CADデータを取り込む「CAD Importer」もお披露目 「Unityソリューションカンファレンス2015」
VRコンテンツ制作と切っても切り離せない存在なのが、ゲームエンジン。そのゲームエンジンのひとつ「Unity」を扱うユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは4日、ゲーム以外の分野におけるUnityの活用事例を紹介するイベント「Unityソリューションカンファレンス2015」を開催した。
本記事では、同社の日本担当部長、大前広樹氏が語った基調講演「Unity最新情報と産業向け機能の紹介」をまとめていく。
大前広樹氏。Unityは、全世界で500万人を超えるユーザーを獲得しているとのこと。
Unityは、今年3月に最新バージョンとなる5をリリースした。大前氏はそのUnity 5において、ゲーム以外のジャンルで重要になりそうな機能をいくつかピックアップして語っていた。
まずはグラフィックについて。Unityはもともとモバイル向けのクオリティーを目指していたが、バージョン5ではグラフィックまわりを大きくアップデートした。現実に近い光の当たり方を再現するために、「物理ベースレンダリング」、「リアルタイムグローバルイルミネーション」、Unity 5.3から実験的な実装している「スクリーンスペースリアルタイムリフレクション」(SSRR)といった新機能が役立つという。
「ベッドルーム」と呼ばれるデモ。サードパーティーのアセットサイトから入手したモデルをUnityに読み込ませたらすぐに動いたが、ユーザーインターフェース(UI)などを作り込んだため制作に3日かかったとか。
リアルタイムで壁紙や床材なども変更できる。材質を変更した場合、光の反射もリアルタイムで反映されるのが面白い。例えば、不動産向けのVRアプリなどで役立ちそうだ。
周囲の光がめまぐるしく変わる「コートヤード」と呼ばれたデモ。
随所に自己発光するオブジェクトが置かれていて、ライトの色が変わると周囲の壁や床にその結果が反映される。
続けて、強化されたUIツールを紹介した。Unityではバージョン4.6からGUIを作るためのツールを強化してきており、標準のUIシステムでも多彩な表現が可能になっているとのこと。
ちょっと変わった形のスライダーも手軽につくれるとのこと。ドロップダウンメニューやスクロールダウンにも対応している。
3つ目は、サービスについて。Unityはクラウドを活用したサービスをいくつか立ち上げているが、ゲーム以外の分野では解析ツールの「Unity Analytics」と、ソフト配信の「Unity Cloud Build」が役立つとのこと。
Unity Analyticsは、ゲームにおいて、どの段階でユーザーが遊ぶのをやめてしまったのか、どこにいるユーザーはどう遊んでいるのか、いつインストールが伸びていつ遊んでいるのか——といったユーザー動向を調べるのに活用されている。
これを産業分野で応用するとすると、例えば、施設の案内アプリで、ユーザーがきちんと使えているのか、どこで使うのを諦めてしまったのかといった要素を、ユーザーに触ってもらったあとに検証できるようになる。
ヒートマップで3次元上のデータを表示。ユーザーが歩いたところを表示して、避難経路や駅を案内するアプリできちんと機能しているのかどうかを調べられる。
Unity Cloud Buildは、ソースコードからMacやPC、スマートデバイスなど各端末向けにアプリを自動生成して、ユーザーに配布できるというクラウドサービス。
クラウド上で更新があったときにユーザーに自動で配布されるので運用も非常に簡単になるとのこと。
「こうしたクラウドサービスを組み合わせることで、配布や運用を考えたソリューションとしてもUnityが使えるようになってきている」と大前氏は語っていた。
IGESのままUnityにCADデータを取り込める
さらにユニティ・テクノロジーズ・ジャパン、伊藤周氏が、CADで制作した3DモデルをUnityに取り込むプラグイン「Unity CAD Importer」をお披露目した。
今までFBX形式に変換していたものが……。
中間ファイルであるIGES形式のデータのまま、Unityのメッシュオブジェクトとして読み込めるので作業が劇的に楽になる。しかも、ポリゴンを適度に軽量化してくれる機能付き。
現地でもデモを見せていた。メニューからUnity CAD Importerを開いて、ファイルをドラック&ドロップするだけと簡単。
軽量なファイルだったせいか、5秒ぐらいでサクっと読み込まれていた。
Unity CAD Importerのサイトでは、下記のようにVRでCADデータを検証する用途が開発の原点となっていることが語られている。
「CAD で設計したモデルをバーチャルリアリティ空間で検証できたらいいのに。実環境に近いシミュレーション環境を構築できたらいいのに。それらを実現するために Unity には大きな可能性があるのではないか?私達も元々はそんな希望を抱くエンジニアでした。しかし、これまで製造業の現場で Unity を活用するには、少なからず問題が存在していたことも事実です。CG データに比べ桁違いに巨大な CAD データから生成されたメッシュをどのように扱えるようにするか、データを軽量化しつつ元の形状の重要な特徴をいかに残すか、これらの問題を解決するために私達は Unity CAD Importer を開発しました。」
本日よりUnity Proのライセンスで使えるα版を無償公開しているので、ぜひCAD+UnityでVRコンテンツ開発を考えている人は試してみよう。なお価格は未定だが、サブスクリプションで提供される予定だ。
(文/広田稔)
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