Unityアプリをサクッとアトラクションに! モーションシム「NEXPERIENCE」に注目【GDC2016】
米国サンフランシスコにて開催していたゲーム開発者の祭典「GDC 2016」。前回取り上げた一体型VRゴーグルを始め、EXPO会場ではVR/AR系の展示で大いに盛り上がっていたが、今回は「大物」である 韓国GOLFZON Yuwon Holdingsのモーションシミュレーター「NEXPERIENCE」を紹介したい。
現状、VRゴーグルは、ご家庭での体験というより、イベントや店舗におけるアトラクションとしての利用例が目立っている。その際、単に360度の映像を見せるだけでなく、USJにある「きゃりーぱみゅぱみゅ XRライド」や、つい先日開催されたスーパーVR体験など、大型の機械をからめて「あちら側」に行っている感覚を強めるものも増えてきた。
そうしたニーズを見越して、GDCで展示していたのがNEXPERIENCEだ。このような2人乗りのデバイスで、VRコンテンツと連動して振動や傾斜を再現してくれる。例えば、でこぼこの道を走ったり、坂を下るときの振動を全身で体感することが可能だ。
順番に説明すると、まずは操作パネルで体験したいコンテンツを選ぶ。PCでマウス操作するのではなく、説明員が画面をスワイプしてさっとコンテンツを切り替えられるのが実用的だ。体験中はこのパネルに残り時間が表示されるので、列で待っている人にも優しい仕様となっている。
座席に座ってVRゴーグル(今回はOculus RiftのDK2)をかぶると、バーを下ろしてくれる。体験中につかめるので揺れても安心だ。前方には体験中のコンテンツを表示するモニターを用意。
シート前方よりスピードに合わせて風が出るようになっており、あちら側の世界の実在感を高めてくれる。
足元の機構。
DK2の制御用のPCは背後のここに格納されている? タッチパネルの操作を含め、製品としての完成度も高いように思えた。
パッケージとしての完成度がかなり高い
実際に列に並んでみたが、1回のコンテンツは3分程度で、装着の説明、準備は1分程度で済んでいて、オペレーションがこなれていた印象だった。いくつかあったコンテンツの中、今回はGOLFZONとパートナーシップを結んでいるVirtual by BacklightというフランスのCGスタジオが開発した、ジェットコースタータイプの体感型ゲームをチョイス。
ストーリーは、Birdy King Landに住む主人公が、自分のハンバーガーを取った鳥を追いかけて、バイクで街中や岩山の合間などのでこぼこの道を突き進むというものになる。プレイヤーはそのバイクのサイドカーに乗っている設定だ。主人公ががんがんバイクを飛ばす映像に合わせて、モーションシミュレーターが揺れまくり、前方からも風が吹きまくるので、かなりスピードを感じられて非常に楽しかった。
一方で、あまりに映像が揺れることもあって、筆者の1人で乗り物酔いしやすい体質の広田は気持ち悪くなってしまったが、これはVR酔いというよりは、乗り物酔いに近い印象だった。急加速や急ブレーキなどリアルでの荒い運転は、バーチャルで同じことをやっても酔いますよね……。
Birdy King LandはOculus Shareからダウンロードもできるので、コンテンツに興味ある方はこちらをチェックだ。
ゲロ酔いしたけど楽しかったZE☆
会場にいたGOLFZONの方によれば、発売時期は2016年の9月以降で、価格は1台あたり2万〜3万ドル(約220万〜330万円)を予定しているとのこと。さらにUnityに対応していて、通常のUnityコンテンツをつくって、同社のSDKをシーンにドラッグ&ドロップするだけで対応できるという点が興味深い。
SDKが地面の傾き、揺れ具合などを計算して、モーションシミュレーターに傾きや振動として伝えてくれる。「この場所で揺らしたい」や「ここで風を吹かせたい」といった細かい調整に対応するために、個別の機能をAPIとして呼び出せるようにしているとか。
そういえばモニターにUnityロゴが表示されていた。
ゴルフシミュレーターからの派生
ところで、GOLFZONについてだが、その名の通りゴルフシミュレーターの開発、製造を行っている企業で、日本法人であるGOLFZON Japan 株式会社が存在する。日本でも約200ヵ所のゴルフ練習場に同社の製品が採用されており、評判も高いようだ。
ゴルフシミュレーターを実現するためには、プレーヤーが実際に打ったボールの球速/回転/方向などを分析し、それをCG空間にシミュレーションするという、リアルとバーチャルの連動技術が必要だ。NEXPERIENCEは、このような連動技術が元にあって開発につながったものと思われる。
ゴルフシミュレータ「GOLFZON VISON」の公式サイトより抜粋
NEXPERIENCEはその大きさと価格から、個人で所有するというよりは、VRのアトラクション展開を考える企業向けだ。単純にUnityのプロジェクトを読み込ませるだけでなく、さらにモーションシミュレーターの制御を細かく作り込めば、酔いを減らせたり、さらに高い没入感を実現できそうだ。
GOLFZONの方によれば、まだ具体的に決まってはいないが海外展開も視野に入れているとのこと。日本についても興味を持っている企業がいれば積極的にアピールしていきたいと語っていたので、同プロダクトのサイトなどからコンタクトを取ってみるといいだろう。
●関連リンク
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