「マジ魔笛」と話す女子高生バッハなど、多数の新人が生まれた「第1回 VTuberハッカソン」詳細レポ

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受賞チームの紹介

ここからは、受賞作品とそのチームについて紹介させていただく。特に、動画と発表資料からでは読み取りづらいシステム構成などのバックエンドについて、補足していきたいと思う。

 
No.16 チーム「KAKUNI」:最優秀賞・ツクモ賞・AVA賞

 
作品タイトル:「【#01バッハちゃんねる】音楽室の偉人がVTuberになってみた!」

 
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最優秀賞ほか、2賞を受賞したのはチーム「KAKUNI」だ。会場にて結成されたチームで、発表資料には、アイデアソンの原案からコンセプト絵、ストーリーとバックエンドまで丁寧に記載されていて分かりやすい。

ViveのHMDとコントローラで1人、VIVEトラッカーを3つ使ってもう1人という、1台のPCで2人のかけあいが可能なバーチャルYouTuberシステムをその場で組みあげた。偉人の肖像画がベースなため額縁として下半身の制御が要らないこと、「リング」シリーズの「貞子」のようにモーツァルトは額縁を飛び出しているが、バッハは額縁ごと落とされたりするネタのためにそうなっていない割り切りなど、テクニカルな面でもハッカソンらしさが溢れている。

個人的には、サウンド担当のplatoronical氏がハッカソン開始に遅れてたまたまチームに合流(参考:第1回 VTuberハッカソンに参戦したよ – 世界の果てで終末を待つだけの雑記 )し、バッハとモーツァルトのJKっぽさとテンポの良さを引き出した偶然の産物という点でも大変面白い。

 
No.11 チーム「ザバイオーネ」:Psychic VR Lab賞

 
タイトル:「#1 二人羽織琴葉姉妹日記」

 
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Psychic VR Lab賞を受賞したのはチーム「ザバイオーネ」だ。Psychic VR Lab製のVR制作・配信サービスであるSTYLYに、本ハッカソン向けに開発されたVTuber機能をベースにハッカソン向けの提供素材である琴葉姉妹のMMDモデルを組み込み、AITalk Web APIを組み合わせて動画を作成している。

「二人羽織」についてはVR空間上のキャラクターの手や頭を、後ろから覆いかぶさるように掴んだりしながら任意のポーズをとらせるシステムについた名前であり、動画と資料だけでは少々「二人羽織」っぷりは分かりづらいが、実際にHMDをかぶってキャラクターを操作すると納得感があった(等身大での「操り人形」とか、「憑依システム」とか、体験した人それぞれの呼び名をつけられていた)。

 
No.12 「坪倉輝明」:ユーザーローカル バーチャルYouTuberランキング賞

 
タイトル:「「おうち de VTuber」in VRChat」

 
※発表資料は動画が兼ねています

ユーザーローカルのバーチャルYouTuberランキング賞を受賞したのは、チーム「坪倉輝明」だ。動画中ですべてを説明しているが、独自の3Dモデルを「アバター」として、あるいは独自の3D空間を「ワールド」として登録することができるソーシャルVRサービスであるVRChatプラットフォーム上で、カメラ切り替えやテロップ表示機能などのギミックを有する撮影スタジオとしての「ワールド」をハッカソンの中で開発し、その中で3Dスキャンした坪倉氏自身のモデルを「リアルバーチャルYouTuber」としてたち振る舞わせるという、非常にテクニカルかつ本質的な作品だ。

なお、リアルタイム(あるいは本ハッカソンをまとめたTogetterでも確認できる)でハッシュタグを追っていた方はご存知と思われるが、VRChatのオリジナル「ワールド」はアップロードすることにより(フレンド限定となる制限があるが)即座に他のVRChatユーザに使ってもらうことができる。

1日目の夕方にはプロトタイプをすでにアップロードした上で、さらにVRChat上で他ユーザと協力してデバッグを進めている状況であった。会場の参加者のうち、VRChatを知らない人はそもそも何がおきているのか、VRChatを知っている人は、画面の向こうで誰が何をしているのか、坪倉氏の席に様子を見に行って聞きにいくという状況でずっと盛り上がっていた。

また、同時にVRChat内の撮影スタジオの様子がYouTube Liveで配信され続けており、1日目の深夜には数百人を超えるユーザがYouTubeでその様子を見守る状況になっていた。ある意味「一番開発メンバの多かったチーム」と言える。

