155度+235度のデュアルレンズが新鮮! Kodakの360度カメラ「PIXPRO ORBIT360 4K」に注目
イベントは終わったが、まだまだ続くCES 2017のレポート。会場では、「RICOH R」や「Insta360 Pro」といった特徴的な360度カメラが展示されていたが、さらにKodakの「PIXPRO ORBIT360 4K」をピックアップしていこう。
カメラ内スティッチ対応でライブ配信向き!
KodakのPIXPROといえば、360度撮影を手がけている人なら、防水・防塵性能を備えたアクションカムの「SP360」シリーズが思いつくはず。国内ではマスプロ電工から販売されている。
2014年には、360×214度の範囲で、1440×1440ドット/30fpsのビデオ録画が可能な初代が登場。本カメラ2台を背面に合わせて撮影し、ソフトの後処理で統合して360×360度映像を生成する用途にも使われていた。
2015年には、2世代目として360×235度で、2880×2880ドット/30fpsの録画が可能な「SP360 4K」をリリース。2台を据え付けられるダブルベースマウントを用意し、より360×360度を撮影しやすい環境を整えてきた。
そんな先に昨年9月の写真用品の展示会「フォトキナ」にて発表されたのが、同社初となる1台で360×360度をカバーできるORBIT360 4Kだ。今回のCESでは実機でのリアルタイム配信デモなどを実施していた。日本での発売は3月中旬ごろを目指しており、価格は499米ドル予定とのこと。
仕様でまず面白いのは、正面に155度、背面に235度という異なる撮影範囲のレンズを備えており、3種類の撮影が可能という点だ。2つのレンズを使えば360×360度のVRモード、正面のレンズ単体を使って197度という超広角の4K映像、背面のカメラを上に向けたりすることで旧来のように235×360度──といった具合に使い分けられるのが面白い。詳細なデータはこちらのスペック表(PDF)でチェックすべし。
さらにライブストリーミング用途を想定している人にとっては、カメラ内スティッチングへの対応も大きい。スティッチングとは、別々のカメラで撮影した静止画や動画をひとつに統合する作業のこと。ORBIT360 4Kでも通常はPCに取り込んでスティッチすることになるが、モードを切り替えることでカメラ内スティッチングも可能だ。
CESの会場では、その場で撮影した映像をHDMIケーブルで4Kテレビに出力していた(分かりにくいが、左上に小さな本体がある)。なお、カメラ内スティッチングを利用して外部に出力している際には、内蔵カードに同時記録はできない。
ただし、カメラ内スティッチングは負荷が高いため、PCで処理するよりも動画のフレームレートが落ちる。具体的にはPCでスティッチングした際には3840×1920ドット/24fpsだが、カメラ内では3840×1920ドット/15fpsとなる。なお、カメラ内かつフレームレートを優先させたい場合、1920×960ドット/30fpsも選べる。
連続稼働時間は、バッテリーフル充電の状態で約1時間ほどとのこと。長時間リアルタイム配信に使いたい時は、USBケーブル経由で外部から給電することになる。
現状、リコーの「THETA S」やサムスン電子の「Gear 360」といった低価格帯の360度カメラでは、PCやスマートフォンに転送してのスティッチングが当たり前なので、カメラ内で処理できるのはORBIT360 4Kの大きな強みだろう。先に取り上げたRICOH RのようにCerevoのLiveShellシリーズを使えば、PCレスでの360度ライブ配信もできそうだ(……と書いておいて、実際に試したわけではないので、規格の相性問題があったらごめんなさい)。
一方で、PCでスティッチングしたときにもフレームレートが24fpsというのは、特に動きの早いものを撮影した際にはカクツキが気になるかもしれない。個人的には、VRゴーグルで見る用途より、さっと撮ってYouTubeやFacebookで公開したり、ライブ配信に使ったりと、即時性を生かせる用途に向いていると感じた。IPX5の防滴、2mからの落下の耐衝撃、IP6X相当の防塵、マイナス10度での耐低音というタフさも特徴なので、アウトドアと相性がいい。
KODAKブースは展示の仕方も面白かった。これは球体に360度映像を投影し、表面を手でなぞって動かせるというもの。
このほか、HTC Viveでの視聴デモも用意していた。
CESの会場を歩いていると、昨年に続き中国系企業から山のように360度カメラが出展されていることが見てとれる。単に撮れるだけでは埋もれてしまうこと間違いなしなので、ORBIT360 4Kの「アクションカムでカメラ内スティッチ」というかなりユニークな方向性は正解だろう。アウトドア向けの360度カメラを探してる人は要チェックだ。
(TEXT by Minoru Hirota)