クラウドファンディングを経てついに開催! 人気VTuber4人の「バーチャル音楽フェス」レポート
昨年の9月、クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」にてスタートした、VR音楽ライブイベント「バーチャル音楽フェス」制作プロジェクト。
このプロジェクトは、バーチャルYouTuberのアズマリムちゃん(YouTube/Twitter)、かしこまりちゃん(YouTube/Twitter)、天神子兎音ちゃん(YouTube/Twitter)、ときのそらちゃん(YouTube/Twitter)が中心となり、新たなVRライブを制作しようという試み。
バーチャルタレントのVRライブといえば、現在は「cluster」や「VARK」などのプラットフォームで行われることが多いが、今回の「バーチャル音楽フェス」では、オリジナルのプラットフォームで実施するものだ。
Makuakeで実施したクラウドファンディングは、集めた資金を使い、仮想空間内に設置するステージの装飾や演出をより豪華にするためのものだった。
▲クラウドファンディングプロジェクトページ
クラウドファンディングでは、目標額の500万を達成しただけにとどまらず、その倍近い約950万円もの資金を調達することに成功。ファンからの大きな期待が寄せられていることを表す結果となった。
そしてそんな「バーチャル音楽フェス」のVRライブが、いよいよ4月10日に開催された。以下では、ライブの様子を紹介していきたい。
Vフェスいよいよ開幕! ソロだけでなくデュエットも
本ライブは、HTC VIVEやOculus Riftを使ってVRでライブを見ることができるほか、Gunosy、OPENREC、bilibiliで生中継も行った。(なおアーカイブは公開されていない。)
会場の様子はこんな感じ。こちらは開演前のものだ。本ライブは、もともと2月のバレンタインデー時期の開催を予定しており、それを意識した装いになっている。
▲会場の様子
ちなみに、観客席の人たちの持っているペンライトは、VR参加の観客たちが手元のコントローラーで色を変えられるようになっている。色は4色で、白(=アズリムちゃん)、黄色(=まりちゃん)、紫(=子兎音ちゃん)、青(=そらちゃん)と出演者それぞれに対応した色を出せるようになっている。
会場の様子を眺めながらしばらく待っていると、中央ステージに円筒形サイネージ降りてきて、かしこまりちゃんのマネージャー・パンディさんが出現。注意事項等も読み上げを行った。
▲サイネージにパンディさんが登場。場内アナウンスとして注意事項などを読み上げた。
それが終わると、いよいよライブの開演。最初の曲は、この2人のデュエットだ。
1曲目「からくりピエロ」
▲円筒サイネージにギフトボックスが映し出され、まるで箱を開けるように上部に上っていく。中から登場したのは……
▲かしこまりちゃん&天神子兎音ちゃん!
▲2人が歌うのは40mP氏の人気ボーカロイド楽曲「からくりピエロ」だ。
「からくりピエロ」は少し切ない曲であるが、2人の気持ちのこもった歌声がそんな楽曲の心情を見事に表現し、オープニングから一気に引き込まれる。
また、楽曲を歌う彼女たちの背後に、回る歯車が出現するステージ演出も。以降の曲でもいえることなのだが、曲に合わせて毎回異なるステージ演出が施されていた点も本ライブの見どころであった。これはクラウドファンディングによる支援のおかげでもあるのだろう。
▲ステージには楽曲ごとに毎回さまざまな演出が。今回は「からくりピエロ」をイメージした大きな歯車が登場した。
楽曲を歌い終わると、かしこまりちゃんと天神子兎音ちゃんはいったん退場し、次に登場したのはアズマリムちゃんだ。彼女が歌うのはもちろんこの曲、オリジナルソング「人類みなセンパイ!」だ。
2曲目「人類みなセンパイ!」
「人類みなセンパイ!」は、畑亜貴さん(@akihata_jp)が作詞を担当し、まふまふさん(@uni_mafumafu)・田中秀和さん(@MONACA_tanaka)が作曲を担当するという、豪華布陣による楽曲。
「おつおつおー!」というアズマリムちゃんの挨拶を歌詞のなかに取り入れるなど、明るく楽しい1曲だ。
▲次にステージに立ったのは、みんなのコウハイ、アズリムことアズマリムちゃん。
▲元気いっぱいにオリジナル曲「人類みなセンパイ!」を披露。
▲本楽曲では、ステージの上空に、アズマリムちゃんの好きな「牛丼」や彼女のペットの犬「はちみつ」が浮かぶというステージ演出も。
