一人称と三人称の間がある VRの“長”4人による「ゲーム・エンタメのこれから」ほぼ全文起こしレポ【VRCカンファレンス2017】

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11月11日、東京渋谷でVRCカンファレンス2017が開催。その中から、Enhance ​CEO/慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 特任教授 水口哲也氏(写真左から)が進行役となって、株式会社gumi 代表取締役社長 國光宏尚氏、株式会社バンダイナムコエンターテインメントのコヤ所長(AM事業部 エグゼクティブプロデューサー 小山順一朗氏)、タミヤ室長(AM事業部 AMプロデュース1部 プロデュース4課マネージャー 田宮幸春氏)がスピーカーとして登壇したセッション「ゲーム・エンタメのこれから」をレポートしていこう。

水口氏の挨拶ではじまった本セッション。國光氏、コヤ所長、タミヤ室長の紹介後、白衣を着ている二人に水口氏は「別にAR三兄弟の弟さんふたりというわけじゃないですよね」というジョークで会場の笑いを取り、コヤ所長の元気な声と笑いともにセッションは進行。お台場「VR ZONE Project i Can」立ち上げ時の秘話など、いろいろ飛び出した。

なお、書ききれない話も盛りだくさんな、セッションの模様を録画した動画がVRCカンファレンス2017のサイトで公開されている。

 

 

ハイテンションなコヤ所長、冒頭から会場を笑いに包んだ

水口 この3人(國光氏、コヤ所長、タミヤ室長)は、ある意味、結構古くからVRエバンジェリストをやっている人たちだろうなと。コヤ所長さんは90年にナムコに。

コヤ所長 そうですね。90年にナムコに入っています。

水口 実は僕も90年に、この業界に入って。セガに居ました。「バーチャリティ2000」を買っていましたよね。

コヤ所長 買いましたね。データグローブとかもありましたね。

水口 いまから考えると重い、面白くないと、大変でしたよね〜

コヤ所長 そう。もうすごいんですよね。たぶんね〜フレームレートも5フレームとか10フレームくらいでね。

水口 しかもテクスチャがないんで。

コヤ所長 そう、「Amiga」(編注:Commodoreが開発したパーソナルコンピューター)ってやつで動いていましたからね。

水口 そんなアーケードからVR時代をずっと目指して、いまはVR ZONEに。

コヤ所長 そのとおりですね。やっていますよ

水口 國光さんは元々映像の人なんですよね。

國光 テレビドラマとかやっていました。

コヤ所長 あ、そうなんですか〜。なんかすごいですね〜。

水口 いまはgumiの社長ですけど。なんでそこでVRに行ったかというと?

國光 それで言うと、新清士(編注:VRゲーム専門開発会社のYOMUNECO代表)さんにそそのかされた?

コヤ所長 新さんなんですね!

会場 笑い

水口 という感じなんですけど、エンターテインメントで、とくにお二人(コヤ所長、タミヤ室長)はVR ZONEで、いますごいことになっていますね。

コヤ所長 「いやいやいやいや、こっからこっち(自身と國光氏の間を指しつつ)は違いますよね。あちらは社長。

水口、國光、会場 爆笑

コヤ所長 我々はサラリーマンですから!

会場 笑い

水口 え、そこですか!? 関係ないじゃないですか、そこ。

コヤ所長 サラリーマンですよ〜、道なき道を切り切り開いて行くお二方と。先ほどの方々みんなも。俺らサラリーマンですから。

水口 ちょっと、俺の思っていた感じとなんか違う。全部持っていかれそうですね。

会場 笑い

國光 想像以上にね(笑)

水口 ちょっと真面目な話をすると。今日はゲームとエンタメなんで、映像を含めてですけど。例えば昔からゲームというと体験。生理的な体験から、ストーリーテリングといった物語を体験するというゾーンがありますよね

コヤ所長 高尚な感じです。

会場 笑い

水口 それで、いろんな技術がありましたよね。アーケードがあって。家庭用、スマホでネットワークに繋がって大進化しましたと。簡単に言うと、VRがやっと、使いものになるようになったかな?というところですよね。

