると思う。でも、そのつくっている現場も両方見たら、すごく面白い。生放送なので、イベントやお芝居と同じで生の舞台と変わらない。いかにみんなが同じ方向を向いて、同じ気持ちでひとつのゴールに臨めるかっていう。

 
──監督自身も過去に舞台に立たれていましたよね。

 
石ダテ もともと笑い芸人をやってましたし、芝居で演出を担当したこともあります。

 
──そうした経験は今に活きている?

 
石ダテ いやぁ、そうでしょうね。それがなかったらたぶんやれてないと思います。うん。

 
──つながっているものなんですね。

 
石ダテ そうですね。僕は僕で自分ができるものを組み合わせた結果、今につながっている感じです。別に他の人と違うことをやってやろうと思っていたつもりもなく、一番得意なことをやってきた結果、自然と今の形になっていたという……。生放送は、ある意味制作のハードルが下がったり、ミラクルが起きる側面があるので、つくりこんだものとはまた全然魅力が違いますからね。

 
 

技術の目新しさではなく、面白さを生み出すのが大切

 
──最後にVRに対する現状や期待をお聞きしてもいいですか?

 
cort KiLAは今、VR視聴の機能を追加している途中で、Oculus Riftは対応できた。バグチェックがしっかり終われば、もしかしたら、なりあがーるずのシーズン中にユーザーは自分の家から360度で収録現場が見られるかもしれません。さらにGear VRへの対応も進めています。

 
──それはスゴい。例えば月定額や1回いくらとかでチケットを買うみたいに課金して、まさにお芝居のように収録がみれるという。

 
石ダテ できるといいですね。まさにお芝居ですよね。

 
──石ダテさんはいかがでしょうか?

 
石ダテ VRって最近、すごく騒がれてますよね。確かに技術の進歩って素晴らしいし、面白いとも思うのですが……。ちょっと言葉は悪いですが、まだ技術に溺れているといいますか、「これができるのってスゴくない?」というところにばかり騒いでいる気がして、僕の立場からすると「いやいや、これを使ってどんな面白いことができるか」というところを考えなきゃいけない。

 
──鋭い!

 
石ダテ それは僕の立場ではすごく考えなきゃいけないことなので。作り手側としても今までのゲームやアニメとかとは、システムもスキルも全然別のものが要求されるはずです。だからなりあがーるずでは、生放送がお芝居に近いものとなったときに、ちゃんとそこで面白いものを生み出せないと、素晴らしい技術が死んでしまう。少しでも「あ、こういう使い方もあるんだな」「こういう楽しみ方もあるんだな」ってところをつくった結果で示していけたらいいな、と。

 
──いいですね。作品自体の魅力、例えばキャラクターなどについても教えてください。

 
石ダテ キャラクターの魅力は、やっぱりキャスト本人たちによるところが大きいですよね。もちろん「お芝居しながらアドリブしてねー」ってレクチャーもしてますが。でも、先ほども言ったように、つくってる現場に参加できるというのは、今回の一番の魅力だと思いんです。

 
──と言われると。

 
石ダテ 例えば、今ならクラウドファウンディングで制作から参加という形態もありますが、そうじゃなくて撮影現場にいて、コメントを打てば意見できるんですよ。「もうちょっとこうしたほうがいいんじゃない」ってね。それが編集されて地上波でアニメとして流れる。

 
──おおおお!

 
石ダテ なので、制作現場に参加して、それが世の中に作品として残るんだっていうところを楽しんでいただけると嬉しいなと思います。作ることの喜びをね、伝えたいです。

 
cort 場合によっては「あの子はワシが育てた」みたいな。

 
石ダテ そうですね、みんながそういえばいいと思う。ぜひ生放送も本編も期待して見てくださいね。

 

 
©なりあ☆がーるず製作委員会
 
 
(TEXT by Minoru Hirota、協力・久道)

 
 
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