ところでアズマリムちゃんといえば、常に全力パフォーマンスでことごとくスタミナ切れを起こすのが持ち味(?)。今回はどうだったかというと……やはりものすごく息切れしていた。さすが期待を裏切らない。
また、歌った後のMCでアズマリムちゃんも触れていたが、今回のライブ、カメラワークが素晴らしいかったのも見どころの一つだ。VRでの映像に関しては見ていないので分からないが、OPENREC等の生放送などのカメラの動きが非常によく、これがまたライブの演出を引き立てていた。
ちなみに、この記事で使っているスクリーンショットは、全てこのカメラで捉えていたアングルである。
▲生放送のコメントであまりにカメラワークが褒められたために「アズリム自身のことも褒めろよ!」と叫ぶ彼女。ごもっともです……。
そして3曲目に登場したのは、かしこまりちゃん。今度は1人での登場である。歌う楽曲は、人気ボカロ楽曲の「シャルル」。
3曲目「シャルル」
▲3曲目はかしこまりちゃんのソロ。名曲「シャルル」を感情豊かに歌い上げる。
▲「シャルル」では、バックスクリーンを利用したステージ演出。
▲気合の入ったMCで観客のテンションを上げる様子はミュージシャンとしての貫禄を感じるほど。
バルーン氏によるv flowerオリジナル曲「シャルル」は、楽曲を聞いたことがある人ならご存知かもしれないが、テンポが速く激しい曲であるうえに、サビの音程も高く、歌うのが難しい曲だ。そのためこの曲で“聴かせる”には、相応の歌唱力を持っていないと厳しい。
しかしそこは実力派の歌ウマVTuberであるかしこまりちゃん。持ち前の歌唱力で「シャルル」を歌いつつ、合間には観客席への呼びかけでライブを盛り上げるさすがのパフォーマンスを披露した。
VRライブなので客席の声が聞こえたわけではないのだが、きっとライブ参加者たちも大いにヒートアップしたことだろう。
4曲目「magnet」
そして4曲目。次にステージにあがったのは、ここで初登場のときのそらちゃん、そしてアズマリムちゃんの2人だ。2人が歌った楽曲は、流星P氏のボカロ曲「magnet」。
▲輝く花吹雪の中から現れるというオシャレな登場。
▲スポットライトと、花吹雪でステージを劇的に演出。
▲花だけでなく、イチョウの葉や光の粒が舞い散る場面も。
アダルトで妖艶な2人の世界を歌い上げるこの「magnet」というデュエット曲。正直アズマリムちゃんとときのそらちゃんがこの楽曲を歌うというのはなかなかに意外だった。
しかしライブで目の当たりにしたのは、そんな楽曲を雰囲気たっぷりに歌い上げる2人。曲の途中には、原曲にはない掛け合いを披露し、「てぇてぇ」を通り越して百合の花園が見えそうなパフォーマンスにはグッとくるものがあった。
▲歌詞の「キスをして 塗り替えてほしい」という部分で、アズリムちゃんが「キスをして!」とそらちゃんに叫ぶ。
▲それに対してそらちゃんはいたずらっぽく笑いながら「まーだ♪」と返す。
MCから、ラストスパートまで
4曲のパフォーマンスを行ったところで、ここで初めて4人そろってのMCの時間に。4人のトークを見てみると、イジられ役の子兎音ちゃんとイジり役のアズリムちゃん、ツッコミのまりちゃんにフォロー役のそらちゃんと、見事に4人のタイプがバラバラでバランスが良かったのが印象的だった。
▲「てぇてぇ」とかよりも普通に笑ってしまうやり取りになる4人。
▲またMCの時間では、視聴者参加型の遊びも。「この中で一番○○なのは誰?」というメンバーからの出題に、それぞれがそうだと感じる人を一斉に指さすという遊びで、VR参加者の人はペンライトの色で、生放送視聴者はコメントで参加する形で盛り上がった。
5曲目「ブラック★ロックシューター」
そんなMCタイムも終わり、次は5曲目の楽曲披露の時間。歌うのは天神子兎音ちゃんだ。披露する楽曲は、ryo氏の手掛けた「ブラック★ロックシューター」。
▲5曲目は、天神子兎音ちゃんの「ブラック★ロックシューター」。MCの時のネタ要員っぷりが目立つが、ここではクールな歌声を響かせる。
huke氏の生み出したオリジナルキャラ「ブラック★ロックシューター」をモチーフに制作された作品群の1つであるこの楽曲は、疾走感のある音楽と、弱さを乗り越えて前へ進もうとする力強い歌詞が特徴的な楽曲。
天神子兎音ちゃんの女性ながらに力強くカッコいい歌声と大いにマッチし、ライブを盛り上げた。
また、ステージ演出も注目。会場の壁が透けて見えるように、周囲に星空が映し出され、まるでここが宇宙に浮いているかのような様子へと変貌する。さらに曲の終盤では、ステージや子兎音ちゃんの手からキラキラとした光が出現し、一層幻想的で美しい光景を生み出していた。
▲会場の壁が星空に!