コヤ所長 そうですね〜、まだまだ不格好なデバイスというか。

水口 ですよね。

コヤ所長 例えば、歩き回るのに全身、なんかおかしなスーツを着なきゃなんないとか。

國光 スーツというと水口さんが実際に着ましたよ。

コヤ所長 あ〜、ハイハイ

会場 爆笑

コヤ所長 すみません! ディスった訳ではないですけど

タミヤ室長 何を言っても引っかかりますよね、今日。

國光 なかなか着られないですよね

水口 もう止めて下さい、そう言うの〜。

 

超有名タイトル並の予算が投入された「VR ZONE SHINJUKU」

コヤ所長 我々、バンダイ系としては、売れたハードにコンテンツを供給する会社ですもんね。そんな会社のなかで、VRをやるのは大変だったと、今日は言いたかったんですよ。

水口 実際、いろいろ話を聞いていると、そりゃあもう最初の一発目で大変だったと、原田勝弘氏(編注:バンダイナムコエンターテインメントのプロデューサー。鉄拳シリーズなどを手がけている)からも聞いています。

コヤ所長 (自社が)お金出してくんないの。スマホのゲームでバンバン儲かっているのに。全然、お金出してくんないんですよね。

國光 ちなみに、VR ZONE SHINJUKUはどのくらい掛かったんですか。

コヤ所長 うんとね、超有名ソフトの1本分はかかってないかな?

タミヤ室長 それぐらいで止めましょうよ。

会場 笑い

國光 VR ZONE SHINJUKUそんなに掛かっているんですか!(驚)

コヤ所長 めっちゃ掛かっていますよ。

水口 どうやってそこまで、持っていったのか話を聞かせてください。

コヤ所長 マジッスか。

水口 最初は、ほらワンちゃんが板の先にいて……。

コヤ所長 猫です!

水口 すみません、猫ちゃんをビルの上から助ける(編注:「極限度胸試し 高所恐怖SHOW」のこと)。あれ、犬じゃなかったっけ〜。

 

地上200m高さに張り出している板の先から猫を助けるVRゲームの「極限度胸試し 高所恐怖SHOW」

タミヤ室長 あれは、会長をはじめ、バンダイナムコホールディングスの方々にも遊んでいただいて。

コヤ所長 そう、関連会社の社長なんかも居たけど、会長も四つん這いになってね。

水口 偉い方々を含めて、バンナムのみなさんが体験したんですね。

コヤ所長 田宮にこんな(白衣の)格好させて実験しますと言って、やらしたんですよね。

タミヤ室長 そうです、そうです。

コヤ所長 そのときの感想とか言ってくださいよ。

タミヤ室長 いちばん最初はやっぱり「会長どうぞ」となるじゃないですか。で、やっていただくと、渡れないんですよね。怖くて。会議室に、ただ板が置いてあるだけなんですが、渡れなくて。散々、逡巡(しゅんじゅん)したあげく、こう四つん這いに。

会場 笑い

コヤ所長 すごいですよね、年収○億のような男が。

タミヤ室長 黙りなさい! 言わなくていいの本当かどうか知らないですけど。

会場 爆笑

水口 それで、それで。

タミヤ室長 結局、それをみんなも楽しそうに、見て笑い。代わる代わる、じゃ、お前もやってみろよと言って、やっぱり同じような反応になっていた。

水口 お〜という良い感触はあったんですよね、そのときに。

タミヤ室長 そうですね。そのときに、だいぶ、これはすごいなという感じにはなっていましたね。

水口 大体、そのあとに、これ良いんだけど、幾らかかるのみたいな話が出ますよね。

コヤ所長 ポンとは出ないんですよね〜。

水口 で、その辺は、どうしたんですか?

