「PCメーカーとして世にOculusを広めたかった」 G-Tuneが語るVRへの情熱
G-Tuneといえば、Oculus Rift系の展示会でもよく見かけるPCだ。Oculus RiftのDK2(第2世代開発キット)の動作指標を示した「OcuFes監修PC」をリリースしたこともある同じブランドが、どんな想いでOculus Rift向けPCを開発してきたのか。マウスコンピューターの杉澤竜也氏に話をうかがった(以下、敬称略)。
マウスコンピューター & G-Tuneプロダクトマネージャー、杉澤竜也氏。G-Tuneブランドを育ててきた人物だ。
——G-TuneとOculus Riftとの出会いを教えてください。
杉澤 もともとのOculusとの出会いは2013年に発売されたDK1(初代開発キット)のときでした。当初、ゲーミングPCをどうやって世の中に広めていけばいいかを模索していたんです。ゲームとのコラボは他社も当たり前にやっているし、どうやったらG-Tuneの特色を出せるか。そんなときにニュースサイトで、Oculus Riftが話題に上がっているのをちらっとみて、未来を感じて体験してみたいと思ったんです。
そんな矢先、OcuFes代表の桜花一門さんがたまたまTwitterで「マウスさんの本社ビルが自宅の近くにあるから、Oculusを体験してくれないかなー」とつぶやいていたのを当時、社内のTwitter担当が見つけて教えてくれたんです。
——なんという偶然(笑)
杉澤 もう「来たか!(ガタッ」という(笑)。当時、徒歩3分ぐらいのところにビルがあったので、すぐにお招きしてかぶらせてもらったら度肝を抜いた。「これは未来を感じる。PCメーカーとして世に広めていかなきゃならない」と直感したんです。
その時点でOculusの仕組みや開発方法についてまったくわからなかったため、桜花さんに教えてもらおうとしていたところに、弊社代表の小松(小松永門氏)がやってきた。
——さらに偶然が!
杉澤 いきなり決裁者に体験してもらって、「これはスゴい」という話になったんです。さらに桜花さんに取締役会に来てもらって、社内のいろいろなメンバーに体験してもらいました。そうして「G-Tuneの新しいユーセージ提案のひとつとしてやっていきましょう!」となったのが、2年前の夏です。
——そういえばG-Tuneさんは初期から店舗にOculus Riftを常設していましたよね。
杉澤 その常設もいろいろ経緯がありました。Oculus Riftの感動は、どうやっても言葉で伝えられないので、かぶってもらう必要がある。OcuFesさんもイベントをやっていますが、それは単発ですよね。常に触ってもらうためにはどうすれば……と考えたときに、うちには店舗があるじゃないかと。お客さんに触ってもらって感動してもらったほうがいい。
ただ、いきなり常設で入れるのもどう反応が出るかわからないので、ちょうど2013年11月にベルサール秋葉原で開催した「ゲームパソコン&PC-DIY EXPO」で展示のひとつとして出してみたんです。そうしたら、長蛇の列ができて一般層にも受けるということが分かったので、秋葉原の「G-Tune:Garage」にデモ展示することになりました。
秋葉原の中央通り沿いにある直営店「G-Tune:Garage」。通りに面した場所にOculus Riftが展示されており、多くの人の目を引いている。
杉澤 PCでもOculus Rift向け製品をいろいろ出してきました。例えば今年1月に発売した、「Optimus」問題を解決したゲーミングノートPC「NEXTGEAR-NOTE i5702」シリーズは、Oculus開発者に多く使っていただいてます。
NEXTGEAR-NOTE i5702は、GeForce GTX 970Mを搭載した15.6インチノート。
——NVIDIAのOptimus技術は、CPU内蔵グラフィックと独立GPUで切り替えて、高性能と省電力を両立させるって機能ですよね。Oculusを繋いだ場合、CPU内蔵側を経由して描画されてしまうので、フレームレートが落ちてVR体験の質が下がってしまうという……。
杉澤 そうなんですよね。開発者のみなさんがデモ展示されるときは、やっぱり荷物を軽くするためにノートPCを使う方も多いんです。DK1のときはMacBook Proで動かしていた人も多かったんですが、DK2になったら性能面で物足らなくなってきた。でもWindowsノートでは、Optimusが引っかかって難しい。NVIDIAに話を聞いたりして解決策を探っていましたが、一向に見つけられなかった。
——「VRは筋肉!」じゃないですが、全員が全員、デスクトップPCを持ち運ぶのも難しいですしね……。
杉澤 そうこうしている中でも、日本のOculusコミュニティーからも悲鳴が上がっていたので、なんとか解決してあげたかった。それで第一弾として考えたのが、持ち運べて、GeForce GTX980以上が搭載できるグラフィックカードの制限がないコンパクトPCでした。それが小型デスクトップPC「LITTLEGEAR」シリーズの原型です。
ハンドル付きで展示会にも持ち運びやすい小型デスクトップPC、LITTLEGEARシリーズ。こちらの魅力は別記事でお届け予定だ。
——結構早いタイミングでコンセプトが出てたんですね。
杉澤 ケースの開発は非常に時間がかかって、普通にやっても半年必要です。「LITTLEGEAR」はいろいろあって1年かけました。
——1年!
杉澤 でも同時に、本当にノートでの可能性がゼロなのかとも模索していたんです。Optimusが効かないノートを作ればいいんじゃないかって。そこで生まれたのが、先ほども出てきたNEXTGEAR-NOTE i5702シリーズで、デスクトップ用のCPUとチップセットを積んでいます。
デスクトップ用のCPUを積んだノートは、過去にコア層向けにつくったこともありましたが、今回は本当にVR開発者のためだけにリリースしたかたちです。だからNEXTGEAR-NOTE i5702はVRコミュニティーに基づいた製品開発で、世に出せた第一弾ですね。
——10月末にも、GPUの出力をGeForce側に固定できるノートPC「NEXTGEAR-NOTE i5710」シリーズをリリースされていましたよね。
杉澤 そうなんです。Oculus Riftの製品版では、推奨グラフィックがGeForce GTX 970以上となっていますが、コンテンツによってはそこまでのパワーが必要ない。
——たしかに開発者が自分のコンテンツを展示するなら、ソフトを最適化して軽くする方法もありますしね。
杉澤 そうなんです。Oculus向けノートはスペックが足らないから諦めるのか? Optimusがハードルになるけど、デスクトップ向けCPUはニッチすぎないか?そんな話を続けていて、ようやく出せたのがNEXTGEAR-NOTE i5710でした。
Oculus開発者向けのノートPC、NEXTGEAR-NOTE i5710。専用ソフトにより、映像出力をGeForce GTX 970Mに固定できる「GPU Switch」機能を搭載している(詳細はこちらのニュース記事で)
——一朝一夕にできたことではないと。
杉澤 日本国内でここまでOculus向けPCに熱い思いを持って取り組んできているメーカーは存在しないと思います。東京ゲームショウのOculusブースを始め、イベントに展示用のPCを協力することも多いですし、VRについては尋常じゃないほど力を入れてきてます。そうして実機のよさを実感してもらうことでも、VR開発者でG-Tuneを選ぶ人が増えていってるんだと思います。Oculus Riftを利用する際には、ぜひG-Tuneのマシンをご検討ください。
(提供/G-Tune)
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