VRChatユーザかつ、VRCSDKによる「ワールド」の開発について理解していないと面白さを理解しづらい作品ではあるが、VRChatのユーザが世界で爆発的に増加している中、独自「アバター」と「ワールド」の仕組みは大変面白いので、この機会にぜひ一度一通りチャレンジしてみるのはいかがだろうか。

 
No.14 「肉1.5倍」:NOITOM賞・CGCGスタジオ賞・玉置賞

 
作品タイトル:「水無月ライムの散歩」

*ハッカソン終了後、肉1.5倍より完全版の提出がありました。成果物の公平を期すため動画は提出時のものとしますが、興味のある方はぜひ完全版の動画もご覧ください。

発表資料はこちら

NOITOM賞・CGCGスタジオ賞・玉置賞を受賞したのはチーム「肉1.5倍」だ。アイデアソンから当日結成されたチームで、キャラクター「水無月ライム」とメカ「デコポン」がハッカソン会場で新規に作成され、最終的に360度動画としてYouTubeに投稿されるというチャレンジ要素を多く含んだ作品だ。

昨今のバーチャルYouTuberは「自分のことをバーチャルYouTuberであると認識している」ある意味メタな設定が主流だが、本作品のライムは「ポストアプカリプスで、なぜかYouTubeのシステムは生き残っている世界でYouTuberとして動画を投稿している」という、言葉通りの意味でのVirtual YouTuberであり、その世界観についての評価の声も高かった。

チーム「肉1.5倍」については、雰囲気Unity担当の@izm氏によるチーム活動のレポート(第1回 VTuberハッカソン(バーチャルYouTuberハッカソン)参加してきたwrite up – izm_11’s blog)が投稿されている。発表資料を補足する形で2日間の空気感がよくわかるレポートにまとまっているため、より詳しい雰囲気を知りたい方は参考にされたし。

 
No.4 「スプリンパンチーム(松)」:Xenoma賞

 
タイトル:「バイオリンを演奏するスプリンパン♪」

 
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Xenoma賞を受賞したのはチーム「スプリンパンチーム(松)」だ。動画はタイトル通り3Dキャラクターであるスプリンパンちゃんがバイオリンを弾いているシンプルなものだが、発表資料の図が示す通り、エレキバイオリン本体と弓にViveコントローラを装着、左手首と首の後ろにVive Trackerを装着することでバイオリン演奏者としての動作がすべて自然にスプリンパンちゃんに同期される。バイオリン本体を首で挟んで浮いた状態や、バイオリンの本体を手で持った状態など、バイオリンを扱う上での様々なポーズが破綻なく表示されていた。

動画だけ見てしまうと手付けでの出来のいいモーションと見た目上の区別はつかなくなってしまうが、プロのバイオリンの演奏者など多くの人にさっと使ってもらってそのままコンテンツにできるであろうポテンシャルを感じた。また、バイオリンの音はラインでUnityシステム側に入力され、音符エフェクトが動的に変動したり、Xenomaのe-skinで体の動きにあわせたエフェクトが表示されるなど単に身体の同期に止まらない+αの工夫も実装されている。なお、開発中はもちろんこのエレキバイオリンを演奏し続けることになるため、バイオリンの音色が響き渡る会場となっており、大変楽しかったこともつけ加えておく。

 
No.1 「Ultra Vibes Japan」:VIVE賞

 
タイトル:「お兄ちゃん系モンスターYoutuber バートン誕生!」

 
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VIVE賞を受賞したのはチーム「Ultra Vibes Japan」だ。群雄割拠のバーチャルYouTuber界隈で充足していないモンスター系をターゲットに新規のバーチャルYouTuber系を送り込んで来たという、VTuberハッカソンに対して正統派の取り組みと言えよう。

リアル系の強面グラフィックながら「お兄ちゃん系」というこれも例を見ないキャラクター設定だが、喋れば面倒臭がりのユーモラスさが押し出されており、正当なギャップ萌えの丁寧な作り込みがされている。

システム面では両手にViveコントローラ、頭・両肘・腹・両膝・両足と8つのVive Trackerを組み合わせた10点キャプチャにiPhoneXのフェイシャルトラッキングを組み合わせ、同時撮影も個別撮影も可能と、そのまま他キャラクターに使えそうなシステムの完成度は非常に高いと感じた。

動画ではバートン君1体しか出ていないが、会場では2台のiPhoneXによるフェイシャルキャプチャが同時に稼働して2つのキャラクターが1つのUnityウィンドウで表示される状態になっており、Viveによるキャプチャポイントの調整の結果によっては複数人同時の撮影も可能そうに見えた。なお、バートン君のYouTubeチャンネルでは、ハッカソンを振り返った2つ目の動画「【反省会!!】激闘を振り返って・・・」がすでに投稿されており、相方のゲロッチ君と現場の雰囲気などをいい感じのゆるさで語っているのであわせて必見である。

