HTC Vive「The Lab」——圧倒的完成度なのに無料でイイんすか?【だいぶVR #01】
PANORAをご覧の皆さま、はじめまして。フリーのゲームライター、津久井箇人です。この度、PANORAさんから声をかけて頂きまして、VRのゲームやコンテンツのレポート記事を不定期連載形式でお届けしていくことになりました。その名も「だいぶVR」。どうぞよろしくお願いします!
じつは筆者、今回PANORAさんから声をかけてもらうまで、VRとは無縁の生活を送っておりました(汗)。遠くから眺めて「すごい技術が来てるなー」「ま、オレには関係ない話だろーなー」と。読者の皆さまや関係者の皆さまに本当に申し訳ない限りです……(滝汗)。が、そんな立場だったからこそ、まだそれほど体験者が多くないVRのコンテンツやゲームの面白さや魅力を、これから試してみたい人に上手いこと伝えられるのではないかと、開き直りの発想でレポートしていこうと思っています!
さて、記念すべき第1回にお届けするタイトルは、ValveのHTC Vive向け無料ゲーム「The Lab」です。
HTC Viveは、Steamでの配信コンテンツを中心にゲームなどを楽しめるVRゴーグルです。台湾のHTCとSteamを運営するValveが共同開発していて、センサーで囲われた範囲内を実際に歩いたり動き回ったりできることや、両手に持つリモコンタイプのコントローラが、ほかのVRゴーグルと異なる特徴となっています。
The Labは、そんなValve自らが制作したHTC Viveの入門編的な無料ミニゲーム集ですが、無料のミニゲーム集といって侮るなかれ。HTC Viveのポテンシャルを強く感じられるタイトルとなっています。それでは早速プレイしていきましょう。レッツだいーぶ!(←定番化したい)
The Lab
無料でイイんすか!? 8種のミニゲームを収録
ゲームを開始すると、筆者が立っているのはとある研究室の一角。そこではさまざまな実験や研究が行われているようで、周囲には何だかよくわからない機材や道具が置かれています。それぞれが独立したコンテンツ(ミニゲーム)への入口になっているので、設置されたオーブを頭にかざし、それぞれのコンテンツの世界へもう一段階飛び込むことになります。
ちなみに本作は日本語化されておらず、全編英語ですが、直感的にわかる内容のものばかりなので、英語がわからない人でも安心してプレイできます。
●メニュー選択そのものもVR体験
研究室は、言ってしまえばそれぞれのコンテンツに飛ぶための「ホームメニュー」的存在です。しかし、そこかしこにある謎の機材や、周囲で働くロボット、机の上に置かれた小物などにしっかりと実在感があり、小物の中には実際に手に取れるものも。普通のゲームなら、文字でコンテンツを選択して、ハイ終わりですよ(笑)。でもそれだと物足りないのがVRの不思議なところ。歩いて選ぶといった多少面倒な「現実っぽさ」が面白みに直結します。今までのゲームとはまったく違うところのひとつかもしれませんね。
最初のメニュー画面はこんな感じ。目の前のパネルでハンドコントローラーのトリガーを引きながら「Start」ボタンを押すと、研究室に移動します。
●無駄な遊び心こそ良質ゲームの証拠
で、真ん中の机の上に弓矢がありまして「撃つなよ、絶対に撃つなよ」と言わんばかり(笑)。まぁ手に取って撃ちますよね、働いている黒塗りの研究員に向けて。当たると砕け散ります(笑)。特に意味はないですが、こういった細かいところにちょっとした遊び心が込められているあたりに「しっかりとした作りのゲーム」であることを感じます。
ちょうど展示会のように、部屋の随所にミニゲームがブースとして存在し、そのミニゲームの世界を表す球をハンドコントローラーで持って自分の顔に持っていくことで「だいぶ」できます。移動は自分の足で歩き回るほか、遠くに行きたいときハンドコントローラーのタッチパッドを親指で押すとガイドが現れるので、行きたい先を指示して離せばOKです。
机の上にある弓矢をゲット。もう片方のハンドコントローラーで矢をつがえて引くと、コントローラーが振動して引いている感覚を再現してくれます。
オレは弓矢の狙撃手…「Longbow」にハマる
いろいろあるミニゲームの中で、筆者が特にハマったのが「Longbow」(ロングボウ)。その名の通り弓矢で敵を狙撃するゲームです。プレイヤーの目的は攻めてくる敵を弓矢で攻撃し、城門を守り抜くこと。さまざまな方向から攻めてくる敵に上手く対応するのが攻略のポイントです。
こんな感じで高台から迫り来る敵を弓で撃ち落とします。タワーディフェンスの要領で、ゴールに敵が到達する前にサクサク倒していきましょう。
●Wiiで味わったあの体験の、もう一歩先へ
かつてWiiの「Wii Sports」などで味わったあの体験をさらに一歩先へ進めたような感覚を味わいました。あのときは画面内のキャラと自分が一体になるという体験でしたが、VRな本作では自分が完全にゲームの中にいるんですよ。誰に何と言われようと、ゲームの中に自分自身が入っているんです!(笑)
●スナイパーになっていた
見張り台の上にいる自分、そこに立てかけられている弓。ひとたび弓を手にすれば自分自身がこの城の兵士で、弓矢で敵を迎撃するんだとすぐに認識できます。矢の撃ち方も非常に直感的で、(筆者の場合)左手に構えた弓にあわせて、矢を持った右手で弦を引いて、放つ!あとは狙った方向や距離に向かって撃てるように、方向、角度、弦を引く力を自分なりに調整していきます。
一方、現実では、VRヘッドマウントディスプレイをかぶった筆者が、コントローラ2本を持って、その位置認識とトリガーの押し放しをしているというだけなのですが(笑)。あっちの世界にいる自分は、そんな感覚は微塵もありません(笑)。
●迫り来る敵を狙い撃つぜ!
