バーチャルキャラと握手、電気椅子、ドッペルゲンガー体験 東大VRサークル作品展示会「ば展」レポート

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東京大学では、VRやARをはじめとしたテクノロジーに興味のある大学生が集い、「VRの普及啓蒙と体験創造」を理念に、オリジナル作品の制作を行う「UT-virtual」というインターカレッジサークルが活動を行っている。

3月23日・24日、本サークル部員による作品展示会「東大VRサークル UT-virutal 春祭り2019 ば展」が、東京大学情報学環オープンスタジオ 中山未来ファクトリーにて開催。

xR関連の様々な展示を行っていたので、その様子を紹介していきたい。

 

UT-virtual とは

東大VRサークル「UT-virtual」は、2017年1月に設立されたインターカレッジサークル。現在80人の部員を有する本サークルでは、ハードウェア、ソフトウェアに関わらず様々な分野で作品を制作し、東京大学で年に2回行われる学園祭への出展や、サークル主催の作品展を実施している。

また、IVRC(国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト)等の大会への出場や、昨年末にはVR・AR技術に興味を持つ学生同士の交流を促すため、サークルの枠を超えxR学生大忘年会を主催するなどの活動も行っている。

 
本サークルでは、これまで年に1度、単独の展示会を夏季に実施してきたが、今年度からはサークル規模が大きくなり作品数が増えたため、春季にも展示会を開催することとなった。

春季としては初の展示会ながら、出展作品数は13タイトル。「こんな風にしたら面白いのではないだろうか」「こんな風にしてみたらどう感じるだろうか」といった発想から生まれた、挑戦的でユニークなコンテンツが多く並んでいる印象を受けた。

以下では今回展示されていた作品の一部を紹介する。

 
 
▲会場の様子

 

VR、AR、触覚デバイスまで! 個性豊かな作品の数々

 

二重人殻

「バーチャル空間の中で自分自身と相対したとき、人は何を感じるか」を体験できるコンテンツ。事前に来場者の顔をスキャンし、生み出したドッペルゲンガーと、バーチャル空間で対峙することができる。

コンテンツ内では、自分自身の姿を目の前で見られ、自分が他人に暴力を振るったり振るわれたりといった姿を客観的な視点で見ることが可能だ。

さらにそれだけでなく、自分の姿を他人が操作したり、自分がたくさんいたり小さくなったりする光景など、現実では見られないような目線で自分の姿を見つめることもできるようになっている。

 

▲最初にスマホで顔を撮影し、アバターを作成する

 

▲その後VRデバイスを装着して、バーチャルの世界へ

 

▲PC画面は筆者がVRで見ている画面。自分の顔をしたアバターを客観的な視点で見られる。

 

▲自分がたくさん出てきたリ、小さくなったりという不思議な光景も。

 
今回、本コンテンツの制作者である畑田さんにお話を伺ってみたところ、もともとこの「二重人殻」は、仮想空間上のアバターが、自身の内面に及ぼす変化を研究する意図があって制作されたものであるとのこと。

人間の肉体と精神は深く結びついており、それは仮想空間上のアバターの容姿でも同様である。畑田さんは「容姿が魅力的なアバターになった方がコミュニケーションがオープンになる」「アインシュタインの姿になると認知課題の成績が上がる」など、アバターの容姿がその人の行動に影響を与える「プロテウス効果」に着目し、人間の心理にVRを使って働きかける研究を行っているのだとか。

 

▲「二重人殻」の制作者、畑田 裕二さん(東京大学院 学際情報学府先端表現コース)

 
普段は自分の肉体以外で世界を見ることは出来ない。しかしVRの世界では、現実では見られないような新たな視点で世界を見ることができる。

自分の姿(アバター)を変えることで、そういったこれまでにない「新たな視点」を体験し、自由にマインドセットを変化させる。これにより自己実現のために必要な「やる気」「勇気」など精神的な部分に働きかけていくことを目的にしているという。

 

電気椅子VR

VRヘッドセットを被って椅子に座った状態で拘束され、そこから脱出を目指すゲーム。今回はゲーム画面を映せなくて申し訳ないが、ゲーム空間でプレイヤーはどこかの実験室(?)に居て、電気椅子に拘束されている。

ゲーム内では電気椅子に定期的に電気が流され、5分以内に脱出しなければゲームオーバーになってしまう。自分1人の力で脱出することは出来ないが、ゲーム内で自分を助けてくれるナビゲーターの声に従って行くことで脱出することができるという内容だ。

