触らなくても「VR感覚」で気持ちよくなれる バーチャルAV女優・Karinさんに聞く未来のバーチャル風俗

LINEで送る
Pocket

バーチャルAV女優を名乗るKarinさんは6月15日、バーチャル風俗体験会を実施した。60名以上の応募者から選ばれた4人がVRゴーグルをかぶってアバターの体でバーチャル空間に入り、Karinさんと二人きりで裸になってサービスを受けるというもの。今回はテスト運用ということもあって無料で提供した。

2017年末以降のバーチャルYouTuber(VTuber)の一大ムーブメントを見ればわかるように、キャラクターの見た目だからこそ提供できる価値というのは確かに存在する。見た目と中身の大きなギャップをつくれたり、インターネットを介してVR空間でのイベントに出演できたりと、生身の限界をいくつも超えてきた。

PANORAでもVTuberと1対1で話せる「VTuberおしゃべりフェス」や、VTuberを店頭集客に派遣する「バーチャル派遣サービス(仮)」などを実施してきたが、対話が鍵になる職業はバーチャルキャラクターでも意外と代替できて、より効果的なケースも多いと実感している。

一方で、今回のバーチャル風俗体験会は、客側にフィードバックする装置を用意しない「非接触」なサービスだ。いわばアダルトチャットの進化版なのだが、はたして「触らない風俗」は成り立つのだろうか。Karinさんをインタビューしたところ、「VR感覚」というキーワードが浮かび上がった。

 

Unityのデフォルトキューブをモザイクがわりに

──まず、Karinさんとしてはいつ頃から活動を始められたのでしょうか?

Karin 2018年の3月頃、XTubeにVTuberとして動画をアップロードしたのがデビューで、以来「バーチャルXTuber」から「バーチャルAV女優」と肩書を変えて継続的に活動しています。AV女優といっても映像作品の出演本数はまだ0本なのですが、ご縁があって今年6月から「バーチャル風俗嬢」としても活動を開始しました。

 
──最初からアダルト向けだったのですね。

Karin 最初からアダルト向けです!

 
──普通にVTuberをやる選択肢もあったとおもうのですが、なぜいきなりアダルト?

Karin 正直、自分の中でも色々と絡み合っていて、一言で説明できるわけではないですが、性癖というよりは、「誰でも、どんな活動もできる」という初期VTuberの理念を一番突き詰めてみようと思ったのがきっかけです。

 
──「バーチャルAV女優」を名乗り始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

Karin 実はXTubeから動画が消されてしまって……。基本的にリアルの人間しか載せていないサイトなので、多分「エロアニメ」だと思われて消されてしまったのだと思います。半分冗談ですが、バーチャルアバターの人権を真剣に考えるようになったのがこのときです(笑)。

その後、3Dにも優しいPornhubに投稿するようになったのですが、「バーチャルPornhuber」というのはあまり通りがよくなく……。出演作がないため結構悩んだのですが、キャッチーですし、実績はあとから付いてくるかなと思って2018年の5月か6月ぐらいに名乗り始めました。今でもバーチャルAV女優のお仕事お待ちしてます!

 
──スゴい。最初に投稿してからどんな反響がありましたか?

Karin 超初期は自作アバターだったのですが、こんな感じで見た目が厳しいこともあってあまりウケはよくなかったですね……。

 

 
──シンプルですね! というか自作アバターですか?

Karin 完全に自作です!

 
──えっ、スゴい。まさに「やらなければ、はじまらない……」(VTuberムーブメントを加速させた「ねこます」さんの名言)の体現者ですね。

Karin 一番初めに作った3DモデルはVRChatのワールドに置いた布団で、2番目がこの体でした。実は2018年1月にできていたのですが、当時やっていた「meet-me」というネトゲが終わるのが悲しすぎて、最初期のVTuberブームに乗り遅れたんですよね……。

 
──なんと。

Karin シンプルなのは「美少女でなくてもいいのでは」「シンプルなところから成長していけばコンテンツになるのでは」という思想が裏にあったはあったのですが、2番目の3Dモデルということで単に技術力がなかった言い訳みたいなものです。

 
──というかネットワークゲームが好きなんですね。

Karin 好きですね~。特に、仮想空間でのアバターや、それに付随する人格についての考え方はかなりネトゲの経験から来ています。正直、VRChatで見るトラブルはだいたい他のネトゲで見たことあったり……。

 
──歴史は繰り返す(笑)。でもVRChatを始めとするVRでは、自分が感じられる体を持てるようになったのが大きいですよね。

Karin おっしゃる通りです。

 
──VRChatはいつ頃から始められたのでしょうか

Karin 2017年の10~11月ぐらいだったと思います。meet-meからの移住先を探していたらVRCの動画を見つけて、「こんなゲームがあるんだ~」とつぶやいたら、ふしめろさんとタナベさん(VRChat日本人コミュニティーの方々)に発見されて引きずり込まれました。勢いがすごすぎて、最初びびっちゃいましたけどね!