 
No.10 「Team TMCITXR」:AITalk賞

 
作品タイトル:「世界初のMR YouTuber 茜ちゃん!!!」

 
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AITalk賞を受賞したのはチーム「Team TMCITXR」だ。世界初のMR YouTuberを冠しており、Virtualから現実世界への拡張を実現している。現実世界への拡張の実体は低周波治療器デバイスを利用した自作のおさわりハードウェアで行われており、琴葉茜ちゃんにお腹を触ってもらうことができる。

なお、MR YouTuberとして最大の関門は動画で見る限りは現実世界に対して何がおきてるか大変わかりにくいところである。現状はHD振動しかり、バイブレーションフィードバックが主流だが、Rez Infiniteのシナスタジア・スーツがもっと進化する方向などで、ぜひ現実世界に干渉するバーチャルYouTuberがいっぱい出て来てほしいと感じた。

 
No.9 「豊」:にゃるら賞

 
タイトル:「幼馴染を女の子にしてみた。」

 
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にゃるら賞を受賞したのはチーム「豊」。バーチャルユーチューバーUMA(ユーマ)として登場したメガネ黒髪の華奢系のキャラクター。

チーム「豊」はヤマグチタケヒロ氏とyuma.jp氏の2人組だが、3DCGアニメーターであるヤマグチタケヒロ氏がyuma.jp氏を女体化してモデリングし、バーチャルユーチューバーにするという、新しいスタイルのTSに参加者の一部に衝撃が走った。会場に居た人しか分からないことでありリアル容姿に関するコメントのためぼかして書くが、「yuma.jp氏を女の子にしました」と言って説得力のあるモデリングだったことで「ぜひ逆にyuma.jp氏がヤマグチタケヒロ氏を女の子にして二人でやってほしい」などの斜め上の展開を期待させる作品となった。コンセプトのあるキャラクターは一発で人の心を持っていくのだ。

なお、表情トラッキングデバイスのbinaryVRを3Dプリンタで自作したアダプタで装着、HMD内部には視線トラッキングデバイスのaGlassが組み込まれた技術的にもピーキーなHTC Viveを用いているという特徴もあり、それらの視線追跡やリップシンクがキャラクターにしっかり適用されたコンテンツを今後期待したい。

 
No.8 「マッスルラビット」:GOROman賞

 
タイトル:「【Vtuberハッカソン】マッスルラビット「逆さ吊り腹筋」by栗坂こなべ」

 
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GOROman賞を受賞したのはチーム「マッスルラビット」。バーチャルマッスルウサギのこなべ氏が逆さ吊り腹筋を紹介するという作品だ。唯一のLive2D組としてゼロからかわいい14才のキャラクターをモデリングし、Facerigでのフェイシャルキャプチャは「表情筋に自信がない」とのことで、ゲームパッドでモーションを手動操作する仕組みを作り上げる方針だと初日に話を聞いていた。

ところが完成品はというと、こなべ氏自身の逆さ吊り動画に力技のマウス操作でお面をオーバレイするシーンが追加され、まさに”圧倒的な強さ”のテーマで仕上げてくる力強い動画となった。試遊会の際には写真の通りLive2Dキャラクターやお面をマウス操作できる機能を展示していたが、キャラクターのモデルに使われたと思われるコスプレセットは明らかに同士を増やそうとしているなんらかのオーラを感じた。

 

ほかの傑作VTuberも一挙紹介!

惜しくも入賞には至らなかったが、他のチームの作品についても紹介させていただく。

 
No.2 「VTuber うさぎさんチーム」

タイトル:「VTuberハッカソン特別編 バーチャル魔法兎少女YouTuberドコカノうさぎ」

 
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ドコカノうさぎ@バーチャル魔法兎少女(@patsupyon)」としてVTuberアカウントを当日前から運用しているという念入りな下準備を行なっていたチームの作品である。(何度もしつこいようだが)本ハッカソンは最終ターゲットがあくまで動画であるにもかかわらず、発表資料の通りVR空間上での動作にシンセが連動するプレイアブルなデモを展示しており、シンセ時空に入ってシンセ獣と戦うことができるものだった。

なお、筆者は会場に居たため本作品の渾身のボイス録音の様子を隣で聞いていたが、「こんなに可能性があるならボイチェン今度やってみよう」と思うぐらいには動画中の声とリアル肉声との差があったこともこっそり記しておく。

