【ミクさん10周年おめでとう企画】「VRシアターにあの天使が降臨? 」1号さん超ロングインタビュー 後編
昨年、SEGAを電撃退社をされた中の人(1号)の愛称でお馴染みの内海さん。現在はアニメ制作やDMM VR THEATERを運営する株式会社DMM.futureworksで代表取締役に就任されていらっしゃいます。昨日、リリースされた上記劇場公演「アイドルタイムプリパラ み~んなあつまれヨコパマ!ゆめかわマジカるライブ」。こちらに10周年を迎えた初音ミクのゲスト出演も決定し、また新たなストーリーを紡いでいかれることになりました。
ロングインタビュー後編はミクさんへの溢れる想いとVRの未来について語っていただいています。
【ミクさん10周年おめでとう企画】元SEGAの中の人(1号)さんに聞く「これまでとこれから」超ロングインタビュー前編
VRシアターでミクさんが観れたりっていうのは?
──ミクさんのVR制作時も色んな角度から見られたというお話が出ましたね。
内海:そうですね。ただミクさんの場合、ライブ用の正面の映像もありますし、1曲通しの素材があるっていうのは結構大きくて。あとは後ろふり向いた時にどんな顔してるかとかを足していけばいいので。
ゲームPVの方でも逆にゲームの方が色んな角度あるので、そこの素材とかも併用して素材がたくさんある物はそんなに苦労せずにいけたと思います。
特にミクさんのVRって「Project DIVA」がベースだから衣装が変えられるじゃないですか? 過去の衣装だと下から見るとパンツが見えちゃうんですけど、「Project DIVA X」はPS4版でVR対応だったので、見せパンも作ってたと思います。
──そこは避けられないですもんね!
内海:「見せパン」(※見えることを前提にデザインされたパンツ)は2016年の「マジカルミライ」でメイコさんに履かせた物はちょっとこだわりましたね。
ブルークリスタルって衣装は前がすごく短いので、見せないようにするとスカートに不自然な制御しなくてはいけないくて。「スカ—トを押さえましょう」って言われたんですけど、いやこれスカートを押さたらせっかくのこういう衣装なんだから魅力が半減する。それなら見せちゃダメかなって聞いてみようよって。
「見えちゃうんですけど見せパン履かせていいですか?」「お願いします」「色はどうしましょう?」「裏地の色に合わせましょうか?」「このデザインだったら裏地の色で」とお話し進んで、作らせていただいて監修していただいて。(笑)
だからあのステージのパフォーマンスを制約する事もなく、最前列から5列目ぐらいで見てる子たちはドキドキしながら……。
──ニーズをちゃんと成立する!(笑)
内海:いやいや、もうそれはこだわりですね。別にやらなくても。
──いやいや、素晴らしいです。
内海:そこは楽しくてやってるんで。楽しくてっていう言い方、変だな。どうしてもその年にできないと、翌年はこの人フォーカス当ててあげようみたいな。少しずつ少しずつ良くなるようにっていう……楽しかったです!
──いや〜、凄いな。ファンの心を凄いわかってる。
内海:いろんな意味で楽しかったですね、あの頃は。今年のマジカルミライは全く何も絡んでないんで、楽しいというか楽! 今まで何かしらやってたんですけど、でも結局、僕らがつくった素材も使って頂いてるので。今年は物販とか並んでみようかな(笑)。楽しみですね!
──1号さんが物販に並ぶ(笑)。ミク廃の皆さん、歓喜しますね。そして、そんな方たちが凄く凄く気になっている質問なんですが……VRシアターでミクさんを観れたりっていうのは?
内海:実は10月公演の「アイドルタイムプリパラ み~んなあつまれヨコパマ!ゆめかわマジカるライブ」にミクさんの出演が決定したんですよ!
──おおおお!
内海:9月6日までがチケット先行抽選販売期間なので。
──楽しみですね! 必ず観に行きます。
内海:その他だと、個人的にミクさんは、例えば出て頂くんであれば、どういう形がいいのかなって考えてはいたんです。多分どう頑張ってもマジカルミライと同じ楽しみ方はできないですし。ミクエキスポの規模でもないじゃないですか?
