ハシラス「CLOCK WALK」を先行体験! VRで奴隷労働……ではなくずっと歩ける不思議な装置

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VR ZONESHIBUYA VR LANDなど国内でも続々と新店舗がオープンしているVRアトラクション施設。業界的には「ロケーションベースドVR」と呼んだりもする。

 
そのジャンルにいくつもVRコンテンツを提供してきたスタートアップ企業・ハシラスより、VR空間を長く歩ける体感デバイス「CLOCK WALK」を新開発したという知らせをもらった。まだ開発中の製品で導入は決まっていないものの、VRは何より自分でやってみることが重要、ということで同社のショールームを訪れて体験してきた。

 
 

回ってるのに直進できる!

ハシラスといえば、ライド型筐体を絡めたVRコンテンツの開発で知られている。社名の由来でもあるフィットネス機器「ジョーバ」を活用した乗馬VR体験「Hashilus」を筆頭に、池袋サンシャイン60にある「TOKYO弾丸フライト」や「スウィングコースター」、渋谷VR PARK TOKYOの「SALOMON CARPET」などが代表作だ。

最近では、今年2月にはソニー・ミュージックエンタテインメントと資本提携し、3月の米国で開かれたクリエイティブの祭典「SXSW」では、トロッコを活用した「Gold Rush VR」を展示して海外でも大きな注目を集めていた。

 

そうした状況からのCLOCK WALKだ。ハードの構造としては、中央から伸びる6本のアームの先に歩行器が据え付けてあり、6人のプレイヤーはHTC VIVEをかぶって歩行器とともに一方向にぐるぐる回るという動作になる。見た目的には、複数人で棒をぐるぐる回す奴隷労働のようなイメージで奇妙だが、VIVEをかぶった6人は曲がったり直進したりとバーチャル空間をずっと歩いている。つまり限られた空間で、より長距離を歩けるための機器ということになる。

 
VR空間を歩くというと、詳しい人ならVRゴーグルを装着し、片手で壁に手をついて歩ける「Unlimited Corridor」(無限回廊)を思い浮かべるかもしれない。この曲面を使ってあたかもまっすぐ進んでいるように錯覚させる仕組みを「Redirected Walking」という。

 

 
Unlimited Corridorの解説動画。

 
ハシラスの代表取締役社長、安藤晃弘氏によれば、CLOCK WALKは無限回廊に影響を受けて、よりエンターテインメント向けに昇華したものだという。

 
例えば、無限回廊は展示に必要なスペースが8×7mと大きく、位置トラッキングにも高額なシステムを利用している。また片手を壁につけることになるので両手がフリーにならなかったり、同時に2人までしか体験できないという制限もある。もちろん学術的な研究としては非常に価値があるのだが、そのままエンターテインメントに応用するのは色々と難しい。

 
そこでCLOCK WALKでは、採算性や安全性といったロケーションVRの現場で気になるポイントとの折り合いをつけていき、より安価なVIVEを6台利用し、5×5mというより狭い範囲で6人が同時プレーできるようになっている。また、市販の歩行器を改造して、捕まって歩いてもらうことで転倒を防止している。さらにバックパック型PCを歩行器にぶら下げて背負うという工程を簡略化している。

 

バックパックPCは歩行器に据え付けてあるので背負う必要なし。

 

歩行器の先端にはVIVEトラッカーがおいてあり、これでプレイヤーの体の位置をとる。頭と体で別々の位置を表現できるのだ。

 
ソフト的にも凝っていて、今回は影踏みを題材にした「影踏まず」というホラー体験だった。先頭の人の背中を目印にし、VIVEのモーションコントローラーを懐中電灯として片手に持ち、森や墓場、洞窟といった何か出て来そうな不気味なシチュエーションを6人でずんずん歩いていく。

 
面白いのは、参加する6人全員が列の2人目となっており、1人目のアバター位置をアレンジして見せることで、ぶつからないように適切な距離を保つという仕組みになっている点だ。つまり、6人が同時にプレーしても、前の人と調整するのでぶつからないというわけだ。

 

 
では、実際のところはどうなのか? 順を追って説明していくと、まず最初にPCを背負わずにVIVEとヘッドホンだけで済むのはとても楽だった。ヘッドホンやコントローラーは歩行器の周囲にぶら下がっており、VIVEを装着すると流れるムービーで位置を示して装着を解説してくれる。まったくのVR未経験者は厳しいかもしれないが、ある程度慣れた人ならこれで準備できて、オペレーションの人数を減らせそうだ。

 
「影踏まず」のコンテンツが始まると、まず御神木的な大木の周囲を歩いていることがわかる。そして自分の目の前には、他の人が青い素体的なアバターで同様に右回りで歩いていて、6人がそこにいることが感じられた。

 
そうしてしばらく歩いていると、地球の周囲を周りながら徐々に離れていくように、列が大木から遠くなって直進になっていく。完全な直進になると、体の右回りとの感覚差が若干感じられたが、それよりもコンテンツに気を取られてそれどころではなかった。

 
大木がある場所は明るかったのだが、暗いシーンに移っていって、コントローラーで周囲を照らす必要が出てくるのだ。筆者は(初代バイオハザードの犬とカラスがトラウマで)わりとビビリなので、この「絶対何か出てくるだろ」的な空間を歩いていくのは正直怖い。若干早足になってしまいがちだが、そこは前の人の背中が見えると妙に心強く、きちんと距離を保って歩いていた。

 
その後、何が起こるかはネタバレになるので伏せておくが、ひとつ筆者の身に大事件が起こった。VR酔いではなく、「めまい」を起こしてしまったのだ。考えてみれば、「バット周り」(a.k.a ぐるぐるバット)のように同じ方向をぐるぐると回って歩いているのだから、めまいを起こす可能性もあるわけだ。運の悪いことに、筆者が三半規管激弱マン+E3の海外取材から飛行機で帰って来た直後の体験ということもあって、気持ち悪くなりすぎてギブアップする羽目になった(なのでラストは見ていない)。

 

若干グロッキーな筆者。

 
安藤氏によれば、この日に気持ち悪くなってギブアップした人は自分を含めて2人とのこと。この辺、ずっと歩かせるのではなく、途中で立ち止まらせて周囲を見せるなどコンテンツ側でもカバーできそうだが、立ち止まってしまうとそこで感覚がリセットされて、また円運動からやり直す必要があるとのこと。コンテンツの作り方によってVR酔いも軽減できるように、めまいも最適化する余地がありそうだ。

 
ともあれ、このVR空間をずっと歩けるという装置は、ゲームやアニメなど、さまざまな知的財産(IP)とのコラボでうまく生きていきそうだ。観光や災害の体験に使ってもいいだろう。CLOCK WALKは6月28〜30日の先端コンテンツテクノロジー展にて出展予定なので、興味のある人はぜひ体験してみるべし。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
ハシラス
先端コンテンツテクノロジー展

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