 
──その当時はVTuberでアダルト配信勢はいたのでしょうか。

Karin 万楽えねさんが私の前にデビューしていました。正直夢のある分野だと思っていたので、やる気が出てからはめちゃくちゃ焦って配信を始めました。その後、5月にユメノシオリちゃん、7月にアネネちゃんが現れたぐらいで、アダルト系のVTuberはまだまだ少ないです。さらに3DVTuberで継続的にFC2配信をやっているのは、多分本当に私だけで後輩が欲しいです……。

 
──微エロなASMRを配信している方はそこそこいますけどね。先ほどの初期モデルから「お色直し」されたきっかけは?

Karin やっぱり最初のモデルでは売れなかったし、自分が辛くなってきたという点が一番大きいです。「進化を楽しむ」みたいなことも言いましたが、絵が描けるわけでもなく、3Dソフトも触り始めたばかりなので、結局これ以上可愛くすることもできず……。そんなときに「3Dカスタム少女(XP)」というエロゲーなら、キャラメイクして、自由に使える3Dモデルを出力できることがわかったため、そちらに乗り換えました。現在のモデルは3代目で、さいくら脳腫(@VRsrai03)さんに依頼して制作していただいたものです。

 
──そもそもの話、アダルト配信ではどんなことをするのでしょうか? VTuberだと服を脱ぐのが大変だったりと、いろいろな制約がありそうですが。

Karin FC2では全裸でしたが、法に触れるのが怖いので股間にUnityのデフォルトキューブを埋め込んでモザイクがわりにしていました。当時、Oculusで3Dモデルを動かすソフトを自作し、Unityのエディター画面をキャプチャーして配信していたんです。

 
──デフォルトキューブ(爆笑)。というか3Dモデリングだけでなく、Unityアプリまで自作とは。

Karin まず最初にアニメ「プリパラ」シリーズの世界に対する憧れがあり、それを実現するために、当時なりのVTuberとしての地力がほしいなと思っていました。アダルトという過激なテーマを選んだ理由は、数字を取りたいという気持ちがなかったわけではないです。多くの人に見られるようになれば、動きやすくなると思ったので。

 
──ただ普通に考えて、アダルト配信のために3DモデリングやUnityを覚えようとはしないと思います(笑)。「お色直し」後、活動に手応えを感じてきたのはいつ頃でしょうか。

Karin meet-meが終わって寝込んでいる間に「VTuberよくばりセット」(niconicoに有志が投稿していたまとめ動画のシリーズ)特需が終わり、個人勢が伸びにくくなっていたこともあって、最初はテーマの割に散々でした。特に喋りの素養があるわけではなく……当時は声も自信を持って出せていなかったので、モデルチェンジ後も低迷はしていました。

未だに大きい数字には結びついてはいませんが、プリパラとネトゲの体験からくる「アバター文化に対する熱意」みたいなものを持ち続けることで、突破口が見えてきた気がします。肩書きを面白がってくれたり、電子書籍の「マッハ新書」を書いたことなどをきっかけにして、トーク系のイベントや配信に参加できることが増えてきました。

 
──アダルトと並行して普通の配信も始めるようになったという?

Karin 普通の配信自体、特にゲーム系は昔からやっていますね。「ゲームとかが好きな、親しみやすいお姉さんが夜はFC2で喘いでいる方がエロい」っていう哲学に則ってやっています。

 

VRの性行為で目指すのは「心の触れ合い」

──バーチャル風俗の話が来たのはいつ頃でしたか?

Karin 今年の4月ぐらいだったと思います。先ほど話したトークイベントなどの人づてで声をかけていただきました。

 
──話が来たときにどう思われましたか?

Karin ノリノリです! VRアダルトを真面目に研究しているコミュニティーに誘っていただき、その中で「真面目にVR風俗をやってみるとしたら関わってくれる人いますか!」というお誘いがあって、すぐに手を挙げるっていう流れでした。

 
──確認ですが、これはVRの中だけの行為ですよね?