 
No.3 「ソロチーム目玉」

タイトル:「屋台ごめす開店」

 
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「チームから(間に合うかどうかはわからないが)二つ目の作品を提出しても良いか」という問い合わせを受けて結成された目玉P氏のソロチームの作品だ。

坪倉氏同様、VRChat向けの「ワールド」をベースにした作品だが、本作品は前述の「VTuber うさぎさんチーム」の3Dモードとともに、背景がVRペイントツールであるOculus Quillで描かれているのが印象に残った。ハッカソンのように短時間で世界観をつくりあげる必要がある際に向いたツールであると感じた。

 
No.5 「スプリンパンチーム(竹)」

タイトル:「誕生!VTuberなスプリンパン♪」

 
発表資料はこちら

「スプリンパンチーム(竹)」の動画は、スプリンパンちゃんのキャラクターや世界観を紹介するような動画になっているが、そのバックエンドは中間発表の写真の通り、「お手本的なVTuberのシステムで動画を作ってみた」というコンセプトになっている。前述の「スプリンパンチーム(松)」はVive+Trackerを使ったより高度な(?)システムを使ったものに仕上がっており、後述の「ゆるUnity電子工作部(梅)」と連合チームで3つの段階的なコンセプトのもと制作されたものである。最終作品の動画と発表資料からはすっかりそのあたりが抜け落ちておりもったいなかったのでここで補足しておく。

 
No.6 「ゆるUnity電子工作部(梅)」

タイトル:「「もっと世知辛いおじさん」のシステムを作ってみた」

 
発表資料はこちら
「ゆるUnity電子工作部(梅)」チームは、発表資料の通り、Leap Motionによる詳細な指の姿勢を含む両手と、VuforiaによるWebカメラ経由でのマーカートラッキングを組み合わせ、より安価なシステムでバーチャルYouTuberを実現したものである。

 
No.7 「チームひとり」

作品タイトル:「デリバリーVTuber」
※動画なし
 
発表資料はこちら
残念ながらハッカソン制限時間内にVTuber動画としての投稿が間に合わなかった「デリバリーVTuber」チームだが、発表資料に補足して説明する。

「ユーザはTHETAを持ち歩いて、リアル世界を撮影しつつ、THETA(につけたQRコード)をARマーカーとしてスマホに認識させることで、スマホ越しにVTuberとデートができる」ものである。VTuber側はTHETAで撮影されたユーザのリアル状況が配信されてくるため、適切なリアクションをとることができる、リモートアバターツーショットデートシステムといったもののようだ。

資料の通りのVTuberの正体がバレるオチまでシステムを作りきれなかったあたりや、システム図のWebRTCが「なんとなく双方向でメディアのやりとりができそう」という意味で少々わかりづらく、「VTuber側とデートをするユーザと2人居ないと動画の撮影がそもそも困難」という1日目の課題が解決できないまま終了してしまって惜しまれる。どこかで完成を期待したい。

 
No.13 「野田悟」

タイトル:「iPhone X Face Trackingでモーキャプしてみた」

 
※発表資料は動画が兼ねています

YouTube動画のコメントでターゲットとして技術要素の紹介動画へのリンクがあり、また、字幕で説明が補足されている。動画としてはiPhone Xのフェイストラッキングを使っていることはわかるが、バーチャルYouTuberとしての設定が一切動画からは読み取れないため、ぜひ資料だけでも「そもそも参考にした技術要素を組み合わせた最後に、どういうバーチャルYouTuberにしたかったのか」がわかるようにしてほしかった。ぜひiPhone Xやネットワークの課題をどうにかした上でその次にチャレンジしていただきたい。

 
No.15 「チンアナゴYouTuber」

作品タイトル:「?」

 
発表資料はこちら

中間発表から最終成果物が別ベクトルのものになってしまったチーム「チンアナゴYouTuber」だが、中間発表時の資料(写真)より、筆者から見えている範囲での経緯を補足説明させていただく。
資料に記載されている通り、形状がシンプルでモデリングに時間がかからず、大量に出現させてもグラフィック負荷的に有利であろうチンアナゴを大量に登場させ、Web技術を用いてブラウザ経由で1ユーザが1匹のチンアナゴを操作し、何十ものチンアナゴVTuberに共演させる方針だと説明いただいた。今までにないタイプの絵は想像するだけで楽しく、ぜひとも完成品を見たかった。

 
 
(TEXT by ようてん

 
 
●関連リンク
第1回 VTuberハッカソン

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