コヤ所長 もうね、作っちゃたの。

会場 爆笑&拍手

國光 お〜。

水口 え、ダマテン(編注:麻雀用語。テンパイしてもリーチせずに黙っていること)。すごい会社だなあ〜。

コヤ所長 作っちゃたの、ある程度まで。

國光 ここまでやっていたら、仕方ない的な?

コヤ所長 お台場は、そんなにお金をかけずに、居なくなったアパレル店舗を居抜きで利用。雰囲気も、ゲームセンターとも違うし、ここにそのまま置いても、良い感じになるんじゃないみたいな感じでね。だから施設にお金かけてないんですよね、お台場のあの場所は。

タミヤ室長 そうですね。でも、なにも言わずに作ったと言いますけど、社長にはVIVEを早めに見せていたんですよ。「Tilt Brush」や「the Blu」を見せていて、「これ、すごいじゃないか」と、社長に言ってもらえていました。で、ゲームセンター部署で、これを使って何かやれよっていう、上側からのGOサインは、意図として出ていたので、そこは動きやすかったですね。

水口 お台場がある意味、実験的な最初の試みで、そのあとに新宿のVR ZONEに繋がっているわけでね。

コヤ所長 そうです。まず今のゲームセンターにお客さんは、ゲームをやりに来ないですからね。ショッピングセンターと内部にあるゲームセンターの売り上げは完全に比例しています。つまり、ゲームセンター目的では、お客さんは来てないってことで、遊び、映画、ショッピングなどのついでに、利用するだけになっています。

そんな良くない状況のなか、人を連れて来られる外遊びビジネスを証明させて下さいと。これで自ら予約して、VRを体験しに、遠くからお台場に来ることが、ある一定期間証明されたなら、続き(VR ZONE SHINJUKU)をやらせて下さいよということにしたんです。

水口 VR ZONE SHINJUKUでは、流れは変わったと思いますか?

コヤ所長 お台場のVR ZONEのときは、やっぱり、ここに居る皆さんに支えられ、あとはちょっと情報感度の高いカップルの方とかが、遊園地っぽい感じで来ていたんですけど、VR ZONE SHINJUKUに来ている人たちの8割から9割くらいは、PlayStation VRの存在も知らない感じです。

水口 存在も知らないの?

國光 年齢、性別ってどんな感じなんですか?

コヤ所長 20代前半から30代前半が6〜7割くらいかな。

タミヤ室長 そうですね。20代の中間くらいに山がある感じで、前半も後半も同じくらい居る感じですね、年齢層は。

國光 男女は?

タミヤ室長 半々から6:4で、男性がちょっと多いくらいかなと

コヤ所長 逆に女性が多いときもあったね。

タミヤ室長 パラパラ変わっている感じですね。

コヤ所長 しかも、お一人様率は全体の4%しかない。

國光 お、ほとんどグループ?

コヤ所長 2人とか4人ですね

水口 みんな集団で来るんだ

國光 ちなみに流行っているゲーム3つと、流行ってないゲーム3つは?

コヤ所長 一番人気は「マリオカート」ですね。次は「エヴァンゲリオン」かな〜。いまは「ハネチャリ」

タミヤ室長 「ハネチャリ」ですね。

水口 ガンダムがオープンした話を聞いたんですが。

コヤ所長 「機動戦士ガンダム 戦場の絆VR PROTTYPE Ver」ですか。戦場の絆は、また変わった人たちが来ていますね。

会場 笑い

タミヤ室長 今日、朝見てきた感じだと、「マリオカート」よりも、戦場の絆の方に人が溜まっていましたね。我々プロジェクトのイメージとしては、最初なので、やっぱり絆のプレイヤーさんが、ガッと来て、回(プレイ)し続けるのかなと予想していましたが、結構、「マリオカート」から、よく見える場所にブースがあるのと、プレイを俯瞰で奇麗に見られる状態のモニターを外に出しているためか、海外の方やお母さんと子供(娘さん)とかも多いです。アンケートを見たら、絆プレイヤーの人と一度もやったことのない人が半々で、ちょっとびっくりしましたね。

水口 なんか、90年台って「R-360」(セガの大型体感ゲーム筐体)とか、いろいろ動かしまくっていましたよね

コヤ所長 そうですよね〜。マイケル・ジャクソンに売りましたよね(R-360)。

会場 笑い

水口 そろそろ、VR周りで、なんか動かしたり、揺らしたりとか、もっとすごい感じのないんですか?