 

▲両手にトラッカーを装着し、VRゴーグルをかぶって椅子に座る。その後、両手が鎖で拘束された状態でゲームスタート。

 
このコンテンツは、VR空間だけでなく、現実世界の椅子なども全て手作り。ゲーム内で椅子に電気が流れると、現実で座っている椅子の座席部分と、腕の拘束部が振動するようになっている。

また、腕の拘束具についても、ゲーム内で手順をクリアすることで自動的に外れる仕組みになっている。これらは全て市販の椅子と部品で自作されたものだ。

 

▲座席に振動装置が取り付けられている。

 

▲腕の拘束具の様子。

 
本コンテンツは、椅子などハードウェア部分を作る人、ゲーム内の3Dモデルなどを作る人、ゲームのプログラムを作る人という分業で、3人のチームによる制作が行われたとのこと。

今回、ハードウェア部分を担当した中川さんと3Dモデルを担当した所さんにお話しを伺ったところ、作品を作るきっかけとなったのは、現実世界であまり移動できないという制約の中で、いかに自由さを感じさせるか、という点を考えたことだという。

椅子に一度拘束し、そこから課題をクリアして解放されることで、実際にはあまり動いていなくても「自由になった、解放された」という気持ちをより強く持てるのではないかと考え、今回のコンテンツをデザインしたとのことであった。

 

▲東京大学教養学部1年の中川雅人さん=左、所壮琉さん。また当日不在のためお話を伺えなかった平井龍之介さんの3人が開発メンバーだ。

 

VTuber Akushu

VRヘッドセットと触覚デバイス「Novint Falcon」を使って、バーチャルアバターユーザーと握手してコミュニケーションができるコンテンツ。その名の通り、バーチャルYouTuber(VTuber)と握手したいという思いから生まれたものである。

アバターユーザーが触覚コントローラーを操作すると、手のついたもう一方のデバイスが連動して動くようになっている。体験者には、VRで目の前にバーチャルアバターの姿が見えており、触覚デバイスを使ってバーチャルアバターと握手しているような体験が可能となっている。

 

▲バーチャルのキャラと握手しているような体験ができる。

 

▲手の操作はもう一方の「Novint Falcon」でやっている。

 

▲本作品はGOROman氏の「Miku Miku Akushu」にインスパイアを受けて製作した。

 
また握手だけでなく、アバターユーザーがマイクを使ってバーチャルアバターとして会話をしたり、握手していない方の手をVIVEコントローラーを使って動かし、手を振ったりといったこともできる。

さらに今回このコンテンツでは、音声認識型トークアプリ「ゆかりねっと」をシステムに組み込んでおり、バーチャルアバターユーザーの声を認識して、VOICEROIDなどの音声制作ソフトの声でアバターに喋らせるといったことも行っていた。これにより地声でなくても会話ができる。

 
本コンテンツは、PANORAで行っている「VTuberおしゃべりフェス」など、VTuberさんとコミュニケーションできるリアルイベントなどとも相性が良さそうだ。オンライン上で触覚デバイスを操作するなどの改良も予定しているとのことで、PANORAとしても今後の開発状況に注目したい。

 

A Boxes

本展では、VRコンテンツに限らず、ARなどのコンテンツも展示していた。この「A Boxes」は、スマホによるAR技術を使ったコンテンツである。

本コンテンツでは、まずそれぞれの面に異なるイラストや写真が貼られた立方体が置かれており、そこからニワトリとコンドル、ドラゴンの3つの絵を探すように言われる。そこで立方体を回して探してみるが、そこにはニワトリの絵しかない。

 

▲3つの絵を探すよう言われたが、ニワトリの絵しか見つからない……。

 
そこで初めて、他の絵はスマホで探すことで初めて見つかるものであることが明かされる。カメラで立方体の面を映すと、それがARマーカーの役割を果たし、スマホ画面上で3Dのモデルが浮かび上がるようになっているのである。

 

▲スマホを使ってコンドルを発見!

 
そうしてスマホを使うことで、2つ目のコンドルを見つけ出すことができた。しかしどの面にスマホをかざしてみても、ドラゴンを見つけることができない。

そこでまたヒントが与えられ、ドラゴンは、ジグソーパズルのように4つの立方体の面を合わせて1つの写真を完成させることで発見できることが明かされる。写真を完成させてスマホをかざすと……

 

▲ドラゴンを発見!