Karin もちろんです! 「物理接触が一切なくて、お互いの部屋の中だけで完結する」のが良くも悪くも現状ですね。

 
──接触なしで風俗が成り立つのかとかの話もありますが、実際はどんなことをしたのでしょうか?

Karin アバター同士で、キスから下半身のお世話までやりました。「VR感度」や「VR感覚」、英語圏でいえば「ファントム・センス」という概念があるのはご存知でしょうか?

 
──ファントム・センス! 中二病っぽくていいですね。つまり共感覚の話でしょうか。先日、ネットで話題になっていたあまおかさんの話のような……。

Karin あまおかさんのやつです! 物理的な接触がなくても、アバター同士が接触したときに触覚や快感を感じるという話ですね。感度もそうなんですが、単に「アバター同士で手の上に手を置かれたら、何もなくても包み込まれている感覚や暖かさを感じる」という感覚になります。

実際にやってみた感想として、この「VR感覚」、「アバター感覚」とも言い換えられますが、それがある人でないと100%楽しめないんじゃないかとは思いました。

 
──やはり適性があるんですね。当日は何人の相手をしたのでしょうか。

Karin 4人のお客さんと、あとは取材にきた知人2人の合計6人に対して、約30~40分相手にしました。VTuberさんがアバターを持ち込みされたり、お1人女性の方がいらしたり、女性アバターであえて男性的な動きをする方もいたりと、大変勉強になりました。

 
──内容が全く想像できないのですが、言葉で相手の心をほぐしつつ、裸のアバターの身体的接触で興奮を高めてくみたいな感じなのでしょうか。

Karin そうなります! 雑談しながらご挨拶して、脱がせるような仕草をしてもらいながら下着アバターに変えたり、キスをしたり、アバター感覚を高めるように「乳首もちゃんと作ってあるんですよね、このアバター。触りますよ~」みたいなことを言って身体感覚を意識させながら高めていきました。

 
──おおお。相手の射精という明確な終わりが見えない分、大変そうです。

Karin 身体男性の5人中4人が、多分射精してくれたと思います! 相手のリアルの様子は見えていないので、息遣いと自己申告でしかわからないのですが……。

 
──みなさんどんな感想を語ってましたか?

Karin ありがたいことに、心の触れ合いというか、優しく導いてくれてよかったという感想を多数頂きました。私が意識してやっていたというのもあるんですが、肉体的接触がないからこそ、VRにおけるノーマルな性行為で目指すところは心の触れ合いかなぁ……と思っています。

 
──そもそもVRにおける性行為ってテーマが面白いですよね。もともと子孫を残すための行為なのに、その根底から覆されるというか。

Karin そうですねぇ……。少子化に貢献していく存在だということは自覚しています。でも、逆にVRでアバターを使った性体験をしているおかげで、リアルでのコンプレックスから離れられて自信を持ってリアルでもできるようになる……みたいな展開もないわけではないと思います。良し悪しですね。

 
──風俗自体が子孫を残さない性行為なわけですし、そんなに外れていないのでは。

Karin 確かに! 一番最初のところの「なぜアダルト系なのか」にも関わるんですが、どうしても解消したい、けどむやみに振り回すと相手を傷つけることもある性欲というものをバーチャル世界に向けてくれるなら、それが一番いいのではないかと。

 
──ちなみに女性アバター同士というのは、男性と違いがあったのでしょうか?

Karin やっぱり「何やっていいかわからないよー!」というのはありましたね。射精という明確なゴールがないぶん、お互いお話しながら、控えめにいちゃいちゃして終わりました。ただ、現実にある女性同士の風俗でも一回目は雑談・関係性作りに終始して、2回目の指名から徐々に肉体を預けられるぐらい心を開くという話はあるらしいので、これでよかったのかなと思っています。満足感もあったとアンケートには書いて頂けました。

 
──イチャイチャしてるだけでも、多分先ほどのVR感覚はあるかんじなんですよね?

Karin 私自身はVR感覚が強い方なので、ありましたね。お相手の方が実際にどうだったかまではわかりませんが。

 

 

「アバターは性の可能性を飛躍的に広げてくれる」

──今後このバーチャル風俗のプロジェクトはどうなっていくのでしょうか。

Karin サービス開始に向けて、嬢のスカウト、法律的なハードルのクリアー、現実では出来ないプレイのための背景や小物の拡充あたりを頑張る予定です。

 
──ハードやソフトはどんな感じに進化していきますか?