コヤ所長 韓国のグルグル回る「GYRO VR」(関連記事)ですね。あれはやっぱり、同じようにグルグル回った「R-360」を彷彿させますね。

水口 でも、やって気分悪くなったら、まずいですけどね。昔、「R-360」を作っているときに、エンジニアの方が夜調整していたら、途中で止まって朝まで、そのままだったという事件がありましたね。

会場 笑い

コヤ所長 ベルトでガチャガチャとしっかり止めますもんね。

水口 結構、命がけでしたよね〜。

 

ロケーションベースVRの方向性は?

國光 僕、韓国とかでもロケーションVRをやっていて、いま向こうの方で結構議論になっているのが、インターネットカフェみたいな感じのVRカフェや、カラオケルームと同じで、みんなでお金払って1時間1部屋、幾らのパターンか。ハシラスさんと同じように、ショッピングセンターにハードと一緒に置いて、1回のプレイ500円とか、700円を払って体験する2つに分かれていて、最初は圧倒的にネットカフェのようなVRカフェの方だろうという感じだったんです。ただ、VRカフェはリピートがしんどいから、子供向けのハードウェアと連携させた形の方が現状では、普及している。この辺って、日本ではどうで、今後ってどうなっていくと思います。

コヤ所長 そもそも、アーケードゲームは100円という話がありますよね。このゲームを外でやったら、100円というのを一端リセットさせたくて、VR ZONE Project i Canをはじめました。例えば、「脱出病棟Ω(オメガ)」は、社内の計測的には、富士急ハイランドの戦慄迷宮レベルの怖さはあると。

タミヤ室長 そうですね。最高級の遊園地でやっているお化け屋敷と同じクオリティ、怖さで作って、値段を設定している。

コヤ所長 800円とかの相場と、その相場に見合う中身にする。遊園地は、リピート力がないと駄目だと言われていますが、我々は、ゲームをずっと作ってきたので、単体のコンテンツでリピートさせることはやりやすい。

いろいろなコンテンツを用意して、安く、みんなで遊んで、なんか楽しかったねというよりも。1つ気合いの入ったものを用意して、それを食べていただいて、もう一回食べたいなと思ってもらったほうが、消費者としては良いのではないかなと感じていますね。

 

低価格かつ一体型のHMDの登場とキラーコンテンツ

水口 國光さんは、映画的なエンターテインメントから入って、VRの動きがあったときに、真っ先に手を上げたお一人ですが、この2年どうでした?

國光 想定通り。思ったほど、VIVEやOculusが売れてないな〜とは思っていないですよ。想定通りに売れていない。

会場 笑い

國光 ロケーションベースVRが出てきて、まずはみんながVRに触れて、VRって楽しいんだと認知されつつも、本格的に広がるには家庭用が売れないと規模は大きくならない。家庭用が売れる重要なところは2つで、ひとつはハード(HMD)。もうひとつがキラーコンテンツ。ハードの方は、みんな何を作れば良いか分かっていて、価格が500ドルを切る。できれば、400ドル切る。さらに外付けセンサーとコードのない一体型で、360度のフリーダムができるハードウェアが出るというのが、一番大きいところ。これが出ないと厳しい。いま、外部センサーなどを含めて一般の人が、VIVEをセットアップできたら奇跡ですよ。

会場 笑い

國光 俺、諦めましたもん。完全に無理。一体型で500ドルを切ったのは、「PlayStation VR」が最初。この499ドルより高かったら、絶対売れない。400ドルを切れば、結構普及してきて、200ドル台に突入したら本格普及みたいな感じかな。で、ハード自体は今年の年末から来年にかけて、みんな一体型を投入。だけど、中途半端。

