電気刺激で加速感を得られるVRHMD、音波匂い制御装置などが展示! 最先端技術を体験レポ(その2)【DCEXPO 2017】
10月27日から10月29日まで開催された「デジタルコンテンツEXPO 2017」には、数多くのVR・AR関連のサービスや技術が多数出展していた。その中で気になるブースをピックアップしてお送りしたい。
ドワンゴ
DAHLES – HoloLens大規模同期ARライブシステム
ドワンゴが展示していた「DAHLES」は大規模なARライブ体験システムで、マイクロソフトHoloLensをセットすると、舞台上に「超歌舞伎 花街詞合鏡(くるわことばあわせかがみ) 」に登場した花魁姿の初音ミクが踊る様子が観られるデモを行っていた。
DAHLESのポイントは、小規模なイベントではなく100人以上の規模で数十メートル四方の大規模イベントでも利用できること。ブースの説明員によると75台までの同時使用はテスト済みで、理論上は数百台まで同時に運用可能とのこと。
ブースにセットされた専用の舞台。
ホロレンズをつけて観ると、舞台上に初音ミクが表れる。
DAHLESのプレビュー画面に映る舞台や初音ミクが。
首都大学東京大学院システムデザイン研究科/NTTコミュニケーション科学基礎研究所/電気通信大学/豊橋技術科学大学
TWINCAM:全天球リアルタイム立体視テレプレゼンスシステム
全天球かつ立体映像をリアルタイムに取り込んで遠隔地へ送信し、HMDで映し出すことでその場に居るようなリアルさを体験できるテレプレゼンスシステム。カメラにはリコーのTHETAを2台使い、専用に開発した回転台に設置。回転台はHMDの頭の動きに合わせて動くようになっているが、その際レンズの光軸の方位を一定にしたまま動くようになっているので、運動ぼけと遅延を抑制できるようになっている。
実際にセットしてみると、HMDの解像度などから映像感は拭えないものの、それ以外はかなり現実に近い雰囲気。今後開発が進めば、危険な場所での工事など遠隔操作に活用できそうだ。
設置した台全体に加えて、2台のTHETA自体も回転するので、光軸の方位を一定にできる
THETAがとらえている映像 ブースでは90度違った方角から観ることになり、不思議な感覚だった
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 篠田・牧野研究室
空中超音波による匂い環境制御
超音波を使って、匂いの成分を特定の方向に送り込む技術。ブースでは体験者が着席した前方に匂いを出す装置を3つ配置。さらにその奥に超音波発生装置を配備し、超音波を出す方向などを制御。実験が始まると、座っている場所へ順番に匂いがキッチリと届き、混ざってしまうようなことはなかった。
一般的に匂いを送り込むシステムとしては風力を使うものがおおいが、ブースの説明員によると風を使った場合、匂いの成分が広がってしまうためピンポイントで送り込むことが難しいが、その点超音波を使えば狙ったところだけに送り込める利点があるというわけだ。
ただし超音波で送っていても風の影響を受けやすく、今回のブースでもその場所だけエアコンを切ってもらい実験をしていた。このあたりの問題点が改善したいポイントだ。
手前の霧を出しているのが匂いの発生装置で、奥の板状に貼り付けてあるのが超音波発生装置。その上のKinectは顔の位置を特定するのに使われている
超音波の影響で、いちばん左の霧だけがこちら側に向かっているのが見える
東京大学 苗村研究室/電気通信大学 小泉研究室
Clothcreen
布製品に紫外線で反応するインクを使って印刷して、紫外線を当てたときだけ情報が浮かび上がるディスプレーとして活用できる技術。紫外線を当てなければ普通の生地にしか見えず、しかも布なのでさまざまな形に加工しやすいのが特徴。
布へのプリントも一般に市販されているプリンターが使用可能。インクを変えるだけなので、導入コストがかからないのもポイントだ。印刷されたものだけが浮かび上がるので、アニメーションなどは無理だが、玩具や家具、暗い劇場などで必要なときだけ案内を出すといった使い方が考えられる。
イラストが映し出されているところが特殊なインクで印刷されている部分
紫外線が当たっているときは印刷が表示される
紫外線の照射をストップすると、無地の布に
大阪大学 大学院情報科学研究科/明治大学 総合数理学部
バーチャルな加速感覚を付加する高臨場感VRヘッドセット
HMDを装着している際に、映像にリンクして前庭電気刺激を行うことで、加速度の感覚を得ることができるシステム。ブースではHMDと同時に電極を装備したヘッドフォンを装着。ここから皮膚に微弱な電流を流すことで、加速の感覚を扱っている前庭感覚器刺激。実際に動いていなくても加速感が味わえるようになっている。
アミューズメントパークなどで、HMDを使ったアトラクションも増えているが、加速感を味わうために、可動式の椅子や送風装置など大がかりな機材が必要となる。それが高臨場感VRヘッドセットを使えばそういった機材不要でリアルな動きを体感でき、VR酔いの低減も可能とのことだ。
電極からの微弱電流で加速感が得られる
デモのシステムはヘッドフォンを改造して作られている
(TEXT by 中山悟)
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デジタルコンテンツEXPO 2017