ゲームをスタートすると、敵はいやらしい方向から城門に向かって攻めてきます。盾を持った敵は頭を狙い撃つしかありません。また、兜を被った敵は、一度兜を矢で弾き飛ばして、再度頭を狙う必要があります。兜と盾の両方を装備した敵も出てきて一筋縄にはいきません。
もちろん、敵は(城門を攻撃しているとき≒こちらがピンチな状況 以外)常に移動しているので、自分自身の集中力を最大限に高めて、動きを予測して、ただただ射抜くのみ。ステージ内のギミックを使って一気に敵を倒すことも可能ですが、筆者はなぜかこだわりの縛りプレイ(笑)。プレイするほど、距離感や角度など、狙いの精度が上がることを実感できたので、あえての真っ向勝負を挑みました。結果、撃沈しましたが!(笑)それでも、弓の弦を引いて矢を放つ一連の流れの実在感はかなりのもの。それだけで、現実では普通体験できないことをしている気分に十分浸れました。
総評
HTC Viveのポテンシャルをガッツリ体感できる無料ゲーム!
購入者はまずはコレをプレイすべし!
ほぼほぼLongbowのレポートになってしまいましたが、The Labに収録されているほかのゲームやコンテンツも粒ぞろいで、HTC Viveのポテンシャルを体感するには最適。戦ったり、考えたり、癒やされたり…VRコンテンツならではの体験の“オイシイ部分”を、ちょっとずつ……と言わず、なかなかのボリューム感で楽しめます。
投擲器にセットされた球を実際に手で引いて、倉庫内のコンテナに当てて崩していく「Slingshot」。
「Xortex」は、コントローラーが自機となり、360×180度全方向から迫ってくる弾を回避しつつ敵を撃破していくシューティングゲーム。
バーチャル犬とも戯れられます。
HTC Vive向けゲームの基準に、あるいは他社のVR製品のゲームの基準になり得るタイトルであると感じました。筆者は、ほぼほぼ本作がVRゲームのデビュー作となるので、今後ひとつの基準として考えていくことになるかと思いますが、デビューがコレで良かったという印象です。というのも、これまでに体感したことがない、そこに自分がいて、世界が周りにあるというVRならではの“実在感”をしっかりと感じられ、プレイできたからです。
また、今のところデバイス的にはHTC Viveならではと言える部分ですが、コントローラを両手に持つスタイルはプレイする上で非常に自然で、実在感を増してくれました。普通のパッド型コントローラだったら台無しだったと思います。ただし、このあたりはゲーム内容にもよるので、本作については、コントローラ二刀流によるトリガー操作が最適だったということですのであしからず。
●The Lab
・販売方法・配信サービス:Steam
・対応デバイス:HTC Vive
・価格:無料
・紹介ページ:http://store.steampowered.com/app/450390/
【コンテンツ内に実在した印象的なもの】
・弓矢(狙いを定める感覚、射る際の手応えを含む)
・癒やしのロボット犬
・広大な大地や切り立った岩肌(高所恐怖症は足が震えるレベル!)
だいぶVRの第1回、いかがでしたでしょうか? 「VR元年」と呼ばれる今年ですが、これからさまざまなVRゲームやコンテンツをレポートしていきたいと思います。一緒にVRの魅力に浸っていきましょう! 次回もどうぞお楽しみに!
●筆者プロフィール
津久井箇人 a.k.a. そそそ
作・編曲家・ライター。新旧・ジャンル・ハード問わずゲーム好き。音楽制作活動と並行して、2011年にゲームニュース原稿執筆・ライター活動を開始。2016年4月からPANORAでの活動を開始。
・Twitter:@sososo291
・ブログ:sososo activity