水口 そうですね。最初はみんな中途半端ですね

國光 Windows MRが390ドルだけど、PCが必要。でも、センサーが要らなくなっている。「Oculus GO」は199ドルという奇跡的な価格だけど、ギアレベルという感じ。とは言え、「Oculus GO」など、199ドルで一体型が出てくると、いま20億と言われているDMMの売り上げが、10倍くらいにいくんだろうなと。

Oculusの「Santa Cruz」(開発コードネーム)も含めて、来年の末から再来年にかけて、HMDは500ドルを切ってくるとみんな言っているところ。一体型が499ドルや、399ドルで出揃ってくると、あとはキラーコンテンツが出れば流行る。

家庭用ゲーム機も「Xbox」って「HALO」をやるために買った訳だし、「Nintendo Switch」は「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」1本しかなかった。でも、ゼルダは神ゲームだったから、みんなが買ってという感じだった。それでいくと、ハードは思った以上に、短期間でここまで安くなるんだみたいのは来ているので、あとはソフトが出てくれば、VRは一気に来るのかなと感じていますね。

水口 ここにいる多くの人と、よりコンシューマープロダクトに近い仕事をしている人たちは、VR市場は3年後くらいから変わりはじめて、5年後くらいには立ち上がっていて、10年後には普通になっているという夢を普通に描いていると思うんですよ。ただ、来年は、ちょっと厳しいところに1回入るかなと感じている。

コヤ所長 ハイプ・サイクルですね。

水口 そう。國光さんが言ったような、ちょっと中途半端なものでも、プロダクトに挑戦して出していかないといけないという流れもある。でも、その先に解像度や性能が上がっていって、コンテンツとうまくマッチして、段々と生活のなかで普通になってくるので、いろいろ仕込みをしつつ、しばらくは我慢という感じかなと。

國光 でも、ハードでいうと確実に500ドルを切ったところが、遅くても再来年の前半、早ければ来年末くらいには揃ってくるので、あとはソフトのキラーコンテンツ。家庭用ゲームの人はもちろんそうだけど、モバイルゲームとかでも見てきたのが、キラーコンテンツが出るまで誰もモバイルでゲームなんかしなかった。日本では、パズドラが1本出てから全部が変わった形。なので、ハードウェア側が安くなってきて、機能が充実した。で、1本のゲームが出てくると、みんなやりたいから買うみたいな。そこはポジティブですよね。

水口 國光さんは、スマホがVR・ARのデバイスにシフトしてくと真面目に思っています?

國光 いやいや、PlayStation 4(PlayStation VR)とかが、シフトしてくると思いますね。

水口 スマホの未来とVRの未来を考えたとき、どういう風に思います。

國光 僕は、VRは家庭用ゲームの未来のひとつかなと思っていて、スマホのほうはARグラス。ARのほうも、アップルが「ARKit」を出してきて、来年くらいには、ARクラウドができて、2019年くらいに開発キット、そして2020年にARグラスが出るんじゃないかと。

ARグラスになるとスマホみたいな感じのゲームで、VRは気軽じゃないから、PlayStation 4のような、よりハイエンドの方に行くんじゃないかなと思いますね。

 

ゲームの攻略とクリアーは取り払う

水口 コヤ所長やタミヤ室長はどう思いますか?

コヤ所長 ハード論の前に、「VRは現実の代替」というところを非常に大切にしていて、最初VRでゲームを作ろうとは思っていなかった。

ゲームを90年代から作ってきていて、消費者の調査を含めて、ゲームにどういうものを期待するかということは分かっているんです。みんな攻略とクリアーの世界なんです。これが頭のなかにある限り、VR上で何かを目的にはじめても、そのロジックにハマってしまう。一度、そこを取り払って、そもそも「VRは現実の代替」だよというところに対して、どういう風な面白いエンターテインメントを作れるかなという立ち位置で進めていくと、映像(HMD)だけでは無理だなと分かってきた。そこで、触ったり、風を感じたり、熱を感じたり、匂いを感じたりといろいろ情報を想像して、現実の代替えをなんとか成立させている感じ。