400人くらいなんで、その箱で初音ミクさんが出てくる時に何をすればファンの方が喜んで頂けるのかなって。アイディアはいくつかあるんですけど、どうですかね、またあの大変な世界に戻るのかなっていうちょっと不安もあり(笑)
多分もう一生出会えないかもしれないです。
──ミクさんをずっとやられてて、一度離れてみて内海さんにとってどういうご心境なのかすごく気になっています。
内海:離れてるっていうか仕事じゃなくなっただけなんで。関係者の方々やボカロP、絵師さんたちとか、お付き合いありますし。セガのメンバーもたまに飯食ったりしてますし。まぁよくある会社で担当じゃなくなったぐらいの感覚です。
──ミクさんの血縁関係として例えられてもおかしくない立場にいらっしゃいました。
内海:僕、親戚のおじさんくらいかなと。夏休みとかに遊びにくるみたいな感覚かなと。そういうのもう割と長くやってたんで、そんなに悲しいとか、悔しいとか、見てて後ろ髪引かれるとか、そういうのはそんなになかったです。
一応、僕がいなくても大丈夫だろうなっていう環境はある程度準備してきたつもりなので。
──内海さん覚えてらっしゃるかわかんないですけど、4年ぐらい前にも「僕がいなくても大丈夫」っておっしゃられていました。
内海:あの頃は多分ちょっと無理して言ってました。
──その時に不思議と「辞められちゃうのかな?」と不安になりました(笑)。
内海:いやそんな事ないですよ! 個人的な性格の問題なんですけど、同じ事続けていくっていうのはあんまり面白くなくて。やっぱり初音ミクさんって毎年毎年変わっていくし、ファン層も変わっていくし、ファンが求める初音ミクのビジュアルみたいなものも変わっていくし。
ただそういう中で新しい物…やっぱり武道館でやったのがデカかったですかね。武道館でやったっのって凄いんですけど、武道館が目標なの?っていうのは結構自分の中ではありましたね。もっと違うような気がしましたね。武道館でやる事は凄く名誉な事だけど、でも武道館でやるって別に日本の一流アーティストと同じステージに立っただけのような気がして。
初音ミクってあたりまえじゃなくてもいいんじゃないかと思ってたんですよ。国内外でライブしてテレビも出て、ミュージシャンとしては普通の成功かもしれないんですけど、僕の中で何かそうじゃないんじゃないっていう。
でももうきっとそういうものが求められてるんだろうなっていう。ライブ見れて、地方や海外に行ったりっていうのがあって。普通のミュージシャンと同じような活動し、きっとそこに固定ファンがついて。新曲と懐かしい曲を聞いてっていう、よくある音楽シーンに乗っ取って進んでいく。
かたやキャラクター商品がたくさん出てっていう所で、一旦割と初期から見てましたんでひとつこの10周年を前にして、「初音ミク」という第一世代的な何かが完成したのかなっていう思いがありました。
──そうか、これで第一世代なんですね。でも確かに言われてみれば、自分の中では何世代も折り重なってきたと思っていましたけど、でも今、大きく第一世代って言われて確かにそうですね。
内海:歴史を語るんだったら多分2016年までかなっていう感じがするんですよね、僕の中で。で、多分ここの10周年からまた新しく始まっていくのかなっていう気はします。
まぁそこの9年間見てこれたんで、10周年以降に初音ミクをどうしていったら面白いんだろうかって一プロデューザーとして考えた時に、多分こんな事きっとできないだろうなっていう事ばかり考えちゃって……。技術的にもこんな事ができるんじゃないかって思った時に、求められる方向とは違ったりとかするんだったらそれはできないですし。
そういうジレンマみたいなのが少し一つのポイントになったっていうのもなくはないですよね。多分今の形が、初音ミクとしてのひとつの完成系。
我々に求められてたものっていうのが一つ完成してしまったので。もしやるんだったら他の事やろうかなって考えたんですけど……やっぱり初音ミク程、刺激のあるコンテンツはなかなかないですね。
──そうですね、わかります。
内海:でもそれは辞めてわかりましたね。多分もう一生出会えないかもしれないです。
──ちょっとウルっときました。
内海:なんといっても凄いのはやっぱり本人がいないってことですよね。だいたいいるじゃないですか。そこら辺がやっぱりラブライブさんとかアイドルコンテンツとは全然違う所ですよね。
多分ずっといらっしゃるんじゃないですか、初音ミクさん。常に。必ず時代が変わってもどこかにいらっしゃるじゃないですか。
今年の流行の何かのここら辺にいらっしゃったりとか、ここら辺にいらっしゃったりとか。
でもまぁ意外とポジティブですよ、抜けた時は。やっと解放される……って。実際に仕事は凄く忙しかったんで、この忙しさから解放されるっていう開放感はありました。これは正直にです。
あとはセガの会社組織も色々変わってきたので……分社化したり、いろいろあって。身体も壊したりとか一瞬胃が悪かったりとかもしたんで。
──えっ!? 大丈夫ですか?