 
このコンテンツのポイントは、「先入観にとらわれると次の絵を見つけることができない」ということ。

「ニワトリの絵はサイコロに普通に描かれていたから、他の絵もそうなのだろう」「コンドルは4つのサイコロのどれかをスマホで映せば見つかったのだから、ドラゴンもそうなのだろう」と思っていると見つけることができない。

つまり、「これはこういうものだ」と決めつけて一つの視方でサイコロを見てしまうと、絵を探すことができないのである。

 
実はこれを制作した轟木さんは、日本大学の新聞学科の学生。周りが工学や情報系の学生が多いなか、新聞というメディアについての研究を行っているからこその、「ものの見方」に対する独自の着想がそこに感じられた。

 

サークル副代表、「ば展」企画責任者の大西さんにインタビュー


▲大西彬介さん(東京大学工学部機械工学科3年)

 
上記で紹介した以外にも、本展では様々な作品を展示していた。UT-virtualでは今回の春季のほか、夏季展示会、大学の学園祭での作品展示なども行っているので気になる人は足を運んでみてはいかがだろうか。本サークルのイベントなど、最新の情報は、UT-virtualの公式Twitterなども参照してほしい。

 
最後に、今回の「東大VRサークル UT-virutal 春祭り2019 ば展」にて企画責任者を務めた、大西 彬介さんからサークルの今後について伺ったので、以下ではそちらを掲載する。

 

──今回、春の展示会を開催した経緯をお聞かせください。

大西 UT-virutalはできて2年のサークルなんですが、これまでは夏休みに個人作品を展示する機会がありました。春の展示会は今回が初めてなのですが、理由としては部員が増えたのと、この1年は駒場祭(東大の学園祭)でゲーム開発を基礎からやったことで、個人で開発できる力のある人が多かったので、春と夏の2回開催することにしました。

 
──部員の数が増えたとおっしゃっていましたが、何人から何人くらいに増えたのですか?

大西 部員の数が増えたというよりは、「アクティブな人数が増えた」という感じですね。去年も今年も部員は80人くらいなんですが、去年はその中でアクティブな人が20人ほどでした。今年は50~60人くらいアクティブな人数がいるので、本当に倍くらいですね。

 
──それはなぜでしょう?

大西 今年は新しい人がサークルに入ってからの制度を整えたというのがあると思います。去年はサークルができて間もなかったので、新入生に教えられる人が少なかったのですが、今年はある程度やってきて教えられる人が増えたので、新入生も学ぶことができて、それでうまく軌道に乗っていったというところがありますね。

 
──大西さん自身、サークルに入ろうと思ったきっかけなどはどういったところがあるのでしょうか?

大西 もともと僕はそこまでVRに興味は無かったんですが、Twitterで稲見先生(稲見 昌彦教授)をフォローしていて、そこで新しくVRサークルができたらしいという情報を得て、とりあえず行ってみようということで体験会に参加してみたんです。そしたらすごくて、「ここまできてるのか!」と衝撃を受けたのがきっかけですね。

 
──VRは体験しないと分からないようなところもありますよね(笑)。

大西 本当にそれを身をもって知ったという感じです(笑)。

 
──今後サークルでやりたいこととか、サークルとしてこうなっていきたいとかはありますか?

大西 もっと長期のプロジェクトがあってもいいのかなと思いますね。今は大体、展示会に向けて3か月とか、短い人は1か月で作り上げるものが多いのですが、もっと長いスパンでのモノづくりができたらいいなと思います。ただそうなると、開発する人の技量が求められることになるのでもう少し経ってからかなとは思います。

 
──そういった中で、大西さんの役割としては、こういったイベントの運営とか、主催になってくるんでしょうか?

大西 僕は去年から運営とか、イベントの企画とかには携わっているのですが、去年は活動している人数が少なかったので少人数で回してきたというのがあって、今年は人数が多いのでサークル全体で運営していこうという流れになっています。ただイベントを主導するリーダー的な役割は、大体今まで企画を運営してきた人がやることが多いです。

僕はサークルの副代表なのですが、僕がやったりもう一人の副代表がやったり、あるいは代表がやったり、学年としては2年生や3年生になりますね。

 
──なるほど、わかりました。本日はどうもありがとうございました!

大西 ありがとうございました!

 
(文 高橋佑司/編集 花茂未来

 
●関連リンク
UT-virutal 公式HP
UT-virutal 公式Twitter

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