▲ステージや子兎音ちゃんの手から発せられる光の粒が、幻想的な光景を生み出す。
そして5曲目が終わり、いよいよ次がトリの楽曲ということに。「バーチャル音楽フェス」のトリを飾るの楽曲となったのは、この曲だ。
6曲目「ブレンドキャラバン」
▲ときのそら 「ブレンドキャラバン」Music Video(Short ver.)
そう、ときのそらちゃんのオリジナル楽曲「ブレンドキャラバン」である。上の動画はショートバージョンだが、もちろんライブではフルバージョンを披露した。
▲トリはこの人、ときのそらちゃん。歌うのは、オリジナル曲「ブレンドキャラバン」だ。
▲ステージの壁や天井に広がる、澄み切った青空。軽快な曲の雰囲気と相まって、心まで晴れ渡るようだ。
▲虹や紙吹雪、色とりどりの音符が加わりさらに華やかに。
3月27日発売のときのそらちゃんのデビューアルバムに収録されているこの曲。楽しく賑やかなメロディーと、ときのそらちゃんのVTuberとしての旅路を示すかのような歌詞が心に響く楽曲だ。
ステージは一面、先ほどの「ブラック★ロックシューター」での星空とは対照的な抜けるような青空に変わり、色鮮やかな音符や紙吹雪、虹が彩る爽快感MAXの演出で楽曲の晴れやかさを際立たせた。
そうして6曲目の披露が終わると、再び4人でステージ上に登場してエンディングトークに。せっかく4人集まっているのでということで、ここでスクショタイムのサービス。4人でいろいろなポーズを取ってくれた。
▲ポーズ① ウルトラマン
▲ポーズ② ハートマーク
▲ポーズ③ ピース
そしていよいよ最後というとき、アズマリムちゃんから、最後に1曲歌いたいとの提案が。前述したが、もともとこの「バーチャル音楽フェス」、開催予定日は2月の9日で、バレンタイン時期のライブだった。
ということで、最後にバレンタインの定番曲、「バレンタイン・キッス」を4人で歌う運びに。
▲「バレンタイン・キッス」を歌う4人。
▲曲の終盤には、空からチョコレートが降ってくる演出も。
4人で楽しそうに歌う姿は、筆者的には今日1番の「てぇてぇ」場面で、大変ほっこりさせて頂いた。2か月ごしのバレンタインプレゼント、確かに頂戴いたしました。
そして「バレンタイン・キッス」を歌い終えると、今度こそ本当にお別れの時間となる。そろってお辞儀をしたアズマリムちゃん、かしこまりちゃん、天神子兎音ちゃん、ときのそらちゃんの4人は、そのまま円筒サイネージの向うに姿を消し、かくして「バーチャル音楽フェス」は閉幕となった。
▲最後のエンディングでは、サイネージにクラウドファンディングの支援者の名前がずらりと表示された。本ライブがいかにたくさんの人の力で作り上げられたのか、それを大いに実感することができた。
今回のライブは、専用のオリジナルアプリを使ったVRライブだったのだが、ライブ演出などのクオリティは他のプラットフォームにも全く引けを取らないものだった。気になるのは、本ライブのシステムが使われるのが今回のライブ限りなのかという点である。
現在バーチャルタレントのVRライブイベントが行われているプラットフォームはいくつかあるが、その数自体はあまり多くはない。
またライブをするに当たっては、いくらバーチャル空間といえども演出やステージのセッティングには時間が掛かるために、1つのプラットフォームで大きなライブイベントをそうそう頻繁に開催するのは難しいだろう。
結果的に、VRライブの絶対数を増やすのは現状難しそうに見える。プラットフォームが増えれば、バーチャルタレントのVRライブもより多く開催できるかもしれない。
そうした点を考えると、今回のVRライブを実施したシステムが一回限りで終わってしまうのももったいないような感じがする。もちろん、一回のイベントを開催するのとプラットフォームとして常設するのでは話が違うのだろうが……筆者としては、今回のようなライブもぜひまた見てみたいと思えた。
「バーチャル音楽フェス」のさらなる展開はあるのだろうか。今後については全く分からないが、個人的には期待を持って注目したい。
(文 高橋佑司/編集 花茂未来)
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