Karin ハードはインタラクティブ性が欲しいので、最低でも一体型で両手のコントローラーがある「Oculus Quest」になるかと思います。個人的にはぜひ対応したいです。

アプリに関しては今「Clarie」という開発中のソフトを使わせていただいています。他のVRソーシャルソフトは規約でアダルトが禁止なので……。いずれ内製できたらいいなとは思うのですが、プロジェクトがかなり少人数のサークルなので、制作コストに対してどれくらいリターンがあるかは問題ですよね。

 
──有料で提供していくのでしょうか?

Karin ビジネスとして、きちんとやっていく予定です! 今回無料なのは、純粋にノウハウの向上のため・市場調査のためと、あとは法的な懸念もあり……。

 
──バーチャル風俗に風営法は適用されるのでしょうか?

Karin たぶん適用されるんじゃないかと思っております。相手のPCやVRゴーグルに送っているのは単なる映像なので、おそらく「映像送信型性風俗特殊営業」に当たるかもしれないと考えています。いわゆるエロビデオを頒布する側にとって必要な届出です。

ただ、この辺は「中に人が入っているからデリヘルと同じ『無店舗型性風俗特殊営業』じゃないとダメ」って言われたらどうしよう……とか、懸念は尽きないです。有料の正式サービスに向けて慎重に動くためにも、適切なタイミングで法律の専門家と相談しながら進めていきます。この記事を見ている方で、この分野とVRに明るい方がいらっしゃったら、ぜひご連絡頂きたいです!

 
──新しいがゆえの悩みですね……。最後に、バーチャルと性の可能性をお伺いしてもよろしいでしょうか

Karin バーチャル、特に一人称でのアバター操作文化は、私たちの性に対する可能性を飛躍的に広げてくれると思います。実際、私がバーチャル風俗で働くことになるなんて、VRゴーグルを買うまでは想像もできませんでした。「現実の見た目上の性を、枷にも言い訳にもしない」世界に近づいていくんだと思います。

ただ、個人的な懸念としては、自由化が逆にジェンダー観や性別役割を強化することも起こりうるので、一人一人の意識・扱い方が非常に重要になってくると思います。このへんは、幾夜大黒堂先生の「境界のないセカイ」もご覧ください。

 
──Karinさんとしては、バーチャルAV女優やバーチャル風俗嬢を続けていきたいでしょうか?

Karin 私は、ひとまずデビューから3年で引退するということは公言しています。リアルがそのタイミングで忙しくなることが具体的に見えているのと、個人勢のVTuberは様々な事情で突然引退してしまいますから、逆に「3年は絶対安心して推せるぞ!」という意思表示は大事かなと。

ただ、それで「Karin」が死ぬわけではなく、単に女優業の一時引退という位置付けです。暇ができたらまた戻ってくるかもしれないし、私はずっとこの世界に残っている予定なので。

 
──実際のAV女優が引退しても普通に存在していますしね。

Karin 残りは1年8ヵ月ぐらいかな? まだまだやりたいことはたくさんあるので、まだまだ活動を落ち着ける気はないです! ぜひ応援していただけますとありがたいです。

 
 
 
ここまでインタビューしてきて蛇足になるかもしれないが、Karinさんはリアルの肉体的には男性だ。性別違和を持ち、15年以上にもわたって想像の中でバーチャル美少女として生きてきて、ようやくVRの技術で念願が叶って今、美少女として生きる実感を得ているわけだ。この辺は、彼女が書いたマッハ新書や、下記のゲーム実況動画に詳しい。

 

 

 
人類の課題を解決するのが新しいテクノロジーの力なら、VRは確実に世界を変えてきている。VRシステムやソーシャルVRサービスが急激に発達している今、われわれ人類に性差や性行為の本質を今一度考え直すときが訪れているのかもしれない。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
Karinさん(Twitter)
Karinさん(YouTube)

LINEで送る
Pocket

のじゃロリLINE公式スタンプにじさんじLINE公式スタンプ猫宮ひなたLINE公式スタンプにじさんじ2期生LINE公式スタンプときのそらLINE公式スタンプ
        
バーチャルYouTuber
のじゃロリLINE公式スタンプ
にじさんじLINE公式スタンプ
猫宮ひなたLINE公式スタンプ