内海:今大丈夫です、おかげさまで。こっち来た頃はノンストレスだったんで。去年の暮れくらいから超ストレスですけど。よく俺生きてるなって。
──いや〜、どうしよう。〆の言葉。(笑)
内海:VRが将来どうなるか?
──そうですね! VRが将来どうなるかとか、そこに対する期待とか。
内海:僕はですね、VRだってワーワー言ってますけど、多分マスコミは騒ぐネタがないんでただ言ってるだけだと思ってて。前からOculusとかいじってる方はすぐ落ち着くと思いますし、色んな形での仮想現実を体験するっていうものも今までもあったわけで。
クオリティがどんどん上がっていって、より現実に近いものが見えたりとか、現実と間違えそうになるくらいのものが出来上がっていくとは思うんですけど。
やっぱり一部の方の楽しみとか、アトラクションとかっていう所を抜け出すにはもう一つ、二つ何かきっかけがないとダメで。
一つはデバイスですよね。DMMでもやってますけど、スマホでVR見れる動画みたいなのが一個はチャンスなのかなっていうのは凄く感じます。
ゲームとか何でもそうですけど、ゲームハードってそもそもちょっとエッチなゲームが出て、売れて、浸透して、女の子が買うようになって、一般化されればいいと思うんですけど。それがやっぱ携帯電話っていうのは普及台数がもの凄いので、そこをいかに女子が楽しんでVRが見れるみたいな事が一つポイントなのかなって思ってます。
今、女の子向けのHMDとか作れないかなって思ってて。女性が使うって事は全てを否定しないとダメでしょ。そもそも「頭にかけないでしょ!」とかね、色々あるじゃないですか?
──そうですね。ヘアスタイルの乱れとかもあるし、ファンデーションやマスカラとかも気になるかも……。
内海:だからちょっと色々考えてます。一個はデバイス。あとはデバイスというものにも引っ張られるとは思うんですけど、最終的にはどう見えたら満足かっていのがあって。
結局ゴーグルはめて、ヘッドフォンしてっていうと一人の世界には入れますけど、他人と共有ができない。他人と共有できるとしてもネットワークとかでするしかないので、こうやって話してる時にここに初音ミクがいたら楽しいでしょ?っていう事ですよね。
「10年間、大変だったよね」とかそういう話をできるような時代でしょっていう。そこまでいくのは大変かもしれないですけど、やっぱりレイヤ姫なんですよね。
──確かに、確かに! その話に戻りますね。
内海:だから空気を媒介にするしかないんですよ。いかに空気に物をうつすかっていう事。それこそレーザー照射とか今ありますけど、多分それ究極のVRだろうなって。
例えばここにペンみたいのがあって、ピュってやるとレイア姫が出てきて話したり。そんなものが多分一個のバーチャルリアリティの完成系なのかなって思ったりもします。
──(HMDを)つけるわけでもなく?
内海:そうですね。どこから見ても、誰が見ても見える環境っていうの? だから僕どっちかっていうとHMDのVRっていうよりは、やっぱり一万人が見られるライブみたいな形の方を求めたいのかな。ゴーグルの技術も凄いんで僕も結構好きですけど、ホラーとか怖くて見れないんで。(笑)
──やっぱりVRシアターも、先ほど言われていたレイア姫の方のVRですね!
内海:そうですね。だからそこにどうやって感動を持たせるかと。感動って色んな感動の仕方あると思うんですけど、感動しないとエンターテインメントじゃないと思うんで。
──1号さんに感動をいただいてきた一人として、今後のご活躍を楽しみにしております!
1号さん、携わる全ての皆さま、そしてミクさんに心からの感謝とおめでとうを送ります(Text by Yukina Matsuzaki)
●関連サイト
・アイドルタイムプリパラ み~んなあつまれヨコパマ!ゆめかわマジカるライブ
・DMM VR THEATER