SVVRの月例会はVR業界の「出会いの場」だ【ティーポットの独り言】
はじめまして。米国シリコンバレーでVR/ARのエンジニアをしている「あるしおうね」と申します。
本連載では「ティーポットの独り言 〜海外エンジニア生活記〜」と題して、VR/AR関連のニュースや技術の紹介、シリコンバレーのエンジニア生活などをゆるくお伝えしていければ、と思っています。
第一回は、先日参加したSVVRの月例会について取り上げます。SVVRは、シリコンバレーを中心としたVR関連エンジニアのコミュニティーで、年一回、「VR Expo」と呼ばれる比較的大規模なイベントを開催しているほか、コミュニティメンバーを中心として月例会も開催しています。今回は、この月例会に初めて参加してみました。
Samsung Research Americaが今回の会場でした。
月例会は、プレゼンが3~4枠にライブデモが数か所、参加者は250人前後の規模です。そこまで大きなイベントではないのですが、これが月一回と考えると盛り上がっている印象があります。
今回のプレゼンは、開催場所となったSamsung Research Americaの方々が主だって発表されていました。
最初の発表は、Gear VR向けフレームワーク開発の取り組みについて紹介されてました。Gear VRは、UnityやUnreal Engine 4などのゲームエンジンのほか、ローレベルで直接OpenGLを使用する様なC++ベースの開発環境も整備しており、開発負荷を軽減するためにLuaやJavaScript等のスクリプト言語を組み合わせた3Dシーン編集を可能にしたとのことです。スクリプトの編集結果がリアルタイムに3Dシーンに更新されるデモを実演していました。
緑色の文字が画面にオーバーレイ表示されているスクリプトです。
続いて、位置トラッキングが可能な他社製の無線コントローラを使ったインタラクションについて、こちらも発表とともにデモを行っていました。Samsungは以前も位置トラッキングが可能なコントローラの研究を独自で行っていましたが、関連は不明です。
USB接続されたステレオカメラで無線コントローラの位置トラッキングを行っています。
そのほか、デモの技術紹介や、VR産業の分析などのLT(ライトニングトーク)が行われていました。
ライブデモでは、下記のようなコンテンツや技術が展示されていました(記録を忘れていて、残念ながらほとんど写真が撮れていません……)。
- ●全天球動画の最適化配信技術:VISBIT Inc.
ドワンゴ/NTTが共同開発した最適化配信技術に似たアプローチの動画配信技術です。デモでは無線LANを用いており、画質劣化をあまり意識することなく快適に視聴できました。LTE等のモバイル通信網で試してみたい所です。
- ●風インターフェースデバイス
タイトル、URL共に記録しそこねました……。単純にブロアーで風を起こしてスピードを感じさせるデバイスなのかな、と思いきや、圧力を感じるような突発的な風や、炎が近くで燃えているような温風も感じることができました。これなら専用デバイスを揃える意味があるのかも?と思わせます。
- ●全天球CGドラマのクラウドファンディング
こちらもタイトル、URL共に記録しそこねました……。最近Google Spotlight Storiesで注目を浴びている、全天球CGドラマのクラウドファンディングの募集をしていました。草の根的なファンディングでも効果があるのでしょうか?
- ●スマートフォン挿入型VRヘッドセット:LeEco
頭部への固定方法を工夫した高級なGoogle Cardboardヘッドセットの様でしたが、ソフト面でも独自プラットホームを指向しているようにも見えました(展示デモは普通の全天球動画)。公式サイトを見ても、明確な方向性は良く分かりませんでした。
同じく写真を撮り損ねてしまったのですが、デモスペースの傍らに求人ボードが置いてあり、VR関連の仕事を一覧できるようになっていました。求人を出している会社の人もイベントに参加しているので、仕事を探す人、雇いたい人双方の人間がざっくばらんに仕事の内容について話している光景が見られました。
プレゼン、デモ、求人など、SVVRはこれらを通じてVR開発者が相互に情報交換しつつ、人脈作りを行うのが主目的の様に感じました。趣味の集まりというより、同業者やVR関連の仕事を見つけたい人のコミュニティという側面が大きいのかもしれません。参画している会社は、オンラインで広く求人すると同時に、お互いをよく知っている人経由での紹介なども重視している印象を受けました。
国際化の急先鋒のように思われるシリコンバレーですが、人材が一点集中している状況のせいか、物理的に近い人とのネットワーキングも重視する非常にローカルな一面を見たように思います。こういったイベントは、参加してみないと分からないことも多いので、これからも出来るだけ体験、紹介していければと思っています。
●著者紹介
あるしおうね 大学院にて、VRを専門とする研究室に所属。卒業後、国内電子機器メーカーで約9年間、Augmented Realityおよび画像処理の研究開発に従事。2015年11月に外資系電子機器メーカーに転職し、2016年6月より渡米。
●関連リンク
・SVVR