人と人をつなぐ、ネットワークもあったほうが良いかなとやっている段階。そこで、どんなエンターテインメントを作れるのかVR ZONE Project i Can、VR ZONE SHINJUKUと、まだまだ実験している最中です。

もしかしたら家庭用でやりやすくするとか、家庭用とは全然違うソーシャルメディアのようなアプローチもあるのかもしれないけど、エンターテインメントだけでやっていると、いまの家庭用HMDのなかだと、ちょっと表現としては苦しい。

タミヤ室長 うん、そうですね。ゲームってインプットとアウトプットの手段にそもそも制限があったり、縛られたりしているので、お約束を作り面白い状態を作るためにゲームのルールがある。その結果、クリアーするという目標を立てることで、ゲームは楽しさを生み出しているところが、とても多いと感じている。

タミヤ室長 で、現実の世界って、お約束って例えば物理法則とか。もっと緩い環境といったものがあって、そのなかで人間は勝手に行動が発生していくじゃないですか。

コヤ所長 自分が立ち上がって、銃を撃ちはじめたら、みんな隠れるじゃないですか。でも、ゲームだとAボタン、LRボタンでとかやるじゃないですか。

タミヤ室長 VRを体験したときに一番感じたのは、自由に行動できるインターフェースが、やっと手に入ったかなと。敢えてそこにルールを作るのは勿体ないなと、とても思ったんです。なので、いったんその、何か行動したときに何か起こるという状態の方に、重きを置いて大事にした方が、新しいエンターテインメントを見つけられると考えながら、いろいろとハチャメチャなことを行っている。

 

一人称と三人称の間があるVRのストーリーテリング

水口 なんか、話が段々と良い方向に来たんで。

会場 笑い

水口 僕も「Rez infinite」(編注:VR対応の音楽ゲーム。PS4のほかSteamからPC版も発売中)とか作ってみて、思ったことは2つハッキリある。ひとつは、今まで制約のなかで、クリエイティブをやってきたということ。制約がないところでの、クリエイティブは本当に楽しい。解像度が低いとか、そういう点は、もう時間の問題。構造的に、130年続いてきた四角いフレームからは呪縛を解かれて、3Dであるという点も含めて、大きくジャンプしている。

もうひとつ思ったのが、ゲームは一人称だと思い込んでいて、一人称の体験の再設計みたいなところがあるじゃないですか。映画は三人称の芸術ですよね。誰か分からない三人称の視点を僕らは編集した監督や演出家の意図に沿って享受して、全然自分の体験じゃないのに、感動したり泣いたりとかのストーリーテリングしている。

僕ら昔から、ゲームで泣けるかという議論をずいぶんやってきたと思うんですけど、最初のころのゲームは泣けてこないですよね。それこそ、8bitでビープサウンドのときは、生理的には気持ち良いんだけど、泣く演出はそこに入れることはできなかった。でも、段々と解像度とかが上がって、「ファイナルファンタジー」のようにストーリーを入れ込むだけやり方でも、構造は作れるようになった。そして、最近になると、かなりハイレベルで融合できるようになってきて、イメージをモーフィングさせることで、ストーリーテリングができる。

そこで僕がVRをやっていて思ったのは、一人称と三人称の間があると思った。

まだ、うまく説明できないんだけど、例えば「Rez infinite」だと、人(キャラクター)が居るんですよ。

 

VRゲーム、「Rez infinite」。ゲーム内にキャラクターが表示されるモードもある

水口 普通、VRでは取っちゃうんだけど、キャラクターがあった方が、テストした10人中10人の反応が良かったんですよ。取ると何が駄目だって言うと、すごく不安な気持ちになるんです。ポーンと中に放り出されて、自分が一体なんなのか分からない。そこに自分が適応できない、進化してない感があって、これは人間にはまだ早いのかなと思った。

