VRのコントローラーは難しすぎる 実家のVR体験で気づいた「引き算」の余地

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みなさん、あけましておめでとうございます。PANORAの新年一発目の記事では、初心に帰って「体験させてみた」話をできればと思います。この年末年始、実家に帰ったタイミングで「VRおじさん」として家族や親戚、友人にVRを体験させたという人も多いはず。筆者も実家に帰って親にOculus Riftをかぶせてみましたが、そこで得た気づきをシェアします。

 
 

初めてのVR体験には「見るだけ」が向いてる

 
VRが一気に広まらない一番の原因は何か。誤解を恐れずに言えば、それは人類のほとんどがVRゴーグルをかぶった経験がないところにあるでしょう。

 
筆者も過去数年にわたってあらゆる原稿で何度も書いてきましたが、「かぶると視界のほとんどを映像に覆われて、頭を動かすと普段周囲を見るようにスムーズに映像が切り替わる」という話は、言葉でも写真でも動画でも絶対に伝わらないインパクトです。このスゴさをわかってもらうためには、実際にかぶってもらうしかない。

 
というわけで、筆者も2014年頃からMacBook ProとOculus RiftのDK1(初代開発者キット)を持ち歩いて、イベントや打ち合わせの喫茶店、はては飲み会に至るまで「VR面白いよー」と、あらゆるところでかぶせまくっていました。そして実際に体験してもらうことで、「VRってよく言われるけど、アレって実はスゴいんだよ」と自分の言葉で語れるようになります。

 
そんな「初めてのVR体験」において筆者が気を付けているのは、なるべく操作しなくていい受動的なコンテンツを選んでいるという点です。

 
具体的に言えば、Oculus RiftはVRアニメの「Henry」、HTC VIVEなら深海でクジラと遭遇する「TheBlu」のデモ版、PlayStation VRなら「PlayStation VR Worlds」内の深海体験「Ocean Descent」ですね。そういえばDK1の時代のジェットコースター体験「RiftCoaster」も見てるだけでした。

 
これらは鉄板で、体験した後に「VRすごかったー!」「私もやってみたい」と周囲に正の循環を生み出してくれます。

 

 
一方でRiftやVIVE、PS VRといったハイエンドよりのVRは、単純に見るだけでなく、モーションコントローラーを持って手を使えるのが醍醐味のひとつです。「Bullet Train」で銃を拾って打ったり、「Tilt Brush」のように絵を描いたりしてあちらの世界に干渉することで、目の前の光景が本当のものだと脳が錯覚しやすくなるわけです。

 

 
ただ、そこで問題になるのが、コントローラーの操作です。そもそも世の中にはゲームをしない人も非常に多く、十字キー+ボタンというゲームコントローラーの基本すら知らない人もいるわけです。この操作を教えるというプロセスは、初めての人にとって「なんだか面倒くさそう」という印象を与える恐れが強い。

 
人は得てして、その先に確実に面白いものがあると確信できない状況では、面倒なことを乗り越えようとしないものです。なので「初めてのVR体験」では、「ゴーグルをかぶる」という最低限の操作だけで済むタイトルの方が向いています。

 
今回、実家で見せた筆者の両親もゲームをせず、スマホも使っていないという世代です。Gear VRなどのスマホVRは以前見せましたが、Oculus RiftのCV1(製品版)は初体験。それでもHenryには「すごい、触れそう」と手を出して触れようとするなど、かなり楽しんでもらえました。気になったのは「何かレンズが曇るな」という話だけでした。

 
ちなみに、「スタートまでの待ち時間が少ない」というのも、「初めてのVR体験」に向いている要素です。VIVEのミニゲーム集「The Lab」も素晴らしいのですが、ロード時間が長すぎて一通り体験したあとに興味を持った方にだけデモすることが多いです。言い忘れましたが、ハードウェアのスペックがたらなかったり、コンテンツのできが悪くて、「VR酔い」しやすいものを見せるのは、その後、VRに悪印象がついて回るので絶対にNGです。

 
 

もっとシンプルに!

 
ここからが本題で、では機械の操作に慣れていない人々が、モーションコントローラー(というかOculus Touch)を使ったらどうなるのか、という話です。

 
以前にレビューを掲載した「Oculus First Contact」を遊んでもらったのですが、結論から言えば、なかなか導入が難しかったです。

 
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Oculus First Contact。

 
まず手を置く位置。Oculus Touchには親指、人差し指、中指と3つの場所にボタンが用意されています。その正しい掴み方を教えたとしても、ゴーグルをかぶってしまって実際のモノが見えないので、人差し指と中指を置く位置を間違えがちです。

 
ものをつかむのにも苦労していました。人差し指のトリガーを引いてフロッピーディスクをピックアップするシーンでは、まず指の位置が間違っていたり、ボタンを引きっぱなしにしてしまって掴めなくてやり直す、といった感じでした。それでも数分経過すればかなり慣れてきましたが、リアルの手のようにストレスレスで動かせる……という感じではなさそう。

 
そうした様子を見ていて、このコントローラーの「ボタンが多くてなんだか面倒そう」問題は、VRが広まるにあたってかなりの障害になるのでは、と直感したわけです。これはVIVEでも同様で、まずトリガーの位置に人差し指を置くという発想がない人も多いです。

 
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HTC VIVEのコントーラー。

 
もちろんメーカー側も、モーションコントローラーにどんなボタンをつけるかで非常に苦心しているところがあると思います。そしてハイエンドVRの今は「VRで何ができるのか」の可能性をめいいっぱい広げる段階にあるので、いろいろ指示できるようにボタンを増やしたいという気持ちもわかります。

 
一方で、「いろいろできる」は面倒の元にもなってしまいます。VRという概念がある程度広まってきて、より多くの人にハードウェアを浸透させる段階においては、ボタンをかなり絞った簡易なコントローラーが求められるでしょう。それこそファミコン以前の「インベーダーゲーム」のような、ジョイスティック+1ボタンぐらいに退化するぐらいの覚悟が必要なはず。今のVR向けモーションコントローラーは難しすぎるのです。

 
ハードウェアの第一弾が出てきた2016年の「VR元年」に続いて、2017年の「VR弐年」はキラータイトルを含むコンテンツが続々と出てくる年になると予想しています。それに伴って、さまざまな種類のコントローラーも登場するでしょう。特にVIVEでは「SteamVR Tracking」を基にした周辺機器が、続々とリリースされそうです。

 
そうした中に、より迷いなく操作できるインターフェースを備えたものが出てきて、ファミコンで生まれた「左に十字キー、右にボタン」というゲームコントローラーのように、標準化できるような状態にまで発展することを願ってやみません。

 
 
ちなみに実家から帰った翌日には、「朝日新聞の朝刊にVRの話が載ってたよー」と連絡がありました。こちらからは以上です。本年もPANORAをどうぞよろしくお願い致します。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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