コヤ所長 「Rez infinite」は、いきなり電脳世界にダイブしちゃいますからね。そこまでダイブさせられないな〜と思って、現実の代替領域のなかで電車や車に乗せたり、橋を渡らせたりして、やっとドラゴンボール(ドラゴンボールVR 秘伝かめはめ波)の世界に連れて行ってあげたり、エヴァンゲリオン(エヴァンゲリオンVR THE 魂の座)のコックピットに座らせてあげたりできるようになった段階ですよね。

水口 でも、今までみたいな単純なストーリーテリングや体験じゃない、もうちょっと新しいものとして、設計できる感は出てきていますよね。

コヤ所長 感動や感情をすごく揺さぶる力はあると思っていて、ストーリーに感情移入して同化して、悲しかったり喜んだりするという時間をもっと圧縮する可能性はありますよね。5分で泣かせるやつとか考えています。

タミヤ室長 そういうこともできるかもしれないですね。もしかすると、ストーリーテリングとVRで見せるものって、実はもう別物なのかも知れないと感じているところもあります。

水口 そうそう、そう言う感じなの。

タミヤ室長 結局、ストーリーテリングって誰かの感情とか、お話を伝えるといった文脈のなかで行なうんですけど、VRは自分が体験するので、「伝える」ではない状態が発生している気がするので、根本的に変えていったり、発明したりしないといけない領域が大分ありますよね。

 

干されても復活するガッツが必要!

國光 いま、アメリカやドイツなどのチームで3本作っていますが、最近のVRは、お客さん=開発者=ユーザーというのが、いま、まだある感じです。「テレポーテーション」はダサい、やっちゃったねとか。どういう感じに実在感を増すかなどの議論を相当早い段階からアーリーアクセスとかで出して、対話しがら作っていっている感じ。水口さんは行なっていると思いますが、日本のデベロッパーはそう言うところで、見かけたことがない。そこにはググッと入っていって、取りあえず出して、フィードバックを繰り返して行くのは、もう一段階上に行くのに重要な感じがする。

コヤ所長 サラリーマンとしてはうらやましい限りですね〜。失敗したら、次ないもんね〜。

会場 笑い

水口 VRは、アメリカのサンダンス映画祭でも、新しいストーリーテリングとして展示されている。そういことも、我々、考えて行きたいと思いますよね。

過去のものを参照すると、映画的なものとか、ゲーム的なものとか、ソーシャル的なものとかになると思うんだけれど、これからいろいろな技術と融合しながらものすごいところに持って行かなくちゃいけない人たちが、今日は集まっているんだろうなと思っています。

先ほどのセッションで暦本先生(関連記事)が、見せてくれたダグラス・トランブルさんの「ブレインストーム」は83年に製作。彼は、この映画を見せるために、映画館を全部ショースキャン(編注:70ミリフィルムを使用して60コマ/秒で撮影、上映する方式)にイノベーションしようとしている。トランブルさんってすごい人で、70年代の終わりに、すごい実験を沢山やっていて、人間の目は、1秒間に何フレームの映像を見せると脳の血圧が上がるかを実験。結果は60フレームで、60以上見せても、人間の目はそれ以上見えないとか、人間の視野が60%以上になると、脳波と血圧が上がるといった実験を行なっている。その知見から作った没入感のあるシステムのショースキャンにすべての映画館を変えようとしたが、それで干されてしまった。ハリウッドから。

その後、彼がリベンジで作ったのが、ユニバーサル・スタジオの「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」で、デロリアンに乗って映画を体験できる、この作品で復活するんですよ。

そういったガッツが俺らにもないとねという結論です。

会場 笑い

水口 今日珍しく、國光さんが、あまりしゃべってなくて、ごめんなさい。今回のセッションは、これで終わります。

会場 拍手

 
 
*VRCカンファレンス2017のレポート記事まとめはこちら

 
 
(TEXT by 藤田忠)

 
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